やっぱり早々に目覚めてしまった。この調子で日本の時間を引きずったままバンコク滞在は過ぎてしまいそうだ。今日も少し恥辱を進めてから、頃合いを見計らって妻を起こす事になる。今日も時間の縛りがある。
7時半前に簡単な荷物を持って食事に降りる。エレベータホールの向こう、ちょっと気になって入ってみると従業員用のメンテスペース、窓の向こうは
チャオプラヤー川。こっちの方が眺めがいいかもね。
ホテルの朝食は相変わらず美味しく、ついつい食べ過ぎになる。ここのところ、朝が一番いいものを食べているかも知れない。
さて出発。今日はBTSのサパーンタクシーン駅に向かう。駅の入り口で何か配っていて受け取ってみると一つは新聞、もう一つはお菓子のサンプルだった。タイ文字の新聞なんて読める訳もないが、無料のタブロイド紙だし、写真で何を伝えてるのかは分かるから、試しに貰ってみる。
エスカレータを昇ったその先で人が何人も立ち止まっていてつんのめりそうになる。何事かと思ったら駅構内に流れる聞き覚えのあるメロディー、タイ国歌だ。8時の最敬礼なのだった。
朝ラッシュの止まっていた動きが若干フライング気味に動き出す。ホームにあがると電車が停まっている。
ナショナルスタジアム行きは日本の通勤電車もびっくりのすし詰め状態。シーロム線、朝の状態だけみると増発か増結が緊近の課題と思われる。
反対方向へ向かう電車は空いている。チャオプラヤー川を渡り二駅乗ると今のところの終着、ウォンウェンヤイ駅。改札へ向かうと市内へ向かう人の流れが激しい。東京のラッシュと何ら変わらない光景が繰り広げられるバンコクの朝8時。
ここから歩いて10分ほど、国鉄のウォンウェンヤイ駅がある。そこまで歩く。今日はマハーチャイ線とメークロン線を乗り継いで、終着メークロンへ向かう。日本ではすっかり有名になった市場の中を走るローカル線。今日は完全に鉄ちゃんモードだが、妻は割と乗り気になってくれた。以前テレビ(世界まる見え、らしい。そう言えばそんな番組もあったな)で紹介されたのを覚えていて、テレビで見た所に実際に行けるのなら、という気になったそうだ。
ちょっと道を間違えたようで駅にはたどり着いたが、駅の一番端っこ。ウォンウェンヤイ駅自体もひょろっと延びる線路の脇が市場。十分にインパクトのある光景だ。ここを出る列車は1時間に一本はあって、次は8:35。十分に間に合った。切符を買い求めると10バーツ。冷房車だと25バーツになるそうで、冷房の有無というのはこの国では大きな差になるようだ。
列車の中で出発を待つ。8時半とはいえ、ローカル線の郊外ゆき列車。十分過ぎる程に空席がある。先程のラッシュの景色と同じ街の列車とは思えない。
時刻通りに列車は走り出す。市場の人は動く列車に全く関心を示さない。二人組の車掌が車内を巡回して検札。切符にハサミが入る。タイの鉄道員は割とまめに検札に廻る。全線通して10バーツでしかない運賃だが、それでも貴重な収入源なのかも知れない。
列車はバンコクの下町をゆっくり走る。ファランポーンを出たところの街並みはスラムと言いたくなるが、こちらは下町。一応ちゃんと家はあって、パラボナアンテナやクーラも備え付けられて。まぁスラムであってもパラボナやクーラは見かけるから、バンコクというかタイと言う国は基本的に豊かな国ではある。
列車はマハーチャイに向けて順調に走っている。昨日眺めたタイ国鉄の様子から言ったら失礼ながら意外と言いたくなるが、列車の本数も多くないし、幹線道路と交わる訳でもない。遅れる要素が少ないのだろう。数分走ると、民家と境目がはっきりしないような駅が現れる。国鉄の駅ならばタイの国旗と王家の旗が掲げられているが、民家にも同じように掲げられているから、見分けが付かない。
ドアが開くとお客さんが降りていったり、乗ってきたり、あるいは出入りがながったり。そしてドアが閉まらないうちにエンジンがぶるんと言って列車は走り出す。思い出したようにドアが閉まって、また車掌が検札に廻る。そのうち車窓は鄙びてくる。水っぽくなってきたかなぁ。
途中どこかの駅で列車とすれ違い。昨日ファランポーンで貰った近郊列車時刻表にはメークロン線の時刻表も記載されているので見てみる。どうやら数分遅れているようだが、まぁ良い。定刻のうちだ。
珍しく立派な駅が現れる。ホームが立派なら隣の建物も立派でこれは学校のようだ。制服を着た子が降りていってどうやらここも大学の様子。メークロン線、川のバンコク寄りだから狭い意味ではマハーチャイ線だが、1時間に1本走っていれば通学にも使ってもらえるようだ。
ウォンウェンヤイから1時間近く。車窓に町の気配を感じるようになる。不意に市場の中に列車が突っ込んだようになる。魚か何か、売り物が車窓を流れてこの列車の終着。マハーチャイ。
ちょっとした車庫になっているようで乗ってきた列車が引き上げて行く。9:35に出る 行きは別の車両がスタンバイしていた。
マハーチャイは川岸の街。線路は川を挟んで分断されている。この先、目的地のメークロンに行くには渡し船に乗って対岸の街、バームレーンに行くことになる。
駅を出て通りを右手に。しばらく歩くと潮の香りがしてくる。王妃様を掲げた建物があってそれと分かる。バークレーンへの渡し船の乗り場だ。船賃は3バーツ。支払うと一応は切符をくれる。待つことしばし、
それらしい船が近寄ってくる。
バイクでそのまま下船する人もいて、その人たちとすれ違うように船に乗り込む。この3日、チャオプラヤー川でもアユタヤでも渡し船に乗ったが、今日の船が一番大きく大きく、立派である。
ロープが外され、出航するその時になって、地元の人が飛び乗ってくる、二人三人。もう船が離れて行くのに、上手に船へ。これで川に落ちたら、笑い話で済ませるんだろうなぁ。
対岸までは5分程。9:50にはバームレーン側に到着となる。ここから駅まで多少距離があるようだ。近くにいた学生さんに片言の英語で道を尋ねる。ちょっとした市場を抜けた所を右手に言ってまっすぐだそうだ。
5分も歩くと一際寂れた感のある駅が現れる。これがバームレーンの駅。
線路は波打ち、バラストも殆ど無いような貧弱な線路がその先へと延びている。
時刻表によるとメークロンからの列車が10:00に着き、折り返し10:10にメークロンに向かうように見える。今のところそれらしい列車はやって来る気配はなく、バームレーンに停まる車両はどうやら予備車のようだ。
改めて切符を買う。バームレーンからメークロンまでは10バーツ。日本人やら欧州系の人やら、観光客の方が目立つようなバームレーンの駅。定刻の10:10を過ぎても列車は現れないが、気を揉んでいても仕方がない。気長に、気長に列車を待つ。
10:30を大きく廻った頃、警笛が聞こえてくる。遠くに黄色い列車が小さく見えて、少しずつ、本当に少しずつ近寄ってくる。
ようやくメークロンから列車が到着。折り返し30分少々遅れての、メークロン行きとなる。
観光客が中心で2両の列車はさらりと席が埋まる程度。みんなメークロンの市場を行く列車を見物に行くのだろうか。地元の人はあまり見えない。
10分ほどで列車はメークロンに向けて動き出す、のだがガタガタガタガタと揺れに揺れる。殆どスピードも出ないまま、ひたすら揺れる。よほど線路が悪いようだ。徐行運転の影響で列車が遅れているのかと思う。メークロン線、1本の列車が4往復するだけのシンプルこの上ないダイヤで、何もなければ遅れようが無いはずである。
この調子で徐行が続くとメークロンへ着くのは一体何時かと不安になるが、先ほどメークロンからやってきた列車が30分遅れで済んでいるのなら同じ程度で何とかなるであろう事は想像出来る。そして先に進むにつれて線路がよくなり次第に速度は高くなる。
バンコク直通ではない鉄道の沿線で開発なんて事が進む筈もなく、農地なのか放置されているのか、良く分からないような土地がひたすら続く。遠くに大きな看板が見えるのは、幹線道路でも通っているのか。時々、集落が現れて駅に着いたり、畑の真ん中に突然駅があったり。何にもないような妙な所で観光客の団体が乗り込んで来た時には驚いたが、駅の近くにハイエースが何台か停まっていたから、途中駅からメークロン線に体験乗車、みたいなツアーがあるのだろう。
いつの間にか座席がそこそこの埋まる程度の乗車になる。どれほどが本来の利用客なのかは分からないが、とにかく列車が混んできた。
メークロンまで所定なら1時間だが、だいぶ大きく時間を過ぎて街の気配が漂ってくる。運転室のドアが開いて観光客を招き入れ始める。どうやらメークロンの市場に
突っ込んだ。真下を魚が流れて行く。
観光客だらけ。日本ならあり得ない所で写真を撮る人、多数。こんな混沌が降って沸いたように現れて終着のメークロンとなる。
駅自体も市場と一体しているような雰囲気。乗客なのか単なる見学なのかはっきりしない人たちが思い思いに記念写真を撮っている。
折り返しのバームレーン行きは11:30の出発なのだが、当然のように時間は過ぎている。その出発光景は是非とも市場で見たいので適当に線路を歩いて市場に踏み込む。先程通ってきた線路はすでに市場と化していて果物やら野菜やら、魚やら。有りとあらゆる売り物が線路を占拠しているところ。踏切が鳴ってどうやら列車が発車する。とたんに屋根が畳まれ線路が出来た。商品はそのままで良いらしい。店の人、身振り手振りで観光客にこっちに来な!とかそこは危ないとか指示。そのようにして列車の通り道が出来る。
タイフォンを鳴らし、本当にゆっくりとバームレーン行きの列車が走り出す。ドリアンを跨ぎ、魚を跨いで、列車はゆっくり進む。列車内も線路際もカメラの放列。互いを撮り合うかのように列車が過ぎて行き、
過ぎたとたんに屋根が元に戻され始める。一日八回繰り返されて、慣れているのだろうが、手際が良すぎだ。
そして元の市場に戻った。次に列車がくるのは15:10。それまで伸びるレールにお構いなしに、市場は市場として存在し続ける。
メークローンで列車を見送った。次のバームレーン行きは15:30。さすがにその列車を待つ気は無い。バンコクまではバスで戻るつもりだ。メークローンからバンコクの南バスターミナルまで、バスに乗れば1時間ほどだそうだ。その他にもミニバスの路線もあってそちらは戦勝記念塔まで行くとのこと。何れにせよ列車を待つより圧倒的に早くバンコクに戻ることが出来る。
予めネットで調べてきたのだが、バス乗り場、いまいち分かりづらい。駅からそんなに遠くないらしいのだが、探そうとするとえらい苦労する事になる。
結局妻の持っているスマートフォンで地図を検索し、捜し当てることになったが、
1.駅から線路を歩いて最初の踏切を左に
2.次の角を右に曲がる。狭い道だがすぐに通りが広くなる。そのあたりがソンテウ乗り場。
3.セブン−イレブンが左手にあるので、そこの角を左に曲がる。
4.突き当たりを右に行くとその先に小さな車庫兼乗り場が見える。
迷わなければ5分ぐらい。田舎のタクシー乗り場みたいな所に戦勝記念塔ゆきバス乗り場の看板がある。英語でも書いているからこれは分かるはず。
ミニバスというのは良く知らなかったが、ハイエースの一番でかい奴だろうか。それをバスとして使っている。時間は決まっていないようで人数が集まったら出発らしい。切符を予め買うのかと思って聞いてみたら後でで良いと言われる。しばらく出発を待つ。
列車自体が遅れたし、ミニバス乗り場にたどり着く際も迷ったので時間が思ったよりも遅くなる。13時を過ぎて、乗れということでハイエースの中に乗り込む。運転席も含めて16席。かなり狭く大きな荷物を持って乗るのは難しいだろう。、まだ2〜3席埋まらずしばらく待たされる。
係員が廻ってきて運賃の徴収。バンコクまで70バーツ。列車と船を乗り継いで23バーツ、というのは破格だろうが、エアコンが付いて70バーツなら、良心的な価格に違いない。
席が2席ほど空いていてこれが埋まらない限りは発車しないらしい。気長に待っていると一人、もう一人と乗客が現れて、目出度いのか目出度くないのか席が埋まる。これで発車。エンジンが掛かり、ミニバス出発。メークロンの市街を離れると幹線道路に出て速度がうんと上がる。
先程、ゆっくりと走る列車の中から見えたような田園風景を、二倍速、三倍速、いや、五倍速ぐらいなかの勢いで走ってゆく。とにかく飛ばしに飛ばし、気がつけばバンコクの郊外だろうか。街中のようなところを走っている。
バンコクの市内に入ると高速道路に入り込む。泊まっているホテルの部屋から高速道路が見えるのでもしやと思ったら案の定、ホテルの建物が見えたりする。ここで降りれたら早いのだが、降りれるようなところは見あたらず。まぁ仕方ない。
ファランポーンの駅舎も流れていって、しばらく。高速道路から降りるとそこが戦勝記念塔。高架下にハイエースがずらっと並ぶ駐車場の一角でクルマは歩みを停める。メークロンから小一時間。ずいぶん早々とバンコク市内に戻ってきた。
時刻は14時半近く。いい加減空腹を覚える。昼食をこの辺で済ませてから次の行動に移ろうかと思う。
適当なモールの中に入るとレストランやら何やらがちょこちょこ並んでいる。和食やらパスタやらあちこちの国の料理があったが、混んでいた麺の店に入ってみる。
かなり小振りの丼がでてくるが、色々な味を数多く頂く趣旨。麺とスープの組み合わせ、更に具の事まで考えると相当な種類になるみたいだけど、頂いたのは適当に5〜6種類と言ったところ。周りのテーブルは2人で10杯とか当たり前に載っていた。
お腹が充ちたところで次に移動する。ここからは妻のリクエストが3つある。BTSに乗ってサイアムでシーロム線へ乗り換え。チョンノンシー駅で降りる。ホテル最寄りのサパーンタクシーンまであと二つと言う所である。ここから歩いて少々。やって来たのはヘルスランドと言う名前のマッサージ屋さんに。
日本人の感覚からすると安っぽい名前に思えるが建物の外観、そして内装と街中にあるマッサージ屋と並べるのが失礼と思える程の高級感に充ちている。そして意外な程混雑。今は15時半だが、1時間待ちだそうだ。中途半端な待ち時間だが、外は雨が降り出したし休憩も兼ねてなら、まぁ良いかと思う。
1時間ほど、と言うことで16時半には呼ばれる筈だが、なかなか順番が来ない。様子がおかしいので聞きに行ってみると手違いがあって予約が入っていないと仰る。今からだと30分待て、と。非常に気分が悪いが待った時間が無駄になるのも気分が悪いのでもう少し待つ。17時過ぎても順番が来ないようなら文句を言って帰ろうと思ったのだが、その前に順番が来て案内されたのでマッサージをそのまま受ける事になる。
マッサージ自体は非常に良く、念入りに揉みほぐされる間に受付のイライラも溶けて行く。特に肩が堅いようで時間を掛けて揉んで貰う。2時間で450バーツは王宮よりも価値がある。
気分は良くなったが、時間はかなりロスしてしまった。バンコクは夜の7時。妻が行きたいと行っていたショッピングセンターは20時閉店なのだそうで。場所はサイアムからまたちょっと行ったところ。戦勝記念塔を起点に考えると行ったり戻ったりで、それなら先に買い物の方が良かったような気もする。今更言っても遅いが。
タクシーに乗ったらバンコク名物交通渋滞にはまる。バンコクの交差点は優先道路を流し続ける事があるようで、左折出来ずに暫く滞るなんて事をやっていたら、目的地にはだいぶ遅くなってしまった。もう閉店間際で入口は閉められている。こちらの閉店時間は文字通り客を外に出して店を閉める時間なのだとか。
仕方ないので別の店をいくつか。
スーパーにも寄っておみやげ物を少々。売り場をうろうろしていたらナンプラーがずらっと並ぶ様子に出くわす。
そして今度はBTSでサパーンタクシーン駅まで戻る。もう22時近くだが、夕食がまだ。開いている店を探して路上にテーブルを並べるような適当な店に入る。地元の人が半分。観光客が半分。この辺り、意外と開いている店が無いのである。
適当にスープやら野菜炒めやらを注文。瓶ビールも頼む。
地元向けなのか辛い目の味付け。店の構えも皿もいい加減だが、味はしっかりとしていた。
ホテルの部屋に戻ると23時である。これで寝て起きれば時差ボケは完全に解消するだろうが、明日はバンコク滞在最終日。朝のうちに空港に行かねばならない。眠い目をこすりつつ荷造り。明日に備えて目覚ましをセットしておく。
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