線路宙吊り

 一面銀世界が漆黒の闇に広がっている。どこと一瞬思った次にはもう眠りの中に引き込まれ、次に気が付いたら新潟到着だった。午前5時前。雪は無い。
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 寒さだけは一人前の新潟。村上ゆきの出発を見送り自分は長岡ゆきに乗る。戻る形になるけどまあいい。2両しか無い電車はムーンライトえちごから流れたとおぼしきお客さんで一通り埋まる。暖房の良く効いた座席。尻から暖められるととたんに眠くなる。夜の明け行く越後平野。堕眠を貪りつつ列車は駆けて行く。少し明るくなった長岡で乗換え。お客さんは上越線信越線の二手に別れる。自分は信越線を選択。今度は3両だからか、空いている。
 スプリンクラーの物々しい長岡駅をあとに列車は走り出す。
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 いつの間にか辺りは雪景色。鉛色の空が重くのしかかる。時折窓を叩き付けるのは霰。見るからに重々しい車体が下り線を流れて行く。長駆大阪から来た急行きたぐにだ。
 外は荒々しい天気でも車内は温かい。やっぱりと言うべきかとろんと寝てしまう。
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 目覚めると白波がちらっと目に入った。青海川の駅に停まっている所。手を伸ばせば届きそうな日本海は激しく荒れ狂う。いっぺんに目が覚める。しばらくは日本海がお伴に。
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 米山駅でちらっと。側線ではありますが、崩れているような。ずいぶんと剛気な事をするなあと。
 海は次第に離れてゆき、目に見えて雪も減る。雨のような霙が叩きつける直江津8:06。次の長野ゆきは8:10発。ずっと接続が良いがいい加減腹も減る。それよりも信越線下り運転見合わせの報に驚く。米山にて高波の影響で路盤が崩れたとか。さっきみた奴だ。良く通ってこれたものだ。
 長野方面は影響無く定刻に動く。今度は6両、がら空きだ。ちょっと走っただけで雪になる。まあ北越雪譜だったか、一面の雪原に「この下に高田有り」の立て看板、と言う逸話に比べれば、圧倒的に雪は少ない。その高田を過ぎるとちょっとした山登り。一駅ごとに雪は増える。お客さんも少しずつ増える。Uターンラッシュの始まりかも知れない。
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 新井で10分停車。キヨスクが開いており買い物が出来た。朝食と言うには寂しいけれど、これで何とか落ち着く。
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 先程の情報も掲示が出ていた。結構深刻な状況になるかもなあ。
 ちなみにその後、上り線も不通になったようで。予定通りの行程をこなせたのは幸いでした。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090102-00000046-jij-soci
 線路宙づり状態に=護岸壁崩れ路盤侵食−新潟・信越線 1月2日21時31分配信 時事通信
 
 2日午前7時ごろ、新潟県柏崎市米山町のJR信越線米山駅付近の護岸壁が崩れているのを停車中の列車の乗務員が発見した。駅は日本海に面しており、打ち寄せる波で路盤が浸食され、現在は使っていない線路が数メートルにわたり宙づり状態になっていた。
 土のうを積むなど応急措置を施し、約10時間半後に運行を再開したが、列車計27本が一部区間で運休し、約4200人に影響が出た。 
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 10分休んだ列車は山登りを再開。外は本格的な雪となる。積もる量は大した事無いけれど、降り様は本物の雪。記憶の引き出しを開け放つには充分だ。秋田の冬に気持ちは飛ぶ。自分に取って本当の冬。昨日の富士山と青空は実は壁紙で紙を破ると鉛色をした本当の空がある。そんな気がしてきた。
 妙高高原からは一気に山を下り長野平まで。さすがに寒波の影響か、
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 盆地に出ても雪がちらつき景色はほのかに白い。初売の買い物客で混雑して少々遅れて長野到着。
 長野でせめて駅そばでもと思っていたけど、今度の電車は10:06だそうだ。また時間がない。あきらめてホームに降りるとこんなのが注目を浴びてた。
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 しなの鉄道の169系。湘南色に戻された編成にぶち当たる。これが今度乗る快速小諸行き。
 塗装を戻したってニュースは知っていたけど、まさか無理だよね、と下調べもせずに出かけて来たけど、新年早々引きが良い。昨晩はどちらかと言うと不運な方だったけど、今朝は幸運二発。きっとこんな調子で差し引きゼロに違いない。
 車内は簡易リクライニングシートが並ぶ。そうか、元みすず編成かと座席に落ち着くとまもなく出発。軽やかなモータ音が心地よく響く。
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 気がついたら雪もなくなって穏やかな陽光が車内に差している。篠ノ井からはしなの鉄道線なので別払い。この旅二度目の車内精算は¥590也。運用自体はよく知られているのか沿線に目立つカメラの放列を眺めつつ、上田で下車。後ろ髪を引かれる思い。