よねしろ崩れ その2

 
 通勤客の去った快速鹿角花輪行きが本線筋を飛ばしてゆく。この時間になってもまだ明るい奥羽線。朝眺めた杉の木立やじゅんさい沼が通り過ぎる。
 東能代でも帰宅客を乗せる。確実に秋田から乗り通している人、減って行ってる。
 
 19時半前、まだ、ほんのり外が明るい。考えてみるともうすぐ夏至だ。
 酔いが少々廻ったのか少し堕ちた。気が付くとさすがに真っ暗。秋田を出て1時間半以上が経過している。もうすぐ大館。  
 
 日が暮れると夜汽車の様相。モノクロームにしたら、きっと何時の写真か分からないだろうな。
 
 大館で走る向きが変わる。キハ581502がこんどの先頭車。
 
 振り返ると西の空、まだほんのり明るい。19:55ですが都会に居るときっと気付かないだろうなぁ。
 
 10分ほど停まった汽車は、20時丁度、花輪線へと歩みを進める。鹿角花輪への最終列車。リクライニングシートを並べた車内に人影はまばら。秋田から乗り通している人も自分乗っているクルマには多分3人。他も推して知るべし、だろう。すっかり主のいなくなった座席、車掌が巡回の時に向きを変えている。
 キハ58の引退と共にこの列車、大館で系統分割、なんて噂をどこかで聞いたけど、まぁ仕方ないかも知れない。
 大滝温泉で下り列車と行き違い。試しに窓を開けてみた。恐ろしく重い窓、無理やり開けると蛙の鳴き声がこの一体を支配している。久し振り聴いた気がする、蛙の声なんて。下り列車は何処かから流れてきたキハ110の3両編成。向こうも人影はまばら。向こうが動き出すと共にこちらも動く。
 十和田南でまた走る向きが変わる。数少ない乗客がまた降りてゆく。秋田から乗り通していた人もまた消える。寂しい車内がさらに寂しく。
 
 結局最後は先頭に立つキハ5854。
 最後の区間、淡々と走って21時なろうかという時刻に、終着、鹿角花輪に。
 
 駅前はすっかり暗く寂しく、タクシーの姿だけがやけに目立つ。
 まだ夜の9時だけど、この先に向かう列車は既に無い。大館に戻る事も出来ない。この寂しい街に投宿する事になる。今日は駅前の宿を用意してある。何かの宴会が終わったのか、妙に賑々しいホテルだけが、街が生きている証なのかもしれない。