嘉例川から大在へ

 温泉バスで嘉例川へ行く。もう一度あの炭酸泉に入りたい気分もあるし勿体無いけど仕方ない。嘉例川で下車する。特急はやとの風と接続を取る便だった。観光客が溢れかえっている。みんな列車の乗客かと思ったけど半分ぐらいは列車の出発を見送っている。クルマで訪れた観光客だった。その後の吉松ゆきを待つ。観光客が雰囲気が良いと沸き立っている中で列車が到着。乗車するのは自分ひとり。
 吉松ゆきはキハ40の単行。地元のお客さんが概ね1ボックス1〜2人。上り坂で喘ぎながらキハ40は進んでゆく。さっき飲んだビールが廻っているのか睡魔に襲われる。ウトウトしてはATSのピンポンピンポンってチャイムで目が覚める。少しずつ人が降りてゆく。先ほど見送ったはやとの風と栗野で再び行き違うと車内はがら空きになった。終点吉松に着いたときには自分を含めて僅かに二人。
 吉松で切符を買うつもりで窓口に行く。カードは使えないそうな。取り敢えず乗車券だけ現金で買おうかなぁと思ってたら窓口さんがカードなら都城か宮崎で買ってくれと仰る。そういう便法があるのか。こちらとしては有難い申し出なので仰る通りにする。乗り継ぎ列車は先ほどの車両がそのまま都城行きになる。それなら荷物を置いてくれば良かった。構内にはキハ58も居る。出来れば向こうに乗りたかった。
 吉都線、確か前に乗ったのは2000年の夏だったと思う。夕方宮崎から吉松へ直通する列車に乗った。その先、夜の矢岳を越えて人吉にまで行きその先の接続が無かったからバスで熊本へ。熊本からは再び普通列車で博多に着いたのは夜1時近くと言う強行軍。今考えると良くやるよなと思う。赤く染まった吉都線沿線の眺めは素敵だった。
 今度の列車はボックスに1〜2人ぐらい。見た目嘉例川で乗った時の肥薩線より混んでいる。混んでいると言っても十分座れる程度のお客さん。駅ホームの売店はシャッターを降ろして久しいらしい。最初に来たには駅弁売りのおじさんが居たけど、もう駅売りはやめてしまったのだそうな。改札外に出てみる。駅周辺は閑散としている。先ほどはやての風に乗って来た筈の人たちはどこへ消えたのだろう。駅の横にSL記念館が出来ている。町の作った施設で最近開業したらしい。資料館と物販店。軽い食事も出来るようだ。屋根をかぶって保存されているのはC5524。一つ一つを見ている時間は残念ながら無いけど、飲み物と手作りらしいパンケーキを購入。
 列車は軽やかに駆け出した。今度は下り坂なのだろう。夕方に近づき、景色が少しずつ赤みを帯びてくる。谷間に田んぼが広がる。既に田植えは終わっており意外なほど稲は成長している。右側には空港から散々眺めた霧島連山。撮影だけでなく温泉も良かったし、また来たいな、と取りとめも無く考える。えびのや小林でまとまった数の人が乗ってくる。地元の人らしく数駅で降りてゆく。案外と若い人も多い。ただ自分でハンドルを握るであろう年齢の人たちは乗って来ない。どこかの駅ですれ違った列車はキハ28とキハ58の二連だった。二両だと輸送力過剰なのか極めつけに空いている。
 都城に17時丁度に到着。宮崎ゆきは3分の接続。切符は宮崎で買う事にして乗り換える。吉都線から宮崎ゆきに向かう人も10人ぐらいは居て、吉都線〜宮崎と言う使われ方もするんだなぁと感心する。まだまだ捨てた物では無いらしい。都城からは817系の2連。この車両が宮崎に入っているのは知らなかった。今度は車掌も乗っている。途中検札がある。カードで買いたい旨を言ったらスルーパス。結構居るのかね、こういう乗客。途中、対向列車が遅れているとかで、5分ほど待たされる。その遅れを引きずったまま南宮崎日南線が接続待ちだって。こうやって遅れは広がってゆく。
 南宮崎から宮崎の一区間だけがなぜかワンマン運転になり宮崎着。さて切符を買わねばならない。改札口の姉ちゃんに乗車駅証明書を見せてカードで買いたい旨を言うとスルーパス。有難い処置だけど大丈夫か?って気にもなる。一応、窓口できちんと買いました、嘉例川→大在の片道切符。それに宮崎からの自由席特急券特急券津久見まで。駅の放送は特急には車内販売がありませんと繰り返し放送している。時節柄慣れない乗客が多いからなのか、車内販売が無くなって日が浅いのか、時間帯が遅いからたまたま乗務の無い列車なだけなのかは分からない。駅売店で購入をと言うお勧めに従い弁当を買ってホームへ。