そして東へ

 ホームライナーは東へ進む。3両編成に車掌が二人いてちょっと多い印象。でも、駅に停まる度に整理券を持たないお客さんが乗ってくるから小まめな検札は欠かせないようで何度も何度も車内を往復する。本来の整理券を持った人が後で乗り込んで来てちょっとしたトラブルなんて様子も見受けられる。結構慌しい様子。前回金曜の夜に乗った時と雰囲気がだいぶ違う。

 掛川を過ぎると車内も落ち着く。明るい5月の空の下、茶畑の広がる静岡らしい景色が広がる。東海道線は赴任前から、下手したら3桁になるぐらいの回数は乗っているけれども、普段は夜中の移動だったり、ロングシートで窓に背を向けて乗っていたりで、特急車のリクライニングシートに座って景色を眺めるのは新鮮だ。金谷の駅が流れてゆく。大井川鉄道に寄り道するのもいいなとふと考える。馴れた東海道もちょっと外れるとあまり知らない所も多い。
 1時間ほどで静岡に着く。この先、沼津までホームライナーが快走してくれれば嬉しいのだけど、残念ながら静岡まで。この先は三島行きの普通列車に乗り買える事になる。
 先頭車は立客がいるのに最後尾はがら空きという3両編成。写真を撮って乗り込むとまもなく発車と言うタイミング。空いているからか早く起きすぎたからか、清水を過ぎるぐらいから眠気を覚えるようになる。我慢する理由はないから素直に眠るとその間に富士川を越えた。3月以降何度も意識させられた境目である。目覚めると車内の灯りが消えていて、なるほど、境目を越えたのだと言う事が分かる。冷房は効いたままだ。朝出掛ける時は寒くてジャケットを着て出てきたが、そろそろ要らない雰囲気である。
 電車は三島ゆきだが、沼津で降りる。この先は御殿場線を廻る事にする。若干ケチな話しだが、東海道線を東上して行くと手元の切符は熱海まで有効だが、御殿場線に乗り換えると国府津まで行ける。その差は、まぁ、大きいかなぁ。

 20分の接続で御殿場廻りの国府津行きがある。2両の電車は発車時間が近づくとそれなりの乗車となり、少し立客が出た。月曜日に真っ暗な中を371系に揺られた御殿場線。今度は明るい時間に通ることになる。沿線にはうっすらとだが富士山が見えている。

 薄っすらしていても先に進めばそれなりに大きくしっかり見える様になる。裾野を過ぎて岩波や富士岡の辺りから眺める富士山が素敵だ。車内は殆ど通学客や所用客しか乗ってみないように見えるけど、富士山が綺麗に見えたときに携帯カメラのシャッター音が聞こえた。
 御殿場で沢山の人が降りて行き、入れ替わりにお客さんがまた乗ってくる。意外と混んだままだ。少々停まってまた動き出す。富士山が後方へと下がってゆく代わりに車窓の緑が濃くなる。御殿場から乗ったお客さんが降りる一方、乗ってくるお客さんもいて、1時間に1本しか電車の無い閑散区間の割にはお客さんの動きが複雑だ。
 駿河小山で特急あさぎり3号とすれ違った。月曜日に乗った371系である。意外と席が埋まっている。東京の人が御殿場へ出掛ける電車なんだなと改めて思うことになる。
 東山北で高校生の集団が乗って来る。ワンマン運転なので開くドアは一箇所。土曜日で帰宅が早いようだ。乗り切らないうちに発車を促すベルが鳴る。何か、ワンマンで動かす列車でないように思われた。
 小田急線乗り換えの松田で大量のお客さんが降りる。今日は横浜に寄らずに京王線へ直行するので新宿直通の小田急線に乗り換える方がありがたい。自分もここで乗換えとする。長いホームを歩いて松田駅の南口から向かいの新松田駅へ集団と共に動く。ちょうど12:05という急行があって、ホームに降りる途中に電車が入ってくる。ここまで来るともう先が見えたようなものだ。
 先ほど御殿場線の車窓と同じ山景色が流れてゆく。10両繋いだ電車はがら空きで御殿場線の続きに乗っているような錯覚を覚える。勿論、一駅進んで渋沢を過ぎると民家が目立つようになり、一駅毎にお客さんも増えて、転がり落ちるように東京の電車へと化けてゆく訳だけど。
 途中で眠って目覚めたら立客大勢で驚いてしまった。電車は複々線区間へと入りさらにぎゅう詰めになる。下車時に網棚に載せたキャリーバックが降ろせるか、心配になるほどだったが、意外と為せば成るもので無事下北沢で下車。京王沿線へと入ることとなった。時刻はもう13時をだいぶ過ぎている。