5時ちょっと過ぎ、早々に目が覚めた。普段なら窓を開けてもう一度寝る所だが今日は始発の電車で出掛ける。起き出して身支度となる。
 東海道線に出て東に向かうと豊橋7時。と言う時間だが今日は西に向かう。一日早く始まった夏期休暇。その第一ステージとなる移動をこれから開始する。まずは東海道線をひたすら西へ。

 昼間だと大垣まで快速、米原まで出て、そこから新快速が鉄板の乗り継ぎだが、朝はうまく行かない。やって来たのが区間快速岐阜ゆきなる電車。これを刈谷で捨てる事になる。乗り換えるのが普通列車米原行き。

 このまま区間快速で岐阜まで行っても大垣からは目の前の電車に乗りざるを得ない。前後いろいろ調べてみたのだが、一カ所どうしても溢れてしまい、うまく行かなかった。不本意だが、普通列車でちんたら米原に向かうことになる。
 今日はまだ金曜日。もうすぐ7時になるこの時間はちょっとしたラッシュになっている。通勤のお客さんに混じって愛知と岐阜を横断する。名古屋でお客さんが入れ替わる。まだ列車は混んでいる。岐阜でだいぶ降りて大垣まで来ると通勤風のお客さんが消え、18きっぷのお客さんが目立つようになる。それでも満席。後続の快速が隣のホームにやってきて乗り換え客がやって来ると立客も増える。なんだか3度目のラッシュみたいになる。
 快速な1時間10分ぐらいで名古屋と米原の間は行けるが、今日は1時間半を越える。かなり出来の悪い乗り継ぎで米原8:47。この先へ向かう新快速は2分の乗り継ぎ。
 4+4両なんて節電編成の新快速。前の方が混んでいて後ろの方は空席少々。それも彦根で埋まる。9時を過ぎているので通勤客の姿は無いが、どこかへ出掛ける所用客で本日4度目のラッシュを迎えたような気分になる。
 眠気を感じて二度三度居眠りする間に京都、大阪、神戸が過ぎて行く。

 ようやくはっきりと目覚めたのが明石を発車する所。いつの間にか車内は閑散としている。節電のためと案内があって車内消灯となった。昨年の関東ではおなじみの光景。関西の皆さんも慣れっこなのか特になんにもリアクションは無し。

 今日は姫路まで乗り通す。定刻11:16のところ、少々遅れての到着。すっかり日が高くなっていて暑さの厳しい高架駅に放り出される事になる。
 今日はこの先、さらに岡山を目指す。岡山と姫路の間は1時間に1本しか電車が無い、山陽線のネック区間。岡山接続がある下り電車は11時に出たばっかりで次は12時だからだいぶ間がある。というか今日の乗り継ぎは出来が悪い。

 姫路では何と言っても駅そばを食べなくてはならない。駅が綺麗になって同じく綺麗になったスタンドで真夏の昼間に熱々の駅そばを頂く。スタンドの中が冷房されているのが幸い。

 駅そばを食べ終わるとまもなく1本後の新快速がやってくる。赤穂線播州赤穂まで入る新快速だ。これに乗っても相生でも赤穂でもその先の接続は無いのだが、ひとまず乗ってしまう。

 先ほど乗った姫路止まりの新快速と違って車内、18きっぷの利用客と覚しき人でそこそこ席が埋まっている。
 岡山へ急ぐなら相生乗り換えで山陽線を直行するのが早いが、この列車はお客さんが集中し混んでいるのが常である。岡山の到着が20分遅れる事に目をつぶれば、赤穂線経由の方が空いている。ここしばらく赤穂線に乗った記憶が無いから、今日は赤穂線経由でのんびり行こうかと思う。

 姫路から各駅に停まる新快速。相生で半分以上のお客さんが降りると単線の赤穂線に入る。京阪神間を有無を言わさぬスピードで駆けている時とは全くの別人になる。小さな無人駅に着くと開いたドアの向こうから草の匂いが入り込んでくる。
 赤穂なんて地名を聴くと何か海の匂いが立ちこめていそうな感じがするが、海の気配の欠片もないままに播州赤穂の駅に到着。岡山行きに乗り換え。30分待ちで、1本後の姫路始発の播州赤穂ゆき電車でも十分間に合ったのだが、姫路で小一時間待つのも難なので、赤穂まで先行してみた。

 折り返し岡山行きとなる電車がちょうどやってくる。213系の2両。瀬戸大橋の快速運用を追い出されて、こんな形で余生を送っている。
 荷物を電車に置いてひとまず駅前だけでも見学しておく。記憶にうっすら残る播州赤穂の駅とは大きく違う目の前の播州赤穂の駅。


 観光客にはこのイメージでしょうが、毎日利用する地元の客だと飽きるんじゃぁないかなぁと思ってみる。
 眠るような駅前のコンビニで何となくビールを買って駅に戻る。岡山行きの発車まで10分ほど。多少お客さんは増えているかな。

 平日の昼間だけど、夏休みだから飲んでしまう。ビアホール、、、何だろう。
 東海道線の東京口とかビールを開けるのは発車まで待つ、見たいな不問律があるなんて噂もあるが、気にせず発車待ちの間に開けたら、発車までに1本空いてしまう。さすがにもう1本は電車が動くまで待つことにする。

 姫路からの接続列車が来て乗換客を受ける。それなりに乗り換える人はいたが、1人で2席使える程度の乗車。山陽線を直行しようとすれば、こうは行かないだろうと思う。
 海のそばを走っている筈だが、山がちの景色が広がる赤穂線。時折、ちらっと海が見える。このあたり、リアス式海岸なのだろう。

 日生はちょっとした港町で駅の真ん前に桟橋があって小豆島への連絡船の姿が見える。

 その先は忘れた頃にちらっと海が見えるだけで次第に田園地帯、そして住宅がちらほらし出すと乗客も増える。最後は通路までいっぱいになって14時に岡山到着。山陽線を直行するよりも20分ほど遅いだけ。
 この先さらに山陽線を進むなら20分の遅れは大きいが、今日はここから脇道にそれる。まぁ伯備線だから脇道と言っては失礼かも知れない。伯備線の電車は13:20の次が14:20の出発。つまり赤穂線経由でも岡山で結局は一緒になる。

 親子連れで混雑している岡山の駅は帰省ラッシュのまっただ中。満員の客を乗せた特急列車を見送ると、次に伯備線、新見行きの普通列車が入ってくる。先ほどと同じ213系の2両編成。こちらも帰省らしい親子連れの姿が目立つ。再びの満員でまずは倉敷まで山陽線を。そして伯備線へと分け入る。二つ目の総社で降りて行く人多数。特急の停まらない駅への帰省の脚となっているらしい。
 高梁川を左手に見ながら少しずつ山を登る。西側から射してくる日を我慢しながら川の景色を眺めていたら、何故か何故だか寝落ちる。確か備中高梁でもたくさん降りていったような気がするのだが、目覚めてみると山間の駅、方谷。車内はすっかり閑散としている。


 久しぶりに大きな街が現れて新見に到着。山間のジャンクションは時代かかった雰囲気。この先の電車は20分少々待つことになるが、この辺の20分はあんまり気にならない。

 帰省客をたくさん乗せた特急をやり過ごすと次に入ってくるのが西出雲行き普通列車

 色気も何もない改造面の115系、今度は黄色一色に塗りだくられて、ひどいの一言に尽きるような電車に乗る。名古屋からずっと転換クロスシートに座ってきたのが、ここで初めてボックスシートになる。
 1ボックスに1人の割合。今までの列車と比べると圧倒的に空いている列車に収まる。外観も内装もどうしようもない列車なのだが、冷房だけは強烈に効いている。たぶん、入切の二段階しか調整出来ないのだろう。
 列車は定刻に動き出す。山間の道を淡々と登る。車内は全く動きがない。乗る人もいないし降りる人もいない。先頭1両目は多少乗り降りがあるようだが、2両目は死んだように、ただただ景色だけが流れて行く。

 いつしか下り坂に変わる。列車は転がるように進み、時折特急をやり過ごす。根雨でようやく乗車がある。通勤風の人たちで、時計をみると17時をすでに過ぎた所。この辺りでも電車通勤の人が居るんですねぇ。

 大山が姿を現すと山陰線と合流、米子に着く。列車は出雲市方面、西出雲まで行くが、今日は米子で一度降りる。

 愛知をでて12時間。そろそろホテルにでも投宿したいが、今日の第一目標はこれから。境線に乗るのが今日の目的である。
 一度全線完乗は果たしたので、その過程で境線にも乗っているけど、その後でちょこちょこ動きがあったのでそのフォロをするためにやって来たのである。
 経緯を簡単に記す。境線の沿線にある米子空港が滑走路を延伸した際、進入路の障害になる境線の線路付け換えを実施した。まぁ線路の付け換えは高架化とか地下化とか、あちこちで行われているので、その一つ一つをフォロして乗り直す、と言うことはしていないのだけど、境線の場合は線路を迂回させた上で、途中の駅も移設したと言う大がかりなもので、無視出来る規模では無かった。さすがに気になり、付け換え区間を乗り直す事にした次第。
 米子に18:12に着いたが、次の境線は18:49、だいぶ時間がある。途中で暗くなってしまうかもしれない微妙な時間だが、明日に廻すのも難だし、今日のうちに乗っておこうと決めた。終点境港まで往復すると米子に戻れるのが20時半。今日の宿泊地にした松江に着くと21時を大きく過ぎるが、まぁ仕方がない。
 境線の発車まで時間があるので、駅構内でそばを食べてみる。駅弁業者の米吾が駅弁売店とそばのスタンドを兼ねた店を改札外に出している。山菜そばを食べてみる。

 そばがぼそぼそで残念なのに出汁は何故か美味しく頂けた。出汁と山菜だけでいいや、というのは無理だろうなぁ。

 ちょっと間があるので駅前だけみてホームに戻る。すでに列車が待っている。

 境線といえば鬼太郎列車、なのだが、全ての列車が鬼太郎シリーズ、ではなくて次の列車はキハ125の2両編成だった。
 金曜夕方の下り列車の割には空いていて、こんなものかと思ったら、次の駅、その次の駅とお客さんが乗ってきてラッシュ帯の列車らしくなる。境線、こまめに駅があるので、わざわざ米子駅まで来なくても、都合のよい所で乗り込む事が出来るようだ。
 まもなく19時という時間帯。日は隠れ、そろそろ暗くなり始めているが、さて明るいうちに該当の区間に乗れるか。
 工場のある後藤からは降りがメインになる。ワンマン列車で、降りるのは一番前のドア限定だが、一定の割合で
後ろから降りてしまう人もいる。運転士も注意していない。注意していたらキリがないのかもしれないけど、不正乗車がそこそこいるのだろうなぁ。昼間乗った赤穂線伯備線のワンマン列車では見かけなかった行為だけど、乗り馴れている人が多い時間帯だからこそ、なのかもしれない。

大篠津町の駅を出ると線路が不自然にカーブする。付け替えの区間である。遠くに滑走路と空港ターミナルが見えて、それが近寄ってくると米子空港の駅。思った以上に空港までの距離が短く、屋根のついた通路も見えるから、時間が合えば空港アクセスに境線を、という使い方も出来る。現に、米子空港のホーム、数人ではあったが空港利用客らしい人が米子行きの列車を待っている。
 次の中浜で既設の線路と駅に戻る。付け換え区間の乗車という目的は果たしたので、これで後は宿泊地、松江に入れば今日の行程は終了となる。しかし中浜に着いたのと入れ違いに米子行きの上り列車は出ていった。次の上り列車は今乗っている列車が境港まで行って戻るその列車となる。仕方ないので真っ暗になった車窓をお供に、境港までを乗り通す事にする。


 境港まで行き折り返しの列車に乗る。帰りは2両の車両を持て余す程度の乗車。後ろの車両に乗ったので、極め付けに車内の動きがない。米子までの50分、さすがに飽きがくる。

 ようやく米子。今日はもう一本列車に乗って最終目的地は松江となる。山陰線の列車、電化区間気動車となる。キハ47の2連がアイドル音を響かせながら待っている。40系列の気動車に乗るのは久しぶり。先ほどは新系列のキハ125が力を持て余しつつ走る体だったので、何か気動車に乗った感じがしなかった。フルパワーでエンジンを廻しても一向に速度の上がらないキハ40系列というのは、昭和50〜60年代に秋田という地で幼少期を過ごした自分にとっては、鉄道風景の原点みたいなもの。あの加速しなっさっぷりを味わえると思うと楽しみである。
 鳥取からの快速が遅れて発車が3分遅れる。もちろん回復運転、なんて出来るわけも無く、ゆっくりと加速、何分も掛かってようやくトップスピードへ。駅間距離の長い山陰線だから勤まるのかもしれないと思う。結局遅れを引きずったまま、松江に到着。
 松江の駅からちょっと歩いて予約していたホテルへ。荷物を放り込んでから夕食を軽く。いや、飲んじゃうかも知れないけど。
 遠くまで行く気はなく適当に歩いているとサッポロの看板を出した居酒屋が入ってみる。入ってみたが、失敗だった。常連がだべっているような居心地の悪い店。


 ビール二杯に刺身を食べてそこそこの値段。会計も不明瞭。詰まらん店に入ってしまった。


 気分も悪く、腹も膨れていないので、今度はラーメン屋。ここなら会計明瞭ですわな。トータルで見ると少し食べ過ぎかも知れない。
 ホテルに戻ると23時。今日一日長かった。久しぶりに18きっぷを使い倒した感がある。明日は少しゆっくり使用と思う。