朝までよく寝た。目覚めると7時過ぎ。外はまぁまぁ晴れている。マレーシア、ペナン島ジョージタウンのホテルで迎える朝。

相変わらず冴えない景色だが3泊したホテルも今日でチェックアウト。次の街に向かう。移動は午後からなので午前中はゆっくり食事をして、もう少しジョージタウンを見て廻ってから出掛けようかと思う。

 身支度をしてホテルの朝食。3回目の食事は少々手を変えた感はあるものの、昨日のほうが好みだった。相変わらず代用食感の溢れる鳥のハムを頂く。これなら日本の鶏はむの方が良いかも知れないと思う。そして味の変わらぬ紅茶をゆっくりと頂き、部屋に戻る。
 軽く観光をしようと思うが、さて。CATに乗って一周しようかなんて結論が出る。ここ二日で行ってないイースト&オリエンタルホテルの界隈を歩いてみたい。
 昨日の午前中に学習をしたのでCATの通り道をめがけて歩く。今度はCATのバス停にたどり着く。コムタの二つ先ぐらいのバス停だろうか。

 途中、崩れ掛かった廃墟の軒先だけうまく使って営業しているお店なんて物を見つけておぉと思う事になる。

 待つほど無くCATはやってくる。このただバス。地元の人で賑わっているが今日は座れる。再びコムタの鼻先をかすめ、マスジット・カピタン・クリン通りを行き、 要塞の横を通ってJETTYへ行く。ここで
「前のバスに乗り換えて」
 と運転士。CATと言うバス、ジョージタウンの循環バスではあるが、JETTYが起終点であり、通しの利用は出来ないらしい。

 その前のバス。なにやらアニメっぽいキャラクターが描かれている。

 「CULTURE JAPAN CON」とあり、なにやら日本文化を紹介するイベントがペナンで行われるらしいのだが、

 ANIME DOUJIN COSPLAY CARD GAME
 なんて文字も。う〜ん良いのかと思いつつも、いわゆるCOOL JAPANの先兵だからなあ。
 その痛車に乗ってジョージタウンの続き。市庁舎や高等裁判所を経て 北京ホテルの近くで降りる。この近くにブルーマンションがある。ブルーマンションは決まった時間にしか公開していないが、外から一目見るぐらいなら、まぁ良いだろうと。

 向こうに青い建物が見える。地図を見なくても一目で区別が付くぐらいの深い青。近付いてみる。


 公開は11時からなので玄関越しに眺めるだけ。青いね、と言うのがよく分かるし、きっと豪勢な作りなのだろうとは思うが、外から見ると、青い建物、というだけである。 少し街をぷらぷらする。この辺りは昨日一昨日歩いていないので少々新鮮。

 何気ない建物の造形に心を奪われる。こういう街歩きは楽しい。
 ちょっと歩くと、一昨日来た所に出る。

 ODEONという名の映画館。横浜にもあったなぁと思う。妙に親近感がわく。
 先日はこの辺からバスに乗った。でも二日滞在した後は、ここからホテルがさほどの距離でない事を知っている。歩いてホテルの方へぷらぷらと。最後に妻の買い物に付き合う。靴の路面店へ。ひとまず納得行くまで買い物して貰う。これでホテルに戻ると11時。
 チェックアウトは12時である。最後に荷物を括ると11時半過ぎ、ちょっと早いけどチェックアウトだ。
 荷物は一度ホテルに預ける。昼食を食べに行くが13時にはホテルに戻り、次の移動となる。ジョージタウンで最後の食事。コムタに行く途中、馴染みになった道の途中に有る店にした。

 快楽餐廳(粥)。
 茶餐廳ってのは香港で見かける、中華も洋食も何でも出す店の事。茶餐廳を名乗る店があるのは華僑の多いジョージタウンならではなのだけど、それに(粥)が付くのは何とも不思議。何度か店の前を通りかかったけど普通にいろいろと出す店みたいで、中華粥専門店ではないみたいだし。この(粥)にはまり、我が家では言葉尻に(粥)を付けるのが流行したが、それはどうでも良い情報である。
 店に入る。昼間から深夜までやっているおおきな店だが、この時間はまだまだ空いている。注文は



 福建麺に麻婆茄子に空芯菜炒め。そして

 白珈琲。焙煎する時にマーガリンを加えるという不思議な飲み物だが、意外と美味しい。そして、(粥)はどう見ても関係なかった。美味しく頂き2人で30リンギほど。
 ホテルに戻り、預けた荷物を受け取る。そしてJETTYまでタクシーをお願いする。

 タクシーはGAMAやコムタを横目にジョージタウンの街を行く。何度も歩いたマスジット・カピタン・クリン通りからLittle Indeaの横を抜けてJETTYのバスターミナルまで運ばれる。さて、これから対岸のバタワースへ渡る。
 JETTYとバタワースの間はフェリーが頻発している。車も乗るような船なので香港島と九龍を行くスターフェリーよりもうんと大きく、車も一緒に運べるような船が行き交う。ペナン島とバタワースの間には橋も架かっていてフェリーに乗らずとも行き来は出来るのだが、直接中心地に行けるせいかフェリーに乗り込む車の列も長い。

 いつの間にか乗船口の待合室までたどり着いている。ここまで運賃を払う窓口は無かった。ジョージタウンとバタワースを結ぶ船はバタワースからは運賃1.2リンギなのだが、ジョージタウンから乗る時は無料なのである。バタワースで往復運賃を払う体らしいのだけど、自分たちは飛行機でペナン島入りしてフェリーで対岸に向かうから、フェリー代は全く払っていない。若干気が咎めるが、バタワースからジョージタウンにフェリーで行って飛行機に乗った人も居るに違いないから、あまり深く考えない事にする。
 クルマが次々とフェリーへと乗り込むのを横目にベンチで待つ。クルマが乗り切った所で人の案内が始まる。さて乗ろうかと席を立とうとした瞬間、はいここまでとゲートが閉じられる。えっという感じ。20〜30人ぐらいしか乗せておらず、待合室には50人ぐらい残されたか。直前でゲートを閉められた人が猛烈に抗議をし続ける。仕方ないと言った体で通して貰えたが、大多数は取り残される。すぐ詰めかけないと乗れないのか〜と頭を抱える事になるが、何のことはない、次のフェリーが既に待ちかまえている。今度はクルマは載せず、人だけの便らしい。

 先程、クルマを満載した便が先に出航してゆく。


 こちらは車載甲板はがら空き。人だけしばらく乗せた後、ゲートが上がる。まもなく出航。
 背後にジョージタウンが遠ざかって行く。一つずば抜けて高いコムタのビル。そしてその下に広がる穏やかな街。今はちょうど昼の惰眠を貪る頃かなと思う。再訪したい街が一つ頭に刻まれる事になる。

 対岸のバタワースまでは15分ほどの船の旅。何度か同じ形のフェリーと行き違う間に対岸が近寄ってくる。大きな貨物船が停泊している。古来からの貿易港としてのペナンの役割は今はバタワースが担っているらしい。

 フェリーがバタワースに着岸したのは13:45過ぎ。何とも殺風景な所だが、ここは交通の結節点。フェリーを降りたところにすぐバスターミナルがあり、各地への長距離バスが発着する。そして


 線路も見える。もうちょっと歩くとKTM、マレー国鉄のバタワース駅もある。
 今日はバタワースの駅へ。ほとんどの人がバス乗り場へと向かい、駅へ向かう人は数えるほど。歩道橋を5分弱歩くとホームが見える。

 真新しい立派なホームだが、今のところ列車の姿は見えない。線路を渡ると、輪をかけて殺風景な所であり、その中に駅が建っている。プレハブの仮駅舎だ。中には外国人を中心に50人ぐらいだろうか、列車の発車を待っている。
 今日はバタワースから列車に乗る。行き先は隣国タイの首都、バンコク。マレーシアとタイにまたがり運転される国際列車に乗る。バタワースの発車はマレーシア時間の14:30。あと30分少々である。一昨日買い求めた切符には
「30分前には来ててね」
 的なことが書いているのでそれに従って出てきた。
 これから乗る列車はタイ国鉄の車両で、前日バンコクを14:45に出発した35列車が13:30にバタワースに到着。1時間後の14:30に36列車として折り返す。でもこれは定刻に走れば、ということであって、実際にはバンコクを出発する時点である程度遅れる。バンコク市内では交通渋滞の影響で道路の方が優先されるからさらに遅れる。そんな感じでバンコク発の下り列車は遅れて到着。折り返しの列車はさらに遅れるという事になっている。

 今日も定刻なら13:30に着く35列車、当然のように姿を現していない。仕方ないので列車がくるのを気長に待つ事になる。
 切符売り場には8月2日から14日までの36列車の乗車券は売り切れと案内が出ている。14日とは今日の事だが、マジックで直されて14日と書かれているから、当日では買えないぐらいの意味なのだろう。ちなみに12日の時点では2人分の寝台を上下で購入できる程度に融通は効いた。

 プレハブの駅舎の前には両替商兼売店みたいな店がある。簡単な飲み物、お菓子ぐらいは買えるが食事なんかは無理そうである。

 そして保存蒸機の姿も見える。あまり大事にされているようには見えないが、鉄道の要所らしい景色である。
 駅にもどる。人が動き始めた。時刻は14:20過ぎ。特に案内は無いようだが、付いて行って見る。先程のホームまで来ると

 機関車の姿が見えた。どうやら35列車、50分ほど遅れて到着の様子。意外と早く来たものだと思う。


 35、36列車はタイ国鉄の寝台車がマレーシアのバタワースまで乗り入れるのだが、マレーシア=タイ国境のパダンブサールから先はマレー国鉄の機関車が牽引をする。いかにも国際列車といいうアンバランスな姿でバタワースの駅に停まる。

 機関車1両に寝台車2両という体の国際列車。別の機関車が後ろに近付いて連結。これが36列車の牽引機となる。

 車内は清掃の真っ最中。まず前側9号車の清掃が終わりお客さんが車内に乗り込む。そして10号車の清掃も完了。自分たちも乗り込もう。荷物の積み込みを手伝ってくれる親切なおじさんが居て助かる。宛てがわれた席には先客が居て困惑する。互いに切符を見せあうと、自分たちの方が正しく、先方が間違っていることが分かり、席をチェンジ。ようやく指定された席に落ち着く。


 タイの二等寝台車はプルマン式。昼間は4人掛けの座席車として運用になる。乗っているのは外国人が殆ど。先程、席を間違えていた相手はフランス人らしいし、通路を挟んで隣も白人。白人系が約半分。マレー系インド系などが3割。残りがアジア系だろうか。明らかに日本人と分かる人は今のところ見かけていない。
 そんな観察をしてから席に座る。荷棚は通路上にはあるが大きくはないので、スーツケースは進行方向前の座席の上に載せる。そして二人で前を向いて座るとまぁ収まる感じになる。
 席に落ち着く。早速乗務員からタイの入国書類を配られる。国際列車に乗っ事を実感する頃、列車は動き出す。14:40過ぎなので定刻より10分程度の遅れで済んでいる。立派立派、と思ってしまうのは、どうかしているのかなぁ。
 列車はバタワースをゆっくりと離れて行く。

 古い線路が分かれて行くのが見えたが、マレー国鉄は線路改良工事の真っ最中。改良と言うより新しい線路を引くに近い事をやっているようだ。列車は速度に乗ると流れるように走る。
 まもなく、ブキッ・ムルタジャム駅に到着。ここがシンガポール領ウッドランドへ伸びるウエストコースト線とタイ国境へ伸びるケダ線との分岐駅である。

 意外とたくさんのお客さん、明らかに地元の人が乗っている。36列車は寝台車2両という列車だが、マレーシア国内ではあくまで座席車扱いである、らしい。どこのボックスも外国人が二人で使っている所ばかりであり、地元の人には申し訳ない。スーツケースを通路に出したりして席を作り、乗ってきた地元の人に座ってもらう事にする。

 街を離れると列車は椰子の木らしい森を横目に行く。森というより畑かなぁ。線路の脇は線路の工事現場だったり、古い線路が現れたり。時折、街も現れる。イオンのショッピングセンターが現れたり。そして真新しい駅が流れてゆく。

 北上にするに従い、田園らしい光景もたまに見えるようになる。基本的には変化に乏しい単調な景色。この単調さはクアラルンプールからシンガポールでも経験済ではある。ただ、北に向かうゲタ線。滑らかに快調に走ってゆく。
 列車はアロースターに到着。今まで乗ってきた地元のお客さんが降りてゆく。列車はしばらく止まるようだ。

 立派な駅にちょこんと停まるバンコク行き36列車。 

 アロースターからさらに北へ伸びる線路を眺める。しばらく停まっているので行き違いでもあるのかと思ったけど、5分ほどで発車となる。
 地元の人が降りていって多少空いた36列車。

 複線の立派な線路には架線柱らしい工事も進んでいて、複線電化なんて工事でもしているのだろうか。
 「パスポートコントロール!」と車掌が触れて廻るとマレーシアとタイの国境駅、パダンブサール。バタワースからの160kmほどの距離を3時間程で来ている。体感ほど早くないが、なかなかの快速ぶりである。
 荷物は降ろさなくても良いそうで、パスポートと貴重品だけ持って列車を降りる。目の前の駅舎に

 マレー語表記だが、何となく出入国窓口があることは分かり、右に向かう。小さな免税店がある向こうに、まずはマレーシアの出国審査所がある。無事にスタンプが押され今度は左に。そしてタイの入国審査となる。こちらも特に問題なし。入国完了となると先程と同じところに戻っていた。小さな駅舎を反時計回りに一周しただけでマレーシアの出国とタイの入国が完了した事になる。

 ホームに戻る。書類上すでにタイに居ることになっているが、ここはまだマレーシアのはず。
 発車の時間は良く知らないが、まだまだ列車は停まっているようだ。レストランの案内に従い、2階に上がってみる。

 ちょっとした売店がある。バタワースの両替兼売店よりは大きいぐらい。ちょっとした食事も出来るようだ。

 二階の通路の先は特に支障なく外に出れそう。このままマレーシアに戻ってしまえそうだが、トラブルの元になるのでやめる。写真だけ撮ってホームに戻る。先程までエスコートしてくれたKTMの機関車は既に姿が無い。変わりにSRTの機関車が来るのだろうが、そちらはまだ姿を見せていない。

 ホームに戻ると出入国手続きを終えた乗客たちがホームでぶらぶらと。二階の売店で買った食べ物をベンチで食べる人がいたり、タバコを吸う人が居たり。
 ふと思い立って先程の免税店を見てみる。洋酒やタバコだけでなくビールも売っている。ケース売りもあるが冷蔵ケースもあってばら売りもあるようだ。Tigerを一缶買い求める。3リンギであった。マレーシアの街中だと7.5リンギしたから、4.5リンギは税金だという事。しかしビール一缶であってもパスポートの提示を求められ、番号を控えられたのには笑った。

 ホームをタイ側に少し行ってみる。まだ機関車は着いておらず、ホームには荷物が山積みになっている。何だろうなぁと思っていると、答えがやって来た。

 タイ国鉄の機関車が荷物車を1両つないで入ってくる。 

 連結すると機関車+2両だったささやかな列車は機関車+3両になって少々見栄えがするようになる。

 山になっていた荷物が列車に積まれてゆく。そろそろ席に戻ろうかと思う。
 先程、バタワースで荷物を積むのを手伝ってくれた親切なおじさん。上着を着て制帽を被り、この列車の車掌長に化けていた。マレー国鉄管内では、マレー国鉄の乗務員に遠慮して白シャツおじさんになっていたようだ。
 他にも、夕食の注文をとりに来る人。食堂車は今のところ連結されていないが、この先、ハジャイで連結されるはずである。ラミネート加工されたメニューを手に一つ一つのボックスというか寝台を廻る。

 この人に頼むと席まで夕食が運ばれるそうで、適当に定食メニューを二人分、頼んでみた。一人前190バーツだから結構いい値段。
 国鉄の係員なのかどうか定かではないが、両替商が通路を廻ったりして、タイの機関車が着いたとたんに車内はにぎやかになる

 先程買い求めた免税のTiger、スナック菓子をつまみに飲んでみる。まだマレーシア国内だが、免税ビール。免税価格の3リンギは約90円だが、市場価格の7.5リンギは225円となる。今まで日本と変わらない値段のビールを飲んでいたのである。
 パダンブサールに着いて1時間ほど。列車が動き出す。ふと思い出した。ここが国境であることを。マレーシアとタイの国境を見たかったのだが 

 子供がこちらを見ている。んんん?と思っていると沿線には黄色が目立つ。明らかにタイの雰囲気。気付かぬ間にマレーシア領からタイ領へ足を踏み入れていた。
 パタンブサールの街を離れると、沿線は椰子だかバナナだか分からぬ木々が生い茂る、秘境が如き雰囲気に化けた。そして列車はえらく揺れる。
 気になって最後尾のデッキに立ってみた。貫通路を小さく開けて外を見てみる。

 線路は単線。明らかに細道が続いている。先程の立派な線路とは大違いだ。沿線の景色といい、列車の乗り心地といい、国境を越えてから目に見えて変わったのは、単なる旅人には愉快ではあるが、列車を走らす当事者にとっては悩みの種に違いない。せっかくマレー国鉄が線路を新しくしても、国境の先がこんな調子では宝の持ち腐れになってしまうだろうなぁと思う。
 とはいえ昔ながらのローカル線のような乗り心地は楽しい。街が拓けると家の軒先にタイ王室旗とタイ国旗が翻る景色も悪くない。そして今日一日の終わりを告げるように西の空が赤くなる。

 手元の時計は18時20分。でもマレーシアとタイでは1時間時差があるから、マレー時間で言うと19時を過ぎている事になる。少しずつ暮れてゆく景色を眺めていると速度が緩む。線路が幾重にも分かれて体を休める機関車が姿を現す。タイ国鉄の南の拠点、ハジャイである。
 18時半過ぎにハジャイに着く。駅に着いたとたんにたくさんの物売りが乗ってきた。手にしているのはフライドチキン。タイ南部はムスリムが多いから当然のようにチキンばかりとなる。

 ためしに買ってみたら2ピースで70バーツ。結構高いなぁと思う。
 列車はホームに着いた直後、間髪居れずに反対側へと動き出す。もう発車、では無くて入れ替え作業。ハジャイまで寝台車2両に荷物車1両だったが、今乗っているのは10号車。隣は9号車。つまりあと8両があるのであり、ハジャイで増結するのである。むしろバタワースからの2両編成はおまけで、ハジャイからの8両が本編成というのかも知れない。
 2両の寝台車。荷物車がどうなったか知らない、がパタンブサール側に引き上げられた後、再びハジャイのホームへ。今度は1番線というべきホームに入り、がっしゃんと本編成に連結となる。
 しばらく停まって居そうなのでホームに降りる。


 堂々10両編成となった36列車バンコク行き。物売りの売店やら、見送りの人やら、日本の夜行列車には無くなった光景がそこには広がる。いいなぁと思う。
 ビールを買おうと思ったら、ホームの一角にコンビニみたいな売店があったので入る。チャンビアとレオを1缶ずつ買うと1缶30バーツ。2008年にタイを訪れたときにはチャンビアはコンビニで買うと1缶25バーツだった。構内価格なのか値上げなのかは良く分からない。自分の飲み物ばかり買うのも難なので妻にお茶を買っておく。こちらのお茶は加糖だったりするので、う〜んと思ったが適当に一本。
 自席に戻ると、食堂車からお届け物が来ていた。

 こちらが先程頼んだ夕食メニュー。先程増結したばかりの食堂車で作った訳はないだろうが、さてどこで作られたものか。
 メインにご飯とカレーとトムカーガイ。最後にフルーツも供される。二人前が並ぶとそれなりにテーブルは賑やかになった。二人でシェアして適当に頂いたが、それなりに美味しい。高いことさえ気にしなければという前提付き。
 試しに列車内を探索してみる。10,9号車の先はハジャイ始発の増結車。全部の寝台が埋まっているわけではなく、意外と空きも目立つ。南線の寝台車は指定券を取りづらい、という話は良く聞く話なので今日はたまたま、なのかも知れないけれど。
 車内は所々、ベットメークが進んでいる。自席に戻る。列車は良く揺れる。ハジャイまでもそれなりに揺れたが、ハジャイを出て南線に入ってからことのほか揺れる。タイ国鉄で脱線があったのってこの辺りだっけ、何て話、妻を不安にさせるだけなのでしないけど、そんな事を思い出す。
 食堂の人が食器を回収しに来て、支払いを済ませる。タイバーツは前回のあったからそれで払うけど、マレーシアリンギでも払えるようだ。19時半を過ぎて、ベットメークの順番が廻ってくる。

 上段のベットが降りてきて寝具が準備される。日本の寝台車と違って、ベットの上にマットレスが敷かれる。糊の利いたシーツが準備され、カーテンが掛けられるとベットの準備が完了。

 これで寝台車は夜の姿に。まだ20時にもなっていないが、早くもベットにこもる人。コンセントのある洗面台で所在なげに佇む人。過ごし方は人それぞれである。
 ひとまず 

 速度が緩んで列車は停まる。トゥンソンという駅らしい。
 発車するのを機に上段のベットに潜る。日本のプルマン式寝台であるA寝台車、寝台幅は上段90cm、下段100cmぐらいだったと思うが、こちらの二等寝台車、上段は幅が60cmぐらいしかない。ちなみに下段なら90cmとなる。日本の寝台車にはついている小窓も無く、ベットライトと小物入れのみ。荷物は寝台の下や通路の上にしまう事が出来るけど、上段の居心地、下段との値段以上にありそうだ。

 まだ早い時間だけど酔いが廻っている。多少北上した分、線路も良くなったのか揺れも収まった。ベットに横になると眠気に襲われる。まもなく就寝。