北海道はオフシーズン


 バスで帯広市内に出る。到着便にあわせて運行される帯広市内ゆきのリムジンバスに乗る。今でるバスに乗らないと次は14時まで足止めを喰らう事になる。帯広駅前までは片道1,000円。二人あわせると往復4,000円だから十勝バスにずいぶんと貢ぐ事になる。
 バスは半分ぐらいの座席が埋まっただろうか。地元の人は車で空港に乗り付けるだろうが、土曜日朝の第一便。自分たちも含め首都圏からのお客さんが多いのだろう。

動き始めると白樺やらトド松やらの木立が車窓を流れ始める。そして大きな農場。幸福なんてバス停があって朱色の気動車が遠くにちらっと見えた。旧広尾線幸福駅跡である。
 愛国市街も通り過ぎると帯広の街へと入ってゆく。自動車社会の産物みたいな巨大ショッピングセンターが過ぎてゆく。
 40分ほどで帯広駅前まで運ばれる。閑散とした駅前は地方都市ではおなじみの光景。そしてやたらとビジネスホテルだけが目立つのも地方都市ならではの光景だろうか。ぱっと見た瞬間に両指では数え切れない程のホテルが目に入る。今日のパックツアーでもその中の一つが宿泊場所に指定されている。まだ10時半だからチェックインは出来ないが荷物を預けて身軽になることにする。    

 今日、まず向かうのは帯広競馬場。自分は競馬は殆ど経験ないけど帯広で開催されているばんえい競馬は一度見てみたかった。
 帯広の競馬場へは駅前からバスが出ている。しかも往復のバス乗車券に競馬場の入場券がセットになった企画乗車券もある。バスパックという名前の乗車券。来る時のリムジンバスでその存在を知った。他にも近隣の温泉などを目的地としたパックがある。  

 価格は¥500。普通に往復バスに乗り入場料を払うと¥480だが、バスパックだと記念品の進呈と場内の売店でパンと食べられるそうだ。
 駅前のバス営業所でパックを求めると簡単な厚紙で出来た4枚綴りのチケットに日付スタンプが押されて差し出される。そして競馬場への入場券。時刻表も添えられた。ちょうどバスが出たばかりで、次のバスは土日運休。従ってバスがあるのは30分後となる。少々間が空く。
 その間に六花亭に足を延ばす。マルセイバターサンドでお馴染みの六花亭はここ帯広に本店を構える。
 駅前から中心地へ。地元百貨店の向かいに大きな店を構えている。洋菓子店と思って見ていると思い切り通り過ぎてしまいそうな立派な店構えだ。
 店内は朝から混んでいる。ここで菓子類を買い求めるのが妻の主目的の一つらしいが、今は時間が限られているので、買い求めるのはただ一つ。

 サクサクパイ
 六花亭の本店でしか手に入らない品。サクサク感を楽しんで貰うために賞味期限は製造後3時間というとんでもない一品。値段は¥140でしかない。
 一本ずつ買い求め店内でいただく。一階の一角には買い求めた物をその場で食べてゆけるようなコーナーが設置されており、コーヒーを自由に飲めるようになっている。
 コーヒーと一緒に買ったばっかりのサクサクパイを頂く。長い棒状のパイの中にふんわりとしたクリームを包んだ不思議な形。口にすると絶妙な触感のパイ生地に歯を立てる瞬間に舌はクリームを捉える事になる。とても素晴らしい。これで¥140とは信じられない。東京でならコーヒーとセットで¥500から、でしょうねえ。

 30分は長いようで短い。バスの時間に間に合うよう早足で駅前に戻る。幸か不幸かバスは若干遅れ気味で現れた。運賃表の1番手前、2200なんて運賃が表示されているから、結構足の長い路線なのだろう。車内には「陸別線トイレ休憩のお知らせ」なんて掲示があったり「車内で食べた弁当の殻はお持ち帰りください」なんて注意書きがあったりする。陸別線。つまり池北線の転換バスである。

 薄暗い、乾いた街を10分少々、競馬場の前について降りる。すえた雰囲気の二人の年寄りと一緒だ。「第一レースが始まる頃だな」なんて会話が漏れてくる。道路の向かいが競馬場。ちょっとした観光施設が手前にある。少々の家族連れで賑わっている。何とか色々な人に興味を持って貰おうと言う努力中に違いない。そしてその奥が競馬場。
 競馬場の中。京王多摩川でも見かけるような雰囲気の年寄りが7割。家族連れや観光客風情が3割といったところ。第二レースに出走する馬がパドックを廻っているので眺めておく。
 大人しく廻っている馬。暴れる馬。毛並みの良さそうなのや荒れているの。まあそのぐらいは分かるけどそれ以上は見当付かない。それなりに見所はあるらしいのだけど、素人にはハードルが高い。時間がきて馬が引き上げる。折角なので馬券を買っておくが結局はオッズを参考に確実そうなのにしておいた。
 レースが始まるのでコースの前に出る。観光客や熱心な観戦者は真ん前に集まる。年寄りどもは寒いからか関心があるのは結果と配当だけなのか中に籠もったままである。

 各馬が一斉にスタート。待ち受けるのは第一の障害。ここは勢いよく越えてゆく。曳くのは重さ1トンのそり。さすがに一気に駆け抜けてゆく怪物はいないから二つ目の障害を前に一息付く。スタミナの回復具合とリスタートのタイミングは一種の駆け引きなんだとか。


 二つ目の障害へと先んじて挑んでいった8番は最後に力尽きて思い切り沈んでいた。自分が買った馬だったんだけど。
 雪が降りだし積もる中で迫力あるレースを三戦観覧する。その度に少しずつ馬券を買ってみるけど600円投資して配当は150円。妻はもう少し当てていたけど差し引きでは若干の負け。仲良く帯広競馬場に寄付をした事になる。

 一方で頂いたのはこちらの品々。非売品という缶入りのお茶に競馬場オリジナル、馬面の形をしたパンと馬蹄の形をしたパン。どちらもお持ち帰りになる。

 最終レースまでいるつもりは無かったので帯広駅前に戻る。バスはまた30分ほど間隔があいてたので併設されていた馬の博物館を見学。こちらは入場料無料の小規模な施設。30分あれば楽勝で見学できるだろうと思っていたがそれなりに見るべきところがあって結構ギリギリの時間になった。すっかり積もった雪道を足下に気を付けつつバス停に向かう。まもなく帯広駅前方面のバスがやってくる。
駅前に戻ると14時。お昼の時間は過ぎているがそろそろ食事を考える。帯広といえば名物は豚丼。ありきたりだが駅の近くで豚丼を食べる事にする。
 駅前のぱんちょうは有名店だが今までに食べたことがある。そこでちょっと離れた別の店に行くことにした。
 気温が上がったからか雨が雪に変わって道がぬかるむ。その中を気を付けて歩くこと少々。着いたのは

 「はなとかち」
 食事の時間から少々ずれてはいるがそれでも数組の先客がいる。メニューには豚丼と半分バラ肉にした半バラ豚丼。その大盛りやら肉増しやらが少々並び、つまり豚丼専門店なのである。値段は普通盛りで¥630。その次が特盛りになって一気に¥1100まで跳ね上がる。特盛りはさすがに多すぎるような気がして普通盛りにした。帯広豚丼にしては格安で、さて、どんな感じか。

 ごく普通の豚丼が提供される。味噌汁は別払いで¥50。それに写真に写っていないがタレの壷が出される。お好みの応じてどうぞとのこと。
 丼の上に乗った豚ロースは普通に柔らかく普通に美味。試しにタレを少し追加してみたが、出されたそのままで十分と思う。テーブルに胡椒、一味唐辛子、山椒と香辛料が揃っていたから色々試すが、一味をほんの少しが一番合っているような気がした。もちろん好みに応じて、だろう。 割と良心的な店を後に駅前のホテルへ。相変わらずの雨である。傘は持ってきたがホテルに預けた荷物の中にしまってしまった。まもなく15時。そろそろチェックイン出来るだろう。フロントで荷物を受け取り鍵を貰う。一度部屋へ。ついベットに転がるとそのまま寝込んでしまう。がっつり二時間寝てしまって気が付くと外は暗い。

 改めて先ほど出掛けた六花亭の本店に行く。妻がいろいろ買い物をしたいのだそうだ。六花亭の製品ってマルセイバターサンドしか知らなかったのだけど、実は和洋いろいろな菓子類を扱っている。しかも安い。ケーキなんかは1個200円でお釣りがくるものばかり。札幌の店だともう少し高いそうなので帯広価格、ということらしい。実家への土産やら自宅用やらを少々買い求めるとちょっとした紙袋一つになった。それを一旦ホテルの部屋に置きに行く。
 さて夕食を。久しぶりに居酒屋を考える、

下調べはしていないが繁華街を歩いていて混んでいる店があったから試しに入ってみる。

 お食事と炉ばた かかし http://www.kakashi-obihiro.net/index.htm

 カウンターで良ければと通された店。まもなく満席になったからそれなりに繁盛しているようだ。

 ビールはサッポロ。選んで入った訳じゃないのに巡り会えるのはさすがに北海道、と感心する。

 厚岸産の牡蠣は酢ガキとフライがメニューに並ぶ。生牡蠣が無いのは残念だけど、無理して生牡蠣を出さないのは良心的、かもしれない。

つぶ貝は襟裳産だそうで。新鮮で歯ごたえも良くこれは大当たり。

 ホッケ。二人でなら半身で十分。
 1時間半ぐらいいて二人で7000円少々だったか。満足して引き上げることになる。
 冷え込んで凍り始めた道を慎重に歩いてホテルに戻る。途中のコンビニで買い足したビールを飲んでいると眠気に襲われる。昼間しっかり寝たのに早々に爆睡。