新宿好日


 昨日の雨もあがり、東から鈍い光が射し込んでくる。12月6日、大安吉日。本日、挙式
 昨夜は結局2時近くまでウェルカムボードの準備をしていたから睡眠4時間。今日は8時半に美容室へ出頭せよといわれている。資料やら昨晩作ったウェルカムボードやらをまとめる。ひとまず朝食を。披露宴の担当者から頂いた朝食券を使って和食のバイキング。

 まぁこの後が控えているから、軽く、本当に軽く。
 食事が終わってからちょっと入口を見に行ってみる。

 今日の挙式、11件。さすがに大安吉日なだけはある。それだけ見ると一旦部屋に戻る。まもなく8時半。拘束開始だ。
 美容室。小ぎれいな入口にスーツケースやら何やらが山となっていて、廊下まで人が溢れている。同じような時間に挙式があるから、今の時間帯が一番のピークらしい。ちょっと待たされた後、妻は別室送り。自分もメークやらに連れて行かれる。そんなの頼んでいたんだ、と感心する間に椅子に座らされ、顔を塗られる。クマが出来ているから消しておきましょうと。髪も整えられた。スポットを浴びる時に顔に陰が出ないように、との事。
 9時が過ぎるとピークを越したのか美容室に穏やかな空気が流れだす。メークも終了。新郎更衣室に行けと言うのでそちらに向かう。新郎更衣室。狭苦しいその中でネクタイを締めると、ブートニアをつけて貰う。ポケットチーフで完成。

 そんなにやる事はないからすぐに終わる。10時の写真撮影まで待機だそうだ。こんな狭い所で待つのも嫌だから、ちょっとだけ外に出る事にする。

 突然自分の名前が書いている所に出くわしたからびっくりした。ただいま準備中。一気に本番気分、高まる。
 たまたま父親とばったり会ったから親族紹介の前にするつもりだったコマゴマとしたお願い事やら何やらをする事が出来た。結果から言うとこの時点で打ち合わせが出来て正解だった。後は結構忙しくて何にも出来なかったりする。
 写真の時間が近づいたから新郎更衣室に戻る。すぐそばが写真館。先ほどからひっきりなしにウエディングドレス姿が行きかう。今度は親戚一同の行列。今度は写真館がラッシュになりつつある様子。
 妻の準備が出来上がって写真の順番が来る。「新郎さん、もうちょっと首を左に」「右足を半歩前に出してください」「右足をちょっと左に」何か人形か何かになった気分だ。言う事を聞いていたら姿勢が不安定になってぐらっと来た。
 表情が堅いのか何度も撮り直しを喰らう、すみませんと思いつつ。
 1枚のショットのために恐らくフィルム1本使ったのだと思う。ようやく終了。もうすぐ10時半。そろそろ親族紹介です、と言うので今度は高層階へと移動になる。

 久しぶりに顔をあわせる親族も多く、妻側の親族は当然初めての人も多く、顔と名前が一致しないという失礼な状態にも関わらず、写真を撮られたり撮られたり撮られたりしている間に全員が揃って親族紹介となる。紹介は親に頼んでいたから気を楽にして臨める。親が意外なほど緊張していて自分は逆に気楽になる。
 紹介が終わったところで挙式のリハーサル。今度は5階のチャペルへ。先ほどから高層階と低層階を行ったりきたりだ。11組の新郎新婦親戚一同が同じ事をやっているわけで、だからエレベータの待ち時間、やたらと長くなる。
 自分と妻、そして義父の三人が介添えさんの案内でチャペルに向かう。ご担当の牧師さん、どこの国の方かは分かりませんが、流暢な日本語を話す外国の人がこれからの手順について説明しつつ、動き方の練習も合わせて。義父がエスコートしてきた妻を受ける部分の動き。すぐにはコツを飲み込めず、後で追試を喰らった。もうちょっと前に一度練習しておけば、とも思う。普通の結婚式も大抵の場合、ほとんどぶっつけ本番なのだろうか。皆さんそつ無く動いているように見えるのだけど。
 練習が終わると控室に引き上げになる。牧師さんと交えて4人で少々雑談。まもなく時間だ。チャペルを戻ると既に参列の方々が会場一杯に入っている。牧師さんについていって入場。パイプオルガンの音が響きだし義父にエスコートされた妻が入ってくる。ダメ出しを喰らった受け渡し部は割りとスムーズに行くけど、その後牧師さんの方へ進み出る時に中心をはずした様子。もうちょっとこっち、と牧師さんから小さな身振りで指示が出る。
 概ね練習通りの流れで挙式が進んでゆく。ベールアップのタイミングを間違えそうになり、牧師さんから小声でまだと言われたぐらい。何とか無事に終える。そしてフラワーシャワーへ。会場を選んだ時は12月だし寒いかもなんて言いあっていた外の広場。今日はさんさんと陽光を浴びて、暖かな雰囲気。フラワーシャワーを浴びて鐘を鳴らすと記念撮影に雪崩れ込む。友人やら親戚やら。父方の親戚、従兄姉並びってこの組み合わせで並んだの、初めてかも知れない。親が喜んでいる。
 皆さんはそろそろ会場へお進み下さいとさかんに声がかかり始める。いい加減、次の組の時間が近づいているようだ。皆さん少しずつ移動していただき、妻は再び化粧直しで控室へ。新郎はその間、新郎更衣室でお待ち下さいと。あの狭いへやかぁと思いつつ、ブートニア付けたままホテルを歩き回るのも難だから大人しくすることにする。
 新郎控室には同じように本日挙式の人がいて、盛んに謝辞の練習をしている。自然と会話が始まる。既に披露宴が始まっていて中座中なんだそうだ。やっぱり新婦が主役ですからねぇと愚痴のこぼし合い。せめてここでビールでも飲めたらなぁなんて話をしつつ20分少々。新婦の準備が出来たのでと介添えの方に呼ばれて新婦控室へ移動となる。

 先ほど活躍したブーケも小休憩の途中。
 また鐘の音が聞こえてくる中で二言三言交わす間に時刻は披露宴開始10分前になっている。そろそろ移動です、と声を掛けられて再び高層階に戻る。既に控室、受付どちらも空になっていて、披露宴会場からは賓客を迎えるために選んだ「I Will Be There with You」が漏れてくる。今日の仕切り役であるキャプテンから入場の説明を受ける。まもなく開演。キャプテンがドアをノックして合図を送る。意外と原始的ですね(笑)なんて感じで緊張が解れてきた所で音楽が亡き王女のためのパヴァーヌに変わった。指定したのは0:24、Dooropen。メロディーが時を刻み、そしてドアが開く。漆黒に浮かび上がるスポットライト、一歩二歩、先へと歩み出て深く一礼。

 司会をしてくれているのは友人だし、適度に緩い感じで披露宴は進行してゆく。その友人のアイディアで新郎新婦紹介は互いに互いを紹介しあうスタイル。妻に「写真が趣味で」なんていわれたから「今日もカメラ、この通り持ってます」なんて見せてみたり「自分でも撮ります!」なんて宣言しちゃったり、妻の友人談「披露宴でこんなにしゃべる新郎は初めて見た」と。主賓のお言葉をありがたく頂戴する。ケーキ入刀でまたスポットを浴び、フラッシュを浴びる。左視線もって行きます。いいですか〜。次真ん中行きます。なんて新郎自ら言っちゃう披露宴は、確かになかなか、無いだろうなぁ。
 上司に乾杯の音頭を取って頂き宴が始まる。乾杯の写真をみんな撮ってくれるので、再び動きを止めて視線のサービス。シャンパン、なかなか飲めませんな(笑) カーテンが開くと外の景色が一面に広がる。晴れ上がって、本当に良かった。
 写真を撮りに来てくれた人や注ぎに来てくれた人と会話を交わす。会社関係のテーブルからは「もう少し緊張しろ」と声が掛かる。楽しくて緊張する余裕なんてないのだ。スタッフさんから声が掛かって中座の時間と知らされた時には「えっ、もう??」と声を出してしまった。
 黒船(嘉永6年6月4日)のメロディに載せて退場。ちょっと曲が短すぎたかと一瞬焦ったけど、ちょうど良いタイミングで深々と一礼になる。ドアが閉まった後で妻と二人、喜々として「やった」と。スタッフさんからは「これで1時間、ちょうど予定通りです」「もう1時間経ったんですか」なんて。

 入る時はしっかり眺める余裕もなかったウェルカムボード。デジタルフォトフレームを買ってきて写真を流すだけなら楽だよねと話していたのに、流す写真の選定に手間取り、さらにキャプションがいるという事に気づいて前の日深夜まで掛かって編集したから結局は手間が掛かりすぎたというもの。手間は掛けたけどどれだけ見て貰えたのか、正直不明。
 写真を撮っていると会社の上司やら後輩やらが出てくる。会場内禁煙なもので、煙草吸いには申し訳ないことをしている。「行ってらっしゃいませ」とエレベータに吸い込まれて行くのを見送る。こちらは別のエレベータで低層階に。再びあの薄暗い新郎更衣室に。ほんと、ここでお酒飲めればいいのに。
 妻の衣装替えが終わるのを待って再び写真撮影。例によって首を左に傾け、一枚撮られるとまた戻しとお手間を取らせたから時間が掛かる。ドアの前でスタッフさんからキャンドルサービスの説明がある。スタッフさんが次はこちらへと声を掛けてくれるというので「○○さんの後ろをついていけばすべて丸く収まる訳ですね」と返したら爆笑になってしまった。
 再び合図が会場内に行く。入場の曲が流れて司会の声が漏れてくる。ドアが開いて再び会場へ。誘導されるがまま、全テーブルを回るのに10分ぐらいだったろうか。想像以上に短くてこの辺りから選曲がダメダメになりはじめる。使わず仕舞いになった曲がある一方で何度もリピートになる曲もあったのは失敗だった。スケジュールがずれることも想定して多すぎるぐらいに曲を選んでおくか、もし足りなくなった時はリピートする範囲を広げておくようにお願いするか、すべきでした。反省しても次がある訳ではないけど、もし誰かにアドバイスする機会があるなら是非とも伝えたい所。
 友人のスピーチが始まる。司会者が中座中に振ってくれた人も併せて会社関係から親戚関係も含めて皆さんから幅広いお言葉を頂戴出来る。何か、良い方向に転がってくれたなぁ。高砂で二人、しみじみと。
 そうそう、ホテルの担当者がぜひお召し上がり下さいと言ってた料理。
 全部は無理でしたけどね、ある程度は美味しく頂きました。
 予定で2時間半。最後は少々オーバーして花束贈呈。そしてサプライズプレゼント。お開きへとなる。最後に送賓。初めてお話出来た人もいるから、本当はもっとゆっくり話しをしたかったけど、どうしても流れ作業っぽくなってしまうのは、残念なところだ。
 沢山の人達にご尽力頂いて披露宴も無事にお開きまで持ってゆけた。自分達だけの力ではこんな素敵な宴には出来なかった。全て皆様あっての素晴らしい時。感謝を尽くしても尽くしきれない。本当にありがとうございます。
 込み入った着替えのある妻は更衣室へ。ブートニアだけで何にも更衣室に置いていない自分は一旦部屋に戻る。

 新宿の街は既に夕景の気配。大きく一息。もう一息。少しの間を置いて二次会は17時から。こちらはきちんとした準備をしておらず、でたとこ勝負のグデグテ状態なのだ。
 友人に手伝って貰って荷物運び。隣のビルまでだけど、妻がドレス姿だし徒歩移動は時間が掛かる。やっぱりクルマを頼むべきだったかなぁと反省しつつ、お隣へ。既にお客さんが集まりはじめている。慌ててバタバタと準備。
 二次会は幹事役も司会役も用意していないダメダメ状況だけど即興で司会を引き受けて貰ったり、乾杯の挨拶も突然お願いしたりで、本当にすみません状態。それでもなるようにはなって祝辞を頂いたり、ありきたりだけどビンゴをやってみたり。一応商品だけは用意してきており、最後は時間が押しまくったけど、こういう場面で恒例のキスまでやって、何とかかんとか普通に締めくくれた。
 会社の人達が飲みにゆくというので一旦ホテルに引き上げて、荷物を仕舞い着替えたところで居酒屋で三次会。妻の友人達やその旦那さんも来たから妙な組み合わせではあるけれど、話しも弾み、酒も進む。記憶はこの辺りからフェードアウト。さて、どうなったものやら。

 デジカメに残っていた写真。撮影は22:16。この後どうしたものやら。
 自分で言うのも変だけど概ね合格点の貰える挙式だったのではないかと思う。何より自分達が楽しいと思える式だったのが良かった。ただそれは自分達だけの力では成し遂げられなかった事。何度も書いたけど多くの人のご尽力が故にこの高みまで来れた訳だし、本当、皆様方には感謝しいてもしきれないと思う。
 残念だったのは、新郎の立場では披露宴全体が見えないということ。どんな迎賓になったのか、スライド上映の反応は、結構わからない所があるもの。1ゲストで参加した方が披露宴自体は良く分かるのかなぁと思ってみる。
 
 そして、反省点。

●スライド用写真
 二人の写真はこまめに撮っておいた方が後々困らずにすむ。それと生い立ちの写真も、列席者と一緒に写っているものがあった方が盛り上がるみたい。日頃から自分の写真も撮るように心がけよう。
●BGM
 BGMは多過ぎると思えるぐらい選んでおいた方がスケジュールがずれた時の対応がしやすい。
●心付け
 意外なほど多くの人の手間を煩わせます。予備で幾つか用意しておいた方がいいと思います。余れば余ったでそれは構わない訳ですし。
●二次会
 披露宴と二次会の準備を同時に進める事は難しいです。二次会は誰かにあらかじめお願いした方が絶対に良いです。

 こんな所でしょうか。自分が結婚式をやる事は二度とないでしょうけど、これを読んでいる人で、もし予定があるならば,お役立て頂ければと思います。 

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