2018-07-18

 目覚めると朝だった。久しぶりに目覚めて明るい朝。時差が苦手な自分にとっては実に素晴らしい事である。昨日、昼間のバスで寝て夜それなりの時間まで起きていた事が良かったのかも知れない。

 とは言え時刻は5時半。今日は6時半にホテルを出る事にしている。身支度少々。予定通り出掛ける。地下鉄の駅に。今日は一日乗車券を使うほどではないので、手元のTapに1Wayの乗車券分を記録する。コインもしくはクレジットカードというのでクレジットカードで1乗車分、1.75ドルを支払った。


 25周年という地下鉄で二駅、ユニオンステーションへ。ダウンタウンへと向かう人の流れにラッシュアワーを感じる午前7時前。クルマ社会のロサンゼルスでもこうやって電車通勤する人もいるんだと感心する。
 今日はユニオンステーションからアムトラックに乗る。向かうのはサンディエゴ。メキシコ国境の街にしてアメリカ海軍の拠点となる街。ロサンゼルスからは200㎞程離れている。

 ユニオンステーションに発着するのはロサンゼルス郊外路線のメトロリンクと都市間連絡のアムトラック。朝なので郊外から来るメトロリンクの列車は頻繁にやって来る。その中で7:25出発のパシフィックサーフライナー、564列車のサンディエゴ行きが今日の乗車列車。乗車券はネットで予約済み。ホームへ直行する。

 こちらがこれから乗車するパシフィックサーフライナー、564列車のサンディエゴゆき。先頭に機関車。その後にはビジネスクラスが1両。自由席の車両が5両。全て2階建て。中には1階がカフェになっている車両、荷物スペースになっている車両もある。

 隣のホームにもサーフライナーが停まっている。まぁこんな感じの大ぶりな車両を連ねたのがサーフライナー。

 出発まで20分を切った所。ホームで乗車開始を待つ。10分ぐらい前になってドアが開いた。車両の2階席。海が見える側の席に座る。乗車率は5割ぐらいだろうか。

 7:25、定刻にサーフライナー564列車はユニオンステーションを後にサンディエゴへ向かう。ロサンゼルス郊外の殺風景な所を緩い速度のまましばらく進む。
 ビジネスクラス以外は自由席。早々に検札が来る。手元の切符だったり、予約完了時のバウチャーだったり、スマホの画面でも良いらしいが、QRコードを提示すると確認が出来るようだ。確認が終った旅客の所には

 こちらは先程に比べるとアナログな紙で識別するようだ。
 列車は倉庫やら工場やらが目立つ殺風景な所を進む。

 時折側線に貨物列車の姿。引き込み線がすっと分かれてゆく所も多い。ひょろひょろと伸びる引き込み線の数は日本の比ではなく、見ていて楽しい。
 30分程でプラートンに到着する。乗車多数。席があらかた埋まる。出発。さらに南へ。郊外に出ると速度も速まる。二階席に座っているとゆっさゆっさと長い周期で揺れる。車両が重たいからか、不快な揺れでは無い。
 アナハイムという案内がある。時刻は8:03。

 駅のすぐわきにエンジェルスの球場が見える。大リーグに興味はなくとも、大谷翔平の圧役は知っている訳で、柄に無くはしゃいでしまう。乗車少々。更に混む。
 この辺り。ロサンゼルスの衛星都市がずらずら並ぶようでこまめに停まる。その度にお客さんが増えてくる。階下のカフェから賑やかな話声が聞こえるようになってくる。アメリカ人って中国人並みに煩いなぁと思う事になる。

 1時間も走ると降りる人もちらほら。乗る人もいるので列車は混雑したまま。駅前には列車と接続があるのかバスが3台程来ていた。良く出来た接続だが、列車からバスに乗り換える人はいなかったようだ。
 8:30を過ぎてカフェカー営業中、と思しき案内が入る。先程から賑やかな声が聞こえていたのでまさか今から営業?という気になる。前々から営業していて改めて今案内、という所だろうか。

 列車はロサンゼルスの雰囲気を抜け、荒涼とした大地を進む。アメリカに着いた時、上空から眺めたような景色の中だ。そんな景色の中を南へ。
 車窓右手、不意に海が現れる。

 ユニオンステーションから1時間半。サーフライナーの名に相応しい景色が広がり出す。

 曇り空の下、人が思い思いに海を楽しんでいる。今朝ほどサーフライナーに乗る頃合いのロサンゼルスは寒い位で、海で遊ぶなんて想像の範囲外なんだけど、アメリカの人は元気だ。
 まるで五能線みたいな海岸線に進む列車を楽しむ。海岸線から離れると

 道路を絡み合い、南へ進む。9:15、オーシャンサイドに到着。リゾート地らしい雰囲気と駅名でお客さんが少々降りる。更に南へ。

 9時半を過ぎてサンディエゴまで残り1時間。青空が広がると車掌が「スガワラビーチ」と言いながら車内を廻り出した。どう聞いてもスガワラに聞こえたけど実査にはソラナビーチ、だったみたい。
 地図で見るともうサンディエゴの郊外まで来ている。海が離れてゆくと線路は大きく山側を迂回。

 速度が緩んで列車は明らかに坂を上る。クルマに追い越され追い越され。長いこと掛けて難所を越えた所でサンディエゴの街中へ。オールドタウンの駅でたくさん降りる。ユニオンステーションを出発した頃の雰囲気に戻る。

 終着のサンディエゴに受けてゆっくり走る。空港が見えて、Taixingしてゆく飛行機の姿も見える。
 速度が緩んで列車が停まる。終着、サンディエゴに到着。10:25の定時だった。

 すっかり晴れあがって南国の雰囲気に満ち満ちたサンディエゴ。小さな駅だが、

 サンディエゴ市内を行くトラムも乗り入れている。アメリカも車社会と言いつつ結構市内交通が整っているのねと認識を改める。環境意識の高いカルフォルニアだからかも知れないけど。
 Borderゆきと表示した電車が走って行く。サンディエゴはメキシコ国境の街。国境を越えるとメキシコ領ティフアナ

 サンディエゴのターミナル駅。クラシカルな雰囲気が好ましい。
 今日は夕方、4時の列車を予約している。それまで5時間半。その間に少し観光をする。目的地は駅のすぐそば。歩いて行ける範囲。

 駅から線路を渡って海の方へ。海にあたると左手すぐ。到着した所にいるのは

 航空母艦。現役であればずいぶんと無防備な感じだが、もちろん退役艦だから。

 そこにいるのは1992年に退役した航空母艦ミッドウェー。今はミッドウェー博物館になっている。
 今日はこちらを見学してゆく。入場料は大人一人23ドル。真珠湾の戦艦アリゾナが29ドルだから少々安価。 
 まずは格納庫から見学。この先、船内を歩いた後、飛行甲板へと向かう事になる。格納庫、入った所で音声案内の再生機を受け取る。言語が色々と選べて、日本語もOK。なかなか優れたシステム。
 さて格納庫。航空機が何機か展示されている。それぞれ案内を聞きながら少しずつ。

 航空母艦に相応しくないレシプロ機が展示されているが、これは空母ミッドウェーにゆかりのある物。先程の音声案内のおかげで理解できる。ベトナム戦争時、サイゴンを脱出する人たちが小型機やヘリコプターに乗り、ミッドウェーへと逃れたのだそうだ。

 レシプロの練習機を眺めたりしてから、船内、1つ下の階に降りる。
 空母ミッドウェーの乗組員は4,500人。ちょっとした街があるようなもので、下の階には様々な生活の痕跡がある。以下見学順を少々逸脱するが、気になった所をピックアップ。


 士官用、高級将校用から下士官、水兵用まで、あちこちに食堂がある。目玉焼きやらベーコンやら、ソーセージという調子でアメリカンな食事を体現したような内容。旨そうには見えたが、後でどんなものかネットで見てみたらそうでもないらしい。

 洗濯だけでも1スペースあるのには驚いた。でも4500人分の洗濯と思うと納得。これだけ設備を割いてもパイロットが2着の操縦服を選択できるのは週に1度だとか。

 生活のすべてが揃うと思ったら教会まであった。人生の全てが揃う、って言っても良いのか。

 人生の中には悪い事もある訳で営倉もある。

 水兵のベットは実に粗末な一方で

 士官の部屋は立派。いつでも冷静に決断を下すために良い環境を与えられているのだ、と解説は仰る。妙に納得する。


 さらに下部。喫水線の下にある機関室も見る。見えているのは45,000トンの巨艦を動かす主機のごくごく一部なのだろうなぁと思いつつ。
 喫水線から上がって上がって格納庫に戻る。更に上へ向かうとそこは広大な飛行甲板。空母ミッドウェーで活躍した艦載機やヘリコプターが展示されている。


 操縦席に座れる練習用ジェット機は大人気。長蛇の列が出来ている。

 ヘリコプターにもなかなか興味深い展示がある。

 アポロ8,10,11,12,13の5機撃墜、の証ではなくて、5機アポロ宇宙船を回収した、という証。

 サンディエゴは米国海軍の拠点であり、記念艦の向こうには現役の艦船が佇んでいる。視線をずらすとサンディエゴ空港に着陸する民間機の姿も。1時間ほど早ければ成田からやって来たJL66の着陸シーンをミッドウェーから見る事が出来た筈。

 一つ一つ解説を聞いて行くとなかなか楽しいが、時間もかかる。ここまでで到着後2時間以上が掛かっている。見せる、学ぶ、という点では非常に良く出来た施設だった。英語力の都合で無理だったけど、現役当時のミッドウェーの関係者が記念艦で解説員として働いていて、黄色い帽子をかぶった人に話しかけると、体験談を教えてくれるそうだ。なかなか濃い時間、濃い体験だった。
 気が付くと14時になっている。さすがに腹が減った。今朝の朝食、サーフライナーの中で前々日に買ったバナナを食べたきりである。サンディエゴの街へと向かい、昼食にする。
 駅の周りにはスターバックスはあったけど、それ以外は無いのでもう少し歩いてみる。適当にあった店に入ってみた。

 涼しいカルフォルニアと言えども陽が照ると暑い。ペットボトルの水は持ち歩いているが、暑いので冷たいコーラを頂く。そして

 サンドイッチで昼食を。
 メキシコ国境の街、サンディエゴの昼下がり。

 目の前を行き交うトラムを眺めつつ食事を頂く間に15時になる。帰りのサーフライナーまであと1時間。少し市街地をぶらぶらしつつ駅へと戻る。少し歩くとダウンタウンらしく、店やら何やらが目立つようになる。もう少し歩くと昼食も選択肢が広がったらしい。もし次に来る機会があるなら覚えておかねば。
 列車の出発30分前を目安に駅に戻る。往復ネットで予約しているので窓口に寄る必要はない。帰りの車内で飲むコーヒーなんぞを買ったりした後で改札の行列に並んだ。

 ビジネスクラスとアンリザーブドの普通車で列を分けている。ホームへの通路は塞がれていて、時間にならないとホームには行けないようだ。ホームにはコースターと書かれた2階建て客車が停まっている。これはサンディエゴからオーシャンサイドまで行く普通列車に相当する列車。オーシャンサイドでロサンゼルスからのメトロリンクに乗り換えできるようだ。
 定刻は15:58なのだが、時間が近づいても改札は開かない。そもそもサーフライナーの車両がいない。16時を過ぎて、係員が行列に向かいDelayと告げて回る。係員の英語だとそれしか分からないが、ツイッターではアムトラックが774列車遅れにより785列車は30分遅れる旨、呟いていた。
 774列車が30分以上遅れてサンディエゴに到着。お客さんが降りてきて、荷物を降ろした後ビジネスクラスから案内開始となる。


 コースター、雰囲気の違う2階建て客車を眺めてから、パシフィックサーフライナーの二階建て車両に乗る。

 先程煩かった3号車のカフェカーは避けて席を選ぶ。左手、逆光でも海が見える方にするか、順光の山側にするか悩んで海側へ着席。
 遅れているからか、慌ただしく16時40分前。出発する。先程眺めたサンディエゴ空港を横目に走り、オールドタウンで大量乗車。車内は賑やかになる。サーフライナーの自由席は真ん中を境に向きが変わるのだが、真ん中の向かい合わせ席で酒盛りが始まっている。3号車のカフェでビールを売っているようで、実に賑々しくなる。アメリカ人も中国人並みに煩いわ、とこの旅で認識を新たにする。
 煩いのだが、疲れが出て寝てしまった。たっぷり1時間。気が付くと

 見覚えのある海岸線を走っている。サンディエゴから1時間以上が経っている。外はくもり空。綺麗に晴れた空でこの海岸を見たかったけど、なんで行きも帰りも曇りかしらね。
 海岸線を離れて列車は一路、ロサンゼルスユニオンステーションへ向け淡々と走る。賑やかな車内も北上するにつれ、疲れが出るのかすこしずつ大人しくなってゆく。
 18:40を過ぎる。定刻ならあと20分でロサンゼルスだが、とてもとても無理。見えてきたのは

 アナハイム
 停車位置の関係なのか、来る時には気づかないものが目に入る。 

 大谷翔平だ。ちゃんと主力選手扱いして貰えているのね。

 アナハイムを後に列車は北上を続ける。

 車窓に時折、メトロリンクの車両が現れ、ロサンゼルスが近づく事を知る。車掌が次はユニオンステーションだと告げて回る。ロサンゼルス郊外、殺風景な中を列車は走る。線路が広がり、広がって、何も知らなくてもターミナルが近い事を知る事になる。

 斜光線の中に車両基地が流れ、

 背景にはダウンタウンの再開発地区、高層ビルのシルエット。久しぶりの大都会感。ユニオンステーションに到着だ。時刻は19:40。40分以上遅れている。

 この列車、機関車はサンディエゴよりの最後方。先頭に立つのは運転席付きの客車であった。列車からは荷物がいくつも降ろされている。ロサンゼルス側に2階座席、1階は荷物室という車両がついていて、日本国鉄でいう所のチッキ、託送手荷物を運んでいるのだった。
 列車はこの先、更に北のサンルイスオビスポまで行くが、自分たちはユニオンステーションまで。メトロに乗ってダウンタウンに戻る。時刻は20時近く。そろそろ薄暗くなる所。完全に日が暮れる前に夕食を済ませてホテルに戻りたい所。
 列車が定刻の19時ぐらいに着いていたら、大中央市場に行って昨日のリベンジ、クラムチャウダーに手を出そうと思っていたのだが、遅れてしまったので今日も難しい。別の店、という事でホテルの最寄りまでまずは戻る。

 20時を過ぎるとレッドライン、パープルライン、共に20分毎になるというメトロで二駅。まだ辛うじて外は明るい時間である。あんまり暗くなると治安的に心配であり、さっさと食事を済ませたい。近くの軽食堂的な所に入る。ファストフードみたいに、先に会計をして商品を受け取る形式。


 ビールとビーフサラダ的なものを頂いたが、二人前で40ドル少々。結構いい値段になる。ここ数日食事をしていて、サラダ的な物を口にする人もちらほら見ている。健康に気を遣うアメリカ人も増えているらしい。そのサラダは結構なお値段。安く済ませるとジャンクフードになるみたい。食事を安く済ませる貧困層の方が太りやすい、って事なんでしょうねぇ。
 食事が終わると暗くなっていた。好ましくないが、ホテルまではすぐ。寄り道せずに部屋に戻る。本当はビールを買いたかったのだけど、この時間に開いている店、遠くまで行かないと無い。

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