宴があけて - 京王線恥辱

　酷く喉が乾いて目覚めた。開けっ放しのカーテンの向こうにまだまだ夜の雰囲気が漂っている。セーターやらなにやらを着たままの様子。記憶を無くすまで飲んでバタンに違いない。詳しくは朝になってから、とひとまず寝る。

　改めて朝がくる。昨日と同じ鈍い光が差し込んでくる6時半過ぎ。頭が少々重たい。今日でホテルはチェックアウト。11時までの筈で、その後披露宴担当まで出向き決済する約束になっている。それまでにご祝儀を整理する必要があり、荷物を整理する必要もあり、今日は朝食バイキングを楽しみたいし、結構時間に余裕がないなぁ、と考える。
　一方、ネットに目を転じるとお祝いのメールやらメッセージやらが届いていてついつい目を奪われる。日記に書いてくれた人もいて、初めて「こんな式だったんだ」と客観的に眺められた気がする。そこにもお祝いのコメントがついていて一つ一つが嬉しいからやはり目を奪われる。返信も打つから時間も経つ。
　8時前になったら食事にいって9時前にはご祝儀の整理。銀行に預けに行った後に荷造りして11時にチェックアウトとおおよその予定だけは作ってその通りに動き出す。同じように朝食券を頂いているので、その使用範囲の中から洋食バイキングのお店へ。担当者も勧めていたし妻も友達と来たことがあるそうだが自分は全く知らなかった。

　半分ぐらいは外国のお客様と思われる。同じ時間帯の成田空港ラウンジよりも国際的だ（笑）。そんな中で和洋混合の朝食。何しろ昨晩は飲み過ぎたから、一番嬉しいのは味噌汁、なのである。
　デザートの類までゆっくりと楽しむと1時間は簡単にすぎる。9時近くになったから慌てて部屋に戻る。
　ご祝儀の整理も意外と時間が時間が掛かったから終わってみると10時近かった。先に荷物の整理をしてしまう。こちらは思っていたよりは早くすみ、初めて時間に余裕が出来たから最初に予定していた通りに銀行に行ってしまう。各々の口座に入金出来てようやく安心出来る。

　部屋に戻るとまもなく11時。冷蔵庫にヱビスの500ml缶が転がっている。こんなのあったっけ？？？
「昨日さぁ、最後の方、覚えてないんだけど、どうだったの」
「コンビニ寄って買ったんだけど」
「それも超長期熟成の方にしたらって言ったのに、500Ml缶じゃないからって普通の方、選んでた」
　ありそうな話だ。
「アマポーラ歌って、フラフラにしながら歩いて、酔っぱらってる？って聞いたらそんな事はない、まっすぐ歩く！ってスタスタ歩き始めて、でもだんだん曲がってったんだよ」
　うわぁ、バカじゃん。
「それなのに三井ビルのところでイルミネーションの写真撮ったりしてさぁ」
「もしからした撮ったこと忘れているかも、って言ってたけどね」
　確かにその通りです。
「三次会の支払いの辺りから記憶がないんだけど」
「払う、受け取らないでやりあってたけど」
　ありそうな事だなぁ。
「酔っぱらいの介抱って初めてしたわ」　
「すみません」　
　荷物が多いからさすがに運搬を依頼する。台車１台分いっぱいを運んでもらい、フロントへ向かうとちょうど11時
。チェックアウトのラッシュになっている。ついでブライダルサロンへ向かい披露宴の決済。決済には真面目そうな人が出てきて名刺をいただく。出納責任者なんて肩書き。披露宴の担当者に勧められてカード決済とするべく、枠の臨時拡大、事前に折衝はしていて認められていたけど、いざ決済となるとさすがに時間が掛かった。こちらも無事完了。11時半を過ぎてようやくホテルを後に出来る。荷物、クルマ一杯になった。来る時よりもかえって増えた感もある。

　一旦銀座に向かう。下道で20分ほど。先日借りたティアラを返却。また一つ気分が軽くなる。再び自動車。今度は首都高を中央環状線から3号線。用賀から玉川へと向かい第三京浜で横浜に向かう。夕方の返却まで少々間があるから良い機会と港北のIKEA屁。到着したのは13時を少々回った所。

　前に来た時よりも物の値段がずいぶんと安くなっている気がして、ついついコマゴマと買い物をしたからクルマの荷物もまた増えた。後方確認がしずらくなり、ちょっと嫌だなと思いつつクルマを走らせたのが15時半。後は今積んでいる荷物を自宅に放り込み、クルマを返却すれば一日が終わる。第三京浜の向こうに夕空が広がった。16時前。もう一日が過ぎて行こうとしている。意外と余裕のない一日だった。もう少しゆったりしたかった所だけど、現実はなかなか上手くは行かない。荷物を積み降ろして家の中に全部放り込むと最終コースは上大岡まで鎌倉街道。日が暮れて真っ暗な中を10分ほど。約束の時間に30分を残して無事、返却。

　脚がなくなったから電車で南太田に戻る。でもデジカメを一緒に置いてきてしまった。確か19運用、1651編成だっただろうか。駅から自宅へ向かう途中の鎌倉街道は夕方の帰宅ラッシュとなっている。17時前にクルマを返すことが出来て、どうやらよかったようだ。

　荷物をとりあえず片付けたり、お礼の電話をしたり、メールを出したり、撮ってもらった写真をダウンロードして眺めたりしている間に、デジタルフォトフレームをホテルに忘れて来た事に気づいて慌てたり。バタバタとしている間に12時になる。もう寝る時間。明日からは会社だ。さすがに慌ただしかった。もう一日、休んでも良かったかもしれない。