2020-08-04

 夏休みの四日目。秋田駅に近いホテルで目を覚ました。時刻は5時過ぎ。そんなに早起きしなくてもいいんだけどな。まぁいいやと荷造りはしておく。
 時間があるので、近くの市場に行ってみる。

 秋田市民市場。建て替わってから二度三度来ているが、店がだいぶ歯抜けになっている。
 欲しいものがあって、秋田産の酒粕粕汁にしたいのだけど、見つからない。味噌を売っていた店があったので聞くと
「ね」
 の一言。他に売っている店が無いか聞いてみたが
「ね」
 の一言。秋田の商売下手だなぁと思うだけだが、知らない人が聞くと、怒るだろうなぁ。結局ギバサだけ買ってホテルに戻る。
 7時過ぎに朝食。最上階に出る。


 駅前にマンションが目立つようになった秋田の街。でも見た範囲には農協ビルより高いマンションは見当たらない。
www.akita-jab.co.jp
 何時までだったか忘れたけど、秋田では長らく農協ビルが県内最高層ビルだったのだ。
 朝食、バイキング形式が復活していた。その代わり

 手袋をしてトングはその都度消毒。ごはんやみそ汁は係が取り分けてくれる形式。なかなか仰々しい。


 小分けにされたものも多くてトレーがすぐ満員になる。
 部屋に戻る。地元紙を貰ったので目を通す。

 昨日、惜しまれつつ渋谷を去った東急5000系の記事が紙面を飾る。
 割れ物を包むべく新聞紙を剥いて包み、剥いて包みをしていると

 秋田の話題とハワイの話題が並ぶ奇跡が起きる。
 冷蔵品は保冷剤と一緒に新聞でくるんで保冷パックの中へ。冷凍ギバサやら何やらを持ち帰る準備を整える。
 9時前にチェックアウト。駅に向かう。荷物は駅前のコインロッカーへ。今日は18きっぷを使うほど乗る予定はないので、窓口で普通乗車券を買う。ちょっとトリッキーな乗車券だが、出して貰える。
 改札口へ。まだ時間に余裕がある。

 各地に向かう優等列車が少なくなった秋田駅の案内はだいぶ寂しい。新幹線に移行したっちゃしたけど、新幹線の出来ていない奥羽線羽越線優等列車が無くなったり、少なくなったり。


 9時前の秋田と言ったら、日本海3号が来て、津軽が来て、おがが来て、の夜行列車三連発だったけどね。今いるのは普通電車に普通列車。朝ラッシュの時間なので長編成が目立つけど、やはり寂しい。

 1番線に八郎潟ゆき。このホームは男鹿線専用だと思っていたけど。

 今日は酒田ゆきに乗車する。2両の電車はさらっと席が埋まる程度。牛島と新屋であらかたお客さんが降りる。ちなみに新屋の駅。ちょっと前まで喧々諤々していた演習場からは少々距離がある。演習場のあるあたりはむしろ県庁や市役所がある官庁街が近いところ。秋田に土地勘がある人ならば、最初から無理だろ、とみんな思っていたと思う。
 列車が空いたのでパソコンを出して京王線恥辱を進める。街中を出たのでWiMAXの電波は途切れ途切れだが、何とか更新作業を進める。
 羽後本荘で下車。


駅構内は工事中。停車位置も階段からだいぶ離れている。今日は乗り継ぎなんだけど、時間があるのでいったん改札を出る。窓口の係員、切符をまじまじと見てから、どうぞと通してくれる。

 40分程の時間。特に目的は無いけど歩いてみる。

 高い建物がまるでない本荘の街。地図をちらっと見て、市役所のあたりが元の本荘城と知り、そこを目的地とした。
www.city.yurihonjo.lg.jp
 
 いわゆる羽後の国は概ね秋田藩なんだけど、本荘を中心とする由利地方は小藩が分立している。


 この辺までくるとバスの行先が幕で残っているクルマも多い。っーか県立大学って自分が秋田にいたころには無かったなぁ。
 10分少々で本荘の市役所。そして城跡の公園につく。

 思ったよりも立派な堀がある。水を抜きたくなるような淀んだ堀。

 門があるけど明らかに復元門。
 本荘城はこの奥にずっと広がっているそうで、膳所の城とはだいぶ規模が違う。ただ奥まで行っちゃうとこの先の行程に差し支えるので、ここで引き返す。
 駅まで戻る途中、気になった看板があったので

 寄ってみる。時間が気になるが、岩ガキならすぐに提供されるだろう。
 何時から営業しているのか分からないけど、とにかく入店。若い人がやっている小洒落た店で夜はお酒を出すみたいだが、岩ガキ2個、とオーダー。程なく

 出てきた。一個一個が大きい。

 早速頂く。レモンは不要。そのままで濃厚な滋味が口いっぱいに広がる。薬味も醤油も何にも要らない。
 思ったよりも早く進んだので、もう一つ、寄り道、

 と思ったら駅前にある朝市。本当に朝にしかやっていない朝市だった。7時閉店だって。
 駅へと戻る。本荘駅も建て替えみたいで記憶にある駅舎は消えている。プレハブの仮駅へ。

 自販機のデザインが由利高原鉄道気動車風になっているが、今日はこれから、その由利高原鉄道に乗る。
 JRと由利高原鉄道。構内は共用しているが、改札は別々にあった。由利鉄の改札で先程の切符を見せて、入場する。次の列車は10:43。時刻表には「おもちゃ列車で運転」の記載がある。
 その「おもちゃ列車」

 一般車を改装したみたいな車両が待っているのだが、中がなかなか手が込んでいる。
www.obako5.com

 ボックスシート

 ロングシートというよりはソファといいたくなるような座席。

 カウンターといいたくなるような窓向きの席。

 インフォメーションがあるけど、こうなると酒を出してほしくなる。でもおもちゃ列車という趣旨なので

 遊び場があったり 

 ベビーベットがあったり。

 床も木材、内装をすべて木材であしらった気合の入りぶり。

 改装にまつわる銘板があったけど、匿名寄付者の出資って。いくら掛かったのだろう。
 そしてこの列車。アテンダントが乗っている。
www.obako5.com
 自称「相当歳のいった」おばこだけど。
 乗客は家族連れが目立つ。自分は知らなかったのだが、沿線におもちゃ美術館というのが出来て、そちらへの脚になっているらしい。
chokaisan-wtm.jp
 子供が遊び場を喜び駆け回る中、アテンダントさんの案内があって出発する。アテンダントさんがこなれた感じで自己紹介を、そして由利高原鉄道の案内を始める。

 行く手の右に防風柵が建つ。冬には車窓を遮る邪魔者だろうけど、これもアテンダントさんの手に掛かると見どころになる。冬は日本海からの風を防ぐために柵をします、と。
 子吉川沿いに登ってゆくだけの単純な路線、なんだけど、子吉と鮎川の間、ちょっとした坂道になる。

 高台に上がって眺めがよくなります、と仰るので左側を見ると

 確かにちょっといい眺めになる。ついで工場が見えてくるとTDKの工場であることが案内されるという調子。毎日聞いていると飽きるだろうが、久しぶりに乗る分には悪くない。
 ちょっとした峠を越えると木々の間に木造校舎が見えてくる。これがおもちゃ美術館。列車はそのまま

 ちょっとした橋を渡る。アテンダントさんは忙しそうに車内を廻り

 乗車記念のしおりを配ってくれる。その間に鮎川の駅に到着。ここが先程の美術館最寄。アクセスバスが迎えに来ており、子供連れのお客さんが降りてゆく。
 鳥海山が美しいしおりが配られたが、今日は、というか今日も気難しい鳥海山は姿を見せない。見える時はこんなにきれいに見えますとフリップを手に説明して回る。
 列車は前郷駅に着く。

 ここは由利高原鉄道、線内唯一の交換駅。そして
www.obako5.com
 前郷から矢島よりはタブレット閉塞式となる。この案内があって、写真を撮る方はどうぞ、とも案内。お願いするとアテンダントさんから駅員さんに写真撮りますのでよろしくと声掛けがあって、

 こちらがOKというまでポーズを決めてくれる。こんな鉄道、初めて見たわ。

 列車は前郷を出て子吉川沿いに上流域へと遡ってゆく。本日2度目の子吉川橋梁を渡ると大きくカーブ。アテンダントさんが「私が一番好きな景色」という

 吉沢駅。カーブの向こう、田んぼの中にぽつんと建つ駅が素敵と仰る。何でこんなところに、と思うけど、確かに映える。

 列車は子吉川に絡み合いつつ遡る。川辺の駅を出るとトンネルに入る。 


 車内が飴色に染まる。何というかこの空間で飲みたくなってきた。
 列車は定刻に矢島に着く。

 折り返しは30分弱ある。その間に昼食を済ませよう。

 駅を出る。ローカル線の終点。ちょっとした街にはなっていて、駅前に食堂が見える。

 ちょっと早いけど入ってしまう。かつ丼とラーメンが人気らしいけど、一番早い物を聞くと、蕎麦かうどんと仰るので、そばを頼む。すると袋めんを温め始めた。なるほど、確かに早い。

 肉そば ¥550。袋麺を温めただけなので麺はたかが知れているけど、出汁と肉はまぁまぁうまかった。駅そばの豪華版と思えば納得がいく。
 カウンタの壁のところ

 あら、懐かしい。ネットが無い時代のイベントなので、あんまり情報が出てこないけど1986年の夏に行われた地方博覧会
 駅に戻る。蕎麦が早く出てきたので思ったよりも時間がある。

 矢島の駅前にも気動車を模した自販機があった。本荘がYR-3001、矢島がYR-3003。どこか途中駅にYR-3002があるのか。
 待合室の一角に、矢島駅の有名人がいて構ってもらえる。
news.yahoo.co.jp
www.asahi.com
 多分、15年前にも確か居られて、桜茶を頂いた記憶がある。
 先程の初志を思い出してお酒が売っていないか聞くと、日本酒、地元の銘柄が二つあるそうだ。
tenju.co.jp
http://www.dewanofuji.co.jp/
 どちらか一つを選べないので二つとも頂く。どちらもワンカップが250円。飲み比べてみるといいと思うよ、と言われたけど、さすがに本荘までの小一時間で2合は飲めん。
 帰りも普通乗車券なので切符を通しで買い求める。列車に戻ると先程も乗ったおもちゃ列車。

 今度はアテンダントさんの乗車は無く、乗客には高校生の姿が目立つ。ボックスとソファー席は埋まっていたのでカウンターに座る。

 行きに秋田で出して貰ったマルス券と帰りに矢島で出して貰った常備券。硬券で列車に乗るなんて久しぶりだ。
 さて、日本酒バーゆりてつのはじまり。


 選べないからと2本買った日本酒。よく見るとどちらも1合プラスαの200ml。どちらを開けようか迷っていると発車時刻。まつ子さんがホームに出て見送ってくれる。他のお客さんはほぼ高校生というか地元の人だから、自分が見送られているようなもの。手を振り返して答えた。
 結局、よりローカル感の強い出羽の富士の方を頂く。天寿はテレビCMやっていたのよ
 https://www.youtube.com/watch?v=GmEKD9MkrSg
 飲みながらの旅。先程の巻き返しだが、座る向きが違うし、気分がだいぶ違う。

 前郷でタブレットを駅員に渡す。ここはさすがに撮影時間は無し。

 再びYR-3003と出会うとこちらも出発となる。
 酔いが回る訳にはいかんので和らぎ水を飲みながら、子吉川に沿って列車は下る。鮎川のあたりで200ml瓶、空いたけど、さすがにもう1本空けるには時間がない。峠を越えて防風柵を見て、羽越線が近寄ってくると本荘の駅。

 飲んだ勢いで岩ガキをお代わりしたくなるが、次の乗る列車はもうホームの先で待っている。

 本荘始発の秋田行き。2両の電車は空いていたが、さすがに701系ロングシートで日本酒の続きは無理。海を背に大人しく座ると眠くなる。いつの間にか眠っていて気が付くと羽後牛島。南高生が乗って来て目が覚める。
 秋田に定刻到着。改札で切符を欲しい旨、伝える。駅員さん、ちょっと見て、「無効印、押さない方がいいですかね」と。そんな訳で手元に綺麗な切符が残る。
 秋田の乗換、14分。コインロッカーから荷物を引っ張り出すと駅前のバス停へ。


 空港行きのバスに乗る。乗客は自分を含め2名。その先も多少バス停はあるけどお客さんはいない。ごくごくわずかのお客さんだけで空港に到着となる。
 搭乗手続き。カウンタには

 鶴丸のそばを竿灯が彩っている。


 両社の幼若もそれぞれ飾られている。
 出発まで間があるので展望デッキに出てみる。

 JL2173が伊丹からやってくる。JA244J。これが折り返しの伊丹便になる。今日はこれからこちらに搭乗する。まだ時間に余裕があるのでもう少し展望デッキと同じフロアにある展示スペースを見る。


 模型はANAJASがメイン。秋田はもともと、羽田はANA、伊丹と千歳はJASが飛んでいたから、JALの影は薄いのである。
 ついで土産物売り場をちらっと覗く。ここに酒粕が売っていてギリギリにお買い上げとなった。
 空港で酒粕を売ろうなんて考えついた蔵元はこちら。
www.chiyomidori.com

JL2174 JA244J ERJ-190 AXT→ITM

 空いている保安検査を抜けて制限エリアに入る。

長年、JASが飛ばしていた伊丹からの東北便。21世紀はJALが飛ぶ。っーかANAも飛んでいて秋田-伊丹ぐらいでもダブルトラックになるのだから、航空業界も競争が激しい。そんなに美味しい路線かね、と思うが。

 YS-11が2往復していた伊丹便。ジェット化してDC-9になり、今はMRJ-190。時刻表を丹念に追えば、DC-9の一族でも変遷があり、JAL化の後もCRJ-200だったり、ERJ-170だったり。それよりも大きな機材では飛んでいないとは思うけど、調べれば出てくるかも知れない。とにかく100人前後の小型機で飛んできた路線。
 15:05の出発を前に搭乗待合室にいるのは30人弱だろうか。搭乗率にすれば30%以下となり、これはちょっと寂しい。本来なら満席で飛んでも良い季節なんだけど。
 搭乗が始まり、機内へ入る。

 今日もクラスJの一人がけ側が取れている。全部で30人程度だからクラスJも開いていて、2人掛けも1人で使っているところがほとんど。これなら2人掛けの方が良かったかも知れない。
 14:57、Doorclose。14:59、Pushbuck。定刻よりも早く動く。乗客が少なく乗り込むのに時間が掛からないからか、コロナ禍以後、飛行機の定時性は格段に上がった気がする。

 15:04、Taixing。誘導路を進むと早々に滑走路端へ。

 15:07 Take off RWy28。曇り空の秋田の大地が眼下に広がる。

 雄物川あきたこまちが育つ田んぼが霞んでゆき、雲に消される。揺れは来ないまましばらく。

 雲の上に出ると15:11、ベルト着用サイン消灯。雲の上を南へと下ってゆく。

 雲の切れ間から鳥海の高嶺が見える。残念な事に山麓が見えているだけで鳥海の高嶺は雲に隠れている。午前中の由利高原鉄道からも気難しい鳥海は姿を見せなかった。本当に難しい山だ。
 雲が切れてくる。

 泥を吐き出す川が見えてきた。最上川だ。山形に大雨が降ったのはつい先日。その時の水をまだまだ吐き出しているのだ。
 東北南部までは梅雨明け済み。そんな訳で南に下る程、下界は良く見えるようになる。

 笹川流れが見えてくる。上空から見えると山がそのまま海へと落ち込む、そんな厳しい海岸線が見て取れる。羽越線は海岸線を忠実になぞるが、国道7号は山側の谷を迂回して進んでいる。
 飛行機は新潟平野を望みつつ、南下する。

新潟北港が見えている。ここまで、羽越線に沿って南下してきた体裁。日本海縦貫線特別急行白鳥、特別急行日本海に乗っているのと同じような眺めが、ぎゅっと凝縮して展開される。 
 飛行機が越後平野を眺めるころ、飲み物のサービスが廻ってくる。8月1日の伊丹-仙台便と同様、コップで提供されるフルサービス。

 昨夏同様にアイスコーヒーを頂ける幸せ。
 15:32、機長さんから飛行状況の案内。現在、新潟上空を飛行中。この先、松本、名古屋の上空を経て、伊丹には16:25、定刻より5分早い到着を見込んでいるとの事。伊丹は晴れ、気温は33℃だそうだ。
 飛行機はいつの間にか内陸に入っている。

 上田平だ。飛行機は信濃の国に差し掛かっている。列車で言えば急行赤倉。鉄道路線に縛られた視点からすると意外性に富んだルート。空路も縛りはあるけど、東京を挟んで飛ぶフライトは思いがけないところを飛ぶ。今度は

 諏訪湖が見えてくる。視線をずらしてゆくと

 富士山の姿も。秋田から大阪の移動で見えるものとは思っていないものが相次いで現れる。
 15:53、あと5分でベルト着用サインが点灯する旨の案内がある。

 窓外には三河湾が見えている。この先、羽田から伊丹に向かう空路に収斂してゆく。伊勢湾を渡ると16:02、ベルト着用サイン点灯。

 三重県上空に差し掛かり、雲が出てくる。少し揺れつつ高度を落とすと、うっすら地上が見えてくる。奈良盆地を越えると大阪平野

 霞の中に高層ビルが浮かんでいる。高度を下げるとさすがに大阪の街がはっきりと見えるようになる。

 宮原の車両基地が見えて最終コース。高度を下げると左手、

 滑走路が見えた後、16:19、Landing、RWy32R。減速してゆくと16:22、Spot in SP19。伊丹の気温、30℃と告げられる。
 降機。


 乗り継ぎ便、宮崎という案内がある。秋田から宮崎、どういう需要か分からない。でも秋田から滋賀もまぁ、どういう需要か分からないだろうなぁ。秋田に限らずだが、「しが」というと「ちば」と認識される事が多い。特に東日本では。
 伊丹に降り立つ。

 改修中の伊丹空港。明日全面オープンみたいで仕切りの向こうで品出しやら、最終のチェックやらが行われている。昭和の空港だった伊丹が脱皮するのだが、しばらく利用する機会がなさそうなのは残念。
 ゆっくり歩いて荷物の返却場までくると、既に秋田からの荷物がターンテーブルを廻っている。自分の荷物も見えたので慌てて受け取る。普段、伊丹空港の返却はだいぶ時間がかかるのだけど、こんなところにも乗客減少の影響が出ている。

 荷物にはメッセージ付きのタグが付いている。裏には手書きのメッセージ。