目を覚ました。カーテンの隙間が薄ぼんやり明るくなっている。香港島は天后、旅先で迎える朝である。外は曇り空、ビクトリアピークは霞んでいてよく見えない。

 時刻は7時。日本時間なら8時と言ったところ。昨日の恥辱を少々進めておく。その間に妻も目を覚ました。8時になったので地元のテレビを付けてみる。地元のニュース番組をやっている。オープニングの音楽に香港にいることを感じる。30分毎に同じニュースが流れる。香港は小さいが故、1時間をニュースに費やすほどの出来事がないらしい。
 今日は全くのノープラン。とは言えやりた事は少々あるのでそれを優先して行動する事にした。少々下調べをしてから出掛ける。まずは二つ隣、北角まで足を伸ばす。目的は朝食。店は添好運という所。ミシュランの一つ星を取った飲茶の店。ミシュランとはいえ扱うのは飲茶だから敷居は低く、一説によると世界一安いミシュランの店、といううわさもある。
 ホテルを出るとすぐ道端に立つ女子高生に声をかけられる。何かと思ったら募金のお願いだそうだ。土曜日の午前中は街中で募金活動が賑々しく行われているそうだ。多少の小銭を寄付すると

 シールを貼って貰える。これが寄付済みの目印になるそうだ。シールを貼ってあれば街中ではこれ以上声を掛けられない、言わば免罪符。その代りシールを貼っていない人はどこまでもどこまで何人もの人に声をかけられる事になるそうだ。どうせなら早々に寄付しておいた方がいいというのが妻の情報。


 妻が銀行で手続きをする間にトラムとバスを少々撮影する。

 ひときわ古そうなバスは訓練車。こんな写真しか撮れなかったのは残念。
 時間がうまいこと潰れて店に行く。開店直後といった時間。


 店の前に行列はなくすっと入れる。待ち時間があるのを覚悟してきたのだが、拍子抜けだ、支店だから人気がないのかなと思ったが、その後はどんどん混んできてまもなく満席となった。タイミングが良かったらしい。
 どんどんと人が増える中でこんな感じに頼んでみた。以下注文したもの全部紹介。

 紅油炒手。ワンタンのラー油和えといえばいいのでしょうか。ラー油は控えめ。少し追加ぐらいでちょうどいいかも。

 鮮蝦焼賣皇、つまり海老シュウマイ。

 晶宝鮮蝦餃 こちらは海老餃子。どちらも定番、絶対に外せないということで注文。

 潮州蒸粉果、潮州風の野菜餃子。個人的には食感がなかなか良くて海老よりも気に入った感じ。

 この店の名物、酥皮焗叉燒包。日本のサイトだとメロンパン風チャーシュー饅と書かれていたりする。オイリーでいかにもカロリー高そうだけど、これは確かに美味しい。

 煎蝋味羅白糕、いわゆる大根餅。こういうどこの店でも出てくるメニューにこそ店の実力が出るのかもしれない。
 滞在1時間弱。最後はゆっくりお茶を飲んでからお暇する。相変わらず店は混雑している。
 さて。この先はしっかりとした予定を立てていない。何となくだが妻の提案でスターバックスに行く事にする。まぁただのスターバックスではないそうで、楽しみにしてみよう。場所は中環。トラムで動くには少々距離があるので、地下鉄に乗る。

 ちょっと歩いて炮台山の駅に行く。
 11時過ぎにMTR港島線は雑踏に満ちている。トラムと地下鉄、完全な平行路線なのだがどちらも混んでいるのは立派。ちょっとした移動には気軽に乗れて目的地のそばで降りれるトラムを。少々遠い移動には早い地下鉄が選ばれると行った所だろうか。
 地下鉄の電車。繁華街の銅鑼湾でどっと降り、金鐘でさらに降りた。中環に着く頃には遠くが見渡せるようになっている。

 中環駅と直結の置地廣場はクリスマス仕様。結構写真を撮っている人が多い。

 目的のスターバックスは駅から少々歩いた山際にある。

 坂道から階段を降りて脇のビルへと入ると万国共通の内装。でもその奥は

 だいぶ雰囲気が違う。これは60〜70年代の香港の喫茶店の雰囲気を再現したもの。香港のスターバックスが全て同じ仕様になっているのではなく、ここ中環と、九龍側の旺角の二店舗のみ。ちなみに内装を手掛けたのはGODという香港の雑貨屋さん。日本で言う東急ハンズと言うかロフトと言うか、そんな企業のプロデュースである。



 地元の人は手前の標準フロアでくつろぎ、観光客は喜々として奥のフロアではしゃぐ。まぁそんなにうるさい訳ではないから奥のフロアでも十分くつろげるのだけど、そういう構図になっている。Deepな雰囲気の中で、どこにでもある本日のコーヒーを飲む。舌よりも視覚の方が強烈でどこにいるのか見失いそうになる。
 お昼近くになった。今度はそのGODへゆく。以前は銅鑼湾に大きな店があったのだが、家賃高騰で撤退を余儀なくされたそうだ。今いる中環と隣の上環の間、山の方にお店があるのでそちらへ向かう。

 世界一長いという触れ込みのエレベータで山腹へ向かう。実際には歩く歩道レベルであるが、標高差があるからエレベータと言うのかも知れない。

 途中で降りてちょっとそれると目的のGOD。ハンズと比べるとだいぶ小さいのだが探す楽しみは一緒。洒落っ気の効いた小物があると笑い転げてしまう。家のクッション用にカバーを買ったりマウスパッドを買ったり。
 お昼を過ぎてそろそろ昼食を考えている。まぁ朝食が10時だったのでまだ空腹で空腹で、と言う感じではない。そこでちょっと歩いてお寺参り。中環と言うところはイギリス統治下の行政の中心だったところだが、中華系の寺院もある。文化の混浴状態なのは8月のペナン島でも見てきたが、香港もその気配がある。

 GODから少々上環よりに向かう。山を下る途中、コンクリートのビルばかりが並ぶエリアからガジュマルの大きな樹が現れて雰囲気が変わると

 文武廟に到着。香港島で一番古い寺院だそうだ。祀られているのは天后という海の神様だそうだ。ちょうど、今停まっている最寄り駅の名前と同じでおやと思う。
 路駐が目立つが参拝客らしい。線香の香りが立ち込める廟にちょっと入ってみる。


 廟の中でも線香が焚かれ少々煙たい。そんな中で熱心にお参りをしている人が6割。観光客というか冷やかしが4割ぐらいだろうか。
 少々見学の後、来た道を戻る。次は昼食。13時過ぎて軽い食事なら入るぐらいにはなっている。向かう先は九記牛腩。有名な牛バラ麺の専門店である。
 道にはみ出た目立つ看板が遠目に見える。その近くまで行ってみると

 結構な長さの行列が見て取れる。これが九記牛腩の行列。路駐の車も多く、車道を挟んで反対の歩道には別の店の行列もある。カオスみたいな状態。
 行列は長いが牛バラ麺はお客さんの回転も早い。15分ぐらいもすれば順番が回ってきて、店の中に入れる。相席、それも一つの丸テーブルに3組6名が入っているので窮屈だが、外で待っているよりはいい。


 地元の人も観光客も同じようにやってくる店なので割としっかりした日本語メニューがある。ここは普通のスープとカレースープと二種類あるのだが、今日は普通のスープを選択。麺は三種類から粗麺を選ぶ。

 5分程で注文した牛バラ麺が出てくる。まずはスープを頂く。少々オイリーだがコクがあって実に美味しい。
 ここの麺はスープを頂くのが主目的で麺は脇役。でも期待しないで食べると麺もそれなりにはと思えてくるから不思議。牛バラ共々美味しく頂く。お代は38HKD。5年ぐらい前に来た時よりもだいぶ値上がったかも知れない。
 食べ終わってお会計をして外に出るまで20分掛からなかったからやはり回転は早い。並んだ時間まで含めると30分ぐらいか。

 外に出ると雨が降っていた。今日は生憎傘を持ってきていない。自分自身は折りたたみ傘を持参していたがホテルの部屋に置きっぱなしである。
 大した雨ではなかったので雨に打たれつつ山を下る。降りると中環よりは上環に近いエリア。一旦ホテルに戻ろうかと思ったが妻の提案でもう一軒、脚を伸ばす。

 上環のトラム乗り場に集う電車を眺めつつ、ちょっとしたショッピングモールに入る。まぁ買い物なのだが、連れてこられたのは

 上環ウェスタンマーケットの一階にあるM80巴士専門店という店。巴士というのはバスの事。つまりバスの模型店
 まぁバスだけでなくトラムやスターフェリー、そして

 航空機なんかもある。値段はバスやトラムが1/80モデルで200〜300HKDぐらい。1/150モデルも同じぐらいの値段だったような気がする。航空機のものは1/200ぐらいだと500HKD以上。 
 結局一角にあった専門書コーナーでトラムの写真集を買う。価格は238HKD。
 相変わらず雨が降っている。傘もほしいし荷物もあるから一旦ホテルに引き上げる。上環からは地下鉄港島線。始発駅なので座って天后まで行ける。この時間は帰宅時間には中途半端なのか比較的電車は空いている。

 ホテルに戻ると15時半。観光地らしいところにはどこも行っていないが割と充実した街歩きになった。
 部屋の掃除は終わっている。荷物を置いて一息つく。ん、なんか寒い。

 空調の設定、最低温度の5度になっている。日本人仕様の25℃に耐え切れないハウスキーパーがうんとダイヤルを回したに違いない。同じような事、香港に限らずタイやマレーシアでも経験がある。
 さて、この後はどうしようかと考える。久しぶりに太平山の山頂に行こうかなんて話もあるのだが、

 この雨、この視界では行っても仕方あるまい。どうやらボツの予感。そして、なんとなくマッサージを受けようという結論が出る。店は下調べしていないが、駅の近くに大きなマッサージ屋があったそうで、そちらに行ってみる事にした。

 トラムの通りを挟んでホテルの反対側、ちょっと入った所になる足君好というマッサージ屋。後で調べたら香港各所に支店を構える結構大きなチェーン店であったのだが、こちらの受付に行く。足つぼマッサージ45分174HKDという値段。しかしすぐには入れないとのこと。45分程待たねばならないそうだ。それならもう少し時間を作ってその間に別の事をやることにする。
 マッサージは18時からにしてもらって向かった先は天后と銅鑼湾の間にあるビクトリアパークという公園。雨の中歩くところではないが、今日はこんなイベントが行われている。

 工展会とある。
 これは香港の冬の恒例行事。食品やら家電やらいろいろな分野の香港製品の展示即売会である。市価よりうんと安い値段で購入できるので地元の人に人気があるのだそうだ。
 このイベント。予め知っていたわけでなく、たまたま今日が初日だったということ。偶然だが折角なので覗いてゆく。入場料としては10HKDかかるのだが、地下鉄の往復代と思えばそんな高いものではない。ちなみにこんなイベントでも入場料はオクトパスで支払うことができる。

 広々とした公園内、どこまでも会場が続く。そして各企業のブースはかなり立派なものばかり。このイベント。年をまたいで3週間に渡って続くそうである。

 妻がアイスを買い求める。ダブルで25HKD。日本のものより少々安いか。並ぶアイスの中には「北海道ミルク何とか」みたいなものが新作で出ている。香港というかアジア圏の北海道人気は健在なんだなと思う。
 李錦記がブースを構えていて、お馴染みのオイスターソース他の福袋を売っている。100HKD也の中身はオイスターソースと醤油が2本ずつ。豆板醤やら何やら。スーパーで買うよりも安く、実家へのお土産に決定。そのほか、会社のバラマキ菓子なんかもこの会場で買い求めたから荷物が増えた。相変わらず雨が降る中、荷物を持っての移動は辛いが、いい買い物ができた。
 さて、足つぼマッサージを予約した時間になるので、工展会の会場を後に、先程の足君好に向かう。店に戻るとちょうど18時。良いタイミングであった。
 足つぼは45分コース。右足と左足で痛いところが全く違うのはどうしたことか。両足をだいぶ揉まれてすっきりした所で時間となる。
 思いがけなく増えた荷物を仕舞いにホテルに戻る。この後は夕食。何となく昨日見かけた火鍋の店に行こうということになる。先程の足つぼマッサージの店の通り一つ隣り。先程から香港島でもマイナーな天后という街の、ごくごく狭いエリアを行ったり来たりである。
 火鍋の店、少々待たされたのちに案内される。結構お高い店のようだが、割に賑わっている。グループ客が多いようだ。鍋のスープと具材を適当に選択。まずは

 まずは薬味の面々が運ばれてくる。最初のうちに取っておかないと持ち去られてしまうので何種類も適当に取ってしまう。醤油に唐辛子に葱に大蒜。何をしたいのかわからない状態の薬味が出来る。

 ビールは香港らしくサンミゲルを。この店、北海道産の刺身やら何やらも扱っていて(結構お高い)、そのせいかアサヒの生ビールなんてものを扱っていたりもするが、わざわざ香港で嫌いなアサヒを飲むこともないということでパス。

 まもなく鍋が運ばれてくる。まずは基本の具材が入っていて、これを煮立たせる。


 次に運ばれてきた追加の具材を鍋に投入。火が通った所で、先程の薬味と共に頂く。本当はもっとたくさんの具材を入れたいところだが、二人火鍋ではこれが限界。やはり火鍋は大人数で来る時にした方がよい。
 なんだかんだで2時間ぐらいいただろうか。お代は400HKD程になったと思う。結構お高いものですねぇ。ひとまず満足。
 この後はホテルの近くのスーパーへ。先程の工展会でお土産は少々買っているが追加のお土産やら自分使いの食材やらを買い求める。少々荷物が大きくなる。
 さて、ホテルに真っ直ぐ帰るのも難。もう少しどこかでと言う事になる。天后の山寄りにショットバーが何軒かあるそうなのでそちらの方に。ただ今日はサッカーの中継をやっていて賑やかすぎ。その中に割って入る気にもなれずに少し歩く。そうして見つけた店がここ。

 火車頭越南餐室。Cafe Locomotiveとある。何やなのかわからないが名前に惹かれて入ってみる。


 どことなくお洒落な雰囲気だが、時計、明らかにずれているよねぇ。
 Cafeというよりレストラン的な店のようで、お客さんは22時過ぎという時間にもかかわらず、麺のような丼に向き合っている。店の能書きを見るとベトナムの駅で有名な麺を再現したとあり、つまり、この店は駅そばの店だ。
 こちらは軽くお茶とお酒のつもりなので、妻は港式ミルクティーを、自分はビールを飲む。銘柄は当然ベトナムのもの、333。

 何故か缶ビールと共に持ってこられたのは茶碗みたいな器。これに注げって事だよねぇと不思議に思いつつもビールを注ぐ。泡が立たずになんか不味そうに見える。味はそれなりだったけれど。本当にこれで正しかったのだろうか。

 アテとして揚げ春巻きを頂く。店の雰囲気的にはこんな感じの店だと思うのだが、メインはやはり麺の様子。この後も2人、4人とお客さんが来て麺を注文している。実は有名店なのかも知れないが、麺が腹に入るような状況ではなく、今日は見合わせ。次回か次々回か、もし機会があれば試してみよう。
 ところで。この記事を書くにあたって店をググってみたら、こんな所で紹介されていた。
 火車頭越南餐室 大坑店 さっぱり爽やかベトナム料理。中華が重くなってきたらここで決まり! 香港スタイル キャセイパシフィック航空
 結構有名な店だったのね。
 さすがにホテルに戻る。明日は帰国日。今まで買った荷物を詰める。キャリーバックに若干の余裕があるのを確認。明日の朝、追加で何か買っておこう。