韓国一のローカル線

 今朝は堤川の旅館からスタート。時刻は昨日と同じく6時ちょっと前。昨日より早い7:10のスタートだけど、駅が近い分で相殺されて宿を出るのはほぼ同じ時間。

 今回お世話になった部屋も一晩寝るだけならこれで十分、と言う感じ。では出発。支払いは昨日のうちに済ませてあるので、カギだけ置いてゆけばよい。と言うか、朝は宿の人もまだ起きていない事も多いので。
 宿を出てふと気が付く。会話集をどこかに置いて来た様だ。一番最後に見たのは確か昨日食事をした店だった筈。駅への通り道だけと、店、やっているねぇ。
 昨日もみかけた店の人に片言の英語で聞いてみたけど、無いらしい。ここで無いとすると何処だろう。もう列車の出る時間も近い。仕方ない、諦めよう。駅へと向かう。

 一夜明けて堤川の駅。もう清涼里ゆきや大田ゆきを送り出した時間だけど、待合室の売店は営業しておらず。多少の食料ぐらいは買えるかと期待していたのだけどなぁ。今から、昨夜のファミリーマートに戻る時間も無いし。仕方ないので缶コーヒー1本だけ買ってホームへ。

1651列車 Mugunghwa 堤川(Jecheon)7:10→9:27アウラジ(Auraji)


 出発を待つ列車。ディーゼル機関車に電源車、客車2両という飛び切りの軽量編成は太白線から旌善線に入るムグンファ号。今日最大の目的にして、韓国国鉄完乗に向けた一つの山となる旌善線に乗ることの出来る貴重な列車だ。
 どこのサイトを見ても韓国きってのローカル線なんて紹介のされ方をしている旌善線。起点は堤川ではなく太白線の甑山。昨年訪韓したときに買い求めた時刻表を見ると、1日2往復の通勤列車が甑山とアウラジの間を結んでいる事が分かる。
 ところがこの1月のダイヤ改定で同じ1日2往復ではありながら、列車はムグンファに格上げ。起点も甑山から中央線との結節点、堤川に変わった。その始発列車が今、堤川で出発を待っている。

 先頭2号車のデッキには行商と思われる荷物の山が。
 指定されているのは1号車。乗ってみるとかなり強めに暖房が効いている。昨日の空港鉄道などは冷房が効いているぐらいだったけど。さすがに山中だけあって朝は冷え込んでいたのだ。

 発車数分前。車内は空いている。3人ぐらいの女の子のグループが賑々しいのと、一人、明らかに鉄道を撮っている人がいるのが目立つぐらい。
 まもなく列車。案内と共に動き出した。複線電化の中央線が真っ直ぐ伸びてゆくのを横目に、太白線の列車は左へとカーブしてゆく。田舎町がゆっくりと流れた後、山中の隘路へと足を踏み出す。
 沿線に見える立派な道路を尻目に、列車の速度はなかなか上がらない。時折車掌が車内を巡回する。デッキの前のドアで閑散とした車内に向かい、丁寧に深々と頭を下げる様子が印象的。

 時々現れる駅はどこも大きな構内を有し、たくさんの貨車が滞留している。あるいはセメント工場があったりして。昨日忠北線で見かけた貨物列車の出発地なのだろう。

 ようやく街が現れて駅に停まる。他ではあまり見かけない立派な駅舎。少々お客さんが降りてゆき、少々お客さんが乗ってくる。堤川を出てから変化のないように思えた車内も少々お客さんを集めたようで、2〜3割の乗車。地元の所用客。山登りに行くような雰囲気の人。観光か何かの人。外国人、つーか自分。空いている割にはお客さんはバラエティに富んでる。

 列車はさらに山へと分け入っていって。例えて言うなら飯田線の雰囲気かなと思いつつ。山、川、トンネル。また山。橋。そんな繰り返し。
 途中の何処かの駅、清涼里に向かうムグンファが遅れているようでこちらが待たされる。

 やって来たのは電気機関車牽引のムグンファ。そろそろ10分近くの遅延になったかなと思いつつ、

 こちらも出発。

 構内の外れで見かけたのは砂の積込場。日本では殆ど見ることの出来ない無蓋車もこちらではご覧通り、現役。
 さらに山深く。不意にレールが分かれて行き

 谷を挟んで併走開始。向こうの線路は威白線と思われます。勾配の緩和を狙った迂回線。日本で言えばいわば東海道線の関が原手前。新垂井の迂回線と同じ。ただ残念な事は向こうの線路を通る定期旅客列車がないという事。貨物列車は通るし、旅客列車でも臨時列車は通る場合もあるそうで。乗れそうで乗れないゆえ、完乗の対象とはしていません。ひとまず谷を挟んで向こうとこちらを併走する線路をしっかりと目に焼き付けよう。
 窓の外一面が山となったのが8時半近く。もう出発から1時間以上経って、分岐点の甑山が近づいている筈。

 ふと窓の外、谷の下に線路が見えている事に気が付く。架線が見えないので恐らくはこれから乗るべき旌善線。上から見下ろすと高低差は相当なもので、本当にあそこまで降りれるのかと思いつつ列車はトンネル。不意に明るくなると甑山の街が広がっていた。

 定刻なら8:27だけど10分ほど遅延。結構な数のお客さんが降りて行き、入れ替わりに乗ってくる人もいる。2号車のデッキにあった荷物の持ち主も目的地は甑山だったようだ。
 さて、ようやくたどり着いた旌善線だけど、列車は何の感慨もなくすぐに発車する。太白線と別れるとUターンするようにぐるっと廻って谷底へ。甑山の街を抜けると、

 今度見えるのは先ほど通ってきた太白線。よくまぁ、こんな山腹に線路を引いたものだと、下から眺めると呆れるやら感心するやら。谷底の線路、整備中の頼りなさそうな道路と絡みながら、山腹に消える太白線と別れを告げ、こちらも向きを変える。先ほどに続き山中だけど、太白線より設備が貧弱な分、旌善線は山に解け込んでいる感じ。

 車内もだいぶ空きました。
 のどかになった列車と景色。それでも

 最初の駅で見かけた景色。住宅建設中。どんな田舎でも高層マンションみたいな住宅を建てちゃうところが韓国の不思議な所。どんな人が住むんだろうなぁと謎を残しつつ、

 列車はノロノロと細道を行きます。

 二つ目の駅、仙坪で。この駅には一切、金を掛けないぞ、なんて意識の現われでしょうか。日本国鉄末期のローカル線だってもう少しましだったでしょうに。
 一駅、一駅。本当に捨てられたような鉄路と土地を踏みしめて行くと久方ぶりに街が現れます

 路線の名前にもなっている旌善。一応ビルらしき建物もあるし、なんといっても平らな土地が広い。ずっと谷間を走って来た身には、久方ぶりに現れた平原。ここは元々石炭鉱業で栄えた所だと地球の歩き方には紹介されている。と言うか堤川は出てこないのに旌善は出てくるのだね。

 駅も割と立派。堤川から賑々しかった女の子のグループはここで下車。車内はまた閑散とする。列車はこの先、アウラジまで行く。
 奥地も奥地に来て初めて平らな土地が広がった太白線から旌善線の旅もまもなくピリオド。最後は

 川を望みながら一区間。10分以上列車は遅れているけど、今日はどうでもいいことだ。最後に信号停止か何か、待たされたのはご愛嬌。

インターバル アウラ

 列車は2時間半掛けて、ようやくアウラジに到着する。

 山懐に抱かれた駅にぽつんと、列車は歩みを止める。とうとう来たけど、やっぱり、長かった。

 花に迎えられた列車。

 こじんまりとした、好ましい雰囲気の駅舎。
 とここまではローカルムード満点なのですが、想像以上に賑々しいところでもありました。駅舎の横、

 あなたは、何?

 昔、旌善線はアウラジが終点ではなく、この先一駅、九切里駅まででした。この一区間は2004年に旅客営業が廃止されています。ところが、今、その廃止区間が観光用施設に生まれ変わったのだとか。

 旌善線レールバイク
 http://kageri.air-nifty.com/seoul/2006/05/post_f3de.html

 詳細はリンク先を参照して頂きたいのだけど、軌道用自転車で下ってきた先がここアウラジ。そんな訳で廃車を大幅に改造したらしいカフェがあってハンバーガーなんかを売っていたりする。
 折り返し列車の出発まではあと1時間少々。駅前にはどうやら九切里まで行くらしいバスもいるけど、恐らくレールバイクを楽しむ時間的余裕は無いだろう。朝食がまだだから何か食べたいと行っても、こんな韓国の田舎まで来てハンバーガーってのも、何かおかしい。
 ひとまず、


 ここまで頑張ってきた機関車、列車の向きを変えるべく入換作業をしているのを見届けた後、軽く駅前を探索。朝食がまだなのだ。お腹減った。

 魚くんを背にしてアウラジの表通りを歩いてみる。まだ午前10時前。食堂らしい店構えはあるけど、開店しているところは見当たらない。右に行って引き返して左に行って。ようやく開いている店を見つけた。

 メニューを見る。チゲとタンがあるのは分かった。キムチチゲやテンジャンチゲなんだろう。でもいつもチゲじゃ芸がないなぁ。
 と言うことでチゲでもタンでもないものを指差し、これ頂戴とやる。店の人が首を振る。おいおいと言う突っ込みを感じるけど、理由が分からない。何かと思ったら店の人、笑いながら冷蔵ケースを指差す。そこに入っているものは、、、、メッチュ。
 メッチュジュセヨ。何度と無く言ってきた韓国語だけど、メッチュってハングルで書くとこうなのか。一瞬、ぽかんとした後、爆笑。店の人も爆笑。
 じゃぁ、任せるとチゲの方、孤を書くように指差したら、ナムルと何とかのチゲだと仰るので、「はい」と答えて、待つことしばし。

 こんなん出てきました。

 具材はもやし、豆腐。それに干し鱈でしょうか。韓国料理にしてはあっさりした味わいですが、でもキムチはたくさん付いてきます。白菜キムチ、キムチの浅漬け。蕪のキムチと言う調子。

 おまけに頂いたのはまるでヤクルト。まぁ違うでしょうが。
 美味しく頂いてお代は4,000W。ごちそうさまでした。

 駅へと戻る。帰りの列車は10:50。暫く間が。駅のホームをしばらくぶらぶらと。

 山間の駅に列車がぽつんと。

 今度は最後尾となる電源車。他では見ないイラスト柄の電源車。

 妙に可愛らしいですねぇ。

 これがレールバイク用の軌道用自転車です。駅構内、係員はたくさん見えますけど、皆さんレールバイクの関係のようで。

 改めて列車全景を。今日は綺麗に晴れているから明るい雰囲気ですが、夕方だったり、荒天だったりするときっと雰囲気変わるんでしょうね。

1652列車 Mugunghwa アウラジ(Auraji)10:50→13:08堤川(Jecheon)

 長いようで短いアウラジ滞在が過ぎてゆき、列車はゆっくりと朝来た道を引き返す。行きにもまして空いた車内。1651列車に引き続き乗務する車掌が巡回。一人一人、切符を発券してゆく。アウラジ、あくまで無人駅なのだ。
 自分は仁川空港で発券してきた指定券があるので、それを見せる。そういう客はあまりいないらしく、「ガムサハムニダ」と。

 車窓に流れる旌善線の風景。
 一駅目、羅田駅に待つ人たちが数人。これがみんな記念写真を撮る人たち。列車をバックに子供の写真を撮る家族連れやら、ポーズを取って写真を撮ってもらう女の子やら。結局誰も乗って来ないまま列車は動き始める。
 車内が少々賑やんだのはこの線の中心駅、旌善駅。年寄りのグループがやって来て自分の席はどこだ、どこだと。「サルサル」と言っているから「33番」のことだなぁと。車掌を散々てこずらせて自分達の席に落ち着くと、酒盛りが始まる。缶ビールを飲んでいるのが、少々羨ましく。何処まで行くのだろ。
 もっとも賑やかなのは自分のすぐそばのこのグループだけで、後は相変わらずの閑散振り。
 来た道をなぞり返すムグンファの旅。変化が訪れたのは太白線との合流点、甑山駅。

 向かいに停まっている列車はセマウル用客車を連ねた、どうやら臨時列車。どうやらと言うのは定期列車にはつきものの英字・漢字併記の案内板がこの列車、ハングルだけだったから。雰囲気から言ってサイクルトレイン、って所でしょうか。
 サイクル列車がのっそりと動き出した後もこちらは動かず。どうやら対向のムグンファが遅れているようで。隣には何時の間にか堤川方面に向かうセメント列車が到着。二本の列車が遅れるムグンファを待つ。

 ようやく来ました。傾いちゃいましたけど……。2本並んだ上り列車、先発はこちらのムグンファ。先ほど走ってきた谷底を望みつつ、山腹へとアタック開始。
 堤川ゆきのムグンファ。ローカル列車らしく、他のムグンファが停まらない駅にも小まめに停まる。何処かでの駅で乗り込んできた人はリュックサックを背負った山歩きの人。山がちの国土だけにこちらでは山歩きをする人が多いのだとか。

 こちらは何処かの駅の外れ。セメント工場に出入りする入換機関車の姿も。
 貨物列車を何度も眺める山岳路線は楽しいけれど、堤川を出て6時間。流石に疲れを覚えた頃に高層住宅が幾つも現れる。まもなく終点、堤川。かの宴会組みも堤川まで。最後まで乗客は少なく、さて、旌善線の将来はいかに。
 旌善線を乗り終えた今現在、この辺りにはいくつかの未乗区間がある。ただし、乗る事が出来るかと言うとまた別の話。
 先ほど眺めた威白線などはその好例。或いは太白線の最終区間、東栢山-栢山。わずか1.2kmだけどここも未乗。7月の時刻表を見ると堤川-栄州の間、太白線〜嶺東線と言うルートで走るムグンファが1日1往復あって是非とも乗っておきたかった。しかし、この1月のダイヤ改定で列車が無くなってしまい、この区間、乗ることが出来なくなってしまった。
 或いは中央線と嶺東線を結ぶ栄州の短絡線も旅客列車の設定が無い。こんなんばっかりだから、どこまで乗れば全線完乗かはっきりしない。困った事だけど、今現時点での定期旅客列車が走る未乗線区は次の通りと考えている。

 京義線 ソウル-都羅山 55.8km
 中央線 龍山-清涼里  12.7km
 一山線 大化- 紙杻   19.2km
 果川線 南泰嶺-衿井  14.4km
安山線 衿井-烏耳島  26.0km
 盆唐線 宣陵-宝亭   27.7km

 京義線を除けば何れも首都圏電鉄線、ソウル首都圏の地下鉄ネットワークの一部であり、だいぶ追い詰めた感じがする。最も、各都市の地下鉄はまだまだ手付かずで残っているのであり、どこまで乗るかは別にして、全部乗るには先が長い。
 これで追い詰めたと思っていたのだけど、思わぬところに伏兵もいる。

 http://yama-taka.at.webry.info/200708/article_17.html

 貨物線である三陟線を走る観光列車があるのだそうだ。やれやれ。

1603列車 Mugunghwa 堤川(Jecheon)13:38→14:37栄州(Yeongju)

 廻りに乗るべき路線が無い堤川から何処に向かうか。ソウルに出るかとも思ったけど、今日はこれから大邱に向かう。大邱の地下鉄には乗った事がない。2路線だからのり潰すにはちょうど良い。
 大邱までの道、昨日辿った忠北線で大田に出てKTXに乗るか、清涼里まで出て、ソウルからKTXに乗るのが早いルートだろう。でも、両路線、丁度良い接続列車が無い。清涼里ゆきは1時間待ち、大田行きは2時間待ちだ。
 待ち時間が少ない列車を探してみると中央線の下り列車、安東ゆきがあり、これが栄州で釜山ゆきに接続する。慶北線から京釜線に入って大邱には18時過ぎ。実は大田経由よりも若干遅くなるのだけど、慶北線は夜行列車で通過しただけだから、昼間の列車に乗りなおしておく事は良いことだ。
 改札を待つ間に、駅前をちらっと

 駅前のロータリーにある石像。なんでしょうか。ちょっと可愛らしい。
 15分前改札のはずの韓国の鉄道だけど改札が始まったのは列車出発まで10分を切った頃。

 こんな飾り物が。へぇと思って近寄ると改札の人が慌てて、そっちじゃないとゼスチャー。こっちだよねとゼスチャーで返して写真を撮り、さてホームに向かおうとすると、水車の隣に東屋、そこでさっき乗ったムグンファの酒盛り組みが続きをやってた……
 ホームにあがる。隣のホーム、先ほどアウラジを往復してきたムグンファが機関車の向きを変え、出発を待っている。今度は14時のアウラジゆきだそうだ。列車が来るまでは5分弱。さすがにうどんを食べる時間は無いよなぁと売店でビールとおつまみだけ買っておく。その間に列車が到着。

 ほぼ定刻。他では見た事が無い塗装の機関車に引かれてます。
 5両だったか6両つないだ列車から堤川での下車客と共に、買い物客が降りてくる。御昼時を走る列車だが、ムグンファでの車内販売はどうやら中止されたようで、兵糧攻めにあっているに違いない。指定された座席は4人組の先客が向かい合わせにしてトランプをしていたので、敬遠して隣の車両の空席へ。最後尾の1両、セマウルのお下がりだった。かなり良い座席に落ち着くと列車が動き出す。先ほどの太白線が分かれてゆく。

 先ほど御買い上げのビールとチーズかまぼこ、かな。京釜線、湖南線系統だとHiteを売っている事が多いですけど、こちらはCass。チーズかまぼこは少々甘ったくて、口に合わず。コンビニ食的なものは韓国、ダメです。

 山の中をゆく中央線。こちらも絶賛工事中。車窓を高架とトンネルでつなぐ新線の建設現場が流れて。

 貨物の設備が流れるのも太白線と一緒。大きな工場と積み込み設備が流れてゆきます。こちらにいるのは無蓋車。

 栄州までは64km、一時間ほどのショートトリップ。不意に街が現れて、左に分かれてゆく分岐線。これ、乗ることの出来ない北栄州三角線。そして嶺東線が寄ってくると、乗換駅、栄州に到着。

 列車は観光地でもある安東まで行くけど、今日は栄州で乗換え。栄州はこの周辺の中心であるらしく相当数のお客さんが降りてゆく。
 30分ほどで江陵始発、嶺東〜慶北〜京釜線経由のムグンファがやって来る。それまでの待ち時間は駅前をぶらぶらするぐらいしか潰し方が無い。

 取り立てて何もなさそうだし、大人しく改札が空くのを待つ事にする。

1691列車 Mugunghwa 栄州(Yeongju)15:09→18:17東大邱(Dondaegu)

 ここも改札が開くのが遅い。もう5分を切ろうとする事にようやく開く。もっとも列車が到着するのは改札目の前、歩いて数歩の1番ホームであり、写真を撮りたいなどと思わない限りはそれで構わないのである。

 構内に留置されているトンイル(統一 Tongil)用の客車。韓国国内あちこち廻ってますが、この塗装でこの客車が残されている姿は初めて気付きました。

 中線に停まるセメント列車に機関車を連結。機関車の向きからすると中央線上り。電化区間を走るディーゼル列車?
 列車は待つ人は少なめ。その中に先頭のほうには二人組。恐らく機関士なのだろう。真ん中の辺りにも制服の二人組み。向こうは車掌らしい。

 少々遅れてこれから乗る列車が姿を現しました。
 乗り込みます。

 がら空きです。
 これから乗る慶北線。ここ栄州から京釜線の金泉を結ぶ115.2kmの路線。京釜、中央両幹線を結ぶ、日本であれば亜幹線といわれるであろう位置づけと思いきや、旅客列車に関しては平日3往復、休日は1往復増の4往復と言う本当に淋しいローカル線。今乗る列車が、その1往復増のムグンファですが、江陵や東海への観光客のための列車のようで、決して慶北線の需要に答えたものではないようです。ちなみに今は15時過ぎですが、今日の慶北線、これが最終列車。平日の場合は更に早く、14:20出発の栄州発釜山行ムグンファが最終になる訳で、沿線の小移動には全く使えないダイヤ、となってます。
 これも実際に乗ろうとすると大変でしょうが、2006年の8月に韓国を廻った時に釜山発慶北線経由江陵行きと言う夜行列車。この列車と対になる列車ですが、に乗りとおしたため、何気に乗れてしまったというタナボタ的路線。睡眠中に通ったが故、何も覚えていないから、今日が本当は初乗りなのかもしれない。
 さて。先ほど眺めたトンイルの客車、もう一度撮りたいなと思い、座席を移動してカメラを構える。

 列車が動き出して1枚。さて、もう1枚と思ったところに、何やら話しかけられました。ん?と思うとそこには制服姿。車掌さん。。。。韓国語は分からないが、「サジヌル」とかと言っているのは聞き取れる。「サジヌル=写真」だ。 
 ちょっと調子に乗りすぎたかなと思う。前回の旅行でも一度注意されているしな。やれやれ。
 何か良く分からないけど色々といわれる。とりあえず向こうに行ってくれたので自席に戻りふっと思っているとまたやって来た。色々言われるがどうやら写真を見せろと言っているらしい。これは困った事になった。消せ!と言われてもなぁ。コンパクトデジカメとデジタル一眼、どっちが被害が小さいだろう。ちょっと考え込み、じゃぁとさっき使っていたデジタル一眼の画像を見せる。
 どうやら咎められている訳ではないらしい、と分かり始めたのはこの辺りから。この車掌さんも写真を撮る人らしい。そして、着いて来いといわれる。無人の客車を1両越えると、ドアを開ける。その先は電源車。車販の商品が乱雑に置かれた荷物室。熱の篭る機器室を越えて行った先は、ほんとの本との最後尾。
 ドアを開けると

 さあ、撮れと。

 撮ります。結構揺れるので、不意に振り落とされないよう足を踏ん張りながら。撮った写真を見せると、もっとゆっくり撮ったらどうだと仰るので

 1/30sec。ちょっとブラしちゃいました……
 車掌さんのOKが出ると、さて、自席へ。

 戻るついでに機器室の中をちょっと。ディーゼル発電機、意外と小型のものが2機。独立した車両だけにどれだけ大きいものが入っているのかと想像していたのですが、本当に意外でした。
 さて、自席へ、とはならずにちょっと話をしようと。片言の英語が中心でこちらは韓国語の単語が。車掌さんは日本語の単語が少々出て来ます。で、聞かれたこと。
 「今度、日本にゆくのだけど」
 と言い出した後、

 EF 70-200 F2.8 IS
 EF 16- 35 F2.8

 幾らだと聞かれる。えぇ、自分が使わないカメラメーカのレンズの値段なんて、知らないですよと思いつつも、このぐらいじゃないですかと。でもそれじゃあまりに悪いので、日本に帰ったら、調べておくからメールアドレスを教えてくれと。と言うことで。
 さらには、こちらに来い、と自分の席を通り越して向かった先は隣の車両の隅っこ。車掌さんの席らしい。というかこちらの鉄道職員は列車が空いていると四席向かい合わせにしてどっかり座り込んでいる事、多いです。そんな訳で片言のやり取り、続行。そして車掌さんの乗務カバンから出てきたのはEOS 40D。仕事中も持ち歩いているんだ。何を撮るのかと興味津々でしたが、英語能力の欠如ゆえ、それは通じず。でも、鉄道ファンと言うわけではないらしいです。

 そんなこんなで、

 流れてゆく、割と穏やかなというか平凡な景色は殆ど見ていません。はぃ。

 この方の隣でずっとかなりのもどかしさを覚えながらのやり取り。会話集、堤川で無くさなければさぞかし役立ったでしょうに。
 これまた長閑な長閑なローカル線を2時間掛けて走り抜けると、京釜線との合流点、金泉。

 久し振りにたくさんの乗客をみましたけど、これは向かい側に停まっている釜山発栄州ゆきのムグンファから降りてきた人の群れが中心。もちろん、こちらの列車への乗車も結構あって、今までがら空きのムグンファもようやく旅客列車らしく。 

 速度も格段に上がり、大幹線を軽やかに駆け出すムグンファ。でも、終点の釜山まではまだ所要3時間。車掌さんもさすがに忙しくなったようで、本来の乗務員室に出ていたり、車内巡回をしたり、と言うことが多くなりました。っーか、あなた非番じゃなかったのですか……、と異邦人は思ってみたり。

 東大邱にはほぼ定刻の到着。ここまで3時間お世話になった車掌さんとはホームでお別れです。

大邱地下鉄


 夕暮れ時の東大邱駅。今日はこれから大邱の地下鉄に乗ります。1号線2号線の2路線で全部で55kmほど。ちょうど十字に交わるような路線なので、全部乗りとおすのに大よそ5時間といった所。頑張れば今日の終電までに乗り終えそうですけど、さすがにその気力はないので、ひとまず宿探しをした後、今日は1号線に乗車。改めて2号線に明日乗車と言う段取りで臨みます。
 手元の地球の歩き方によると東大邱の高速ターミナルの周辺にモーテルがあるというので

 バスターミナルを横目に少々歩くと確かにありました。どちらかと言うとこの毒々しさはラボホテルと訳すべきモーテル。まぁ良いかと、と適当な一軒に飛び込むと1泊30,000Wとの事。もうここにする事にして、部屋に入ると、まぁ昨日の所よりはまぁまぁな部屋。何といってもパソコンが備え付けてありました。
 荷物だけ置くと地下鉄へ。早いところ地下鉄を済ませて夕食にしたいし。考えてみるときちんとした食事は朝、アウラジで摂ったきり。

 KoRailの東大邱駅にぱっと見、案内が無かったので少々迷いましたが、地下鉄の入口、何のことは無い、高速バスターミナルのすぐ近く。
 入口から降りていって改札までの間に券売機らしきものが見当たらず、どこ?になってしまいましたが、

 ICチップ入りトークンの乗車券を無事、購入。大邱の場合は全区間均一1,100W。
 ひとまず東側の終点、安心を目指す事から大邱地下鉄、踏破開始。東大邱自体が市街地の若干東に寄っているようで、地下鉄の車内、一駅ごとに閑散としていって。

 車内はこんな感じ。ソウルや釜山1号線と同じような、標準サイズの車両みたい。
 ほぼ20分て終点、安心に到着。

 列車が引き上げ線へと消えてゆく間に自分は一旦改札を出て再びトークン1,100W也を購入。戻ってくると今度は1号線の西の果て、大谷を目指します。
 大邱地下鉄といえばどうしても忘れてはいけないのが、2003年に発生した列車火災事故。
 その後の対策と思われる部分、列車が空いている間に少々撮ってみました。

 非常通報用の送話器。

 こちらは消火器。目立つ所に有ります。

 非常用ドアコックの位置と操作方法を明示。

 消火器、もう一個ありました。

 こちらは各駅のホームで。防火服や酸素ボンベ、でしょうか。
 最後に

 車両銘板。2005年の標記があり、恐らく不燃化改造をしたのでしょうね。
 列車は中心地に向かうに連れて込み始めて、火災現場となった中央路で立客ずっしりの満員に。

 2号線乗換えの半月堂でお客さん多少入れ替わった後は、降りる一方。少しずつ少しずつ列車が空いてきて、そろそろ閑散としてくる頃、終点、大谷。
 安心からは50分ほどの行程。鉄道が好きといっても、さすがに地上が見えず変化の少ない地下鉄を乗りとおすのは辛く感じて来ます。でもまた地下鉄に乗らないと宿には戻れない……。

 大谷から今度は中央路で下車。時刻は21時を過ぎたところ。東大邱で地下鉄に乗ってからもうすぐ2時間。もし、今日このまま2号線を乗りに行ったなら、ギリギリ今日のうちに大邱の地下鉄を完乗出来て、明日は釜山を少々やっつける、何てことも出来るでしょうが。そこまではやらず今日はこれでおしまい。地球の歩き方に出てきた店で食事をしていこうと思います。

 さすがに21時を過ぎただけあって日がとっぷり暮れていました。この辺り、先ほどの乗車っぷりが示すとおり、大邱の中心である様子。
 目指す店はこちら

 タロクッパフの名店だとか。タロクッパフが何?と言う質問には答えられませんけどね。牛の血の煮凝りを使ったスープがご飯と別々に出てくるもの、らしいのですが。

 名店だけあって、芸能人のサインが一杯。ん?
 時間が時間だけに店内は空いていて、テーブル席に2〜3組ほど。奥の座敷に宴会なのか酒を飲んでいるグループ。そうか酒があるのかと思ったけど、今日は何故か頼む気分ではなく。

 タロクッパフが出てきました。

 これがタロクッパフ。
 スープそのものです。で、スープ自体は非常に美味しい。ただ、牛の血の煮凝り。これが大量に入っているのが食べにくく、ちょっと持て余し気味。韓国に来て食べられないものって余り無かったのですが、これは少々辛かった。
 これで6,000W。スープだけなら、お代わりしたいな、と。

 さて、宿に戻るためにもう一度地下鉄。中央洞から安心ゆきに乗りますが、時間が遅くなったからなのか、今度はそれほど混まずに、10分しないうちに東大邱の駅まで。地下鉄に乗りとおすのは10分ちょっとが一番良いようです。
 駅から歩いてバスターミナルの向こう、モーテル街まで戻ります。

 夜になって毒々しさをましたその建物が今日の寝床。
 備え付けのPCがあったので、回線を拝借して今まで書き溜めた分の恥辱をここで公開。今日の写真の整理やら何やらを進めるともう日付の変わる頃。さすがに疲れて、長く、濃厚な一日にピリオドを打つ事にします。

サイトアップ アクセスカウンタ

 サイトアップはお休み
 アクセスカウンタはチェックせず。
 万歩計は12,767