5000系ざんまい 

 久しぶりに乗る富士急行。登山電車の名は大げさだろうと思っていたけど案外とキツい登り坂に認識を改める。秋空とすぐそこにある山々。そしてたわわに実った稲田の景色は観念的には平凡だけど目の当たりにすると心穏やかな気分になれる。天空遥かを貫くリニアの高架をくぐると益々急坂になる。
 前2両の富士登山電車には女性車掌さんがいて先頭の指定席に検札があった後でグッズの車内販売に廻ってくる。折角なので商品を見せてもらう。ペーパークラフトやら記念乗車券。ポストカードだったかな。
 
 試しにハンカチを買ってみる。¥500。実用品だからまぁ良いかなと思う。デフォルメされた車体でも弁当箱クーラが弁当箱のままな事がちょっと可笑しい。
 三つ峠を出ると、車掌さんがまもなく左手に富士山が見えると触れて廻る。列車は速度を落としてまもなく
 
 富士山が姿を現した。逆光、とは言えこの大きさには迫力がある。富士急行線。久しぶりに乗ってその良さを初めて認識したかも知れない。ハコの良さ、ももちろんあるだろうなぁ。
 下吉田到着。10分停車だろうだ。下り特急の通過待ち合わせとの事。たかだかと言っては失礼だが26kmほどの小私鉄で優等列車の通過待ちを喰らうとは思わなかった。けど、
下吉田駅富士登山電車の運転開始と共にリニューアルされました。駅をご見学のお客様。車掌が案内致します」
 
 観光客はみんな降りてゆく。どこまでも観光を意識した列車なのである。こんな調子だから大月から河口湖まで。わずか26.6kmを70分近く掛ける事になる。登山電車に混じった地元客は揃って居眠り。
 
 コンセプトもデザインもまるで異なるフジサン特急が河口湖へと急ぐのを見送ってこちらも出発。もう吉田の市街地でますます大きくなった富士山と富士急ハイランドの姿を眺めていると富士吉田に到着となる。このまま河口湖まで行くのも良いけど、ここから引き返してどこかで5000系を撮ろうと思う。列車を見送り、一旦改札を出る。
 さっき駅弁を食べたばかりだけど吉田うどんが気になるから食べてゆく。閑散とした駅前、ちょっと歩いた所に一軒食堂があるからとりあえず入ってしまう。
 
 古びた雰囲気の店。老夫婦が切り盛りしているその店ででうどんを頼む。携帯で恥辱を綴っていると老婦人がスポーツ紙を差し出してくれる。好意は好意として頂く。
 
 たぬきうどん。¥450。一緒に添えられているのは薬味。自家製ですけど辛いので少しづつ入れて下さい、との事。まずそのままで汁を舐め、そして薬味を入れてみる。美味しい。

 さて。どこか写真を撮れる所で降りようかと引き返す。先程の富士登山電車が大月ゆきとして戻って来たからそれに乗る。今度はロングシート車にした。内装は明るくなっているけど雰囲気は良く残している。割りと空いていてゆっくり過ごすと寿。ここで降りよう。
 
 電車を見送り、次の三ツ峠に向かって歩く。下り坂だけど道路はそれなりに勾配で鉄道はそんな坂、苦手だから遠回りして距離を稼いでいる。自分の脚で歩けば先人の苦労が良く伝わる。現代ではクルマの方が圧倒的に早いであろう現実も分かる。
 
 のどかな景色の中、二時間弱滞在。
 
 
 
 列車の本数はたかが知れてるけどやって来る電車がバラエティに翔んでて飽きなかった。いい加減喉が渇いて帰り道に。三つ峠まで下り坂。
 今日は横浜に戻るが帰り方は決めていない。確か16時ぐらいに河口湖から新宿までホリデー快速があった気がするからそれに乗るのが良いのだろう。河口湖へは14:56に電車があるからそれに乗ればビールを買う余裕ぐらいあるに違いない。特急車に揺られて新宿まで。そんな妄想をしたのだけど、現実は大きく違う事になる。
 改めて駅の時刻表を見ると14:46に大月行きがある。これに乗って一つ隣、東桂まで河口湖行きを迎えに行こうと漠然と考える。そこで電車に乗る。元5000系に揺られて5分。東桂到着。既に河口湖行き電車がいる。ここですれ違いだったか。しかし
 
 対抗式ホームでは向かいの電車に乗り移る事が出来ない。むざむざ出発を見送る事になる。何と言う失敗。。。。。しばらく下り電車は無いが時刻表を見ていて30分後に大宮ゆき快速があることを見つけた。ホリデー快速だ。これで大宮まで行くも良し。八王子で降りてもまぁ良いか。それじゃあと近くのコンビニまでビールを買いに行く。戻ってくるとまもなく河口湖ゆきの到着時刻。三つ峠まで迎えに行く事は出来そうだし、三つ峠は島式だから同着同発でも乗り換えは出来そうだけど、先ほどの失敗で懲りた。ここで待つ。先ほど降りたホームで本を読みながら10分間待つ。
 踏切が鳴って特急型電車が現れる。
 
 え""""?????? 何故に下りホーム???
 電車に乗るには向こうのホームに行かねばならないが、列車が踏み切りを塞いで渡れない。がら空きのリクライニングシートが並ぶ車内を見上げている間に
 
 ホリデー快速は行ってしまった。
 下りホーム上りホームと言う認識が間違っていたようで、どうやら本線副本線であったらしい。さっきの上り電車は待ち合わせのある時だけ使うホームに着いたらしい。すれ違いの無い時は全て本線側のホームにつくのだろう。
 やれやれ。どうしようか。ひとまず買ったビールが温くならないうちに飲むか。今度は本線側のベンチに座り、500ml缶に手をつける。2本目に手をつけた直後、踏切が鳴った。
 
 下り電車、副本線に到着。。。。。。。。。
 鳴り止まぬ踏切にもう笑うしかないなぁと半分憮然としつつ眺めているとようやく鳴り止む。ホームに、と言うか電車に乗れるようだ。本線側をフジサン特急が掛けていってこちらも出発。時刻は、何時だろ。
 河口湖まで行ってホリデー快速はもやは無理だろうが、どこですれ違うかな。富士吉田だろうか。ビールを買い足す余裕は無いだろうな、なんて事を思いながら逆光の富士山を眺める。
「下吉田です。快速列車通過待ち合わせのため3分停まります」
 ん? 通過???????
 ホリデー快速がゆっくりゆっくりと通過してゆく。どうやらもう一本の快速列車にも振られたようだ。。。。。。「今日はダメの日」どころじゃ無いなぁ。大きく溜息をついた。
 富士吉田ではちょうどよい大月行きが無く結局河口湖まで乗りとおし、改めて始発の大月行きに乗る。フリーパスだから切符の面では問題ないけど、正直疲れる。大月には薄暗くなった17時20分過ぎの到着。2時間近く道草を喰った事になる。
 
 ちょうど高尾行きがあって乗り込む。「ホリデー快速が‥」の案内が途切れ途切れに聞こえたけど座れたから動かない。列車が動き出した。結局、四方津だったかで小淵沢からのホリデー快速通過待ち。ダブルデッカーの重そうな車体が流れてゆく。乗ってて座れたかどうかは分からないけど。こちらは各駅に停まり、たまに待ち合わせでどかんと停まる。高尾と八王子で乗り換え。横浜線、さすがに疲れを覚えた。最後は根岸線E233系
 
 119編成と京急線、23運用の 
 
 1345編成で。