蒼い絶滅危惧種 その3

 意外と寝付けなかった。そんなに飲んだつもりはないのだが夜中に胃痛に悩まされたり。それでも長岡で機関車を交換しただのなんだのは全く覚えていないので、それなりに寝たのだろう。寝たに違いない。
 微妙に明るくなったのが気になりカーテンを開ける。重たい空の向こうに薄明かりが見えている。どうやら冬の夜明けが広がるらしい。試しに個室のドアを開けてみる。窓ガラスの向こうに鉛色の日本海。白い波が砕けていた。
 しばらくぼんやりしてみる。少し眠いが、体は楽である。しっかり足を伸ばせるし寝返りも打てるベットはやはり体に優しいかった。

 駅に停まる。羽後本荘である。まだ朝の6時。外は雨が降っているようだ。もっと寒ければ雪になるのだろう。列車を降りたお客さんが傘を差しながら歩いて行くのが見える。まもなく列車は動き出す。
 もう一眠りしようかとも思ったが結局起きる事にした。秋田に着いたら長岡で交代したであろう機関車を見に行きたい。寝間着を着替えておく。
 空はだんだん明るくなる。再び海が見える。

 西の空はまだ重たげだ。
 案内放送が入る。あと20分で秋田到着との事。ほぼ定刻のようだ。B寝台ならそろそろ人が動く気配に満ちてくる頃だろうか。列車は内陸に入る。家が建て込んでくると秋田市内。

雄物川をゆっくりと渡る。ずいぶんと水嵩が増している。大雨が降ったのかも知れない。あと5分で秋田到着の案内。2分ほど遅れているそうだ。本来なら3分停車だが、発車準備出来次第、出発との事。
 秋田はあけぼのがメインターゲットとする街。結構たくさんの人が降りて行く。停車時間は1分ぐらいか。本来ならここで駅弁を買うことも出来るのだが、すぐに発車ベルが鳴る。

機関車はEF81-139に変わっているは分かった。それだけ確認すると席に戻る。

 列車は慌ただしく秋田を発車する。秋田を定刻に発車した旨、案内があるのと同時に乗務員が変わったとのことで改めて紹介がある。羽後本荘から立席特急券での乗車も認められていて、秋田からのお客さんは4号車へどうぞ、とのこと。一つのベットは3人掛けの座席としてお使い下さい、ご協力をお願いしますなんて事も言っていたが、あけぼのの昼間利用客、意外と多いのだろうか。


 列車は秋田市内を北に向かう。秋田駅から数分。秋田機関区の跡地を通る。ED75DD51、DE10。DD14にDE15も居たのをよく覚えている。賑やかな機関区だった。いっそのこと整地してくれれば秋田機関区は美しい思い出になるだろうが、機関区の役目を果たさなくなってからもうすぐ20年。いつまで放置が続くのだろうかと思う。

 列車が秋田市内から郊外の田園地帯に抜ける。少し日が射してきたが、刈り入れが終わった田圃を包む空気は秋ではなくて冬のものである。昨日の伊那路は寒かったけど、秋の寒さ。今日の秋田路はもはや冬そのもの。一晩で季節が一つ進んでしまった感がある。

 個室のベットをソファーに戻してしばらくPCに向かう。昨日はまだ手が着いていなかったあけぼのの乗車記をまとめる。写真のリンクがまだだから公開までは持って行けないが、13日分に関しては早めに公開出来そうだ。

 列車は停車と運転停車を混ぜ合いながら北へ進む。時に快速電車に道を譲り、貨物列車とはお互いに譲り合いという感じ。東能代から内陸に入ると米代川がちらちら見える。こちらも何時になく水量が豊か。
 大館に到着。ここの鶏めしは間違いなくNo1。予約してけばあけぼのの到着に合わせてホームに持ってきてくれるそうだが、その対応を怠ってしまったので、今日は鶏めし抜き。夜は胃痛に悩まされたが、この時間、胃痛はすっかり良くなって、むしろ空腹を感じるほど。いい加減何か食べたいが、食料が手にはいるのは終着の青森まで持ち越しになりそうだ。
 大館でWiMAXの電波を拾ったので、12日までの分、公開完了。課題になっていた8月18日分も体裁が整う。さすがに発車してしばらくすると電波が途絶える。この先は弘前かなと思う。
 9時を過ぎて弘前に到着。個室がホームと反対側なので降車の様子はよくわからない。あけぼのがターゲットとするのは弘前まで、だろうか。上野からまもなく12時間。朝東京を出ても9時には弘前には着けないし、弘前までその日のうちに着こうとすると20時出発ぐらいが限界だろう。
 しかし、まだ4時台の鶴岡から9時の弘前まで。この列車の守備範囲は広過ぎる。 
 最後の一区間。さすがにがら空きだろうか。個室に居るから様子は分からないが、10時に青森に着くのであれば今朝出発する新幹線や飛行機で十分である。青森で掃除をするために列車は走っているような気もしなくはない。
 最後はごろりとベットに横になって過ごしてみる。明るい時間に個室をみると天井が実に高くて広々としていることに今更ながら思いが至る。ぼんやりはっきりしない空を眺めて青森まで過ごしてみた。

 青森到着は定刻の9:55。改めて先頭に立つ機関車を眺める。写真を撮っていると昨日上野で見かけたようなカメラのお客さんがちらちら集まってきて機関車を撮る。その間にEF81-139は切り離され、奥側へと消えて行く。そして

 切妻の電源車が顔を出すことになる。

 一方の上野側。入替機関車が連結されて車庫へと引き上げる準備中。隣には函館から新青森へ向かう特急が停まっていた。