10月1日の朝。午前5時半にアラームが鳴った。外はほのかに明るくなっている。バンコクファランポーン駅近くのホテルにいる。今日はチェックアウト。午前中の飛行機でまた移動となる。
 飛行機は10時半。チェックインは2時間前でなくてもいいかなとも思っているけど、スワンナプーム空港までの移動時間はなかなか読みづらい。いや、空港鉄道が出来たからパヤータイかマッカサンの駅まで行けば何とかなるけど、そこにたどり着くのがどうなるかが読みづらい。

 昨日のうちに有る程度身支度は済ませておいたが、いつでも出かけられるようにしておく。外が明るくなった午前6時、ホテルのレストランに行く。一昨日のチェックインの時に朝食券を渡されている。実は朝食付きのホテルだったのだが、昨日は朝食開始の時間よりも前に出かけているからどんな食事が出るのかは知らない。
 行ってみるとレストランは締まっている。暗い店内に一人店員がいたから入ってみると、開店は6時半からだと言われる。それまで待つ気はないのでここでの朝食は諦める。
 ホテルをチェックアウト。フロントに「Airport?」と聞かれたが「Yes」と答えればタクシーを勧められるに決まっているので断って、ファランポーンの駅に向かう。空港までの行き方は2〜3案があるが、いずれにせよファランポーンの駅が起点だ。

 昨日よりも時間が遅いので交通量も少々多め。横断歩道はあっても信号はないから行き交う車に気を使いながら道路を渡る事になる。
 ファランポーンの駅に到着。国鉄の窓口に行き、パヤータイまでの切符を買い求める。次の列車は6:55。これに乗ると定刻であればパヤータイに7:02に着く。運賃は2バーツ。タクシーで150バーツぼられた穴を埋めるには十分の運賃で朝から気分がよくなる。気分が良くなったついでに駅構内のコンビニで会社の人へのお土産を買ったら全部で324バーツ。高いなぁと思ったけど良く考えてみると日本円で1000円しない。20人分の土産代と考えると、これはどちらかと言うとケチの部類に入る。
 さて、駅構内に。まず目に付いたのが 

 昨日に引き続き、元ブルートレインの姿。この列車がどこから来たのか分かりかねるが、それなりに活躍しているのが嬉しい。
 さて、自分が乗るのはこちらの列車。285列車は東線、チェチューンサオゆき。地球の歩き方に掲載された時刻表には「SP.DRC」つまりディーゼル特急と記されているが、そんな訳は無い。昨日、ファランポーンの案内所で貰った時刻表によるおt「ORD」つまり普通だ。

 車両を一通り見ておく。眺め始めてまもなく、ゲテモノを見つける。 

 どうみても元気動車が多数編成に入っている。ステンレスの両開き二つドア、なんて車両。エンジンは降ろしているようだから元気動車なのだろう。写真は明らかに荷物室らしいドアもあって、日本流にいうとキハニ。


 車内の様子。セミクロスシートであり、しかもクロス部分は転換クロスシートだから、結構高級品。勿論冷房はないので扇風機が薄暗い車内で廻っている。素性を知りたくなるような車両だ。どういった経緯を辿ってきたのか、知りたくなるがなかなか難しい。日本に帰ってからぐぐって見たが、詳細はイマイチ分からない。 
 先頭に機関車がいない。あと10分少々で発車の時間だが、予定通りに出るだろうか。ひとまず車内で発車を待つ。待ちながら定刻にならなかった場合の対応を考える。パヤータイに8時ぐらいまでに着いていれば十分だから、7時半を過ぎても動かないようであれば、トゥクトゥクでパヤータイに向かうか、地下鉄でマッカサンへ向かおう。それまではここで待つ。
 定刻をちょっと過ぎた頃。軽い衝撃を感じる。明らかに機関車が先頭に連結された。それであればさほど待たされずにすみそうだ。7時を少々廻って列車は動き出す。定刻ならパヤータイに着いている時間だが、気にならない。
 ホームが流れ、沢山の車両が佇む構内をゆっくりと進む。

 しっかり磨かれ、飾られた蒸気機関車が見える。お召し機関車だったのかも知れない。

 本物のディーゼル特急はこちら。真新しい塗装が美しい。
 昨日は夜明けの景色だったバンコクの街、今日は1時間遅いから朝の景色だ。


 川を渡り、踏切を横切って東線へと分岐。車掌が廻ってくる。検札だ。自分の切符を見ると、一言、二言なにやら。次だよと言ったのか。
 まもなく速度が落ちて列車はパヤータイに到着。おおよそ7分。タクシーで150バーツの区間を本当に2バーツで来てしまった。

 ささやかなホームに降り立つ。入れ替わりに何人かが乗り込んでくる。ファランポーンの駅よりも中心地に近いからかも知れない。
 さて、地を行く国鉄線を見下ろすかのように立ちそびえる高架、空港鉄道に乗る。二日前に空港から市内に着いた時は空港からノンストップの急行列車に乗ったが、今日は普通列車にする。運賃は空港まで45バーツ。
 ちょうど列車が到着した所のようで、改札に人の波が押し寄せる。出札は有人窓口。空港まで切符を買い求めると

 トークンが出てきた。ICチップが入っていてカードと同じように読み取り部にタッチして入場する事になる。
 ホームに上がると列車が待っている。

 形は急行と同じ。色違いとなる。車内はもちろんロングシート。プラスチック製らしい硬い座席が続く。
 座席がさらりと埋まった所でドアが閉まる。鋭い加速、高架から見えるバンコクの街が流れ出す。先ほど乗ってきた国鉄東線と全く同じ所を走っているのに、世界が全く違う。
空港職員らしい人やらなにやらで郊外に向かうに従い意外と混んで来る。 

 郊外の景色。日本よりも広そうな一戸建ての住宅が並んでいる。高級住宅街なのだろう。住宅地自体が塀に囲まれていたり、入口に検問があったりするのが見える。先ほどファランポーンの駅近くに流れた住宅と同じ国とは思えない。
 スワンナプームの空港駅に到着。こちらの駅も急行列車と普通列車は完全に別改札。改札を出てみると、急行用改札の奥側であり、空港から知らない人が来れば急行の改札が先に目に付くようになっている事が分かる。

 搭乗手続きのため、カウンタに向かう。8時ちょっと前、搭乗便の出発までは2時間以上あるから余裕と言えば余裕で、かなり空いている。待たされる事無くチェックイン、すると、今度の搭乗便は遅延すると言われる。勿論英語で。どのぐらい遅れるのだろうと思っていると、出されたのは前便、8:35の飛行機。つまり前便振替だ。
 搭乗開始8:10と書かれたチケット。現在時刻は8時ちょうど。出国手続きを考えるととんでもなく時間がないのだが、例によって出国レーンのパスをくれる。パスには搭乗便と出発時刻が書き込まれたから最大限の配慮はして貰えるのだろう。そしてあそこから出国して下さいと指される。勿論英語で。
 突然、タイの残り時間が30分に減ってしまった。妙な事になったなと思いつつ、指された方向へ向かう。そこは乗務員専用の出国レーン。ここでいいの?と思いつつパスを見せるとこっちだと仰るのでそのまま入る。荷物検査、イミグレーション。全て待ち時間ゼロ。あっという間に出国となる。まだ8時5分。それでも搭乗開始まではあと5分だ。
 賑やかなターミナルをゲートに向かって歩く。途中にラウンジがあって地図と招待状は頂いたけど寄り道する余裕はなさそうである。指定されたF5スポットまで、歩く、歩く、まだ着かない。歩く。 

 結局一番隅っこまでやって来た。時刻は搭乗開始の8:10を少々過ぎている。機内に入ったら水とシャンペン、両方欲しいなと思う。