朝までよく眠った。午前8時過ぎは札幌の街で。朝の鈍い光がカーテンの隙間から差している。窓の下、路面電車が走ってゆく音が聞こえる。
 週末二日だけの旅行だから、今日はホテルをチェックアウトする日であり、帰路に就く日でもある。適当に身支度をするようなしないような、何となくダラダラとしていると9時近くになる。目覚めた時には晴れていた空が曇り空に変わり、そして雨粒が窓を叩く。今日は空模様が目まぐるしく変わる。
 身支度をしていたら、浴室の天井から水がポタポタ。そのうちジョボジョボになったからフロントに連絡する。海外でもこんなトラブルの経験は無いが、フロントに連絡。係員が来て色々調べてくれて、上がから漏っているようだと分かった頃にはだいぶ時間が過ぎていた。他の部屋を使って良いとキーを渡されたが、こんな経験、初めてである。
 何か妙な事になったが、9時半を過ぎてようやく動き出した。まずは朝食。ホテルの朝食をつけていないから適当にどこかで食べる事になる。海外に行くと何か特徴のある朝食メニューがあったりして、楽しみなのだが、日本国内の旅行の場合は特徴ある朝食と言うのは難しい。名古屋の喫茶店モーニングぐらいか。

 外に出てみると雨が結構激しい。地下街に入るまでにそれなりに濡れる事になる。この雨の中で動き廻るのは辛いなぁと思う。
 10時前のショッピングモールはシャッター通りではあるけれど、開いている喫茶店もあって、そのうちの一軒に入る。朝食難民、じゃないだろうが、何組か先客がいてモーニングセットを頼んでいる。こちらもモーニングセットを。

 コーヒーが¥300のところ、モーニングセットは¥480。名古屋以外は値段差がつくのが常識か。中身は意外と言っては失礼だが充実していて、満足する。

 10時を過ぎて大通周辺のお店が一斉に開店。妻の買い物に付き合ってからホテルに戻る事になる。そろそろ11時、荷物を括らねばならない。幸い、先ほどの雨はやんで青空が顔を覗かせている。
 平謝りのフロントでチェックアウト。ひとまず駅に向かう事にする。今日の計画、何も無い。SLニセコなんて列車の運転があるから、乗ってみるのも悪くないかなと思っていたのだが、8時過ぎの出発なので、どうせ起きれないと最初から諦めている。

 大通公園を歩いていると雨が降りだす。空は青いから天気雨だろうと油断していたら本降りになってきた。

 道庁を素通り、近くにあったビルから地下に入ってしまう。札幌駅から薄野まで、割と長い区間にわたる地下道がある札幌の中心地は、地下道にさえ辿りつければ、割と自由に歩き廻る事ができる。
 駅に到着。まずはコインロッカーに荷物を預けてしまう。身軽になって動き回る事が出来るようになって、でも、さてどうしようか。
 昨日地下鉄の広告で見かけた秋鮭の祭りなるものが札幌駅南口でやっているらしいので、ちょっと覗いてく。

 要は販売イベント。12時から石狩鍋の振るまいもあるようだけど、だいぶ間がある。雨が降ったりやんだりで、人出が少ない様子。ちょっと会場を見ているとすぐに試食の声が掛かる。意思が弱いのでついつい「とば」を買う。「とば」、漢字で書くと「冬葉」と書くことを初めて知った。
 雨がやんで青空が見えている。大通公園の焼きトウモロコシを食べたいなんて話しを、札幌に来る前からしていたのだけど、晴れるなら改めて大通公園に戻るのもアリかも知れない。

 駅から大通公園へ。途中、時計台のそばを通ってゆく。ビルの谷間に埋もれている時計台。日本三大ガッカリの候補になってしまいそうだが、それだけを見ているとやはりいい建物だ。


 ちらっと雨が落ちたりもしたが、大通公園に戻る。焼きトウモロコシのスタンド。何軒か出ているのは知っており、その一軒に近づく。

 張り紙が出ていて「今日が今年最後の営業です。ありがとうございました」の文字。もうすぐ札幌は冬の季節。外でトウモロコシは今日が最後のチャンスであった。

 1本300円の焼きトウモロコシを食べていると鳩が群がる。餌を貰えると期待しているらしい。地面にこぼれた食べかすに目ざとく見つけた1羽がありつく。中々油断ならない。ちなみに、鳩に餌をやらないで下さいという注意書きはある。
 鳩に囲まれてトウモロコシを食べていると鐘の音が聞こえてきた。時計台の音だ。時刻は正午。良く見ると公園の噴水が止まっている。時計台の音を演出するために止めたようだ。中々粋な計らいをするものだと思う。鐘の音が聞こえなくと鳴ると再び噴水が上がるようになる。
歩いて札幌駅まで戻る。昨日今日と極めて狭いエリアを行き来しているような気がしないでもない。鮭のイベント、12時から開始の振る舞い鍋先着500人までは、まだお鍋に余裕があるらしく、呼び込みをしていたから、頂いてゆく。
 まだまだ飛行機の時間までは間が空く。新しく大きくなった新千歳空港はしっかり見て行きたい所だが、それにしても間が空くので、ひとまずコーヒーブレイク。そしてたまたまやっていた写真展

 荒川好夫写真展「北海道 冬 〜函館本線C62 今も生きる記録の中で〜」
 を眺めてゆく。賑やかな札幌駅界隈で場所を探すのに悩んでしまうような辺鄙な所でやっている写真展だからか、公開してからしばらく時間が経っているからか分からないけど、会場は空いている。それでもお客さんはいて、およそ鉄道に興味を持ちそうに無い人が熱心に眺めていたりする。蒸機に関わる全てに愛着を注いだからこそ出来た写真展だと思う。
 時刻は15時近く。早いが空港に向かう。先ほど眺めていた写真の世界と打って変わって

 北海道の鉄道の稼ぎ頭かも知れない快速エアポート。40分ほど揺られて新千歳空港へと運ばれる。
 この夏にリニューアルし、制限エリア外が大きく変わった新千歳の空港。チェックインの前にそちらを眺めてゆく。
 3階のお土産品フロアはざっくりで大きく別けるとスイーツエリアと海産物フロアの二つ、という事になる。スイーツエリアには北海道でちょっと名の知れた菓子店は全て出店しているのではないかと言う勢いで店が連なる。
 海産物のエリアをうろうろしていてたら、店の一角に寿司のスタンディングバーがあったりする。

 北海道を離れる前にちょっと摘む、なんて事も可能。値段は結構お高い。空港だからねぇ。

 こちらはロイズファクトリーという見学施設。小規模ではあるけど、その場で

 チョコレート生産もしているから確かに工場。

 ロイズの施設やドラえもんパークのあるその先は国際線のエリア。ちょうどキャセイの香港行きがTaixingしてゆく所で、今日の国際線はこれでおしまい。 

 国際線ターミナルには閑古鳥が啼いていた。とは言っても、アジア圏での北海道人気は半端無いから黙っていても就航便は増えるに違いない。そのうちこのターミナルも手狭になるかも知れない。
 そろそろ国内線側に引き返す。今いる3階の上、4階には温泉があったり、映画館があったり、とにかく施設が沢山で、羽田の国際線ターミナルあたりよりもずっと楽しめる空港になっている事は間違いない。
 搭乗開始まで1時間少々。保安検査を抜けてラウンジで最後の休憩。

 北菓楼のおかき、サッポロクラシック、十勝チーズと北海道に縁のあるものばかりで固めたラウンジの品々でゆっくり。出発は19時だが、自分は名古屋中部ゆき、妻は東京羽田ゆき。バラバラである。お互い明日は仕事だからそういう事になる。妻は羽田行きのクラスJにキャンセル待ちを入れていたが、こちらの飛行機にはクラスJの設定が無い。モノクラスのB737なんてあまり乗りたくない機材に乗る事になっている。

 出発時刻は同じなので20分前に席を立つ。無事にクラスJを確保した妻を見送りこちらは中部ゆき、隣の搭乗口へ。