香港島の西側で迎える朝。トラム沿いのホテル、20階の真向いはやっぱり高層ビル。その隣も高層ビル。その隙間からビクトリア湾が見える。ひっきりなしにマカオへ向かう、マカオから来る高速船が通り過ぎてゆく。
 
 冴えない曇り空で予報は雨の確立、50%。そんな天気だけど生憎の短い休み。一日フルに香港を堪能できるのは今日だけなので、もちろん出かける。
 ホテルの朝食は付けていない。今日は近くに食べに行く。朝食の定番、飲茶だ。
 
 街に出る。ホテルのちょっと山側に入るともう坂の街。その坂を上がって目的地。ただ妻が日本で調べてきた店は生憎と臨時休業。でも辺りは他にもいくつか点心を出す店が盛況中。
 
 小奇麗な点心を出す茶餐廳もあるけど、今日はその近くにある、
 
 地元客しかいないようなディープな店にしてみる。
 
 テーブルごと空いている席は無く相席で。そしてここの店、通常の飲茶を出す店にあるような注文用の紙がない。勿論、ワゴンが廻るような店でもない。
 店に人に直接注文を伝えて出してもらう形式は初の経験。
 
 お茶を出してもらう。出てきたお茶でまずは器と箸を洗うのがこちらの流儀。さて注文、なんだけどこのハードルが高い。そもそも方法が分からないのだが、レジの人に伝えるのが正解、らしい。
 
 腸粉が来る。頼んでいないのだけど頼むつもりだったからそのままもらう。 
 
 
 次いで肉まんと焼売が来る。焼売はみんな頼んでいるようで、これは実に美味しい。ならば他にもみんな食べている物を、と思って粽を頼もうとしたら売り切れとのこと。残念。
 
 仕方ないので同席だった人が食べていた大きい肉まん。確か大包と書いていたと思う。それを頼む。これはこれで美味しい。
 
 もう一品、腐皮巻を頼む。
 計5品。全て16HKDでお茶と合わせて90HKD。流石に街中の何でもない店。非常に安価だけど、それでも値上ったようで御品書きの値段の所には紙が貼ってあった。
 朝食終了。出掛けるけど、雨が降るかもしれない事を思い出して傘を取りにホテルの部屋に戻る。戻ってみるともう掃除が終わっている。早いなぁと感心しつつ再び出掛ける。
 この後向かうのは銅鑼湾。地下鉄で行くのが早くて便利だが、香港大学から一駅、堅尼地城まで乗り残すのが気になり、トラムで一度、堅尼地城まで足を伸ばす。
 ホテルの前にある停留所で堅尼地城行きを待つ。少々間があってやって来た電車に乗り込む。
 
 この時間、香港は良く晴れている。気温は暑過ぎない程度。冷房の無いトラムでも動き出せば心地よい風が吹き込んでくる。
 トラムの終点、ちょっと手前で降りる。地下鉄駅の最寄りなのはトラムの路線図で分かったのだが、駅の方向は良く分からない。香港大学駅での地下鉄とトラムの位置関係から山側だろうと適当に歩き出すと、確かに真新しい地下鉄駅が現れる。
 地下鉄の堅尼地城から電車に乗る。
 
 人の多い香港で地下鉄の車内をまじまじと見る機会は早々無い。港島線も混雑している印象なのでこんながら空きなのは初めて見たと思う。少しお客さんが増えて電車が出発。先程待ち時間も含めてだいぶ時間を喰ったように思う香港大学までの1駅をわずか2分で走る。さすがに地下鉄は速い。
 地下鉄は上環、中環とお客さんを集めて大混雑となる。いつもの地下鉄の光景だ。その人たちと一緒に繁華街の銅鑼湾で下車。
 銅鑼湾でまずは軍資金の確保から。普段は尖沙咀重慶大廈にある両替商に行くことが多いけど、今日はこの後も銅鑼湾なので香港島の中で済ませる。
 そごうの前からビクトリアパークの方へ歩いて行く。今日の銅鑼湾
 
 ムスリムの女性が目立つ。曜日でいうと星期日、日本語なら日曜日。出稼ぎで来ているお手伝いさんにとっては週に一日のお休みで繁華街に繰り出して同郷同士で一日だべっているのが通例で、そんな人たちで銅鑼湾も中環も混んでいるのだ。
 そんな銅鑼湾銅鑼湾中心商場というビルの中、地下一階にある
 
 專業外幣兌換有限公司と言う所で両替。1万円が640HKDぐらいにはなる。昨日、空港に着いた時に少額だけ両替した時は600HKDにもならなかったから、レートはだいぶ良い。
 軍資金が手に入ったので銅鑼湾の街に出る。
 
 そごうの前を行くトラムを眺める。前を行く104号、先程、堅尼地城に行く途中にすれ違った電車だ。
 大通りを中に入る。香港は地価が高騰して、有名店でも繁華街での家賃に耐え切れずに撤退してしまう例が絶えない。あったはずの店が無くなったり、という事はしょっちゅう。その新陳代謝の激しい街に珍しい店を見つける。
 誠品書店台北や高雄等、台湾には沢山店があるのだけど、香港にも書店を構えているのは知らなかった。折角なので寄り道する。商業ビルの8,9,10階を占める書店へは、4階、7階と一足飛びに結ぶ高速エスカレータが便利。上階に行くに従い、
 
 表通りのトラムや二階建てバスがまるで模型のように見えてくる。この景色を見るためだけでも上に登る価値がある。
 書店は香港発刊の書籍と外国書籍が半々と言う感じに並んでいる。その中に香港電車 叮囑110年という本があったので買ってみる。158HKD。今のレートからすると結構な値段だけど、市場自体が小さいからこんなものか。
 さて、本来の目的地に向かう。時代廣場の裏側。毎回香港を訪れる度に必ず一度は訪れる店。 Goods of Desire
 
 以前は銅鑼湾に旗艦と言うべき店を構えいていたのだけど、家賃高騰で撤退。とはいえ繁華街に店を構えたかったようで同じ通りのちょっと外れに?小さめの店を再度構えている。
 以前ほど大きくない店なので、遊び心に溢れるディスプレイは姿を消している。銅鑼湾の旗艦店にあった、3個の時計。香港、九龍、新界と全く同じ時間を指しているのを笑いながら眺めたのが懐かしい。とは言え遊び心溢れる商品は勿論健在。妻がTシャツを一枚お買い上げとなる。たぶん着る事はなくて飾るの専用になりそうだけど。
 時刻がお昼を廻る。銅鑼湾と灣仔の間。
 
 打小人は健在。高架の下で靴を叩く音が響いている。しばらく見てみたけど、結構やって貰う人がいるのね、と感心する。靴で叩きのめした後は火にくべられる。煙が高架下に立ち込める。
 もうお昼もだいぶ回った。そろそろ昼食にしたい。灣仔の駅に歩く途中、適当なお店に入った。中国本土、潮州の麺の店。
 
 喉が渇いたのでまずは冷たい飲み物を頂く。間髪入れず
 
 麺も到着。適当に入った店だし期待していないのだけど、案外と美味しく頂ける。
 灣仔の駅まで歩いて地下鉄に乗る。降りたのは上環。ホテルに一度戻る前の寄り道なのだが、
 
 上環はトラムのターミナルでもある。
 
 上環から西の堅尼地城へ向かうトラムと上環から東の跑馬地へと戻るトラムが同時に発車する様子をついつい眺めてしまったが、今日の目的地は別。
 トラムが曲がる角にある西港城。この中にある80M巴士專門店が目的地。前回も訪れた所。なんか今回の香港は前に来たところばかりなぞっている気がしないでもない。
 前回訪問時は模型を見つつ結局はトラムの写真集を買った。今回は、ここに来る前にトラムの書籍を買っちゃったから、と言う訳ではないが、大人向けの書籍がないので今回は買い物は見合わせ。妻は目ざとくキーホルダーを見つけてお買い上げとなる。
 買い物の後は休憩。同じフロアにある満記甜品というスイーツの店。午後の良い時間帯だからなのか、人気がある店だからか混んでいる。
 
 この店の名物。マンゴー・パンケーキ。2個1セットで24HKD。上品な甘さが歩き回った体に優しい。 
 
 合わせて楊枝甘露を頂く。M80よりもこちらがメインになった感がある。
 ホテルまではトラムで移動。スーパーで買い物をしたので部屋に戻ると16時になっている。一旦荷物の整理。
 夕方、今度は18時に妻の友人と待ち合わせがある。18時は案外と早く、気が付くと時間があんまりない。待ち合わせの銅鑼湾へ。今度は地下鉄。
 銅鑼湾IKEAで待ち合わせ。食事を頂いてからカラオケに行くそうでお付き合いする。まずは食事。
 
 美味廚という店による。記憶をたどると多分3度目。ここの名物である排骨菜飯が目的だけど、
 
 ビールがメニューにあるので頼んでしまう。銘柄はフィリピンが本拠のサンミゲル。香港でも醸造しているので、地場のビールって事になる。
 注文は適当に。
 
 
 サイドメニューを二品と
 
 ここの名物、 排骨菜飯を美味しく頂く。
 さてお二人の目的、カラオケに付き合う。先程待ち合わせたIKEAの入るビルの近く、商業ビルの8階が全フロアカラオケボックスになっている。この時間、店は空いているようだ。日本ではすっかり下火のカラオケだが、香港の事情はよく知らない。明朝6時までOKという話であまり流行っていないのだろうなぁという想像は付く。
 
 窓のあるボックスで、外にはビクトリアパークと 炮台山の街が見えている。10人ぐらいは余裕で入りそうな部屋。しかもボックスにトイレまである。何とも贅沢な空間。
 飲み物を頂いてお二人が交互に唄うのをぼんやり眺める。並ぶ歌はこちらの歌が中心で、その他は本土と台湾、韓国、日本、それに泰国。飲み物の中には山崎の17年物フルボトルが7000HKDだったか、そんなものまであり、対象となるお客さんは大陸の人たちなんだろうなぁとは思う。
 19時開始で翌朝6時まで、なんて体力が持つわけがなく、23時過ぎにお開き。この時間の銅鑼湾。歩く人は疎らである。良く考えてみると今日は日曜日。普通の人は明日の仕事に備えて帰宅している頃だろう。
 銅鑼湾からの地下鉄港島線も空いていた。長い編成の電車、遠くが見通せる。カーブの様子、そして勾配の様子が良く分かる。香港島の小さな平地を行く電車は案外とアップダウンを繰り返している。そんな事が見て取れたのは、珍しい経験である。
 香港大学の駅で下車。ホテルに戻る。
 
 この時間、トラムもがら空きで通りを走って行く。少々夜更かしが過ぎたようだ。コンビニで少々の買い物の後、ホテルに戻る。日付がすでに変わっている。