JN2321 JA8900 SAAB340B ITM→TJH

 神戸での打ち合わせは午後1時から。まだ時刻は9時。その余裕時間でひさしぶりに但馬を往復しておく。
 実は今日の出張を除くと今年の搭乗回数は全部で27回であった。あと少しで搭乗回数30回。JGCクリスタルということになる。クリスタルなんて貰ってもあまり嬉しくないように思っていたから、27回で打ち止めかと思っていた、ついこの間まで。
 先週突然神戸出張が決まってさてと考える。伊丹を往復飛行機に乗ると搭乗回数は29回になる。30回に1回足りないだけというのは流石に勿体なさ過ぎる。そう思うと無性にもう一度乗りたくなるのだけど伊丹→福岡→羽田と帰るのも変だし、高くつく。ならば単純に但馬往復をしてこよう。今年はJACに乗っていないし、久しぶりに但馬線の感触を味わうのもいい。
 但馬は午前と午後の二往復だが、午後は打ち合わせが何時に終わるかよく分からないので但馬にゆくなら午前中だ。伊丹発9:05のJN2321便。そんな訳で何度と無く乗った便に久しぶりに乗る事になる。
 いつもなら羽田6:30の101便で余裕を持って乗り継ぎするのだけど、今日は前日の宿泊イベントもあったので羽田7:30。伊丹乗り継ぎは接続時間ギリギリの20分である。羽田からの便が遅れたから既に残りは10分少々。一応、羽田で窓口に寄って接続情報だけは入れている。置いてゆかれる心配はない。先ほど声を出していた係員に但馬行きを申告。乗り継ぎ情報はあるが搭乗手続きはこれからと伝えるとその場で搭乗手続きをしてくれる。搭乗券ではなくタッチ&ゴーの手続きでレシートみたいな控えをくれる。搭乗口は23Aだそうだ。
 既に搭乗は始まっているがまだ時間でない事を確かめてからお手洗い。改めて搭乗口へ。ICカードをタッチして、飛行機連絡用のバスへと向かうそのときに初めて条件付き運航と言われた。「但馬空港雪のため」だそうだ。まぁ、降りれずに引き返してくる分にはいいかぁと思う。降りてから飛べなくなると困るけど。

 バスは2台目だろうか。数人のお客さんが待っている。もう一人ぐらい乗ってきたか、まもなく出発。2機待機しているSAAB340Bのうち、遠くにいた方に近付いてゆく。搭乗機、待っているのはJA8900。中は意外と席が埋まっている。30人近く乗っているか。9:04、Door close。直後に が始動する。この感覚、久しぶりだ。但馬までの飛行時間は30分とのこと。但馬空港雪のため条件付き運航であることが合わせて告げられる。プロペラの音が高く鳴り響きそして機内ではエマージェンシーデモが始まる。窓の向こうをもう一機停まっていたSAAB340Bがゆく。こちらも後を追いかけるように9:08、Taixing。先ほど乗ってきたA300だけが佇む寂しい空港を横目に滑走路へ向かう。滑走路端で一度停止。着陸機をやり過ごし、先に出たSAABが離陸してゆくのを見送るとこちらも順番が来る。エンジンの音が高らかに鳴り滑走路へ。一呼吸。そして疾走。9:18、Take off RWy32R。揺れながら左へと旋回してゆく。一瞬重力からリリースされるような感触。次の瞬間、また揺れが来る。

 暴れたのはほんの1〜2分だった。180°機首の向きを変えた後、今度は右へと90°旋回。西宮北口の車庫が見える頃、9:22、ベルト着用サイン消灯。但馬到着は9:45を予定しているとのこと。神戸の街、その北側に広がる六甲山と裏の住宅地が見下ろしながら少しずつ進んでゆく。


 飛行時間30分の間のベルト着用サインが消える時間は本当に慌ただしい。乗務員さんがキャンディと絵はがきを持って機内を巡回する。

 そのころにはもう神戸市内は遠ざかりどこか郊外、ゴルフ場ばかりが目立つところを飛んでいる。地上は若干の霞。そして穏やかな光が降り注いでいる。穏やかでどこか眠たげな冬の光。
 9:32、ベルト着用サインが点灯する。消灯時間10分。但馬線としては長い方だなぁと考える。統計を取っている訳じゃないけど、7分とか8分とか、そんなのが殆どではないだろうか。

 穏やかだった冬の光が一変、気がついたときには一面の雲海になっていた。短くても列島横断には違いなく冬のこの季節、30分で天候は大きく変わる。川端康成の雪国の世界が、雲の下には広がっている筈である。
 高度を落としてゆく。雲に引っかかって大きく揺れる。雲から逃れると落ち着く。二三度そんな事を繰り返した後、決心したかのように雲の中に突撃した。目の前が暗くなり、そして大きく翻弄される。左右に振り回され、そして一瞬すとんと落ちる。窓を叩く横殴りの雪。但馬へと向かって素人目には半ば強引に見えるこの着陸。やはりJACはファイターだ。
 雪の降りしきる地上がちらちらと見えた後、円山川か何かが見えて平野に出たことを知る。豊岡の郊外は積雪はない。日陰に残っているだけだ。窓を叩く吹雪もやんで鋸のは風と風に翻弄される小さなSAAB。翻弄されつつも着実に滑走路を捕らえている。素人目にも間違いなく降りる、降りるという機長の意志が伝わってくる。9:43、Geardown。とたんに揺れが大きくなるがそれは成功への確信に違いない。丘陵が迫り、滑走路が見える。ふらふらと揺れつつ最後には真芯を捕らえた。9:46、Landing、RWy19。地上に着いた瞬間に思い切りリバース。前のめりになりそうな程に強くかかる。滑走路端、余裕を残して減速すると向きを変え9:49、Spot in SP 1。