目覚めると7時なっていた。土曜日の朝を旅先の松江で迎えている。今日は一日、一畑電鉄の撮影に充てる。元京王5000系である一畑2100系が、この夏、京王カラーに復元されたのを是非とも見たいし、撮りたい。余所で出ていた写真を見たがかなり出来がよいので、楽しみである。
 しっかし天気予報が実によくない。全国的に雨と仰る。夏のこの時期に雨に降られるなんて、そこまで普段の行い悪かったかなぁと考え込んでしまう。

 東横インなので無料の朝食がつく。以前はおにぎりに味噌汁ぐらいだったと覚えているが、今日はちょっとしたおかずも揃う。まぁ無料で朝食が付くホテルも多いからねぇ。
 予定は帰りの時刻ぐらいしか決まっていないし、京王カラーの電車が今日走っているのかも全く情報がないのだけど、一畑電車の時刻表を見て、9:20の急行には乗る事を決める。今居るJR松江駅から一畑電車の松江側のターミナルである松江しんじ湖温泉までは少々距離がある。

 ホテルを出たのが8:45ごろ。駅に行く途中に一台バスが走ってゆく。駅で改めてバスの時刻表を見ると土休日運休なんてバスもあってちょっと間隔が空いている。仕方ないのでタクシーを奢る。初乗りでは行かないけど、そんな高い運賃にはならなかったから、まぁ良いかと思う。

 9時前に松江しんじ湖温泉の駅に到着。待合室には9:20出発の急行電車の改札開始を待つ行列が出来ている。意外なほど賑々しい。一日乗車券を買い求めて、自分も改札の開始を待つ。5分ほどで改札開始。

 駅には2つドア転換クロスシートに化けた5000系、一畑5109編成と元南海の3000系、3008編成。南海車は塗装復元車。いいねぇと思うものの今日の目的はこれではない。京王の塗装復元車ともどこかですれ違うことを期待して、出雲大社ゆきの急行に乗る。
 一畑に来た際に転換クロスシートに換えられたこの編成もよく見るとどこか懐かしいパーツが残っている。


 こんな送風器。ひさしぶりに眺めた。

 定刻に電車が動き出す。曇り空の下、冴えない宍道湖が車窓に横たわる。何組か乗っている観光客がきゃっきゃと騒ぐ、夏休みの電車に相応しい。
 途中駅ですれ違った電車は2100系、2103編成。JALの広告電車。これはこれで面白いけど、今日はこれを撮りに来たわけじゃないからなぁ。
 一畑口は平地なのにスイッチバックという駅。ここで進行方向が入れ替わる。そろそろ雲州平田となる。車庫のある駅で、もしかするとここで寝ているかも知れない。その場合はひとまず平田で降りてしまおうと思う。
 平田の駅、構内に差し掛かる、注視していると奥の方に見慣れたアイボリーがいる。京王柄、今日はお休みか。非常に残念。ひとまず降りる。
 駅の裏に回り込んで見る。どうやら清掃中。中で係員が窓を拭いたりしている。パンタは上がっていて、時々唸りをあげるコンプレッサの音にはっとするのだが」


 この中途半端な停車位置はいかんともしがたい。

 ここに居ても打開策は見いだせないので、急行の後追いでやって来た南海のクルマを撮った後で少し移動する。元5000系は他にも居るから、そちらの走りを撮ろう。

 駅構内から車庫を。2104編。バラエティ豊かな5000系のクーラだけど、8個分散って一番好きだったなぁ。

 松江方面の電車、また南海車だったが、それで一畑口に移動。ここで上下1本ずつの撮影。

 まずは松江から先ほど見かけたJALの広告電車、2103編成を撮る。スイッチバックのある駅なので2度撮れるのが嬉しい。次に出雲大社前から来る電車の撮影。ちょっと間があるので、

 一畑口の北側で途絶える線路、その終端を見ておいた。本当ならここから先の一畑薬師を目指して線路を引く筈だったのだが、それが出来ていたら多少はお客さん、増えていたんですかねぇ。

 駅に戻る。いつの間にか観光バスが来ていてツアー客がわらわら降りてくる。ローカル線体験乗車、みたいなコースなのだろう。一畑電鉄にとっては良いお客さんだろうが、突然賑やかになりすぎるから、こちらには若干の迷惑。

 出雲大社から現れた電車は、先ほどの復元塗装の南海車。これを撮りに来たのではないのだけど、仕方ないから撮っておく。次の電車で、出雲市方面を目指すことにして駅に引き上げ。

 やって来たのはまた南海車、よく見ると先ほどの戻りらしい。休日の昼間は松江しんじ湖温泉出雲大社前を3本の電車で廻し、川跡ー電鉄出雲市は1本の電車で廻している様子だ。
 先ほどの雲州平田。復元塗装の京王車。2101編成が場所を動かしていたので降りる。再び駅の裏側に回る。


 先ほどよりは撮りやすい位置に来てくれた。出雲市側だけ再現してみたヒゲも辛うじて分かった。しかし既にパンタグラフが落ちているから、今日は動かない、で確定のようで。何とも消化不良。極めて残念。そんなネガティブな言葉ばかりが並ぶ今日の一畑巡りとなる。
 次の電車で出雲市側に動くことにする。あと1本。川跡と電鉄出雲市の間を行き来している電車があるはずで、それを押さえておきたい。

 今日2度目のJAL柄京王車、2103編成を撮ると、次の出雲市ゆきが来るまでに昼食を取る事にする。

 平田の駅前もやっていないような店が多い中で、ちょっと歩いた所に中華料理の店を見つけて入る。時間がだいぶ怪しくなってきたが、まぁ大丈夫だろう。

 店内で読んだ地元紙。思い切り地元ネタが一面トップ。当たり前か。

 飯店丼なるものが何か分からず試しに頼んでみたら汁掛けご飯の類が出てきた。従業員の賄いか何かに見えるがそこそこ美味しく頂ける。
 駅に戻る。今日何度目?と思う南海の復元塗装車、出雲大社行きに乗る。川跡で電鉄出雲市行きに乗り換えなのだが、

 川跡の駅に南海車が3本揃う。
 なんと4運用中京王1本、南海3本。そんなに日頃の行い悪かったかなぁと頭を抱える事になる。
 このまま出雲市に出てもなぁと思い、とっさの判断で出雲大社前ゆきに乗車。出雲大社に行っても仕方ないが、大社線、しばらく乗った記憶がないから、久しぶりに乗ってこう。

 電車は田圃の中をしばらく走ると出雲大社の参道に面した出雲大社前に到着する。いつの間にかクラシックな駅舎にカフェが併設されていたりして、雰囲気がだいぶ変わっている。参道自体、観光客が闊歩していて、今まで歩いて来た所と空気がまるで異なる。
 折り返しにはだいぶ間があるので、ちょっと国鉄大社駅の跡を見に行こうと歩いてみる。大社線は1988年に廃止されたが、神社を模した立派な駅舎は大事に保存されていると聞いている。
 特に下調べもなく大して離れていないだろうと歩いたのだが、歩いてみると結構な距離がある。そろそろかなぁと思い始めてからしばらく、ようやくたどり着く。

 まるで現役、の体で駅の亡骸が残っている。実に立派な駅で、


 これ現役の頃に見たかったなぁと本気で思う。88年までは列車が走っていたのだが当時はまだ中学生。消える国鉄線に乗りに行くにはちょっとまだ早かった。


 本当、列車が来そうなのだが、漂う空気に列車が来る気配を全く感じない。何か死臭のようなものが支配する2012年の大社駅
 さて大急ぎで出雲大社前、一畑電車の駅へ戻る。ギリギリで松江ゆきの電車に間に合った。電車に揺られてふと思う。京王車、せめてもう一枚は撮りたいなぁ。

 遙堪、という駅で電車を降りた。今降りた電車と入れ違いで川跡を出る出雲大社前ゆきが2103編成の筈だ。それを撮ろうと思う。
 駅からちょっと歩いて踏切まで。ここで待ちかまえる。しばらく待つと遠くから黄色い電車がやってくる。

 JAL柄本日三回目。
 駅から離れていたから、次の移動は今行ったばかりの電車が出雲大社前から戻ってくる30分後。暑い盛りに待ち時間が嵩むのは辛いが、日陰にいれば何とか凌げる。


 30分を恥辱の整理に費やした。踏切の音で電車がやってきた事に初めて気づく。先ほどと同じ2103編成で川跡まで。今度は2103、3005、3006と集まる。接続よく出雲市へ運ばれる事になる。
 15時30分に出雲市。今日は18時に出雲空港を飛び立つ飛行機で羽田に戻る。空港に行くリムジンバス、時間を覚えていなかったが、バス停に行ってみると16:50の出発。意外と遅い時間だと思う。結構ギリギリになるなぁ。

 時間が余ったので駅前をぷらぷら。とはいえ、駅前に何もない出雲市の街。出雲そばでも食べたいなと思ったけど、何軒かあった出雲そばの店、全部昼休み中だった。仕方ないので、

 駅構内の店で割子そば。昨日の米子のそばよりもしっかりしていて、美味しく頂けたが、値段もしっかりしていて¥660である。

 そばだけでは時間が潰れず、駅構内のショッピングセンター、冷房が効いている所のベンチに座って今日の恥辱を進めておく。

 さて。バスがやって来たので空港へ移動。冷房の効いた車内に座るとさすがに疲れを覚える。今日一日、動き回ったのだから仕方がなく、少しうとうとしたようだ。

 空港には30分ほどで到着。荷物を預けるのとともに搭乗手続きを済ませる。座席は事前に前方前側で指定していたのだが、空いていると聞いて、一番後ろの窓側に変えてもらった。どうせ荷物が出てくるのに時間が掛かるから、前に座っていても意味はないし。