2023-06-17

 夜中、離陸機のエンジン音で目が覚める。香港国際空港近くのホテル。滑走路まではだいぶ距離があるのだがそこそこ音がするものだ。二度三度目覚めたが、朝がやって来る。週末の朝だ。
 カーテンを開ける。すぐ真ん前が香港国際空港

 目の前が駐車場。右手に目をやると辛うじて駐機場に停まる飛行機が見えている。部屋を選べばもう少し良く見える所もあるだろうけど。

 左手はタクシーのたまり場だった。赤い車両が大半だが、少しだけ緑色、新界本拠の車両も見える。
 テレビをつける。香港早晨のオープニングを見ないと香港に来た感じがしない。30分毎に同じ内容を繰り返すが、原発処理水の海洋放出を取り上げていると思しきニュースもある。日本国内よりもよほど感心が高いのか、興味本位で取り上げているのか、言葉が分からないからニュアンスは良く分からない。そして、30分毎に香港の天気を告げられる。予報は一日雨なのだが、ビクトリア湾に浮かぶラバーダックは今の所、濡れていない。
 出発目標7時だったが少々遅れた。7時半前になってホテルを出る。今日は一日香港滞在だが空港近くのホテル周辺にいても仕方ないので、大きく動く。
 昨晩混乱していたロビーは今日は落ち着いている。ここから空港に戻ると、

 機場快線の乗り場へ。改めて市内へ向かう。香港のICカード、オクトパスを使うのだが、2019年以来、4年近く使っていない。失効していたのだが、妻が調べてくれて、オクトパスの公式アプリでリアクティベートしてくれたので何の問題も無く使えるようになっている。
 香港ゆきの電車がやって来て乗車する。車内は空いている。さすがにこの時間に香港空港に着いて市内に出る人は少ない。

 香港駅まで24分。高速度で走る列車に身を委ねる。天気は良くなく曇り空が広がっているが、今のところは雨は降り出してはいない。
 MTR東涌線乗り換えの青衣で少ないお客さんが大多数降車。九龍でも降りたのでほぼ無人になった電車。自分たちは香港島側に設けられた香港駅まで足を伸ばす。
 香港で唯一、香港を名乗る駅を降りて中環の方へと歩く。ビルの中を歩く分には何もなかったけど 

 トラムが行く通りまで出ると、おっと思う。香港にやって来た実感が突然に溢れる。そして

 広東語の小心地滑の看板。昨日来の雨で路面は濡れている。こちらもより香港感を高めてくれる。
 朝食を頂く店に向かうべく、トラムの通りを歩く。するとやって来たのは

 香港トラムの中でも1両だけ旧式で残されている120号車。

 その後からやって来た94号車と比べるとそのレトロぶりが良く分かる。
 朝食。粥にしようか飲茶にしようか、今朝のギリギリまで悩んでいたけど、結局、粥の店にする。入店。

 こちらは粥の店と思って入っているけど、昼間はワンタンがメインになるらしく海老ワンタンの仕込みが行われている。その手際の良さに感心しつつ、注文。

 注文。粥は1杯39HKD。それに油條が13HKD。日本円に換算するのはやめておいた方が良さそうだ。多分悲しくなる。その悲しさの縁から生還出来たのは

 出て来た中華粥が想像通りに旨かったから。暑い国で熱いものを食べるのは難だが、旨いものは旨い。
 さて、今日の優先事項を一つ片づけたい。可及的速やかに両替して、香港ドルを補充したい。ここまでは以前両替した香港ドルと既にチャージ済みのオクトパスで乗り切っているが、最小限度は両替をしたい。
 そんな訳で中環にいるのだが尖沙咀にゆく。中環のスターフェリー乗り場へ向かう。すると海の上には黄色い何か。

 割とあちこちで見聞きするラバーダック。前は台湾の基隆とか、大阪にも来ていたらしいのだけど、香港は2013年以来の10年ぶりだそうだ。

 予備知識が無かったから2羽いるとは思わなかった。
 ちょっと寄り道したが目的地は対岸の尖沙咀。スターフェリーで対岸に渡る。

 ちょうと対岸からフェリーが到着する。尖沙咀からやって来た人と入れ違いに乗り込む。

 今回は意識して下層にしてみる。トラムもバスは1階、2階とも同じ運賃、モノクラスだが、スターフェリーは上層、下層で運賃が異なる2クラス制である。最も、中環からの歩道橋を歩いてスターフェリー乗り場に直進すると上層にゆくようになっているので、2クラス制と気付かない人も多いかも知れない。特に観光客。
 その下層階。

 座席は上層、下層ともに一緒だと思う。上層と違うのは、冷房が無いのと

 機関室が近い事。

 真夏の暑い盛りだときついだろうが、今日はそこまで暑くなく、居心地も悪くない。
 船は中環を離れ、ビクトリアハーバーを渡る。

 灰色の空と灰色のビル群。海も今日は灰色だ。その中で黄色いラバーダックだけが桁違いに明るく映えている中、海を渡る。琵琶湖よりも狭そうな海だが、一人前に海。少し揺れつつ対岸の尖沙咀にある埠頭まで。
 尖沙咀で向かったのはこちら。

 何度かお世話になっている重慶大廈に赴く。時刻は10時前。まだ営業開始前の両替店もあるのだが、見た所、1階の奥の方でも1万円=552HKDぐらいがレートの様子。
 両替を終えると地下鉄で中環に戻る。往復の運賃を考えると多分、割に合わない。でもビクトリア湾を渡る時間は香港らしくて、良い時間だ。
 地下鉄の尖沙咀駅へ。改札の手前、おにぎりの専門店があったり、シャトレーゼが出店していたり、コロナ前から顕著だった好き好きニッポンが輪を掛けて患っている感じが満ちている。おにぎりの専門店ではまじまじとラインナップをみ
 地下鉄荃灣線の駅は同じ場所でも中環を名乗る。そちらに戻ると香港島の山側へ。

 世界最長エスカレータという動く通路で山腹へ。エスカレータの両側は当然のことながらぎっしりとした街並み。時々、浜大津辺りから見る景色が香港に被る事が有るけど、大津の場合、音羽山まで行っちゃうと単に山。香港との類似点は土地の狭さ。違いは街の厚さ。
 目的地の近くに着いたのでエスカレータを降りる。

 この辺りも高層建築の立ち並ぶ人口密集地帯。そんな中を少々歩いた先、

 店頭にこんなグッズが並ぶのは香港で何度か訪れた事のある住好啲へ。

 調べてみると2018年4月に訪れて以来だったから5年ぶりであった。

 その間、香港も当然の事ながらコロナ禍に巻き込まれていて、日本と違って公からの経済的支援なんて期待できないだろうし(と思って調べてみたら飲食店への支援はあったようだけど)、この15年、香港で世話になった店があちこち無くなっている。

https://hongkong.keizai.biz/headline/1870/

 許留山だの優の良品だの、香港の街角でどこででも見るチェーン店が全店閉店と聞いた時には本当に驚いた。
 そんな荒波を乗り越えたGood of Desire、住好啲には相変わらずくすっと笑いたくなる品物で満ち満ちている。笑いだけで買ってしまうには、いささかお高いのだが、こちらは5年分のブランクがあるせいか、少々お財布が緩くなるようだ。的士、広東語でTaxiの事だ。音をそのまま宛てたであろう、その行灯そのままのLEDライトなる、およそ実用にならないものをついつい買い求める。
 買い物をする間に雨が降り出した。幸いすぐにやむ。香港の雨は降る時は降るけど長々降る印象がない。今回も何とかなるだろうか。
 さて次へ。何だけど途中、妻が吸い寄せされるように寄り道。

 エッグタルトを頂く。たまに日本でも食べる機会があるけど、本場のものの方が数倍美味しい。
 歩きまわるためのエネルギーをチャージした後は山腹から坂を下って中環へ。向かったのはこちらのスポット。

 ここのマーケット。昔からあったというので、目にしている筈だけど、記憶に残っていない。もちろん、2021年にリニューアルしたスポットなので初見スポットとなる。
 昔は食品市場だったのだろう。そういえば北角で食品市場を見た事があった。

 夕食を食べて翌日、腹を壊した。いや、北角の夕食のせいとは限らないけど。これが2009年。14年前の事。
 北角の市場はそのままかも知れないけど、中環の市場は、気の利いた小物、おしゃれ雑貨、高級食材、屋台風ではない食事処。そんな小洒落たスポットになっている。
 鉄道やバス雑貨を扱う、西環のM80みたいな店もあって

 ディッカーの主幹制御器が鎮座していた。売り物じゃないけど。THE ENGLISH ELECTRIC Co LTD LONDONの文字がかつての宗主国との関係を物語る。今の宗主国からすると国恥の一種かも知れんけど。ディッカーが飾れなくなるような香港になったら、本当に近寄れなくなるかも知れない。
 時刻が12時になっている。そろそろお昼ご飯。今回は滞在が短いので食べたいものの中から厳選して対応せざるを得ない。昼は朝の選に漏れた飲茶に行く。場所は西環。ちょっと歩く。幸いこの時間、雨は降り出していない。トラム沿いに沿って西へ。 



 数分歩く間にトラムが何台も来る。朝も見かけた120号車もやって来た。西環-跑馬地の運用に就いているようで、比較的頻度高く中環エリアにも顔を出す様子。
 この辺りにも両替屋がある。よくよく見るとレートは案外と良い。重慶大廈で1万円552HKDだったが、959HKDぐらいのところまではあったと思う。いままで重慶大廈に行くか、銅鑼湾に行くか、その辺がレートの良い両替商があるところ、と理解していたが、その固定観念は外した方が良いらしい。
 西環の飲茶屋というかレストランに赴く。結構な大箱で2階に通されたが上のフロアもあるみたい。この大箱が満席になっているのだから人気店なのだろう。そう思うと共に、コロナ禍を乗り越えるのは大変だっただろうと容易に想像される。
 お茶を出して貰い、まずは器を洗う儀式。そして注文。飲茶のつもりで来ているので点心をいくつか頼んだが、隣のテーブルには大皿のビーフンやら鴨肉やら炒飯が来ていたから、点心専門店ではなく点心も出す広東料理店、と言う事らしい。
 さて、頼んだ点心がぱらぱらとやって来る。撮っていたら次が届きと言う調子で、

 結局全部届く。焼売、蒸餃子、大根餅、叉焼包、叉焼腸粉、菜心と言うラインナップ。観光客丸出しかも知れない。
 隣の家族連れが大量に残したまま皿を下げて貰い、次の皿を出して貰うという典型的華僑的食べ方をしているのに対して、こちらの日本人夫妻はしっかり全て頂く典型的日本人的勿体ない精神を発揮して全部頂く。郷に入っても郷に従わない感じで美味しく頂く。
 食事を終えて午後の行程に、と言いたいところだが。この時間、ちょっと可愛くない雨が降っている。折り畳み傘を広げて近くにある西港城に飛び込む。80Mやら何やらで時間を潰したが今度の雨はなかなかしつこい。強く降るまま。いい加減、時間にも限りもあり、移動する。MRTの上環まで歩ければいいのだろうけど、圧倒的に近いのはトラムの乗り場。幸い屋根のある乗り場なのでそちらに飛び込む。

 この時間、強い雨が続き、トラムの線路も冠水する勢い。こんな中でも電車は走っている。待つ事しばし、

 西港城折り返しの電車がやって来る。行先表示が筲箕湾に代わる事を見極めて乗車する。

 2階席に座る。少し開いた窓から雨が時折吹き込むが、ずぶ濡れになる訳ではないから我慢して東に。雨は止むことなく降り続ける。渋滞がひどくなりそうな天気だが、香港の中心街には自家用車が大挙して走る訳でもないので、路面電車は晴れている時と変わらないペースで進んでゆく。
 トラムに乗って銅鑼湾まで。相変わらず雨降りの中、傘を差し、小心地滑を心掛けて妻の目的地へと足を伸ばす。ショッピングモールの入り口には濡れた傘を収納する用のビニール袋が日本と同じように設置されている。長い傘用と折り畳み傘用の2つがあるのは日本ではあまり見ない方式。
 銅鑼湾で妻の買い物にお供し、戻りはMTRで。中環まで戻るとまだ雨。もう少し雨を突いて妻の買い物に付き合う。その間に、雨は小降りになって来る。中環を廻る頃にはすっかり雨もやんで傘の出番はなくなった。荷物を大きく重くなった頃、ホテルに戻るべく機場快線の香港駅へ。時刻は17時ちょっと前になっている。
 機場快線の運賃はオクトパス利用の場合、片道110HKD。結構お高い乗り物なのだが、割引制度も充実している。その一つが、当日の往復割引。オクトパスを使って当日往復する場合、復路の運賃が無料となる。つまり往復でも合計110HKDと言う事。これなら、まぁお高いと言いつつ、エアポートバスと大差はなくなるし、香港-機場24分のスピードも相まって魅力的な110HKDになる。
 そんな訳で機場方面、博覧館ゆきの電車に乗る。この時間から空港に向かう人、案外といる。割と軽装の人が多く、出国客に見えないのだが、どうやら博覧館駅最寄りの亜洲国際博覧館でコンサートがあるらしい。その観客が乗っているというのが妻の見立て。

 電車は曇り空の香港を飛ばしてゆく。今まで帰国間際に乗る機会しかなかった機場快線。帰国と関係なく乗るのは初めてかも知れない。機場快線はコンサート客だろうが、ホテルへもどる客だろうが関係なく時速135kmで空港へと連れてゆく。
 大嶼山に差し掛かるぐらいの頃、少々ウトウトする。気が付くと列車は空港の敷地に差し掛かっていた。間もなく機場に到着。 

 空港で降りる人は疎ら。思った以上にたくさんの人が、博覧館まで乗り通す様子。
 駅から真っすぐ行くと出発階だがホテルに行くには到着階に改めて降りてから。10時間ぶりにホテルに戻る。すっかり重くなった荷物を自室に置く。
 時刻は18時。ホテルの部屋に引き籠るにはまだ早い。しかし改めて香港島まで行くのはさすがに遠い。そこで今度は空港のすぐ近く、東涌に向かう。東涌であればホテルの前からバスで1本で行く事が出来る。

 やって来たバス。想像に反して満員。2階席は満席で1階も立席多数。空港島からこんなにたくさんの人が東涌に行くのかと思ったら、そうでは無かった。このバス、東涌から空港島を循環し東涌に戻るルートで、MRT東涌駅から博覧館に向かう人が多いのだった。そんな訳で途中で下車多数。空いたバスは空港ターミナルには寄らずに国泰城、つまりキャセイ本社や航空燃料庫みたいなバス停に寄って東涌駅まで。
 東涌ではスーパーに行くのと、夕食を頂く、二つ大きな目的がある。バスターミナルと駅にすぐ近くにアウトレットモールがあってそちらへ。地下にはスーパーもある。その食品スーパー。目立つのは日本産、あるいは日本メーカの製品。それはもうたくさんの日本語に溢れていて、日本人である自分の方が戸惑う事になる。これだけ日本の食材に慣れ親しんでいるって事は、福島第一原発の処理水問題にも敏感になるのだと言う事が多少なりとも理解はできる気がしてきた。
 どうでも良いけど気付いた件。醤油が市民権を得ているのに対して、味噌の扱いの少ない事少ない事。日本人からすると醤油味噌と言うぐらいの二大巨頭というべき調味料だが、海外での扱いは醤油と味噌にずいぶんと格差がある事に気が付く。
 もう一点。日本産はじめ海外製品が幅を利かす一方で、香港地場メーカーの扱いが小さくて少々気の毒だった。香港島の高級スーパーならとにかく、MRTの終点、東涌のスーパーでもこんな感じになっているのか、と。
 次いで食事。このモールにはまとまった飲食店街は無いようで、各階にレストランが分散している。日本食の店も多いようだが、数回しか機会のない香港での食事。そのうちの1回を日本食に宛がうつもりは全くないので、中華の店を探す。久しぶりの訪港で食べたいモノリストから上位に名を連ねるのはワンタン、そして港式奶茶。茶餐廳があれば一番良いのだけど、結局はワンタンを優先して入った店は高級チェーン店、という感じの店。注文はワンタン麺と妻のリクエストで揚州炒飯。ビールを欲しかったのだが売り切れ、だそうだ。うむ。
 注文したものが順々に来る。

 海老雲吞麺は小サイズにした。香港の流儀に従い雲吞が麺の下に沈んでいる式。知らないチェーン店の雲吞だが、十分に美味しく頂ける。

 揚州炒飯もすぐに来た。何か海老を食べに東涌に来たような感じになった。
 食事を終えてそろそろ帰路。のつもりが思いがけず誠品書店に行き当たる。

 すっかり東京、日本橋で訪れる所になってしまった誠品だが、本来は台湾本拠の書店。香港だと銅鑼湾尖沙咀にあるのは知っていたが、まさか郊外の東涌にあるとは思わなかった。我々は東涌を少々見くびっていたかも知れない。
 軽い気持ちで寄り道。ちょっと見るだけのつもりが店員さんに後5分で閉店なんです、と言われて妻に変な感じに火が付いた。中身が気になる本をジャケ買い。普段なら吟味して1冊選ぶだろうに、4冊お買い上げ。4年のブランクを返した、事になるのか。
 さすがに切り上げ。エスカレータで下に降りるとちょうどバスターミナル。空港行きのバスがやって来る。さすがに20時を過ぎて東涌から空港に行く人は少ない。2階席にゆっくり座って、来た時と同じく国泰城を廻り、空港へ。

 20時半過ぎに空港のバスターミナル。降りてみると行先が東涌に戻っていた。
 ホテルに戻る。けど、部屋飲み用のビールを買っていない。空港の到着階に赴き、1軒だけあるコンビニエンスストアでビールを購入。昨日は気付かなかったが、日本の銘柄が目立つ一方、香港と言えばこれ、と言うべきサンミゲルの姿が見えない。

 先程、スーパーで見かけたのと同じ構図がコンビニでも広がっている。
 部屋に戻る。改めて買ったものを整理。スーツケースに仕舞う前にベットの上に並べてみる。

 1日で良く、増えた。こいつらを手分けして丁寧にスーツケースに仕舞いこんでゆく。明日に備えて身支度も。落ち着いたところでビールを少々。早い目に寝ておく。

【サイトアップ アクセスカウンタ】

 サイトアップはお休み
 アクセスカウンタは機能せず
 万歩計は22,666