実は夏休み

 どこかの駅に停まっている。寝惚けた頭で静岡と思う。隣は空いたまま。初めて仕切りの肘掛けを自分のものにする。動き出した気がした。また眠る。
 もう一度目覚めると夜明けの気配。どこだろで意識が途切れる。
 
 もう一度起きたらどこかの駅だった。車内が少しずつ目覚めて行く。ずっと動かない列車。長いこと停まるその駅が熱田である事にようやく気が付く。時間調整かなあ。ずいぶんと停まって、名鉄電車が走って行くのを合図に動き出して名古屋。5:22の定刻。まだ朝が早いけど、まとまった下車がある。
 廻らない頭で流れて行く景色を眺めていると日が差してくる。すっかり明るくなって寝惚けた車内に朝の訪れを告げて廻った。
 
 大垣到着5:55。5分乗り継ぎで姫路行きに乗換え。一斉にみんな走り出す大垣レースはイマイチ迫力に欠けていた。こんなものだっけ?と思っていたら何故か接続列車で座れた。しかも写真も撮れた。間もなく出発。10両編成を受けた4両はさすがに混んでいる。
 
 朝の眩しい光を重たい瞼で眺める30数分。米原で新快速に乗換え。4両が12両になるから席は余裕だけど、間近な所にみんな乗るから激しく偏る。後ろに歩いて行ったら余裕で座れた。この先の駅で乗って来る通勤客には申し訳ないけど。
 
 能登川で全ての席が埋まり立ち客が増えて行く。この辺りからまずは天気が曖昧になり次に記憶が曖昧になる。山科が辛うじて残る次が大勢降りて行く京都。次の瞬間が高槻だった。
 大阪で下車。朝の8時過ぎ、ラッシュの真っ只中。環状線で押し合いへし合い京橋まで。
 
 こちらも通勤客で賑わううどん屋で朝食を済ませると京阪の駅に向かう。昨年開通した中之島線の乗車が最初の目的。幸先良く。中之島ゆき快速急行が来た。しかもご自慢の新車3000系で。混雑した列車に乗る。朝のラッシュだから当たり前だと思ったら天満橋で大量下車。がら空きになった。椅子の座り心地まで試す事が出来るのは嬉しいけど、大丈夫?中之島線。シックな暗い照明の地下駅が続いて終点中之島
 
 
 環状線の福島辺りに歩けるような所らしい。こちらは地下鉄の肥後橋を目指して徒歩連絡。
 
 川沿いに歩けば良いだけの分かりやすい道を歩き、地下鉄でなんばに。今度乗るのは今年の春に開通した阪神なんば線
 
 
 近鉄阪神が仲良く並ぶ様子が新鮮。
 先発は普通列車の尼崎行き。後発が快速急行の三宮ゆき。どうしようかと思ったけど折角なので直通に乗ってみようかと思う。1本見送り、出入りする近鉄電車を眺めた後で直通の快速急行に。
 
 近鉄車が10連で来て尼崎で4両切り離しとの事。前の方に乗る。意外と空いているけど午前中の郊外行きだから、そんなものか。
 新線区間は各駅停車。今度は底抜けに明るい地下駅が続く。3.8kmという距離の割にはちょっと時間がかかって地上の西九条到着。ここから先は既存区間。暑苦しそうな街並みをノンストップで駆け抜けると本線に合流。尼崎。
 後ろ4両を切り離しの間に本線の直通特急が来る。三宮へは直通特急が先着だそうだ。電車が来た。山陽車。どうしようかと思ったけど空いていたので乗り換えてしまう。大近鉄を差し置いて後から来た山陽が先に行く。痛快ではあるけれど、新鮮ではない。
 
 三宮までは40分で到着。
 ひとまず大阪の新線2路線が片付いたので西へと向かう。何かついこないだ来たばかり、という気がする三ノ宮からJR、新快速は播州赤穂行き。上り電車は若干乱れているようだけどこちらは定刻に。
 
 見た目混雑していたけど座れる。
 
 先日眺めたような景色は瞬く間に過ぎて行き、海岸へと出る。明石海峡大橋が流れてゆく。新快速での西へ旅、今は心地よい。
 西明石で足が止まる。上り列車遅延による信号待ちという。不思議なことと思ったけど西明石複々線の果て。緩行線に入る快速列車が遅れていてこの部分は天下の山陽本線といえども平面交差でこなしているのだった。そしてここから新快速にもけちが付いてゆく。加古川の手前で徐行。姫路の手前でも徐行。先行列車が遅れているとのことで姫路には9分遅延。繰り返しお詫びが流される。相生での山陽本線岡山方面の接続は取るそうだ。
 姫路を過ぎると快調に飛ばしはじめ、とは言え姫路からは各駅停車。さほど遅延を戻せずに相生に到着する。ここからは1時間に1本の過疎区間。その貴重な列車は出発時刻を過ぎて、遅れた新快速を待っている。
 
 
 既に席は埋まっており車内はめい一杯に埋まる。当然立ったまま船坂峠を越えることになる。外も良く見えないし正直楽ではない。楽ではないが時節柄仕方が無いなぁとも思う。午後の船坂越えならもう少し楽だったかなぁ。
 乗り継いだ列車も遅れており、各駅でお詫びが流れる。上郡は智頭急行連絡。岡山発上郡経由鳥取行きの特急を待たせているとか、で「お乗り継ぎのお客様はお急ぎ下さい」と。でもそれを潮に遅延のお詫びが無くなった。なんで?って思ったら定時に戻っていた。不思議だ。上郡辺りで戻したのか。
 峠を下ると岡山だからお客さんは増えてくる。めい一杯だった車内がさらに混雑して岡山には定時到着。列車は三原行きだけど今日はここで下車。
 出てくる前は岡山で久しぶりにドミグラスカツ丼を、なんて思わないわけでもなかったけど、いざ岡山に着いてみると接続列車は4分後。ホームに走ると
 
 快速マリンライナー、高松行きに。今度は座れる程度の混雑で一安心。いや、先ほどの列車が異常だったのか。
 
 本線筋を逸れて梅雨明け、夏本番としか思えない夏空の下、心地よく飛ばしてゆく。そしてこの列車のクライマックス、
 
 海へと躍り出た。瀬戸大橋開通から20年経っているから海の上を走る鉄道、なんて珍しくないのだろうがさすがに夏休みシーズン。何人か写真を撮っている。
 
 四国側へと渡りきるとまもなく坂出。10分乗換え。ホームにあった筈のうどん屋さんはいつの間にか閉店している。いい加減腹が減った。仕方なく改札を出て、ぱっと見コンビニは無いからキヨスクでサンドイッチを。
 
 ホームの待合室で。妙に侘しい事になった。
 
 慌ただしい10分を終えて列車がやって来た。121系の2両何て姿に脇道に逸れた事を実感する。先程渡って来た橋を右手に眺めて走るは四国の大通り、予讃線。早速多度津で待ち合わせを喰らう。貴重はトイレタイムにはなる。この電車、近郊型みたいな雰囲気なのに洗面所が付いていない。
 土讃線に向かう特急を見送り、直後に同じホームに土讃線の鈍行を入れ込む何て器用な様子を眺めてからこちらも動き出す。
 午後の中途半端な時間帯。電車は空いている。部活帰りの高校生だろうか、一駅毎にパラパラと散り、車内は益々寂しくなってこの電車の終点、観音寺。
 
 
 今度は伊予西条ゆきに乗換えと言う。接続は良い。電車は1両になる。とうとう1両になってしまった。長い編成の特急をやり過ごしてこちらも動く。空いた車内、西に向かうに連れて天気も淀む。
 
 山は雲にかき消されて明日からの不安を煽りたてる。製紙工場が見えて愛媛県に入ると乗客が多少は増えて来る。雨の伊予西条には15時半過ぎの到着。
 
 次の電車は松山ゆき。ここまで来れば1本落としてもさほど問題は無いとは思う。西条には四国鉄道記念館があり車窓からもチラッと見えてた。気にはなるけど何故か動く気になれない。目の前で待つ松山行きに吸い込まれる。今度は2両。定刻に動き出す。松山までは2時間掛かる。走れば早いのだが、上り特急待ち合わせで3分停車。
 上り普通列車待ち合わせで4分停車何てのが続くから走れない。次は今治。下り特急待ち合わせで10分停車と案内された。3駅連続だ。