出張先のホテルで目が覚める。日本を離れて中国は大連の市街地。外はまだ暗いようだ。時計を見ると3時台である。
もう少し寝たいが、眠れないので観念して起きる。時差ぼけと言うより、昨日早く寝過ぎたのかも知れない。
少し明るくなってくる。
カーテンを開けるとほぼ外は見えないぐらいの霧だった。海が近いから海霧が入るのかも知れない。昨晩浴びそびれたシャワーを浴びた後、京王線恥辱を少し進める。会社のメールも少々。今回はホテルのWifiを使う気になれず、海外ローミングしたスマホ経由でパソコンも接続している。大陸ならではの制限は掛からないようで、Googleは使えるし、妻との連絡もLINEで対応できている。
外が明るくなるにつれ、視界が少し回復する。
眼下の道路をクルマが走る様子と共に、歩道を歩く人、ジョギングする人の姿も分かるようになる。20105年の深圳の記憶で、大陸の人は街を歩かない、という印象が強いのだが、2025年の大連は意外と人が二足歩行している。
6時半を過ぎてホテルの朝食会場が開いた筈。頃合いを見計らって赴く。
中華粥なんてものがあって、飲み過ぎた胃にはありがたい。麺コーナーには麺だけでなく水餃子も選べる。期待はしていないし、食べ過ぎるものではないが、美味しく頂ける。
自室に戻って会社の仕事、外からできる処理作業を少々。残った時間で京王線恥辱も手掛けると8時半にロビー集合。今回同行しているメンバーと昨日来お世話になっている取引先の工場に赴く。迎えが来ていて、昨日のクルマに乗る。工場は大連港外、旅順口区という所。日本人なら誰でも思い浮かべるであろう旅順要塞、203高地、あの旅順だ。
大連から旅順は30㎞ぐらいある。クルマで小一時間。自動車専用道で少々西へ。郊外に出ると建設が止まった高層住宅が見える。これが不動産不況って奴かなと思う。
取引先に行く前に取引先の下請け、こちらから見ると2次外注先に寄り道。自社製品の仕掛状態を確認する。完成品は幾らでも見た事があるが、仕掛状態の溶接途中のものを見るのは初めて。
さらに取引先の工場へ。郊外と言うよりも農村地帯となる。車窓には果樹畑が流れる。何かと思ったらサクランボだそうだ。北緯38度近辺の大連。日本で言えば山形あたりに相当する。この時期はサクランボの収穫期との事。道端でも農家の人が直売をしている姿が見える。
取引先に着くと10時を過ぎている。昨日の朝、自宅を出てから28時間。移動よりは食べる呑むの時間が長かったが、ようやく本来の業務となる。
打ち合わせ開始。会議室のテーブルにはサクランボが置かれている。どうぞ召し上がって下さいと中国茶と共に。口にしないのも悪いので数個、口に運ぶ。それなりに甘く、旨い。食べるとまた出されるので無限サクランボになりそう。
取引先は総経理、日本でいうと社長に相当する人が営業担当で通訳も兼ねている。技術の人とのやり取りは基本、総経理を介して。こちら側にも1人、調達担当者が中国語を話せるのでそちら経由の話も出来る。とは言え、通訳通訳を介するし、技術的に突っ込んだ話もあるので、進みは遅い。日本国内の外注先にも何度か品質監査目的の訪問はした事があるが、そんな時よりも進みが遅い。
当然ながらお昼に差し掛かる。国内企業相手だとコンプライアンスの問題もあり、食事を出して貰うような時間に掛かる打ち合わせはそもそも設定しないのだが、習慣が違う中国企業相手の長丁場。お昼もご馳走になる。車に乗せられサクランボ畑の中を運ばれた先は、ドアマンがいるようなレストラン。選んだ食材を調理して出して貰う仕組みらしい。
見慣れないものも一杯あるけど。
個室に通されると
ビールを注がれる。まだ午後の仕事があるのだが、遠慮しつつ口は付ける。聞いたところによると15年ぐらい前は昼間から白酒が出て来て乾杯となり、つまり杯を乾すのであり、午後は仕事にならなかったとか、ならなかったとか。中国も酒の飲み方はだいぶ変わってきているらしい。
食事は中国らしく食べきれないほどの量を出される。何か分からない食材からユムシが円卓に出て来る。口にしてみたがコリコリしていて見た目さえ忘れれば美味しく頂ける。
午後は引き続き監査の続き。先程ビールを口にしたが、酔いが廻る程では無く、仕事としては差し支えなく進められる。また技術的なやり取りを1時間、1時間と。ちょっと印象的だったのが環境への対応。大連の空気は綺麗になっていたけど、政府の監査が厳しくなっていて、違反事項があると容赦なく工場閉鎖を命じられるそうだ。この10年で有害物質への対応、だいぶ改善されたとの事。石炭ストーブも使わなくなったとか。ずいぶんと意識や取り組みが変われば変わるものだが、やらせ方は相変わらず強権的、ではある。
現場を確認して終わると15時半、なのだが、もう1件、外注先を確認するというので、クルマに乗る。鍍金業者へ。20㎞ぐらいあって、大連市内に戻る途中との事。クルマを飛ばすと16時を廻っての到着。先方は16時半で終業だそうでギリギリの見学となる。工場に入る前にマスクを渡される。大規模な鍍金槽のすぐ近くまで行ったが、刺激臭の凄い事、凄い事。日本だったらこんな近くまでお客さんを案内しないだろうなぁと思う。足元、何かの拍子に崩れたり、滑ったりして鍍金槽の中に落ちたら、命はない。労働安全に関する取り組みはまだまだだなぁと感じる事になる。
監査としては完了。お土産としてお茶とサクランボを渡された。お茶はとにかくサクランボは日本に持って帰れない。ホテルに戻ってどうぞ、との事。一人で食べる量じゃないけどなぁ。
ホテルに送ってもらうと17時半を過ぎている。これで監査としては終了、なのだが、今日の夜も宴席が用意されている。18時からなので、すぐにロビーに戻って下さい、との事。昨日来、休むという時間がないままに追いかけられている感がある。部屋に戻った一瞬で普段口にすることが無いウコン飲料を飲んどく。
また移動。昨日はホテルのすぐ近くだっが、今日はクルマで連れて行かれる。クルマを運転してくれるのは朝からずっと対応してくれている技術の人。仕事が色々あるだろうに申し訳ない。一日お世話になったお礼に日本から持ってきたお土産の日本酒をプレゼントする。
大連市内を西に向かう。その車窓に
トロリーバスが見える。日本では黒部ダムのトロリーバスがEVバスに置き換えとなって絶滅した乗り物だが、中国では現役だったか。しばらく並走。
お店の予約は18時だそうでギリギリ到着。また個室に案内される。
今度は海鮮鍋、そして白酒がとうとう出て来る中国式の宴会となる。とは言え先方の総経理はお酒を飲めないとか。ハンドルを握る2人の技術の人もお酒は口にしないので、飲み要員が来ている。総経理の旦那さん。本職は公務員だそうだ。
乾杯では杯を乾す事が礼儀だが、飲めば注がれ、注がれれば飲んでという感じでは無く、話の流れでじゃぁ乾杯というのが時々来る感じ。自分のペースではない事を除けば、何とかなる中国式の宴会。中国も必ずしも飲め飲め飲めという感じでは無くなって来たそうだ。特に若い人は白酒は好まれ無くなって来たそうだ。ステレオタイプで見ていると実態とずれてゆくんだなぁと理解する次第。
最後はホテルまで送ってもらう、のだが、先程プレゼントを渡した技術の人から返礼の品を貰ってしまう。日本酒を贈って白酒を受け取る。お酒の物々交換みたいになってしまったが、有り難く受け取る。
いつの間にか雨が降る中、ホテルに到着。時刻は21時過ぎ。何となく会社に人と一緒にコンビニまで行ってみたが、またアリペイは認証がうまく行かなくて支払いに進めない。結局手持ちの人民元を放出することになる。後になって支払い時のパスワードを入れられる所まで来たから、次は出来るのだろうけど。
部屋に戻る。
時刻は21時半。軽く飲みの続き。一日、打ち合わせ以外は食べると飲むで頭よりも胃を酷使する今回の出張。顔つなぎのために連れてこられた事は理解しているが、何ともハードな中国流のお付き合い。
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万歩計は3,577
あっ、明日は歩こう。