あけぼの 上京

 さて、目の前のあけぼのに立ち戻ろう。
 運転所から入れ換え機関車にエスコートされてやってきた寝台車がドアを開け、客を迎える。出発まで20分。まずは入れ換え機関車側を眺めてみる。


 切り離し作業が進んでいる。

 機関車が離れてゆくと電源車のスクエアな顔が姿を現す。
 今日は昼過ぎに秋田駅でB個室を確保する事ができた。荷物をまずは個室に置いてゆく。そして先頭の機関車を見にゆく。まずは自分のホーム側。

 記念撮影に興じる人がちらほら。そして機関車を撮影する人も。線路を挟んで隣のホームからは三脚を構えた人たちが20人近くいるだろうか。時折、
「階段の隣の人、邪魔〜」
 みたいな少々甲高い声が向かいから。葬送には付き物ではあるが、みっともない。

 だいぶ時間が無くなってくる。跨線橋に上がって数枚撮影。

 ホームの反対側にも行ってみたが、入れて貰える雰囲気ではなく、ロクに撮れないまま時間が切れる。20分という持ち時間。案外と短いなぁと思う事になる。

 青森駅頭には上野行寝台特急あけぼのの出発時間が迫っている。ここで今日のスターティングメンバーを発表しよう。

 EF81-139  電気機関車 
 オハネフ25-205 レディースゴロンとカー
 オハネ25-210  B寝台車
 オハネ25-220  B寝台車
 オハネフ25-202 羽後本荘まで座席利用
 オハネ25-554  B個室寝台
 オハネ25-555  B個室寝台
 スロネ25-551  A個室寝台
 オハネフ24-8  ゴロンとカー
 カニ24-109   電源車

 以上10両編成。人気なんだし増結すれば?と思うが、そのつもりはないようだ。
 1号車から4号車までは金帯を巻いた車両。元々あさかぜ1、4号に使われたものが、あさかぜの廃止ではくつるに転用され、はくつるの廃止であけぼのにやって来たのではないかと思うが、定かではない。金帯を巻いたブルートレーンというとリニューアルを受けたあさかぜ、個室寝台車を連ねた北斗星といったあたりなので、中身は一緒でもどこか高級感を感じる。感じるのだが、その車両があけぼのに付いていると、どこかよそ物、流れ物の感が漂うような気がしている。
 5,6,7号車は1991年に登場した個室寝台車。改造自体が当時の土崎工場、今の秋田車両センターで行われているし、現代の出世列車を象徴するような車両ではある。
 最後、8号車は白帯車。車両自体の来歴は知らないが、あけぼのは1980年に20系から24系に置き換えられて以来、ずっと24系であったから、由緒正しい直系という匂いがする。そんな組み合わせで今日は上野を目指す。
 そして車内を少々紹介しておこう。



 B寝台車を改めて撮るのも変な気がするのだが、これはこれで絶滅危惧種だから、きちんと記録しておかねばならない。まだ主のいない区画があったから撮っておく。この車両は青森から全区間を寝台として使用されるので、すでに毛布とシーツ、浴衣が用意されている。一方、4号車は羽後本荘まで座席車扱い。指定席券を用意すれば乗車可能な扱いである。奥羽北線の昼行列車を補うための扱いだ。この車両はたくさんのお客さんが乗っている。中には1区画に6人がいるところもあって、なかなかの盛況ぶり。

 次にB個室の風景を少々。この車両に乗るのは初めてである。

 真ん中に通路を配して、両側に下段相当の個室、上段相当の1人用個室がある。線路と平行に個室が並ぶ形で定員は28人。北斗星などで使われる1人用個室寝台は線路と直角に部屋が並び定員は18人程度だから、相当な詰め込みタイプである。

 こちらは上段。隣と共通の階段があって、そこにドアがある。ベットは一部が跳ね上げるようになっていて、座る時は多少空間が確保されるように考慮されているようだ。

 自分があてがわれたのは下段。こちらは通路に直接面して扉がある。扉の背は低く、屈むような感じでベットに潜り込む感じになる。中にはほとんどすでにベットがセットされた状態。

 空調、照明とミュージックサービスのパネルがある。空調は冷暖房と換気の二つ。音楽のサービスは最大4ch設定だが、実際にサービスをしているのは2chだけだった。

 扉を閉める。少々手荒い感じの作りが気になる。よく言えば手作り感といった所。車両の内装を新しく作り込むことになれてない鉄道工場の手による物だからだろうとは思う。

 ささやかなテーブルと鏡。夕食のお弁当をおいておく。ちなみにくず物入れも揃っている。

 横になって部屋の中を見ると妙な出っ張り。これは上段の個室へゆくための階段となる。本来は出っ張り側に足を向けるのが正なのだろうと思われる。ただ、それだと進行方向と逆になっちゃうのよねん。

 部屋の中には灰皿。寝台を使っていない時は喫煙可能ということになる。最近の電車はタバコを吸えないのが当たり前なので、ちょっと驚いた。

 寝台車なので浴衣は完備。

 開放型寝台車の方にもあったが、洗面所には冷水機がある。国鉄型の特急列車には昼行、夜行問わず必ず付いていたアイテム。薄っぺらい紙コップも久しぶりに見た。最近は485系でも撤去されているから、先程のいなほでもお目に掛からなかった。
 そろそろ部屋に戻る。18:23に出発、の筈だが少々遅れている。津軽海峡線の列車に遅れがあって信号が代わり次第の発車とのこと。下段の個室は座ってという姿勢が取れないので、ベットの上に座り込んで、発車を待つ。案内があって動き出したのは18:30のこと。ホームで邪魔と叫んでいた人たちには幸運だったのかも知れない。


 買い求めたビールは窓際に置いておく。冬の夜行列車では、カーテンの向こうに飲み物を置いておけば、冷えたままで取っておける事がある。
 18:30になって発車の案内。まもなくごとりと列車が動き出す。オルゴールがなって停車駅と到着時刻の案内がある。このままの遅れで参りますととの断り付きで定刻に7分を足した案内が秋田まで続く。秋田から先はまた後ほどとのこと。車内販売はないとのこと。車掌は秋田で交代だそうだ。まもなく新青森到着。律儀に新幹線接続の案内。この時間、まだ東京まで行く列車がある。降りる人はいなかっただろうが。新青森の明るいホームが流れて行くと、外は漆黒となる。12時間少々の長い時間。今までの旅を振り返り、綴るには最適の時間かもしれないが、やる気が失せた。PCは仕舞い込んで缶ビールを空ける。夕食には早いような気がするのでまずは1本、つまみと共に。二本目を開けるときになって、じゃぁ手元の駅弁、食べましょうか、と言うことになった。今日三食目の駅弁となる。