2021-02-24

 水曜日の朝。いつもの時間、目覚ましの音で気が付いた。起きだして出勤、ならいつものことだが、ここは秋田市内中心部、お堀端にあるホテルの一室。今日は休暇を取っている。
 わざわざ平日の朝に秋田市内にいるのは理由がある。この三月で営業廃止となる秋田臨海鉄道、その列車を撮りたい。輸送量が減って、昨今では月水金のみの営業運転と聞いている。よって写真を撮ろうとすると、それに合わせてくる必要がある。
 列車は午前午後、全部で3本あるから、朝いなくても何とかなり得るのだが、この緊急事態宣言で飛行機の本数も減ってしまった。朝夕の日帰りに便利なフライトは欠航となっており、よって昼の便で帰ろうとすると朝は秋田にいないと成り立たない。そんな次第。
 2021年というのは便利な世の中で、秋田臨海鉄道のホームページを見に行けば、貨物列車の時刻、掲載がある。貨物時刻表にも臨海鉄道のダイヤが出ていて、朝一番の列車が7:15に秋田港駅を出る事は承知している。それに合わせて土崎港へと赴くべく、起きた次第。
 秋田臨海鉄道、一度は撮りたいと思っていた鉄道である。
 当然、撮りたいと思ったのは秋田に居た頃、1990年代前半である。しかし、その頃にはインターネットなんて無かった。貨物時刻表にも臨海鉄道の掲載は無かった。ダイヤが分からない状態で、とても手の出る状態ではなかった。秋田港線は撮りに行った事があって、探せば当時のネガは出てくると思うが、臨海鉄道の写真は手元に無い。だから30年越しの夢、と言えなくはない。
 ホテルを5時半に出る。外は昨晩来の雪がうっすら積もっている。風は強く吹き、寒い。駅までの道、真上から足を降ろしつつも速足で向かう。秋田駅までは10分弱。

 今朝から東北新幹線が運転を再開する。秋田新幹線こまち。今朝から東京行きとして動く。徐行区間が長いそうで、所要時間はだいぶ伸びるそうだ。とは言え、明日の国公立大学二次試験を控え、東京の大学を受験しにゆく高校生には朗報だろう。
 土崎までの乗車券を買い求め、構内に進む。

 秋田駅の駅名表示。土崎の所がシールになっている。剥がすと泉外旭川がでてくるのか。
 昔話は昨日散々したけど、当時の事を言うならこの時間、夜行列車が何本かやってくる時間だった。普通列車も客車列車が何本も出てゆく時間。現代は夜行列車は消えたし、客車列車も消えた。

 701系が4両、回送で入ってくる。現代の輸送力列車、か。

 こちらは営業でやって来た2両編成。尋常でない量の雪を纏っている。運転席辺りから鉄道無線、羽越線の速度規制を告げている。


 今度は男鹿線の始発列車がやってくる。男鹿を出て来たのが5:05という列車。ローカル線としてはだいぶ早起きだが、6時の新幹線に接続を取るのだろう。
 今日は1駅、土崎まで。既に奥羽線の下り普通列車はホームに来ている。そちらに乗る。どこかの高校生が座席を少しずつ埋めてゆくと出発。まだ暗い秋田市内を走る。さすがに電車、加速鋭く早々に速度が乗った。

 列車は8分で土崎に着く。この時間に土崎で降りる人は殆どおらず、多少乗り込んでいったぐらい。寒いホームで列車を見送る。すると、あの頃がいた。

 EF81-140号機。庇も凛々しい後期型のEF81が停車している。日本海縦貫線では、長岡、富山、敦賀といったところで所属しており、寝台列車、貨物列車、普通列車。全ての先頭に立った機関車だ。140号機も特急出羽の先頭に立った姿、記憶にある。オリエント急行が秋田を通るというので見に行った時だから1988年の秋だ。
 思わず眼福に主題がぶれそうになるが、今日は秋田港に向かう。改札を出て凍てついた道を歩く。15分程、街から港に出た所で汽笛が聞こえた。生きている鉄道の息吹だ。


 秋田臨海鉄道所属、DE10-1251号機がアイドリングしている。祝日明けの平日だから、貨物が無くて運休、なんてことになったら泣ける所だったが、勝負に勝った。

 10月にも訪問した秋田港駅を眺めて先程の機関車へと戻る。間もなく機関車が移動開始。停車していたコンテナ車の

 先頭に立つ。

 改めて生きている貨物駅、生きている臨海鉄道を見て感激するのだが

 何か雪が凄い。秋田市内でこれだけ天気悪くなるのか。
 初便の出発は7:15。ちょっと歩いてどこか線路際で列車を迎える事にする。この時間、道は雪に覆われ、吹雪いて視界も悪く、通勤ラッシュの車で道は混んでいる。

 場所を選んで列車を待つ。その間にも雪が降る。降るというか風に乗って横殴りで叩きつけてくる。自分も雪まみれになる。
 さらに視界が悪くなる。これはホワイトアウトというのではないか、と思った時に汽笛が聞こえた。

 嘘でしょ。

 辛うじて雪の中から浮かび上がった秋田臨海鉄道21列車。DE10-1251号機牽引。


 雪で見えない線路の先へ、慎重に進んでゆく。
 さて。すっかり雪にやられ切った。もう1本、後に控えているのだがその前に自分の体をどうにかしたい。コンビニに駆け込み、ホットコーヒー。何とか蘇る。
 再び歩く。今度は秋田港線の線路際へ。相変わらずのホワイトアウトぶりで道も渋滞する中を何とか何とか歩く。写真を撮る場所にも困ったが、

雪が落ち着いてきた所で秋田貨物駅から列車がやって来た。

 951列車~構貨1列車。DE10-1198号機牽引。
 列車は秋田港駅、右手の旅客ホームがある方に入った様子。折角なのでそちらまで赴いてみる。



 機関車は貨物列車から離れて移動してゆく。ポイントを切り替える前に雪をしっかり除けていたのが印象的。
 この後、貨車も秋田臨海鉄道に引き渡す筈だが、朝から2時間近く。ちょっと活動限界。一旦土崎駅まで引き下がる。コートに雪が付き、頭の上にも多分雪が載っている。客観的には雪男である。
 土崎駅に戻ると8時半近かった。この駅には駅そばのスタンドが健在。自分が土崎駅を使うようになった時には既にあったから、結構、老舗の蕎麦屋、という事にはなる。

 生き返る思いで天ぷらそばを頂く。汁まで全部飲み干して熱量の全部を吸収しておく。
 少し落ち着いてこの後の事を考える。先程、ホワイトアウトする中で撮った21列車の戻りは9:45に秋田港駅に着く。それまで間があるから、少しだけ奥羽線の様子を見てゆく。駅を出て南側、今でも土崎工場といいたくなる辺りのカーブ。土崎カーブと呼ばれる所に行ってみる。
 あらっと思ったのは仰々しい柵が出来ている事。小6の時、親のカメラを借りてここで写真を撮った時は、こんな柵なんて無かった。JRになって、たまに首都圏の103系が土崎に入場しているのを見に行っていたが、その時もこんな柵は無かった。
 撮るに困って


 適当に茶を濁す。こんな調子だと昔は撮れたから、と思って赴いても、今は撮れない、撮りづらい所はいくらでもあるのだろうなぁ。
 写真の人が数人集まってくる。何かあるのなぁと思ってみていたら


 EF81-140号機が土崎工場へと続く引き込み線に入ってゆく。何か出場車両を受け取りに来たのか。集まった人たちはEF81を追いかけて行ってしまったが、自分はそろそろ秋田港に戻る。
 朝の猛吹雪は落ち着き、コートの雪も落ちたが、まだまだ寒い今朝の土崎。港の方へと2度目の訪問。

 ひょろひょろ続く線路を眺める。雪は無いが海から風は強く冷たい。港に降る雪は残らず吹き飛ばされる。
 寒さに震えて待つ事しばし、汽笛が聞こえる。今度はホワイトアウトしていない。

 秋田臨海鉄道22列車。DE10-1251号機牽引。

 列車は風に負けない汽笛を残して、秋田港駅へと最後の一走り。
 さてホテルに戻る。今いるところからだと土崎駅まで戻るよりバスを使った方が早い。

 港から旧国道まで戻ると秋田駅まで行くバス通り。市内であれば1時間に3~4本は何だかんだと走っている。待つ事5分程。 

 土崎駅発というバスが来る。昨今の流行りなのか、系統番号が付いている。これは自分の頃には無かった。新国道経由土崎線とか、そんな感じに呼んでいた。
 先客ゼロを言うバスに乗る。少々寂しいが途中でお客さんが増えて、まぁ、公共交通機関にはなった。途中の新国道、よく知ったところだが、並ぶ店々はだいぶ様相が違う。見慣れないロードサイドになっていた。
 駅前まで行かずに降りるとホテルも近い。10時過ぎにはホテルに戻って来れる。チェックアウトは11時。冷えた体を湯船につかって温めよう、と思わなくはなかったが、流石にその時間はない。
 秋田滞在は今日まで。明日は仕事だ。本当なら夕方まで滞在できれば、昼間の秋田臨海鉄道を撮ってから、なんてことも出来るのだが、伊丹空港へのフライトは午後早いうちの1本だけ。新幹線を乗り継いで帰る、という手もあり、真っ正直に検討したが、地震の影響もあり、読めなかった。素直にJALで帰ると秋田駅12:40というバスが限度となる。
 ホテルをチェックアウト。駅の方へ向かう。市場を見てから駅構内。早いけどお昼ご飯。

 駅構内のレストラン街で稲庭うどんを食べてみたが、これはダメだった。麺自体は美味しいのだが、水が切れていない。ブランドに胡坐をかいている。何とも残念が気分になった。お口直しに

 スタンディングバーで日本酒の試飲セット。2種選べて500円。これは、良いね。
 少しお土産を買うとバスの時間になる。

 小雪の舞い始めた秋田駅前にバスが来る。乗客は10名ちょっと。思ったよりも多い。市内から空港まで40分程を揺られる。定刻に空港着。

 搭乗手続き。クラスJの窓側が空いているというので変えてもらってから展望デッキに出てみる。この時間、昼間でも凍っている。辛うじて雪が除けられた所を歩いて出てみるか、寒い。到着遅れの案内があったから一度待避してから、改めて到着便を迎えた。

 やって来たのはJA242J。揺れながらアプローチしてきて

Landing。これで帰る算段、立ったようだ。
 ターミナルに戻り、多少お土産を買い足す。保安検査を受けて搭乗口へ。


 出発は10分遅れるそうだ。待合室で出発を待っているのは30人ぐらいだろうか。1日3便だったものが1便に減らされているのだが、それでも乗客は少ない。その中には受験生らしい人とその親、なんて組み合わせもちらほら。明日は国公立大学の2次試験。秋田からはるばる京阪神の大学を受けに行くのか。大変だ。

JL2174 JA242J ERJ-190 AXT→ITM

 2月中の秋田発着便。羽田は4便すべて運休、新千歳もすべて運休で飛んでいるのは、今、目の前にいる伊丹ゆきの1便のみという極めて寂しい状況。その貴重な1便。伊丹からのフライトが10分遅れた影響で折り返し便も10分延で準備が進んでいる。
 14時ちょっと前に搭乗開始となる。さっさと乗ってしまう。窓側として指定して出てきたのは2A。ずいぶんといい席が残っていた。30人ぐらいの落ち着けばおしまいであり、14:06、搭乗完了しました、と前で声がする。14:07、Doorclose。操縦席に対して、29の0ですと伝えられるのが聞こえた。乗客29人。無償の2歳以下のお子様はゼロ、という事。搭乗率は3割ちょっととなる。
 前便遅れによる出発遅れのお詫びがある。伊丹までの飛行時間、1時間20分との事。上昇中、降下中、揺れが予想されるそうだ。 

 14:12、Pushbuck。14:17、Taixing。鉛色の空の下、誘導路を進んでゆく。

 滑走路に入ると一旦停止。ブレーキを掛けたままエンジンをフルスロットル。そして解放すると一気に加速する。14:22、Take off RWy28。

 小高い丘の上から空へと上がると雪に閉ざされる大地が広がる。それも一瞬、

 鉛色の雲の中へ。視界が無くなり、機体は大きく揺れる。ちょっとの間、揺れたのち、機内が明るくなる。

 青空が現れる。真下には日本海の水蒸気をたっぷり含んだ真綿の雲。この5分の変化は残酷だ。
 14:36、ベルト着用サイン消灯。飛行機は日本海岸を南下している。時折、雲の切れ間が見えて、笹川流れの海岸線が見えるようになる。日本海には白波が立っていて、相変わらず強風が吹きつけているのだろうなぁと思う。

 パソコンを取り出し京王線恥辱を進めつつ、コーヒーを貰う。これだけだと仕事をしている風だが、外の景色は気になるし、何かあればカメラを向ける人が仕事の訳がない。

 新潟県の上空に差し掛かっている。雲が取れて地上の様子がわかる。新潟市内は雪が無い一方で、ちょっと北にずれると大地が白くなっているのが分かる。昨日の秋田市内も同じくだった。
 14:46、機長さんから飛行状況の案内が入る。現在、新潟県上空、飛行高度7,500mとのこと。30分後には降下を開始し、伊丹には15:45の着陸を見込んでいるそうだ。10分遅れる旨のお詫びがある。伊丹の天候、晴れで気温は11℃、との事。
 新潟からは針路を内陸に向ける。大地は再び雲が覆いつくす。眼下には新潟県、十日市から松代、頚城あたりの豪雪地帯が隠れている筈。再び雲が切れると長野県、善光寺平になる。雪はすっかり消えていて、そこか春めいている。

 雪山が陽光を浴びていて、北国の春、という風情。さすがにちょっと早いか。

 上田平の向こうには富士山も顔を覗かす。

 諏訪平にも雪は無い。

 諏訪湖から南へ流れ出る天竜川の流れが伊那谷を刻んでゆく。もう太平洋側だ。吹雪焚き付ける日本海岸に比べると、信濃の国のなんと恵まれた事、と羨む。

 中央アルプスはさすがに雪山。陽光浴びる雪山も太平洋側の特権だ。そうで無ければ、それは春山と呼ぶ。飛行機は伊那谷に沿って南下する。15:10、15分後にベルト着用サインが点灯する旨の案内。そろそろ秋田からの空の旅も終わりが近づく。

 絵葉書が配られる。15年ぐらい前だと、特にリジョーナル機では相当な確率で配られたと思う。最近は幹線にしか乗っていないせいか、こんなサービスを受ける事も珍しくなった。
 飛行機は三河湾に出て知多半島を横切る。

 伊勢湾を横切った後の15:25、ベルト着用サインが点灯する。15分で着陸するとの事。伊賀の上空、高度を下げてゆく。山間から盆地に出た奈良上空で強めの揺れ。それが落ち着くと生駒を越えて伊丹への最終コースとなる。
 大阪市街、西日の中に見えてくる。

 逆光の中、大阪城が見えてさらに高度を下げる。普段より少し高いなぁと思っていたら

 左手に滑走路が見えてRWy32Rと知る。15:37、Landing。速度を落として誘導路へ。15:40、Spot in SP19。
 晴れで気温は11℃という伊丹空港に降り立つ。先程と10℃以上の気温差。

 夕方の陽を浴びるJA246Jもほっと一息だろうか。
 預けた荷物は無いので、そのまま制限エリアの外に出る。

 昼間のこの時間、意外と欠航便が少ない。1日1往復だけの就航も多く、どちらか一方に負担がいかないように、昼間の無難な時間に設定されているのかも知れない。2往復あるなら朝晩いけるけど。
 少々待ち時間があって、

 京都行きのリムジンバスに乗る。たまたま到着便が重なったようで、発車直前に客を集めてバスは出発。平日なので下道は混んでいる。高速道路に乗ってしまえば流れていて、まぁ何とか50分弱で京都駅八条口まで運ばれる。もう17時なっている。飛行機は速いが、前後の時間を含めるとさすがに移動時間が長い。
 八条口から改札に入る。ちらっと見えて奈良線ホーム。

 たまたま国鉄103系がいた。遠くで国鉄時代を懐かしんできたのだが、地元に近い京都駅にも国鉄の残り香。

【サイトアップ アクセスカウンタ】

 サイトアップはお休み
 アクセスカウンタは機能せず
 万歩計は25,470