JN3761 JA8771 KOJ→TNE

 YS-11が5機見える。徳島駐機の1機以外はみな鹿児島に居るのだけど、7月ダイヤでは朝の8〜9時台に飛び立つのは種子島への1便のみ。残りはお昼前になってようやく動き出すという状態。3月に訪れた時はまだ、屋久島、種子島沖永良部島奄美大島と4機が次々飛立って行ったと思うのだけど、ずいぶんと没落してしまった。
 出発準備が進んでいるのはどうやらJA8771のようだ。昨年9月、種子島を訪れた際に搭乗した機材。
 http://d.hatena.ne.jp/podaka/20040903
 今回もお世話になります。8:40近くになって搭乗が始まる。ちょっと離れたスポットまでバス連絡。子供の姿が目立つ。やっぱり夏休みだ。
 座席に落ち着く。今日は座ったことの無い席をという事で、7Dを所望した。ターボプロップが目の前で存在感を誇る。まだ翼には掛からない。満席との事だったけど幾らか空席が見える。自分の隣も空席。ありがたくバックは隣席に置かせてもらう。
 8:46 Doorclose。すぐにプロペラが廻りだす。種子島までの所要時間は35分と言う旨、案内が入った。8:50、Taixing。ゴトゴトゴトと滑走路端を目指す。8:53 Takeoff RWy32。 上昇しながら右旋回をしてゆき、3分後に先ほどの空港が見えてくる。さらに向きを変える。空港周辺を3/4周して西へと向かう。大隈半島を避けるようだ。雨雲があるのかもしれない。
 雲に突入する。少し揺れる。軽い揺れが続く。雲が切れると海が見えた。時刻は9:10。まだ鹿児島湾のどこかだろうなぁ。ベルト着用サインは消えない。9:12、どこかの海岸線が見える。どこだろう。大隈半島薩摩半島か。順路だったら大隈半島なのだけど、今日は迂回している気配があるからなぁ。すぐに雲が出て来る。再び雲海の上へ。ベルト着用サインは消えない。
 9:20ごろ、アテンダントさんから案内が入る。種子島空港の天候が着陸要件を満たしていないため、暫く旋回するそうだ。着陸予定は9:40〜45分ごろになる見込みだとか。5分ほど経っただろうか。雲の中に突っ込んだとたん、「ガクン」と下へ持ってかれた。落下感。長い。止まった。次に上へと持ち上げられるような感触。窓の外を白光が走る。雷雲だ。雨粒が激しく窓をたたく。右に持ってかれるような感触。もう一度落下。後方に乗っている子供の悲鳴が聞こえる。
 雷雲を抜けるまではほんの2〜3分だと思う。さすがにほっと一息と言った感じ。窓の外は海だ。間もなく着陸の案内が入った。種子島の天候はくもりで気温26℃。右前方に島影が見えた。種子島だ。Geardownすると少し揺れる。さっきの揺れに比べたらかわいいもの。島が迫ってきて9:38、Touchdown、RWy13。9:39、Spotin SP2。
 降機の時にアテンダントさんにお願いして写真を撮らせてもらった。JACの制服、明日から切替なのある。どういう制服になるのか聞いてみると「JALさんと殆ど同じです、スカーフが違うだけで」との事。「JALさん」って言い方がちょっとだけ引っかかる。
  
 レンタカーを借りて取り敢えず空港の反対側、撮影スポットへ向かう。ヘリコプターが1機来て燃料補給をしている。YS-11も燃料補給中。荷物の積み下ろしも忙しそうだ。撮影場所はゴミ捨て場に通じる道。今日も軽トラックが行き交う。そのうちの一台が停まって声を掛けられた。「何のヘリコプターですか?」と。それをきっかけに少し話をする。
 伊丹からのSaab340がやって来た。それと入れ替えにヘリコプターが飛んでゆく。NHK沖縄の文字がある。取材で来ているとは思えないから整備のための移動中かな。YS-11は動く気配が無い。Saabも同様。地元の人の見立てによると鹿児島が悪天候になっているのではないか?との事。気長に待つより他、ない。種子島も先ほど降りてきた時に体験したけど、遠くで雷鳴が聞こえるぐらいだから、天候は悪い。
 11時前になってようやく人が動き出した。荷物の積み込みが再開される。Saabへの燃料補給もスタート。どうやら飛行OKとなった様子。搭乗客が飛行機へと歩いて行く。まずはYS-11のプロペラが廻りだす。ターボプロップサウンドが響き渡り、RWy29、海へと向かい飛び立っていった。Saab340はそれより遅れて11時半近く、プロペラが廻りだす。こちらもRWy29。どちらの便も満席の筈だ。
 さて、11時45分には第二便がやって来る予定なのだけど、これは欠航になってしまった。次の便は14時過ぎだ。時間があるので西之表にでも行ってみようかと思う。地元の人は新空港でも見てきたらと勧めてくれる。西之表に行く途中だそうな。最後に「もし、飛行機が欠航になったら連絡しなさい。島の焼酎飲ませてやるから」と電話番号を教えてくれる。まさか欠航にはならないだろうけどねぇ。
 クルマを西之表へと走らせる。本当なら国道を走るのだけど、新空港は山の中、別の道を行く。極め付けに空いていて、快適なドライブ。途中、空港の完成予想図が出ていたけど、描かれているのはMD-87。ジェット機が来ることを期待してたんでしょうけど、MD-87とはずいぶんと慎ましい姿勢で……。それすら叶わなかった訳ですが。
 西之表に行く途中、雨になる。今日の天気は本当に気まぐれ。「午後は良くなる」と言う予報を信じたいけど、どうなんだろうなぁ。大した雨ではなく、西之表につく頃には雨は上がる。
 西之表では鉄砲館と言うところに行く。言うまでもなく種子島は鉄砲伝来の地。日本で最初に鉄砲を生産した地でもある。それを記念して国産、舶来の古式銃を展示した博物館とのことだけど、行って見ると古代から一通り種子島の歴史に触れた中で鉄砲に一番力を入れている、と言う様子。ただ、元々種子島は刀の製作が盛んなところで、製鉄技術が発達していたそうな。今でも鋏鍛冶がいるそうだけど。製鉄技術と言うバックホーンがあって初めて舶来品である鉄砲の国産化を成し遂げた訳で、ポルトガル船が種子島でなくほかの島に漂着していたら、どうなっていたのでしょうねぇ。
 空港へ戻る。その前に昼飯。空港で貰った観光マップに「漁協直営の食堂」なんてのが出ていたから志したら、日曜定休だった。残念!だけど観光客相手にするのに日曜定休ってするか?本来は漁業関係者を相手にしている店なんだろうなぁ。
 朝の場所に戻る。雨にはならないけど晴れるわけでもない、微妙な天候が続く。飛行機は遅れてやって来る。今度はJA8788だ。駐機中に空港ターミナル側に行ってこちらで写真を撮ってみる。操縦士が出てきて機体の点検を始めた。今度の便は支障なく戻れるようだ。撮影場所に戻る。今日2回目のターボプロップサウンドを響かせてJA8788は鹿児島へと帰ってゆく。
 さて後は最終便で帰るだけ。レンタカーの返却時間までは余裕があるから少しドライブしてこよう。その前に空港に寄ってチェックインだけ済ませておく。「天候調査が入っておりますので、何かありましたらご案内いたします」天候調査ねぇ、ふ〜ん。
 手持ちの時間は一時間。往復できそうな場所は限られているけど、10キロほど離れた犬城海岸と言うところを選択。先ほど新空港へ行くのに走った道を途中でそれる。木立の中に伸びてゆく道。バス停がぽつんと佇む。トトロの世界、だねぇ。途中右手、畑の中にレンガ造りの煙突が1本。何だろうと思った瞬間には通り過ぎてる。クルマは便利なんだけど、こう言う時は自分の脚で歩いている方が強いよなぁ、帰りに寄ってみよう。
 犬城海岸は道路をそれてガタガタ道をひたすら下ったその先にある。道の様子から見て誰も訪れる者の居ない、隠れ処のような場所を想像していたけど、着いてみるとダイバーが一組、家族連れが二組。本当に誰も居ない隠れ処のような名所、なんてそうそう無いよね。
 戻るときに先ほどのレンガの煙突を見てみた。旧海軍の飛行場があったところでその時に遺跡なのだとか。辺りは農家が数件。サトウキビ畑の向こうに瓦の屋根が見える。トトロの世界だ、本当に。
 空港に戻ってレンタカーを返却する。何時の間にか空が暗くなっている。待合室は混雑している。雨が降り出す。結構な雨だ。気になって運航状況をチェックしてみた。17:00なのだけど16:45出発予定となっている。まだ出発していないらしい。長期戦になりそうだなぁと喫茶店に移った。座れない待合室ではちょっと辛い。
 コーヒーが運ばれてくるときに案内が入る。「鹿児島行きは天候不良のため、この放送を持ちまして欠航させて頂くことになりました……」まさかと思ったけど本当に欠航になるとは……。船は?と思ったけど高速船の最終便は西之表17:35。今からでは間に合わない。どうやら種子島1泊決定の様子。
 まずは翌朝の第一便を抑えておく。予約さえ入れておけばどうにかなるだろう。幸い予約は取れる。次に無意味になってしまったサンドイッチを食べる。コーヒーも飲む。無駄金だなぁと思いつつも会計を済ます。そしてカウンタへ行く。無手数料払い戻しか翌朝振替だそうな。翌朝振替を選択し、予約はとった旨伝えると手続きをしてくれる。手馴れたものだ。ホテルのリストは無いか?と聞いたらパンフレットをくれた。
 連絡しなくてはならないところは幾つもある。鹿児島の宿に帰れなくなった旨、連絡。鹿児島のレンタカー屋にも飛行機が欠航となったので貸し出し時間を変更して欲しい旨、伝える。そして今日の宿探し、だけど、パンフレット掲載の宿を一軒一軒あたるのも大変だ。午前中の地元の人、飛行機が欠航したしないは分かるみたいだし、電話しないと悪い気がする。ここは甘えてみようと思う。電話を掛ける。宿を押さえてくれる上に迎えに来てくれるという。雨はいよいよ激しくなっているしお言葉に甘える。
 空港の前は大混雑。欠航になって迎えに来たクルマ、クルマ、クルマ。みんな屋根のあるところに横付けにして、その度に人を探したり荷物を積んだりなので時間が掛かる。そのうちバスが入ってきて立ち往生したりして混乱の極み。朝の人、滑走路横で合った時は軽トラックだったけど、迎えに来てくれたときはVWだった。最初分からないし。
 名刺を頂く。どこかのシャチョウで中種子の商工会で副会長をしている人だそうな。ずいぶんと偉い人に拾われてしまった。野間の街に入り、役場の近く、1Fがレストランで上が小ぢんまりとしたホテル。後払いって事はそれなりの格式を持ったところなんだろうなぁ。
 昼間言われた「焼酎飲ませてやるから」が現実になってしまった。連れられて寿司屋に行く。シャチョウ、私にはビールをと頼み自分は最初から焼酎の水割り。ビールは腹にたまって好かんとの事。でも余所者にはビール。醤油もキッコーマンは有るかと言って勧めてくれるけど、ココは郷に入らば郷に従えで九州独特の甘みを帯びた醤油で寿司を頂く。
 焼酎は地元中種子の酒造所で作ったもの。「島之泉」と言う。二杯目からは折角なので焼酎を頂く。大ぶりの薩摩切子のグラスになみなみと注がれる。これが薩摩スタイルなのかな。口をつける。爽やかな芋焼酎だ。素直に美味しい。
 寿司屋の次は居酒屋。こちらでも島之泉の水割り。疑問をぶつけてみた、何で見知らぬ人にここまで世話を焼くのかと?こちらからすれば疑問なんだけど。「横浜からYSなんぞを撮りにわざわざ種子島まで来る人が居るというのが驚きだし、嬉しい。そんな人が困っていたら助けるのが当たり前」だと。う〜ん、逆の立場でそこまで出来るかな>自分。YS-11は少なくとも鹿児島なり、四国なりまで行かないと撮れないわけだし。その辺がギャップと言えばギャップなんだけど4月の沖永良部と言い、観光客慣れしていない島の人たちは本当に親切で、心に染みます。
 6時ぐらいから飲み始めて多分9時過ぎにお開き。雨はやんでいる。種子島に泊まってけ、と神様が悪戯をしたのかもしれない。神なんてものは信じてないけど今回は素直にそう思う。
 そうそう、ご馳走様でした。改めて御礼申し上げます。種子島の宣伝、しておきました(笑)