早く寝た分、早く目覚めた。前日の調子が悪かった割にはすっきりとした目覚めである。でも
 
 窓の外は雨だった。ふてくされてもう一度寝る。もう一度起きても雨はやっぱり雨である。ソウルで雨に降られた記憶、ちょっと無いのだけど6月のソウルは初めてだから、他の季節と簡単に比較してはいけないかも知れない。
 あんまり気合を入れて出かけようという状況でもないから身支度もダラダラとなる。最もホテルに一日篭るのも難なので結局は動く事になる。
 
 雨に濡れる明洞の街。朝は早いし雨降りだし、普段の明洞とは比べものにならないほどがら空きである。朝食がまだなので、明洞で人気のソルロンタンの店に行く。神仙ソルロンタン。昼間や夜来ると間違いなく大行列だが、今日は早々と入れる。
 
 何度か食べているソルロンタン。優しいふんわりしたスープがカラダに染み込んで行く。実は付け合せの白菜キムチも嬉しい。昨日は白菜キムチを一口も食べていなかったりする。
 
 食べ終わって外に出てみると雨の中に行列が延びていた。さすがに雨の中で並んで食べる気合は自分には無い。まだ早いうちに店に来れて良かったかも知れない。
 雨はまだ降り続いている。予報によると今日一日雨降りらしい。気分は萎えるがホテルに引きこもっていても仕方が無く、予定通り出掛ける事にする。
 
 明洞の駅も今日は閑散。4号線でソウル駅に出ると1号線に乗り換え。やって来た電車、仁川行きを見送り、京釜電鉄線方面、西東灘行きに乗る。ソウル駅を出るとまもなく地上へ。KTX、セマウル、ムグンファが行き交う線路を南下してゆく。
 京仁線分岐の九老までは列車は緩々と走る。様々な列車が交錯していて自分のペースを出せないのかも知れない。九老を過ぎるとようやく調子に乗ったが乗客は減った。そして物売りが来る。拡大鏡売りが来て1両で2個売れた。次に来たレインコート売りも1個売り上げ。
 ハングル文字のみのチラシを配って廻ったおばさんはどうやら物乞いらしい。チラシは読めないがチラシを回収して廻る時にお金を一緒に渡す人も見かける。
 衿井に到着。ここで4号線に乗り換える。ソウル駅で捨てた4号線に再び乗り換えるのであれば、最初から4号線を乗り通した方が楽に決まっているが、全線ほぼ地下の4号線を乗り続けるよりは、1号線で色々な電車を眺めた方が、時間の使い方としては良い気がする。まぁ人の趣味に妻までつき合わせるのはどうかと思うけど。
 再び、4号線。この辺りでは地上線となる。乗った電車は途中の安山どまり。今日は終点の鳥耳島まで行くのでどこかで乗り換えとなる。
 
 乗ってきた電車を見送る。明洞では右側通行だった4号線がこの辺りまで来ると左側通行になっている。色々調べてみると以前は衿井より奥の安山線区間は1号線と直通していたから、らしいと思われるけど、同じ路線で乗る駅が違うと進行方向が違うというのは、かなりややこしい。
 
 
 ソウル方面へと向かう電車を2本見送ると鳥耳島行きが来る。先程の安山行きを降りてから15分弱待った事になる。
雨の降る中、電車は郊外を走る。田園が続いたかと思えば高層マンション群が現れて駅に着く。この辺りからソウル中心への通勤なんて需要もあるのだろうか。江南なら多少は近いだろうか通勤に1時間以上。大変だろうなぁと思う。
 KTXの高架をくぐり、さらに進むと安山。先程乗った電車の終点でこの辺りでは中心駅。電留線に電車が佇む姿も見える。雨が激しい中、さらに先へ。車内はがら空きになった。日曜日の郊外電車。日本と一緒で気だるい空気が流れている。
 終着の鳥耳島に到着。12時を大きく過ぎている。明洞あたりの駅で電車を待っていると「オイドゆき」なんて案内は聞くし、日本人の耳でも聞き取りやすいから耳のどこかに残っていたのだが、実際に出かけるとなると大変である。
 
 雨の降りしきる鳥耳島駅前。呼び込みが煩い中を歩いてバス乗り場に向かう。今日は地下鉄に乗って引き返すわけではなく、目的地がある。そうでなければこんな奥まで妻を連れて来れる訳が無い。
 オイドで検索を掛けると、ソウルナビの記事が引っかかる。

 http://www.seoulnavi.com/special/5003002

 ここで紹介されている海洋団地の貝焼き、韓国語でチョゲクイと言うのだそうだが、に出かける。自分は知らなかったのだけど、韓国国内では結構有名らしい。
 雨の降る中、バスを待つ事しばし、
 
 目算より手前に停まったバスに駆け込む乗客。ソウルナビの記事ではT-moneyが使えないとあったが、見ると結構古い記事。無事に使えるようになっている。
 雨降る中、バスは思ったよりも長い事走る。倉庫街のようなみたいなところから急に海の気配がするところに出た。バスを降りる。堤防があってその向こうは
 
 干潟のような海。そして
 
 明らかに飲食店と分かる建物の連なり。これが全て、貝焼きの店である。
 雨のためか閑散としている鳥耳島の海洋団地、どこが美味しいとか美味しくないとか、全く持って予備知識は無いわけで、適当な一軒を選らんで入る事になる。もとより日本人など殆ど来ないような所だから、日本語メニューが有るわけもなく、日本語も通じない。ソウル中心だけでは見えてこない日常の隣国がここにはある。
 窓を大きく開け放ち、まるでオープンエアのような店。窓際に何組か先客がいて貝やカルグクスを食べている。メニューに2人用のセットがあり、それを注文。さらに
 
 ビールを。昼間から飲むのは難だが、まぁ、バーベキューみたいなものだし、いいかと思う。
 
 そして運ばれてきたのは貝の山。ハマグリやらアサリやら、カキやサザエもいる。2人で食べきれるかという量だ。
 
 これを自分で焼く焼き始めると、貝を焼くのに忙しくなる。焼肉の焼き係が忙しくて食べられないのと一緒だ。あんまり焼きすぎると熱で貝殻が弾けたりするから全く持って油断ならない。
 何時まで経っても無くならない貝の山、そのほかにエビもあるからお腹も膨らむ。ビールの飲んでる暇もない。
 
 外が暗くなった。もう夜、では無い。まだ15時過ぎだ。そして雨。ざっと大雨。横殴りの風を伴った大雨。オープンエアのような店の中を雨が叩く。店の人が大慌てで窓を閉めて回る。
 貝がなくなった後でセットのカルグクスが運ばれてくる。これが想像以上の美味。アサリで出汁を取ったらしい。お腹は一杯なのだが残すのが実に勿体無い。結局は食べ切れなかったけど。
先程の激しい雨は少しマシになったけど相変わらず風を伴った雨が降っている。その中でやってきた
 
 バスに乗り込み、駅へと戻る。水溜りの出来た道、泥水を跳ね飛ばしながら豪快にバスは走る。鳥耳島駅の案内だけは英語でも案内されたので降りる場所は分かりやすい。最も、乗っていた人は全て降りたから、英語案内が無くても駅だと知れただろうけど。
 鳥耳島からは4号線でソウルに戻る。帰りは1号線に乗り換えない事にする。最も、すぐに寝てしまい、乗換駅の衿井には全く気が付かなかった。途中、果川の駅で一度目覚め、もう一度目覚めると地上に出て漢江を渡るところだった。ソウルまでは1時間半ほど。
 ホテルは明洞だが、買い物のためにソウル駅で降りる。ソウル駅は駅以外には店も無く、買い物であれば殆どは明洞で事足りるのだが、大きなスーパーは明洞には無い。そこでソウル駅併設のロッテマート。駅とスーパーの相性が良いのは日本でも韓国でも一緒なのかも知れない。そう言えば龍山の駅にも大きなEマートが併設されている。
 スーパーに観光客、というのは日本国内ではあまり見ない気もするが、ここのロッテマート。日本人の姿が目立つ。
 
 商品の説明に、日本語と中国語が併記。店側も観光客を意識したことをやっている。
 
 日本では見かけないような沢山のキムチ。この中にカキのキムチを見つける。前に麗水の食堂で出されたのが非常に美味しかったのを思い出しついつい買ったが、あまり日持ちしないだろうなぁ。
 お土産用のお菓子やら自宅用のラーメンやら、嵩の張るものばかり買ってしまい荷物が膨れる。両手が塞がり再び地下鉄。一旦ホテルに戻る。
 先程買ったお菓子やらラーメンやら、荷物を試しにキャリーバックに詰めてから再び明洞の街に出た。時刻は19時近いが、日暮れの遅いソウルだからまだまだ明るい。
 
 午前中は人通りのまばらだった明洞の街も週末の夕方。さすがに人が増えている。屋台の類は何時もに比べると圧倒的に少ない。妻の買い物忘れのフォロにお付き合い。
 しばらく店をはしご。20時半を過ぎてすっかり暗くなった所で、さすがに多少の空腹を感じる。今回は、いかにも韓国料理、という唐辛子に染まった料理を食べていない。最後の夕食はそんな料理を志した。
 
 タッカルビ。普通のと辛いのと二種類があって辛いほうにチャレンジ。鍋が運ばれてきて、火がつけられて、具材が投入される。店の人が目の前で焼いてくれるのだが、店の人、料理から立ち上がる蒸気にむせる。人が変わっても、やっぱりむせる。そんなに辛いのか。
 
 ビールは食べる時に取っとくべきだろうか。
 
 出来上がりを頂く。普通に食べられたのは最初の3口めまで。やっぱり辛い。まもなく大汗が出てくる。美味しいのだけど辛い。辛くて美味しいではない。食べきったが恐らく、明日がお尻が大変な事になるに違いない。
 
 21時半の明洞。すっかり雨も上がった。日曜日の夜だから地元の人よりも観光客が多いに違いない。化粧品店の呼び込みも日本語か中国語が殆どである。行きの機内ではそれ程思わなかったけど、先程のロッテマートにせよ。今の明洞にせよ、日本人観光客は女性ばかりが目立つように思えて来た。