JL91 JA831J B787-8 HND→GMP

 JL91便。8:25出発の20分前から搭乗開始となるので、それに合わせて搭乗口に向かう。今日は112番搭乗口。ラウンジから一番近く、利便性の高い所だ。


 待っているのはようやく乗る機会が増えてきたB787。今日はJA831Jとなる。写真を撮っている間に子供連れの事前搭乗が始まる。間もなく優先搭乗も始まった。  

 L1を使わずにL2からの搭乗。B787では標準運用のようだが、まだまだ新鮮に思える光景を見て機内へ。
 今日は予約通りにエコノミークラス。座席はバルクヘッドの45Aを貰えている。45Cに先客がいて、地上係員が付きっ切りで対応している。どんだけVIPなのかと思ったら、エコノミークラスの最前列、22Aを貰っていて、前に荷物を仕舞える座席が良いと変えて貰ったら、同じく前に座席がない45Cだった、というので揉めているのだった。結局最後列になりますが、と一番後ろの通路側にチェンジとなり、隣席が空席になる。
 B787の非常席はいわゆるお見合い席であった。真ん前に座る担当の乗務員が非常時の協力のお願い、というので挨拶がてらやって来る。「わたくし○○と申します、よろしくお願いします」という丁寧な挨拶。自己紹介があったのは初めての経験。
 先程、隣客と地上係員とのやりとりで「ほぼ満席」という言葉が聞こえてきたが、空いた隣りが埋まらないまま、8:22、Doorcloseとなる。金浦までの所要時間、1時間45分とのこと。8:24、Pushbuck。8:29、Taixing。国際線ターミナルの前からA滑走路を横断。C滑走路へと進んでゆく。

 渋滞なく10分程で滑走路端へ。そのまま滑走路へと入って行く。背筋を伸ばし、居住まいを質すと、押し付けられる感触。8:39、Take off。RWy34L。

 東京湾岸が広がる。すぐに雲が現れ頭を押さえようとして来る。飛行機が上昇する勢いの方が勝って雲の中へと。突き抜けると

 低く雲の立ち込める暗い世界となる。更に飛行機は上昇を続ける。また雲に入ってしばらく、

 次に現れたのは青空の世界。8:46、ベルト着用サインが消灯する。
 ビジネスクラスとの境、カーテンが閉じられる。目の前のギャレーでは、早々に機内食提供の準備。分厚い手袋をした客室乗務員がちらっと見える。長らく空弁の提供となっていた羽田-金浦線も昨年秋からだったか、温かい機内食を提供するように改められている。絶賛温め中なのだろう。
 ひとまずモニタを取り出してプログラムを選んでみる。映画を1本見る程の時間は無いから、短い時間で見れそうなビデオプログラムを選んでみる。
 そんな間に食事の準備が完了したようだ。ワゴンが1台、前へと出撃してゆく。ワゴンに見えるのは銀色の缶ビール。今月は嫌いな銘柄か、とチェック。もう一台出てくる。こちらはどうやら後ろを担当するワゴンらしい。早々に順番が回って来た。

 チキンのクリーム煮と言う事だったので赤ワインを頂く。若干簡易的ではあるが、温かな機内食はこんな感じ。

 前菜に

 サラダに

 メイン。味は万人向け。間違い用のないお味。多少塩っ気が欲しいような気もしたが、添えられていた塩と胡椒は使わずに頂く。
 ラウンジで色々と食べた後なので、これでも多いぐらいであり、ゆっくりと頂く。そのお蔭で食事が終わった丁度のタイミングで

 コーヒーの巡回が廻って来た。普通の人が食べるペースだとちょっと遅かったかも知れないけど、今日に限ってはベストのタイミング。
 コーヒーを頂いて落ち着く。窓の外が気になってふと視線を向けると、

 海岸線が広がっていた。羽田を飛び立ち40分程。既に日本海へと出ている。慌ただしいが金浦着陸まで1時間という所。ビデオプログラムを見つつ、たまに窓外を見る。

 くっきりはっきりでは無いが、ずっと海岸線は見えている。半島が突き出ているのが見えて米子か境港か。この辺りから雲が出てくる。地上の様子が分からなくなる。
 9:40、あと50分で着陸する旨の案内。15分後にはベルト着用サインが点灯するそうだ。その5分後に今度は機長さんから案内、金浦空港には定刻の10:30到着を予定しているとの事。降下時は揺れが予想されている旨、付け加えられる。前方の画面には入国手続きの案内が流れ始める。
 10:02、ベルト着用サインが点灯する。何となくテレビモニタを仕舞おうとしたら、まだ結構ですよと乗務員さんに声を掛けられる。ならばしばらくプログラムを楽しむことにする。

 窓外はすっかり暗い世界になる。時折ゆれ。そして大揺れが来る。翼が霞みつつ撓り続ける。10:16、着陸態勢に入る旨の案内。15分後に着陸とのこと。ここで改めてテレビモニタを仕舞いこむ。
 ずっと雲ばかりが続いていた窓外。雨粒が窓を叩くと街並みが見えてくる。もう高度がうんと下がっている。間もなく空港の敷地になる。10:28、Landing、RWY14R。
 雨に濡れている金浦空港。スポットにHLのレジが与えられた機材が並ぶ中を進んでゆく。10:35、Spot in SP38。
 降機の準備をしていると真ん前に座っていた乗務員さんが「良かったらお持ちください」と子供向けのシールをくれる。お子様認定、と言う訳ではなくて「フライトログを取られていたようでしたので」と。要所要所でメモをしていたのでそうではないかと思ったとのこと。何度も同じことはやっているけど、そんな指摘を頂いたのは初めてである。

 生憎の雨が降るソウルに降り立つ。前回、3月の訪韓はその日の夜便で帰国という、弾丸旅行であったけど、今回は1泊する。この1日、観光では無くて未乗線の乗りつぶしをする。韓国の鉄道、だいぶ乗っているけど、完乗とならない間に新しい路線がぽつぽつ出来ている。 
 まずは入国審査。到着便が重ならなければ金浦の手続きは早い。預けた荷物もないので

 15分もしないうちに入国完了となる。両替だけは空港で済ませる。前回までの両替分で今回の滞在費も賄えればよいのだが、外貨を引っ張り出してみると、意外と手元不本意だった。1万円札がちょうど10万ウォン。円高とウォン安の影響でだいぶレートが良くなっている。
 空港からは空港鉄道に乗る。AREX、ソウル方面行きではなく仁川空港行きの普通列車。仁川まで行くのは久しぶりだ。何時の間にか新しい駅が出来ていたりして、ちょっとした変化がある。仁川までは30分強。思ったよりも時間が掛かる。
 折角都心に違い金浦に降り立って、わざわざ仁川空港まで足を伸ばした。今日は今年新しく開業した鉄道に乗る。もう一つ、乗りたい路線があるのだが、そちらは情報が良く分からないまま現地まで来ている。
 新しい鉄道は仁川空港に出来た常電導式リニアモーターカー。今年の春先に開業した路線である。空港から先、空港のある永宗島内を走り龍遊というところまでを結ぶ路線。

 韓国初「リニア」わずか8分で停止 「恥さらし」と地元メディアも批判 2016/2/14 17:46 J-CASTニュース
 
 開業当日に緊急停止して日本でも少々話題になったが、その後、ニュースを聞かないから順調に稼働しているのだろうとは思う。その様子をちらっと見てゆく。
 もう一つ、消息不明な路線は今乗って来た空港鉄道AREX。昨年のプレスリリースで

 仁川国際空港から車庫のある龍遊までの間、延長運転をするよ、というのが出ていたのだけど、リニアモーターカーが開業した後にこの取り扱いがどうなったのか、良く分からない。
 空港鉄道の延長運転は1時間に1本程度らしいので、やっているのであればどこかに案内が出ているだろうが、それっぽい案内は何も見つからない。改札にいた係員に拙い英語で聞いてみると、ソウルにゆくだけだ、という回答が返って来る。どうやら延長運転は無くなったようだが、龍游に行って様子を見た方が確実な事が分かるだろう。
 そんな訳でまずはリニアモーターカーの駅へ。

 AREX、空港鉄道の駅と空港の旅客ターミナルの間に新しい駅が出来ていて、ここがリニアモーターカーの乗場だった。

 当面は無料で乗車可能なんだそうだ。電車は始発が9時で15分毎、最終は17時過ぎというダイヤ。まるで遊園地の乗り物。車内は混んでいる。
 11:45という電車に乗る。2両つないだ電車は結構な盛況。ドアが閉まると音もなくすっと動き出す。名古屋のリニモと同じ原理の乗り物で、走る感覚も一緒だ。

 辺りはホテルやら会議場の工事が進む真っ最中。営業しているホテルもある。数年すればトランジットやら何やらのお客さんで賑わう事になるのだろうか。

 次第に建物も何もない殺風景な所を走るようになる。晴れていれば印象が変わるかもしれない。この辺り、どうやら仁川の空港、敷地の隅をかすってゆくようで、フェンスが見える。
 何もないエリアを進むと空港鉄道の車両基地が現れる。そして大きくカーブをすると終着、龍遊であった。

 殆どの人が乗り通したと思われる。ホームがお客さんであふれる。

 改札を出て左は空港鉄道の車両基地。一応、駅の表記があり、これだけ見ると空港鉄道の延長運転も続いているように見える。反対側は海が近く、数年前に訪れた鳥耳島みたいに貝焼きを食べさせる店が出ていたりするそうだ。ソウル市民のちょっとした観光スポットである様子。
 一人で貝焼きを食べるつもりは全くないので、地図にある駅の方へとちょっと行ってみる。

 すぐに車両基地なのだが、門は閉ざされ、とても駅があるようには見えない。

 ここに仮設ホームを設けていたようだが、とても一般の客を乗せて、という雰囲気には見えない。延長運転はリニアモーターカーの開業に伴い終了した、という認識であっているようだ。
 先程のリニアで空港に戻る。ホームにあがると

 KoRailの電車を二回り小さくしたような、同じ顔つきの電車がやって来る。

 足まわりには一人前にリニアモーター。将来的には空港周辺に路線を張り巡らせるなんて噂話も目にしたけど、仁川空港での展開だけでおしまいでは、折角作った技術が勿体ないよなぁ。とはいえ、売り先はあるんだろうか。

 空港に戻る電車は空いていた。観光地から引き上げるには早い時間、と言う事なのだろう。雨の中、来た道を引き返して所要12分、仁川空港まで。戻ると12時半になるところ。

 仁川空港にはKTXの乗り入れが始まっている。空港鉄道から京義線に入るはずで、そこの短絡線にも乗らなくてはならないが、今日はパス。空港鉄道の普通列車で来た道を引き返す。ロングシートの向かい側、黄色い本に熱心に目を通す一人旅のお客さんに、明らかに日本人の女子4人組。さすがに3連休の光景。
 観光客はソウル中心地まで乗り通すだろうが、自分は今度は、金浦空港の手前、桂楊で降りる。ここで地下鉄仁川1号線に乗り換え。この地下鉄、途中の冨平から終点の国際乗務地区までがまだ未乗である。
 およそ観光客と無縁の鉄道。今日はこの先、終着の国際業務地区まで乗り通す。地上駅の桂楊を出て90度曲がって空港鉄道と分かれる。車両基地を横目に一駅走るとここから先は地下区間。地下鉄だから当たり前だけど、地下に入ると何の変化もなくなる。韓国に関しては全線完乗が中途半端な所で残っているが、こういう地下鉄ばかりで、正直乗っても苦行にしかならない。
 仁川は案外と広い街で、1号線と交わる富平まで30分近く。段々と車内が混んでくるので、地上は見えなくても中心地に近付いていると知れる。冨平からは未乗区間。こまめに乗り降りがあって、この辺りが仁川の中心かなと思える。乗り降りのバランスが崩れ、車内が空いてくると郊外へと向かう所。途中、源仁斎が乗換駅。こちらも開業して間もない水仁線との結節点である。
 最後は車内ががら空きになって、終着の国際業務地区となる。全く客がいないように見えたが、駅構内、数人降りる人の姿が見える。

 駅のコンコース。できて5年ぐらいの筈だが、あちこちに雨漏りを受けるバケツが並んでいる。多少の雨漏りは世の中付き物かもしれないけど、幾つもバケツが並ぶのはさすがに見た覚えがない。
 改札を出る。折角なので外に出てみる事にした。開業当時は階段を出たら工事現場、みたいなネットの記事を見た覚えがあるけど、2016年の仁川地下鉄1号線、国際業務地区駅。

 道が出来ていて歩道に繋がった。

 廻りにそれなりに建物が建っていた。
 先に家族連れが一組、向こうへと歩いて行くのが見えるが見えるだけ。建物にも人気がない。器は出来たけど中身がないようにも思える街が広がっている。
 そろそろ空腹を感じるが、先程の龍遊にあったような食べ物の店は皆無。よって食事は持ち越しとする。駅に戻って次の路線へ転身しよう。
 駅員が一人、改札口に見えるだけの駅から地下鉄で今度は、源仁斎で下車。ここはKoRail水仁線との乗換駅。高架にある水仁線のホームに出ると

 住宅地が広がっている。先程と違って人の気配が漂う街だ。そして

 複線高架の立派な線路が伸びている。これがあの水仁線か、と思う。
 あの、と言いつつ実見するのは初めての路線。その水仁線を「あの」と行ってしまうのは1990年代の鉄道雑誌で紹介されていたのを覚えているからである。当時は水原と仁川を結ぶローカル線。線路の幅が狭い762mmで、小さなディーゼルカーが一日数本走るだけの超ローカル線、という姿が何ページか、カラー写真と共に掲載されていたのを覚えている。
 そのローカル線が廃線となり、複線電化の電鉄線として復活。そして今、目の前に線路がある。時刻表を見ると15分毎。駅そばの街並みも合わせて、郊外の電鉄線という感じに満ち満ちている。

 KoRailではお馴染みの顔つきをした6両編成。仁川発鳥耳島ゆきがやって来る。線名は水原と仁川の頭文字で水仁だが、今の所は地下鉄4号線と言うか、安山線の終着、鳥耳島までが水仁線。予定では来年、安山線の漢大前から水原がつながって、水仁線完全復活、となるらしい。
 列車は仁川市の南側の郊外、案外と街並みが続く中を進んでゆく。時折、

 ナローゲージ時代と思しき線路跡が見える。か細い線路と太い高架線の対比が鮮やかである。化ければ化けるものだ。
 電車はさらりとロングシートが埋まる程度だから空いている。空いているが、乗り降りはそれなりにあって、そこそこは使われている事が良く分かる。線路沿いだからかもしれないけど、南に行ってもそれなりの街は続く。ようやく街が途切れ、緑が増えてくると車両基地が現れた。ステンレスに水色帯の電車が並ぶ。4号線のラインカラーだ。まもなく今のところの終着、鳥耳島に到着する。時刻は15時前。
 ここまで乗り通した人は4号線に乗り換える人が大半らしい。改札に向かう人はごくごく少数。

 地下鉄の行先では何度か目にした鳥耳島の駅。まさか二度駅等に立つことになるとは思わなかった。空腹なので改札を出て飲食店を探す。

 駅の前にいかにも飲食店、みたいな店が並んでいるのが見える。そのつもりで寄っていたっら、一番左はカフェ。その隣は不動産屋であった。不動産屋にビビンバはおいていない。ちらっと店内を覗いたのを中の人が怪訝そうに見返してくるので視線を逸らす。
 一旦は諦めた食事。駅に戻る途中に屋台が出ていて、おでんか何かをやっていたので、そこで軽く済まそう、と思ったのだが、先程見つけたビルの脇、こんな看板を見つける。

 これは明らかに食べ物の看板である。  

 怪しげな雰囲気だが、命を取られる事はあるまい。一歩踏み込む。手前の店は営業していないように見えるので奥の店に入る。
 取りあえず入ったが、メニューはハングルオンリー。当たり前だが、生憎自分はハングルが読めない。表音文字なので覚えれば楽な筈だけど、なかなか覚えるまでに至らない。写真があれば、指さしをして、「これください」に相当する片言の韓国語を話すと何とかなるのだけど、さて。
 一計案じて指さし作戦で行くことにした。食事の写真はないのだが、イラストはあるのである。麺類らしいイラストを指して「これください」と。冷麺なのかカルグクスなのか分からなかったが、どうやら冷麺、汁付きのヌルメンミョンになるらしい。「○○だけどいいか?」的な事を聞かれたようだが、最低限の意思を表するだけしか能のないサバイバル韓国語では、細かい事までは分からない。いいからと出してもらう事にする。
 先客はいなかったが直後に入って来たお客さんがいて、ビビンバを頼んでいる。ビビンバがあったならそれでもよかったなぁと思いつつしばし、

 冷麺が運ばれてくる。やり取りの中で思い浮かべたものに近いものが出てきたので、おぅと思う。味は、、、ごくごく普通だ。
 食事を終えて駅へと戻る。この後は水仁線を仁川へと戻る。このままだと、水仁線。源仁斎から仁川までが未乗で残る。
ホームに降りる。ちょうど安山線。鳥耳島止まりの電車が10両でやって来る。降りてきたお客さん。半分ぐらいはホームに残る。しばらく待つと仁川ゆきの水仁線が6両でやって来る。

停まる位置関係で水仁線の先頭車は混んでいる。それを避けて中程の車両を選ぶ。そのお蔭で座れたけど、案外と鳥耳島を挟んでの流動、多いようだ。まぁ鳥耳島、何かある訳じゃないから。
 列車が走り出すと眠くなる。景色は先程の巻き返し、今朝は早起き、昼食を取った後。眠くなる要素は揃いに揃っている。せめて未乗区間の源水斎から先は起きていようと思ったのだが、何度か意識と無意識を行き来している間に仁川に着く。何時の間にか地下線に入っている。
 真新しい地下駅からエスカレータを乗り継ぎ乗り継ぐと、地上のホームに出る。 

 見覚えのある駅。ソウル直結。京仁線の仁川駅である。ソウル方面、逍遥山ゆきなんて電車が停まっている。京仁線から地下鉄1号線へ入り、京元線まで直通する電車だ。その反対側にも未乗線はあるのだが、時刻は16時半。今から逍遥山なんて向かったら、次の未乗線に着くの、何時になるのだろう。既に今の時刻は16:30になっている。
 逍遥山の先はいずれ行く機会を作るとして、もう一線。乗りつぶしておくべき路線を今日はやっつける。京仁線の電車で冨平に行く。先程乗った仁川地下鉄1号線の乗換駅。ここで仁川地下鉄に再度乗換。2駅だけ乗り今度は冨平市場で降りる。ここから地下鉄7号線。途中の温水までの10.2㎞が未乗区間となる。
 ホームには既に電車が停まっている。空席を探して歩いて行くと、1両だけ変な車両が混じっていた。 

 背中合わせのロングシート車。東京モノレールでこんな感じに椅子が並ぶのを見た覚えがあるが、一般の車両では、ちょっと記憶がない。勿論、他の車両は一般的なロングシートになっている。
 空席があったので試しに座ってみる。壁際には寄りかかられるようクッションがあって、座れない人が少々いるぐらいの乗り具合なら悪くないのかも知れない。でも、電車の後ろへと歩いて行く人は歩きにくそうだ。
 電車が動き出す。気になってすれ違う電車の車内をまじまじと見るのだが、見た所、同じような座席配置の車両は見当たらない。たまたま、試作車的な車両に当たった、ようだ。
 時刻は夕方になり、土曜日とは言え多少電車は混んでくる。立客が増えてくる。椅子の前には入り込みにくいようで、ドア前に溜まる人が増えてくる。試みとしては面白い座席配置だけど、実際にはうまく行っていない、と言う事が良く分かる20分少々だった。
 未乗区間は温水まで。その先、京釜線接続の加山デジタル団地で7号線を降りる。半日費やしたソウル郊外の落穂拾いはここまでにする。まだ乗っていない路線は残っているし、夜遅くまで頑張れば1路線か2路線は行けるかも知れない。10年前ならもう一本、って頑張った気がするが、疲れる事は気乗りしない。
 明日は早いので、今晩は空港の近くに泊まる。5号線に乗り換え、松亭という駅まで。ここは金浦空港の一つ手前。改札を出ると18時半前だった。予約が入ったなら、日帰りできたなとは思う。
 ホテルにチェックイン。手続きを取ると、明日の朝、何時の便かと聞かれる。このホテルに泊まる人は全て空港まで行く人、みたいな扱い。まぁその通りなので空港までの送迎。お願いする。8時出発と伝えると6:20ではどうでしょうかと聞かれる。金浦の手続き、空いているだろうし、ラウンジも長居するところではないので、全く構わない。
 荷物を部屋に。泊まるだけの部屋なので大したことは無い。薄暗くて過ごすには気が滅入るので、食事を兼ねて外に出る。
 駅の周辺は飲食店が目立つ。時折轟音が響き渡るのは金浦空港からの離陸機。この松亭という駅。金浦空港から5号線で一駅という立地である。

 駅の近くから脇道に入ってみた。飲み屋街みたいで、何軒かそんな店が並んでいる。そのうちの一軒に入る。先客が二組。店員は三人。両親とその娘、と言った感じ。その娘さんが注文を取りに来る。
 カウンタにビールサーバが見えている。だから生ビールを頂きたいのでセンメッチュをお願いする。すると何かごにょごにょ言われる。自分の韓国語は最低限度の意思を伝えることぐらいしかできないので、会話となるととたんに往生する。ピッチャーでないと生ビールは頼めないのか、と認識する。なら瓶ビールでいいや。

 そんな訳で瓶ビールを頂く。コップの銘柄と実際出てくる銘柄が違うのはいつもの事。どこに行ってもそんな感じで、もう慣れた。
 最初のやり取りで外国人と言う事が思いっ切りばれたが、ここには英語のメニューなんて気の利いたものは無い。でも鶏の店だというのは入る時の看板で認識はしている。すると先程のやり取りを見ていたらしい、母親らしい人が厨房から出てきて、これがチキン、これがフライドチキンと教えてくれる。そこでフライドチキンをお願いする。

 出てきた付け出しでビールを飲み干す。次は焼酎かなとも思ったが、もう一本、ビールをいっとく。
 厨房から出てきた母親がまた厨房で料理を作り、頼んでビールを出してきたのは娘さんの方。もう一人、父親と思しき人がいて、この人はずっと手持ち無沙汰。何も働いていない。東南アジアでありそうな光景だが、韓国でもなくはないのね。
 さて、お願いしたフライドチキンがやって来る。 

 一人で食べるには、結構な量。。。。時間を掛けて、何とか何とか食べ切る。1時間近く経っただろうか。英語でcheckが通じなくて、韓国語のケサンを思い出して、伝えると通じる。ケサンという言い方、決算と似てるなぁと思って覚えたのだが、釜山だったか木浦だったかで通じなくて、それ以来、封印していたのだった。
 雨の降り続く中、ホテルに戻る。多少飲んだので眠くなる。恥辱を少し片付けるべきだが、激しく眠くなる。コンビニで買ったビールを飲み切らないまま、ベットへ。