一日 釜山

 釜山のホテルで目が覚める。7時過ぎだったろうか。昨日といい一昨日といい、力尽きて寝倒れる日が続いている。
 窓の外は朝日を受けて輝く坂の街。今日はこの街に腰を据える予定だ。まずは朝食。これは近所の店で済ませるつもり。昨日、ホテル周辺を見て回った時にソウルでは食べる機会のない、デジクッパの店があったのでそこに行く事にしている。
 少し恥辱を公開していたから出かけるのは9時近く。ホテルのすぐそばの店に入る。早速、デジクッパを注文。

 デジクッパ。豚の汁ご飯といえばいいのだろうか。クッパ自体には素材からの出汁の味しかないので、いろいろ出される調味料で味を自分好みに仕上げながら食べる事になる。味噌を入れたり、オキアミの塩辛を入れたり。キムチを入れたりするうちに最後は味が濃くなる。ソルロンタンもそうだけど、一発で自分好みの味に仕上げられるようになりたいもの。

 近くのコーヒーショップでコーヒーを買い求めてホテルに戻る。韓国の街角にコーヒーショップが増えたの、ここ2〜3年の事ではないだろうか。外資系のショップと地場のショップと、チェーン店とそうでないのが雨後の竹の子みたいにあちこちにある。HUSSY COFFEEとあるここの店は多分地場の店。どちらかというとコピに近いコーヒーだった。
 部屋に戻ったのは日本に電話するため。福岡の日本航空事務所に忘れ物の確認をする。電話番号の調べがつくまで手間がかかったが、事務所の担当者につながると、確かにサクララウンジに充電器と充電地の忘れ物があるとのこと。受け取る算段の打ち合わせまでやっておく。これでだいぶ心の重荷がなくなった。

 改めて出掛ける。今度は地下鉄。今日は一日乗車券を購入した。3,500KRW。4回乗れば元が取れる形だけど、何とかなるだろう。まずは釜山の旧繁華街である南浦洞(Nampodong)に向かうことにする。平日、朝ラッシュの終わった地下鉄。途中で座れる程度の穏やかな雰囲気。20分少々で潮の香りがどことなく漂うチャガルチ(Jegachi)に降り立つ。妻が行きたいという国際市場へ向かう。

 狭い路地にどこまでも続く店、店、店。そして丘へと続く路地。傍から見ているだけなら良い雰囲気なんだけど、歩き始めると「のり」「カバン」「カンペキなニセモノ」呼び込みが激しくて萎える。4月30日、日本はゴールデンウィークカモネギ狙いの商人たちが手ぐすね引いて待っていたのだった。

 そんな中でどうしても自分に度付きサングラスを作らせたい妻は昨日に引き続き店頭に立ち止まりフレームを物色しだす。流暢な日本語を操る店員が出て来て盛んに店の中に連れ込もうとする。結局、自分の分と妻の分、二つ作る事で決定。さすがに二つを15分、では難しく30分ほど掛かると言うからその間にもう少し辺りを散策することにする。再び国際市場。メガネ屋を出た四つ角で4方向から一度に声を掛けられる。「おみやげ」「のり」「カバン」「ニセモノ」。何かうんざりして来た。函館朝市が可愛らしく思える。ここの商人たち、自分たちがやっている事がやがては市場を衰退させると認識した方が良い。それとも日本人が来なくなっても中国人が買い物にくるから大丈夫、なのだろうか。
 一番端まで歩いて別に道を戻る。こちらは衣類の店が多く、かなり大人しめ。中には古びたミシンを並べた店も見かけるから楽しい。
 通りを中程まで戻ると以前食べに来た事があるシンチャントーストに行き当たった。この店が現れるまで以前の訪れた時の記憶と一致しなかった。

 折角なので食べて行く。目の前で焼いてくれた熱々を頬ばる。市場の刺々しさをしばし忘れさせてくれるような味。どうでも良いけど店の名前のシンチャン。日本人としてはついつい「クレヨンしんちゃん」を思い出してしまうのであるが、どうやら町の名前である新昌洞から取ったらしい事に今更ながら気が付いた。店の前、看板をみて笑う人が通り過ぎる。今の日本人だろうな。同じ事を考えたに違いない。
 30分でメガネ屋に戻る。また囲まれ攻撃を受けてしまった。この四つ角は避けて通らなくてはいけない。自分のサングラスの加工が少々手間取るらしくもう少し街歩き。予定外の出費をしてしまったので、ウォンが少し足りなくなる。両替屋を探してうろうろ。今日のレートは1万円=117,000KRW。一頃に比べたらウォン安円高もだいぶ戻ってきている。
 出来たサングラスを受け取る。試しに掛ける。度の感じは違和感がないのだけど、鏡の向こうにいる人間。どんな偏愛を込めて眺めてみても胡散臭い人にしか見えない。それでも店の人に掛けて行けと言われてそのままで動くことにする。「旅の恥はかき捨て」昔の人もそう言ってた。
 さっきトーストを食べたからおなかは減っていないがお昼時である。一応、魚市場街も見ておきたい。大通りを挟んで反対側が魚市場。魚の匂いが立ちこめる。活魚もあれば生きていないのも。穫れたてだろうが氷で鮮度を保つようなことはしていないから、生で食べるにはちょっと抵抗がありそう。

 試しに食堂街に脚を踏み入れようとしてみる。とたんに激しい呼び込み。正直気分が萎える。お昼は西面に移動してからにしようか。地下鉄の駅へと引き返した。
 南浦洞が元々の繁華街なのに対して西面は新しい繁華街。地下鉄2線、主要道路が交わる交差点を中心に百貨店やら何やらが立ち並ぶ。自分自身では立ち寄る機会の無かった初めての街である。
 まずはお昼。さすがに13時を過ぎているしそろそろ食べたい。下調べをしたわけでないので、安直ではあるがガイドブックを地下鉄の中で見て店を見繕う。ランチタイム刺身定食10,000ウォンの記事が気に入った。結局魚なのである。
 地元のサラリーマンに人気とあったが、時間帯が遅いからか割と空いていた。靴を抜いて座敷に通されるスタイルが珍しい。日本なら畳敷きだろうが、こちらはオンドル部屋にテーブルが並ぶ。

 刺身定食をお願いする、値段は1人12,000KRW。ちょっと値上げしたようだ。たくさんのおかずが運ばれて来る。普段の5,000KRWの食事とは格が違うことが分かる。そのおかずは楽しく美味しい。辛いスープと訳すべきメウンタンも美味しく頂けた。肝心の刺身はちょっと古かったようだ。まぁ、夕方に食べると刺身一皿2〜3万ウォンぐらい普通にするからなぁ。
 14時過ぎ。西面の街歩きに繰り出す。その前に、やっぱりコーヒー。どうも今日の釜山。天気がよいからか乾燥しているのか、喉がやたらと乾く。結構いろいろなチェーン店があって迷うところだけど、以前、江南で入ったことあるチェーン店に。平日の午後、こちらも空いている。同じ時間帯、日本のコーヒーショップで目立つのはお年寄りだけど、こちらの老人層はコピなんぞ飲まないに違いない。
 改めて西面の街歩き。妻にはいくつか探している店があって見つかったり、店はあってもお目当ての商品が売り切れてたり。一言で西面と言っても広くて広くて、目的を全て遂げる前に疲れきってしまった。ちょっと休憩なのだけど、休憩のお供にホットクを頂く。それが

 二件並んだホットク屋。片方だけが長蛇の列。
 そんなに差があるのかと二人で一つずつ買って食べ比べてみる事にする。

 同じようなホットク。味もそんなに変わらないけど人気店の方が少々ふっくら感がある。作りたてを買っているのと、作ってから少々間があるのと、全く同じ条件ではないけれど、人気店の方が若干、美味しいように思えた程度。ほんと、若干。
 目的の店を探して現代百貨店がある凡一洞(Beomildong)まで脚を延ばしてみたものの結局は果たせないまま夕方。さすがに疲れた。海雲台まで脚を延ばして、なんて考えなくはなかったけど、やめにして東莱(Dongnae)へゆく。東菜名物のパジョンを食べようと思ったのである。
 夕ラッシュの始まった地下鉄1号線。地上に出てまもなくの駅が東菜(Dongnae)。都市郊外と言った雰囲気の駅前から歩くこと少々、東菜パジョンの元祖、東莱ハルメパジョンに着く。高級そうな居住まいでチマチョゴリを着た定員さんが迎えてくれオンドルの部屋に通してくれた。
 上品なお通しが出されてしばし、パジョンが出てくる。

 チヂミの方が通りの良い食べ物だけど、チヂミと決定的に違うところはその食感。チヂミがパリパリならこちらはしっとり。生焼けのぐっちょりではなく、あくまでしっとり。とても美味しくいただける。
 美味しいのだけど意外と量が少ない。いつもチヂミを頼むととんでもない量が出てくるので、そのつもりで小を頼んでいた。そしたらそれなりの量。まだ食べられるがここで追加するのも気が引ける。ホテル最寄りの蓮山洞(Yeongsandon)で何か適当に食べることにして今日はホテルに引き上げる。
 蓮山洞も交差点の複雑さは西面に負けていない街。軽く何か食べようと考えつつ辺りをぶらぶら。ちょうど良さげなものが見あたらないまま、結局ホテルのすぐそばで、チャンポンの店に入った。普通のチャンポンは3,500KRW。出てきて驚く

 何で赤いの。不思議でならない。
 見た目ほど辛いわけでなく、普通に食べれたし、美味しかったのだけど、海を隔てて福岡と釜山。同じ名前の食べ物なのに。不思議なものだ。

 ホテルに戻る。今日はさすがにビールが入る。恥辱をやろうとパソコンを立ち上げたらエラー。チェックディスクやらなにやらで結局24時。何もしないまま、今日はzzz。

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