人の動く気配で目が覚める。珍しく妻が先に起きている。時刻は6時半だそうだ。ただしホノルルの時間で。旅先、ホノルルのアラモアナにあるホテルの一室。
 外はくもり空。ひとまず出かける準備をする。今日はちょっと遠出をする予定。クルマを借りている訳ではないので、公共交通機関で動くのである。バスは比較的頻発しているが、後の事もあるので、多少の制約はある。
 シャワーと身支度。カバンの中身を入れ替れ。嵩張る傘は置いて行く。身支度完了、7:20過ぎにホテルを発つ。アラモアナのショッピングセンターはバスターミナルもあって、ここからオアフ島各地にバスで行くことが出来る。今日はそのうちの一系統に乗るのだが、バスターミナルを発車した後、ホテルの真ん前を通ってバスは目的地へと行く。バス停もあるので、ホテルの真ん前からバスに乗る事が出来る。

 ホテルの真ん前にあるバス停で待つ。バス停に時刻の表示は無いのだけれど、最近は検索を掛けると目的地までのバス時刻も知ることが出来る。検索で出てきた時刻の遅れること少々、

 目的のバスがやって来た。乗り込む。運賃は1人1乗車2.5ドル。2人で5ドル札で支払うと、

 トランスファーチケットを貰える。席に座ってバスに揺られる。アラモアナからダウンタウンへ。その中心地を抜ける頃から窓を雨が叩くようになる。
 ダウンタウンからバスは峠道にアタック。雨に濡れながら山道を駆けあがる。反対側の車線はホノルル中心地に向かうクルマで渋滞している。住宅地が尽き、バスは本格的な峠越え。長いトンネルを抜けると今度は下り坂になる。
 アラモアナから40分程。穏やかな街が現れる。ワイキキやダウンタウンのような高層ビルが林立、という景色とは程遠い田舎町。カイルアの街である。そのバス停で下車。降りたのは良いが、

 大雨の真っただ中である。ずぶ濡れになって目的の店へ。取りあえず飛び込む。人気店だそうだが、ひとまず空席があって通してもらえる。

 濡れに濡れて凍えた体にホットコーヒーが嬉しい。改めて注文。朝食のプレートセットをお願いする。

 ハムとスクランブルエッグ、それにクッキーというセット。ハムという名前だったが、これ日本でいうならハムステーキだ。アメリカンなボリュームだが、それでもちょっと控えめ、かも知れない。
 コーヒーのお代わりも貰って、濡れて冷えた体は少し戻った。幸い雨も止んでいる。お会計を済ませて席を立つ頃には行列が出来ている。雨に濡れたのは災難だったが、その代わりにものすごく順調に事が進んだ。

 お店の写真を撮るとバス停へと向かう。

 空は相変わらず思いたい雲が立ち込めている。先行きクエスチョンだが、クエスチョンを振り払うかのように、次のバスがやってきた。

 70系統ルニカイゆき。このバス。8:55の次は10:25まで1時間半無いのだが、40分の乗継が成立してしまった。ファストじゃないお店で40分で食事をするのは無理だろうと思っていたけど、この乗り継ぎは奇跡的だ。
 カイルアからの乗車客は自分たちだけ、と思いきやアラモアナから56系統がやってきて乗り継ぎ客があり、公共交通機関らしくなる。次のバス停では日本人らしい観光客も乗って来る。
 バスは田舎道を分け入って海へと向かう。カイルアビーチパークで下車。

 世界一美しい海と称されるルニカイまで行くバスを見送って自分たちはそのお隣、

 カイルアのビーチへと歩みを進める。時刻はまだ9時過ぎ。貿易風の吹き付ける海岸に出る。人影は疎ら。ベンチが幾つも空いていて、今日の海のために日本から持ってきたゴザは無駄になる。ベンチに腰かける。


 空はどんよりしているし、波打ち際は砂交じりの茶色になっているけど、それでも透明で明るいブルーの海が広がっているのは良く分かる。太陽が照っていたら、さぞかし綺麗だったに違いない。
 座っているだけなのも芸がないので波打ち際に出てみる。

 寄せて返す波に足元の砂を持って行かれつつ、案外と生温い水の感触を楽しむ。一応は水着を下に仕込んで来たから、脱げば学生時代以来久方ぶりの海になったけど、それはやめておいた。

 ただ寄せて返す波と戯れるだけ。
 少し時間が経つ間にこの海にも人が増える。遠目にみても日本人と分かる人もちらほら。30分程で引き上げる。カイルアの街に戻るバスは1時間近く来ないから、帰りは先程の田舎道を歩いてみた。

 ホノルルの街中と違ってしっかりとした歩道が無いので少々歩きづらい。その道をゆっくりと進んでゆく。途中は住宅街。大ぶりな一軒屋がちらほらと現れる。一軒だけ、「Trump 2016」のポスターを掲げていた。そういえばヒラリーは無かったな。

 道案内に従いカイルアの街へ。途中、ルニカイまで行くのか、自転車の日本人、自転車の日本人、ベビーカーを押して歩く日本人、そして自転車の日本人とすれ違う。ホノルルに飽き足らない日本人がカイルアに押し寄せている、なんて話も聞くし、人の事は言えないけど、ほんと、見事に日本人が多かった。
 カイルアの街に入る。妻のリクエストでこの後は買い物。

 スーパーマーケットに寄る。ターゲットと言うマーケット。アラモアナ周辺では見かけないその店に寄り道。大きな店ではドローンが普通に売っていたり、日本で見かけないようなモップ掛け専用ロボットが売っていたり。そしてこの店でも日本人と幾組がすれ違う。
 スーパーマーケットを出る事にはすっかり晴れあがった。今朝の雨が嘘みたいだ。この後はホノルルに戻るけど、最後に一軒、立ち寄り先がある。先程のバス停を一旦通り過ぎ、朝食を食べた店も過ぎて向かったのが、

 地味な軒先だが、マラサダを出す店。店内、先客は日本人グループだった。カイルアの街、どこに行っても日本人だ。

 マラサダを1個ずつお買い上げ、その場でゆっくりと頂く。沖縄のサーターアンダギーみたいね。素朴なお味。
 さてバス停に戻る。間もなく、

 ホノルルに向かう57A系統がやって来る。今日はほぼほぼ待ち時間なし。雨に降られたこと以外は非常にタイミングが良い。バスはダウンタウン止まりだけど、トランスファーチケットを使えば、アラモアナまでは戻れる。特に問題なし。

 がら空きのバスでオアフ島の脊梁山脈をちょっと超える。カイルアとホノルルは20?少々距離がある。それだけ乗ってもバスの運賃、片道2.5ドルだから安い。均一運賃なので、ワイキキでちょっと乗っても同じ値段なのだけど。
 ダウンタウンに入った所で下車。時刻は12時である。今日は朝早くから動いているので、しっかり観光をしてもまだ時間がたっぷりとある。
 泊まっているアラモアナまでは距離があるのでバスを乗り継ぐが、折角ダウンタウンまで来たのでちょっと寄り道。

 ダウンタウンから中華街へと歩いて行く。数年前に訪れた時はホームレスへの食事配給に長い行列が出来ていた公園も、今日のお昼は閑散としている。一頃に比べれば景気が良くなったのか。まもなく見覚えのある川にあたる。少し歩くと、

 布哇出雲大社。何度か訪れたお馴染みスポットである。日本の出雲大社は行ったとしても出雲大社駅までなのだけど、遠い地、ホノルルの布哇出雲大社はこれで何度目、だろうか。神殿に手を合わせると、さてアラモアナにいったん戻る。

 今日四度目のバス。アラモアナへ直接行かずにワイキキ方面へと抜けるルートだったが、ホテルの割と近くを通るのは何となく知っているので乗ってしまう。15分程で昨日行ったドンキホーテが見えたから下車。ホテルまでは歩いて戻る。
 先程、カイルアのスーパーマーケットで買った物を部屋に置く。今度はワイキキの方へ行く。アラモアナからは観光客向けのトロリーが幾つも出ているのでそれに乗ってゆく。
 ワイキキとアラモアナを巡回するルート。幾つかの会社がトロリーという名前のバスを走らせている。旅行会社でいうとJTBとHIS。それぞれ自社の利用客専用。JCBカードを持っている人は無料で利用できるピンクラインというのもあって、間口の低さから非常に混み合うトロリーである。

 そして今日利用するのはJALパックのトロリー。本来はJALパックの利用客専用トロリーなのだが、JALを個人運賃で利用した人は事前に申請する事で、このトロリーを利用することが出来る。JALパックの利用客がそんなに多くない割に、トロリーは頻発しているから、非常に空いていて、楽に乗る事が出来る。JCBで利用できるピンクラインが満席頻発でトロリーという名の二階建てバスになったのと対照的だ。
 ハワイ渡航に先立ち事前に申請して送られてきたカードを提示して利用するのが本来なのだが、妻のカードが見当たらず、乗車の時にちょっとしたパニックになる。でも係員が夫が持っているなら、妻もJALだろ、と良いから乗れと融通を効かせてくれた。

 お客さんは10人ぐらい。アラモアナを出て東へと進んでゆく。陸軍博物館の戦車を眺め、

 今話題のトランプタワーの前を抜け、DFSの所で下車。ここから歩いて向かった先。

 ウルフギャング・ステーキハウス。しっかりとしたレストラにうっかりTシャツ姿で来てしまったが、一応は入れた。本来ならせめて襟付きのシャツを着てくるべき店であろう。高級店のハッピーアワーに入り込む。カウンタ席に案内される。目の前にビールサーバ。

 先に飲み物を聞かれたのでビールをお願いする。目の前のサーバで注がれたビールがどんと来る。その後も注文が入る度にリズムよくジョッキにビールが注がれるのを眺める事になる。アメリカに改名する某ビールはやっぱり薄い事が良く分かる。そしてこちらのバーテンダーはあまり泡の状態には拘らないようだ。カニ泡のまま結構出されるのね。

 最初に出てきたのはLOBSTER CRUSTINIS 7ドル。
 そしてこちらの名物、サーロインステーキを頂く。Taste of NewYorkというハッピーアワーの限定メニュー。値段は39.95ドル。ふたりで一つをシェアする。シェアと言うのは結構多いみたいで、隣の日本人カップルもシェアしていた。

 最初から切り分けられて出てきたので、こんなもの?って気になるけど、12オンスの骨付きサーロイン。切り分けられててもさすがに一口そのままで、と言う訳にはゆかず、小さく切って口へと運ぶ。さすがに美味しい。

 最後にチーズケーキが供されて終了。アメリカンな食事を堪能する。チップを含めて60ドルほどのお支払いになる。
 午後は買い物に宛がう。ワイキキからアラモアナ方面に戻るのに、今度はピンクラインを使う事にした。

 ワイキキトロリーという名前のサービスだけど、やって来るのは二階建てバス。もうトロリーでも何でもない。さすがに混んでいるが、JCBを持った日本人だけでなく、外国人、いや、ここはハワイだから現地の人、あるいは日本人以外の観光客の姿も目立つ。こちらのトロリー、1乗車2ドル。The busの1乗車2.5ドルよりも安いのである。

 車内はこんな感じ。バス停で乗客が入れ替わる時に撮ってみた。まもなく乗ってきたお客さんで満席になる。乗客が多いうえに乗り降りに時間が掛かるので、このトロリー、所要時間がとてもかかる。

 改めてトロリーが走り出す。海を眺めて東に向かい、向きが変わってアラモアナ方面へ。

 バス停の度にお客さんが寄って来る。日本人ばかりが目立つトロリーの中で、ちょっと異色な光景である。

 アラモアナの駐車場に入って行く。二階席に座っていると天井に手が届きそうだ。日本だったらこんな所に二階建てバス通さないだろうけど、さすが自己責任の国だ。
 バス二台分ぐらいの行列が出来ているアラモアナショッピングセンターに到着して下車。この後はアラモアナの北側に点在するロスドレスフォーレスやウォルマートに行くけど、その前に、昨日と同じくアラモアナで甘いもの。
 マグノリア・ベーカリーという店に立ち寄る。 後でネットで調べると、ドラマで有名になったニューヨークの店の支店らしいけど、妻に言われたのはモヤさまでさまぁーずが「あま〜い」と言っていた店だということ。

 アイスコーヒーを一杯ずつと、カップケーキは一つだけ買い求めてシェアする。確かに甘いけど、コーヒーと一緒に頂いているからか、そこまで甘い感じはせず。

 屋外の席、青空の下。すぐそばの広場でハワイアンの演奏が始まる。青い海は見えない、単なるショッピングセンターの中だけど、ハワイはハワイ。
 それでは買い物へ。アラモアナから歩いて少々。ロスドレスフォーレスを物色し衣類を少々。次にお向かいのウォルマートへ。こちらでは持ち帰りの食材に御土産を少々。結構荷物が大きくなる。

 ホテルに戻る頃にはすっかり外が暗くなる。時刻は19時半。荷物を置く。そろそろ夕食の時間。お昼は少々値が張ったから、と言う訳ではないが、夕食はホテルの近くにあるプレートランチを部屋に持ち帰って頂くことにする。
 先程足を伸ばしたウォルマートとはまた別の方角。昼間、バスを降りた方である。

 今まで回った所と違って観光客とは無縁の店に入る。ずっと適当な英語力で、どうにでもなったけど、

 この店は完全にネイティブ専用。少々苦労して注文。
 二組三組と来客が相次いだせいか、出てくるまで少々時間が掛かる。呼び出されて受け取るまで20分は掛かったと思う。最後はコンビニでビールを買って部屋に戻ると1時間近くが経っていた。

 少々遅くなったけど、プレートランチを夕食に頂く。安く済ませた、と言っても1個10ドルにはなる。日本の感覚から言うと結構値が張るけど、世界は物価は年々上昇している。
 お米は少々残念で、ビーフアメリカらしく肉々しく。さすがにお昼のお肉と比べちゃいけないけど、買い求める時のやり取りと含めて、ようやく異国に来た感覚を覚える。
 食事の後で荷造りを少々。今日は昨日に比べると少し遅い目まで