釜山に向かおう

 ビールを買ってホテルに戻り、結局酔いが廻りきってバタンと寝てしまった。翌朝、喉が渇いて目が覚める。明洞の外れ、南山の麓。午前7時過ぎ。
 ソウルはひとまず今日まで。このホテルは12時までいられる。ネット回線が使えたから昨日は全く出来なかった恥辱の公開をする。カメラの電池、充電しようと充電器を探すがでてこない。どうやら福岡空港サクララウンジに忘れてきたようだ。ちょっとショック。予備の電池も一緒に置いてきたから今の電池だけでこの旅行を持たせなくてはならない。回収する算段を考えなくては。それと、この旅行中は写真、控えめにだなぁ。
 気を取り直して朝食を食べに出かける事にする。歩いて會賢(Hoehyeon)からソウル駅へ。適当な店、あってもいいはずなのだけど見あたらないまま先へ進む。朝の8時半過ぎ。平日だから通勤客の流れに逆らって歩くともうソウル駅が見えてきた。駅の中、食事出来るはいくらでもあるけど高い目なのが気に入らない。駅の横にはいくらか飲食店、あったよなぁと地下鉄の駅を出て脇にそれてみる。
 広いソウルの駅前。その前に

 テントが出来ている。「謹」の文字、「弔」の文字、「46」の文字。先日、今のところ原因不明の爆発で沈んだ天安号事件の犠牲者を追悼するための祭壇だ。知らんぷりをするには忍びないのでちょっと立ち止まる。立ち止まると遠くから浮浪者らしい人が弔問してけと声をかける。普段なら無視してもいいのだろうけど、ちょっと無視しきれない。
 結局、お花をあげ、焼香をし、記帳までしてしまう。掲げられた46人の写真。徴兵中であろう若い人の姿が目立つ。可哀想だ。素直にそう思った。
 朝から湿っぽくなったが改めて朝食をとる。駅の横、24時間営業の店が何軒か並ぶ中の一軒に入る。何という事のない店だけど、駅のそばだからか日本語メニューも併記がある。

 トックマンドゥクック。日本語では「餅入り餃子スープ」と書いている。でもどう見ても餃子入り餅スープ。スープは美味しいけど餅が多すぎて朝としては少々重たい。
 さて、お腹が一杯になったところで駅構内へ向かう。既視感があるのは、空港みたいな建物だからか。2月に訪れたばかりだからか。
 案内窓口でKRパスの発券をしてもらう。予約はネットでしてきている。決済もカードで出来ていて、印刷してきたバウチャーを提示するとすぐに発券してもらえる。今回は妻と二人だから二人用のセイバーパス。3日で136000KRWほど。単純にKTXでソウルー釜山を往復すれば元が取れる値段である。
 ついで指定券の発券も受ける。予定は決めていて、乗りたい列車は紙に書いて持ってきている。何かとその方が話が通りやすい。希望した列車、すべて抑えることが出来た。これで今日の予定も確定となる。

 いったんソウル駅を後にする。放火で焼け落ち、再建中の南大門を横目に歩いてゆくと見覚えのあるエリア。南大門市場の両替屋があるところだ。1万円を両替すると118,000KRWとなった。空港よりも4,000KRWレートが良い。ちょっとした一食分は違うからこれは大きい。
 流れで南大門市場へと足が伸びる。とたんに「カバン」「ノリ」「メガネ」「カンペキなニセモノ」あちこちから声が掛かる。この状況、どこかで既視感がある。函館の朝市だ。腕を捕まれる。函館の朝市よりもひどい。南大門市場のエリアを逃げるように廻り続ける。妻は自分に度付サングラスを作らせたいそうなのだけど、ここでゆっくり物色する気にはとてもなれない。
 南大門市場を一周して地下街に逃げ込む。ここは静かで一息つける。メガネ屋が一軒。店頭でフレームをみてたら案の定、店の人に捕まる。まぁいいかって気になってメガネを一つ作ることにする。サングラスがメガネに化けた理由は、よく分からない。

 セルフレームにレンズで50,000KRW。20分ほどと言われた製作時間。15分少々で出来上がった。ずいぶんと安く早く出来るもので、確かにそれならソウルでメガネを作る観光客、一杯いるわな、と思う。
 メガネを受け取ってホテルに戻る。まもなく12時。荷物を括ってチェックアウト。釜山行きの列車は13時半。ちょっと間があるからそこを昼食の時間に充てようかと思う。ただ、會賢の駅へ向かっても店がないのは朝の経験で分かっているから逆方向、明洞へ向かうことにする。さすがに繁華街の明洞。平日の昼間でも混雑している。朝が重たかったからあまりお腹は減っていないけど、かと言って食事の機会を逃すのは勿体ない。
 結局ソルロンタンを食べに行く。お昼時で行列が出来ているけど回転も早くてさほど待たずに席に案内される。そしてすぐにソルロンタンが出てきた。

 具材からの出汁だけで味付けは自分で行うのが基本のソルロンタン。前に食べたときは塩で味を調えたけど、現地の人がキムチを入れているのを見て、ちょっと羨ましくお思った記憶が蘇る。今度はキムチ、キムチ、またキムチ。妻に入れ過ぎじゃないかと言われてしまった。
 満足してまだ混んでいるお店、そして明洞を後にする。地下鉄でソウル駅へ移動すると13時。出発までは30分となる。

 以前は15分前改札で時間にならないと自動改札が切符を受け付けてくれないシステムだったけど、今日持っている切符、レシートの控えのような切符。しかも改札機自体が無くなっている。システムが変わったようなのだけど、それでも15分前乗車開始はそのままのようでまもなく13:20出発のKTXが改札中となる。13:30の列車はまだ対象外。チェックしようがないと思うけど様子が分かるまでは律儀に待つ。交代でお手洗いに行ったり買い物をしたりする間に改札が始まる。

 13:30のKTX139列車。おなじみの顔付きで出発待ち。今日は普通車にした。幸い、前向き座席を割り当てて貰っている。荷物を仕舞い込むと今度は売店へ。ビールとつまみを選んでレジへ。ん、時刻表があった。買っていこう。

 席に戻る。混んでいるなぁと車内を一瞥し改めて席に着くとまもなく13:30。音もなく動き出した。定刻である。軽やかに車窓が流れる。龍山の駅が過ぎて漢江をわたると隣りを走る1号線。写真撮影でお馴染みの駅が続く。お馴染みと思ってしまって、その後で自分に苦笑い。
 KTX用の高速新線に入ると速度がゆるんで光明の駅。集客に苦労している駅と見聞きするが今日はパラパラとお客さんを集めた。それなりにそれなりには機能しているのか。9号車という狭い範囲で見る限りはほぼ席が埋まっているように見える。まもなく出発。トンネルを潜って速度を上げるとソウル郊外、寂しい丘陵地帯に差し掛かる。
 車内のモニタ、速度表示がされるようになった。時速250km/hを超え、さらに少しずつ加速して行く。やがて、300km/hに到達するのを見届ける。景色が次々流れ、時折防音壁に視界を遮られる。さすがにKTXは乗り倒していないから景色を見てどこか分かるまでには至っていない。気が付いたら天安牙山の駅。ここでは殆ど人の動きがない。まもなく出発。またトンネル混じりの退屈な景色が早送りで流れて行く。恥辱を綴ろうとポメラを取り出し打ち込もうとしてその気力が無いことに気が付く。
 ポメラをしまいこみ眼を瞑る。大田に停まった時に一度目を覚ました後また爆睡。1時間近くは寝ただろうか。気がつくと15時を大きく廻る。列車は在来線の線路を走っていた。東大邸の先かな。でも時間的にはまだ東大邸の手前。景色は田舎の風景。
 街が広がって見覚えのある駅が流れる。大邸の駅だ。まもなく東大邸。数分遅れているようだ。少々お客さんが降りていって所々に空席が出来る。代わりに乗ってくるお客さんは少ない。最終区間は釜山まで1時間ほど。無停車で在来線をゆく。行きかう列車や過ぎ行く駅が識別出来る程度の速度で流れてゆく。貨物列車の姿も目立つから、楽しい。
 三浪津で慶全線と交わると右手に川を眺めつつ、最後のコース。次第に谷と丘に広がる釜山の街並みが広がりだす。左手には海上コンテナ。港町の雰囲気が車内にも伝わる。幾重にも広がる引込み線。知らなくても終着駅があることが伝わってくる。
 列車は静かに釜山駅に歩みを止める。定刻より3分遅れて16:25。まぁまぁ優秀な方、かな。

 3年ぶりの釜山駅。駅の様子、周りの雰囲気は変わっていない様子。大きな広場の一角にはソウル駅と同様に天安号慰霊の祭壇が設けられている。軍隊の下士官、なんて雰囲気の集団がちょうどお参りにやってきているのを遠めに眺めて地下鉄の駅へ。今日のホテルに向かう。釜山の地下鉄でもソウルのICカード、Tマネーが使えるようになっていて、切符を買わずにそのまま乗れるのはありがたい。蓮山洞(Yeonsan-dong)へ移動し、ホテルにチェックインする。まだ夕方。外は明るい。

 夕方のまだ明るい時間。今からホテルに引きこもるのは流石にどうかと思う。どこか軽く出かけたい。現在地は釜山のどちらかというと北側。そのさらに北へと行った所に温泉がある。東莱温泉という古くからの温泉場で、最寄り駅は地下鉄1号線、その名も温泉場(Oncheonjang)。日帰り施設もあるそうなので出かけることにする。改めて地下鉄1号線で北に向かう。電車は地上に出た。郊外のような光景。すでに夕方の帰宅ラッシュ。東京郊外の私鉄に乗っているような雰囲気。窓の外にホテルが何軒か見えて温泉場(Oncheonjang)の駅に着く。あるいてちょっと。有名なホテルの隣にあるのが虚心庁という入浴施設。

http://www.pusannavi.com/play/1007/


 結婚式場やらレストランやらを併設して、とても温泉とかスーパー銭湯とかそんな施設には見えないけど3階に行って利用を申し込む。入浴料7,900KRWは後払い。ロッカーの鍵をくれる。この鍵が個人認証代わりで休憩所での飲食やあかすりの課金も鍵を使った後払い方式となる。
 温泉は男女別々。休憩所や服を着て入る韓国式サウナは男女共用。妻とは後ほど休憩所で落ち合うことにして別々の入り口から温泉へ。
 要領が分からないが誰も前を隠していないからそう言う流儀なのだと決めて脱いでしまう。温泉、広々とした湯船が幾つもある。露天風呂まであったりするから少々驚いた。あかすりもやって貰う。これは別払いで男性15,000KRW。女性は20,000KRWで高いが顔のパックとシャンプーが付く分の差らしい。予め体を洗っていたのにボロボロ出て来て恥ずかしくなる。
 休憩室に着くと1時間はたっぷり経っている。逆に妻を待たせてしまった。韓国式サウナに入ってみる。温度はお馴染みのサウナよりは低め。しばらくいる間に汗が滴り落ちてきて退散。
 最後は飲食コーナーでビールを頂いた。これも鍵で課金される。韓国で初めて生ビールを頂いた。すっきりとして美味しい。昨日の瓶ビールにちょっと古さを感じていたからなおの事美味しく感じる。
 さてホテルに戻る。受付でチェックアウトすると、しっかりあかすり代にビール代が上乗せされてた。よくできたシステムだ。全部で24,000KRW。
 すっかり暗くなった帰り道。折角なので1号線の終点、老圃洞(Nopodong)まで往復付き合って貰ってから蓮山洞(Yeonsandong)。夕食を食べる。ホテルの周辺、魚を売りにした店が目立つけど魚は後日にして、今日はなぜかタッカルビ


 大きな鍋だけど割とあっさりおなかに入る。ついつい焼酎も飲んでしまったから酔いも回った。ホテルの部屋でビールを飲もうと買って帰ったのに、飲まないままzzzとなる。

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