JL1861 JA001D MD-90 HND→

 今日乗るのは1861便の鹿児島行き。鹿児島まで行って九州新幹線に乗ろうという魂胆である。妻が出掛けている時にどこか未乗線に乗ろうと画策したのだが、5月になって週末に安い航空運賃が設定されたから、じゃあ九州へと思い至った次第。
 基本は片道飛行機の片道新幹線だが、往路と復路のどちらに新幹線に乗るか、飛行機のルートはどうするか、飛行機の割引運賃の兼ね合いもあって楽しく悩ませて頂いた。中部-鹿児島はJL撤退しているから、飛行機で行くなら小牧-福岡-鹿児島となる。それはそれで楽しそうだ。割引の設定を重視するなら羽田か伊丹からの鹿児島直行便。日曜朝一の便なら割引率も高い。
 日曜朝に伊丹もしくは羽田を発つ飛行機で鹿児島入りして午後の新幹線で名古屋までという素案は出来たが、伊丹と羽田でまた迷う。伊丹7時台の鹿児島行きはJACの運航でQ400。しばらく乗っていないプロペラ機の旅は楽しいだろうが、名古屋を朝一番の新幹線で出ても伊丹からの便には間に合わず前泊が必要となる。
 羽田からの便は始発が6:30でMD-90、8:00にも便があってB767。いずれも前泊となるが、何の事は無い、横浜に自宅があるのだからそれで事が足りる。
 そこで羽田6:30のJL1861で鹿児島空港8:20と言う事に決める。帰りの新幹線は12時前後を考えていたが、姫路で途中下車して駅そばを食べていこうと思い至る。姫路停車のさくらは10時半の次が12時半だ。姫路から先の事も配慮し、新幹線は鹿児島中央10:30に決めた。鹿児島滞在時間が短くなったが、空港で鶏飯バイキングでも食べてからバスで駅に出れば良いかと考える。
 夕方の割と早い時間に名古屋に戻る、まぁまぁの計画が出来上がった。そんな訳で新幹線指定券を携えて朝の羽田に足を標す。

 クラスJに空席がありますと案内が出ていたから試しに、「窓側の席が空いていますか」と聞いてみると「ございます」とのことでお願いする。昔ながらの普通席の方が好ましいと言ったら好ましいのだが、この1,000円は心づけのつもりで。「右側のお席と左側のお席とどちらがよろしいでしょうか」なんて聞かれるほど空いているから、本当にがら空きに違いない。

 早朝のラウンジは極め付けに空いていて、その中で新聞とトマトジュース。さしてゆっくり出来ないまま6:10を廻ってそろそろ搭乗の時刻。搭乗口へと向かう。今日は7番搭乗口。端ではないなぁと考えながら歩いてしばらく。MD-90が2機並んでいてその奥側が鹿児島行き、1861便の搭乗口と知れる。


 待っているのはJA001D。既に搭乗は始まっていて行列は無くなっている。自分も乗り込むと最終案内のコールが聞こえた。指定された席は一番前の窓側。隣には人はおらず、どうやら空席らしい。クラスJ、普通席共々空席が多いようで、まぁ、6時半の便なんて幹線でも中々埋まらないしなぁと思いつつ、宛がわれた席に座る。

 4月からDoorclose前の電子機器の使用が緩和されたからドアが閉まるまでは写真を撮れる。隣に見えるJTA宮古ゆきをまずはパチリと撮ってからおもむろに視線を前に移すと

 びっくり!

 鶴丸MD-90だ。
 安全のしおり作り直すとは思ってなかった。太陽のアークなYS-11を見て以来の衝撃である。本当に、びっくり。
 お客さんが何人か息を切らして乗ってくるのが合図。6:26、Doorcloseとなる。鹿児島までの飛行時間、1時間30分との事だ。6:34、Pushbuck。何機が飛行機が飛び立つのが見える。今日は16を使っている。南風が吹いているのだ。もう夏も近い。6:38、Taixing。地上係員が手を振るのに振り返してみる。以前機内誌で振り返されると嬉しいなんて話を読んでから、心がけているのだが、手を振っていたら深々と一礼されてしまった。
 飛行機は北側へと向かう。RWy22に降りてくる飛行機を横目にしつつこちらは滑走路へ。朝のこの時間、待たされる事なく大空へと踏み出せる。
 6:43、Takeoff RWy16R。エンジン音は前方までは伝わらないが、ぐんと押されて下から持ち上げられるような感触と引き続いての急上昇ぶりにニヤリとする。隣近所がいないからいいけど、見られていたらド変態扱いに違いない。
 急上昇して雲に突っ込む。真っ白になることしばし、雲を突き抜けると東京湾だけが雲に隠されていた。眼下に富津岬。向こうに八景島。右へと旋回して横須賀上空に差し掛かると軍港に停泊する航空母艦もしっかり見える。中々良い景色だがベルト着用サインは点いたままだ。

 6:52、ベルト着用サイン消灯。飛行機は相模湾の上空に差し掛かっている。海岸線は雲に隠されて見えないが、視線を左に伸ばしてゆくと熱海周辺が見えている。それならばと上へと注意を向ければ

 富士山が微かに見えていた。昨日の御殿場線からは見えなかったから、今日のフライトでも無理だろうと思っていた。意外な感じだ。
 7時前ぐらいからワゴンが機内を廻りだす。ドリンクサービス、JALでは健在。コーヒーを頂く。

 何か足りないと思ったらクラスJの茶菓子サービス、無くなってたのねん。
 7:06、機長さんから飛行状況の案内。羽田空港を定刻に出発し、現在渥美半島の上空。この後、串本上空を7:23、足摺岬上空を7:45に通過し目的地の鹿児島空港には8:15の着陸を予定しているとの事。前線の影響で揺れやすくなっているそうだ。鹿児島の天候は曇りで気温は16℃だそうだ。

 空いているからドリンクサービスはすぐに終わる。お代わりを勧められて4月から代替わりしたスカイタイムを頂いてみた。味がゆずからグァバシークヮーサー(※南條さまにご指摘頂きました。ありがとうございます)に変わってもコンセプトが変わらないからか、印象が全く持って一緒というのは若干不思議。
 飛行機は渥美半島から三河湾を横断する。まるで伊丹空港に向かうかのようなコース。普段の鹿児島行きよりだいぶ北側を飛んでいる。伊勢半島上空からは紀伊半島リアス式海岸を眼下に望むコースを取る。
 
 入り組んだ海岸線が何処までも続く紀伊半島東海岸紀勢本線に乗っていても海岸線を丹念に辿る事は無いし、飛行機でこの海岸線の上空を飛んだ経験もちょっと記憶に無い。複雑に入り組んだ海岸線。ちょっと薄っすらしているのは残念だが、初めて見るその景色にしばらく見とれる。
 海岸線が途切れたのが先か雲が沸いて出てきたのが先か、串本通過と案内された時刻ぐらいから雲が垂れ込めどこを飛んでいるのか分からないなる。まだ鹿児島までは1時間弱掛かる。ちょっと退屈になって席を立つ。お手洗いついでに機内後方まで。かなり空いている。クラスJに数席の空き。普通席も若干まとまった団体がいたりするけど、半分以下、3割も乗っていないかも知れない。
 
 さすがに6時半の出発は早いのかなとも思う。鹿児島到着8:20は離島接続の事を考えれば悪くない時間で折り返し鹿児島からの時間も中々良いとは思うのだけど、この時間で続けたほうが良いのか少し遅らせた方が良いのか、なかなか難しい選択かも知れない。
 席に戻りしばらくぼっとする。多少恥辱を進めた方がいいのかも知れないが、飛行機を降りてからにしようと考える。少しリクライニングを深くした。
 長らく単調だった景色が変調を告げる。

 陸地が見えてきた。海岸線。宮崎の辺りまで来たのだ。時刻は7:56。羽田を飛び立って1時間以上。九州の地まで到る。もう鹿児島も目前。そろそろベルト着用サインが点灯するかなと思ったら乗務員さんが寄ってきた。良かったらどうぞと差し出されたのが

 ヲタ認定グッズですね。新ロゴのシールとキャンディ詰め合わせ。お礼を言って頂いて置く。
 7:58、ベルト着用サインが点灯する。着陸まであと10分との事。電子機器の使用も禁止となり、カメラはしまいこむ事になる。雲がまた目立つようになってきた。地上が見えたり、隠れたり。機長さんから直々の案内でこの先揺れる事が予想されると放送。雲の中に突っ込んで真っ白になるとそれ相応に揺れが伴う。
 ちらっちらっと見えるのは多分国分の街。YS-11で通っていた頃に見慣れた鹿児島空港へのアプローチは雲が多めだ。市街地が切れ丘陵に掛かるともう空港はすぐそこだが、雲ばかりで何も見えない。機体が揺れる。
 雲の切れ間から空港の施設が垣間見えた。高度が高いなぁと思った次の瞬間、明らかに機首が上を向いた。うんと持ち上げられるような力が掛かる。雲の合間に見えていた空港の施設も全く見えなくなる。
鹿児島空港へ着陸のため高度を落としておりましたが、現在、再び上昇しております。詳しいことが分かり次第、ご案内いたします。」
 の第一報。ついで機長から
「滑走路が確認出来なかったため上昇しております」
 と案内が入る。飛行機は左、左と旋回して向きを変えた。鹿児島湾が、そして桜島が薄っすらと見えてきた。次で降りれればちょっとした遊覧飛行、と言う事で笑い話で済む。さて。
 8:21、Geardownの感触。雲の合間に国分の街が見えている。まもなく着陸の案内が流れて、街がすっと雲の中に消えた。雲の中、揺れを伴い降りてゆく。8:24、エンジン音が変調する。明らかに上昇。今度も着陸復行だ。再び客室乗務員が詳しいことが分かり次第の放送。
 飛行機はGearをしまい込む。一旦左旋回。揺れを伴いながら上昇してゆく。不意にエンジン音が変わった。緩めた速度を速めた感がある。右手の雲の連なり、その向こうに霧島連山が顔を出している。雲とは違う陰のような煙。新燃岳の噴煙かも知れない。
 8:38、機長さんより改めて飛行状況の案内が入る。視界がないため2度着陸を試みたが滑走路が確認出来なかった事。残存燃料の兼ね合いで現在、熊本空港に向かっており、あと15分ほど掛かる見込みである事。後続の全日空機も着陸出来ていない事も添えられる。
 意を決したように雲に突っ込んで大きく揺れたりする間に、いつの間にか外の景色は大人しくなってきた。しっかりと地上が見えている。八代の辺りらしい。8:42、あと10分で着陸と案内があった後、詳細は着陸後にご案内致します、と。
 8:46、Geardown。今度はしっかりと地上が見えている。安心して任せられるような着陸だ。地上がするする近づいてきて空港が見えた。8:49、Landing、RWy07。8:53、Spot in SP 8。

 8番スポットは本来国際線のスポットらしい。ここで次の指示を待つ事になる。地上との慌しいやり取りの後、まずは機長さんから案内。
鹿児島空港天候の回復が見込めないため、当機の運航は熊本で打ち切りとし、鹿児島へはバスにてご案内致します」
 と。この時点で午前9時過ぎ。地上係員が機内に入って乗務員とやり取りしているのが少々洩れ聞こえてくる。無線の「ダイバード1861便」という声が生々しい。基本はバスで鹿児島行き。その場合は鹿児島空港まで2時間半だそうだ。すぐには降りられないようなので自席に座って待つ。こちらとしても新幹線の切符は鹿児島中央10:30なのだが、どうやっても間に合わないから騒がず焦らず、事の成り行きを見守ろうという気分になっている。
 こちらはのんびりしたものだが、焦っている人も多い。どうやら結婚式に出席するために搭乗しているグループが何組かいる様子。そんなグループがドアの辺りで地上係員と激しくやりあったのかも知れない。新幹線で鹿児島市内へ行くことを希望される方は機内に残って下さい、バスで鹿児島空港へ行かれるお客様は降機下さいという案内に変わる。もう一つ、乗り継ぎのお客様と言う括りがあって、団体客16名が屋久島ゆきとか、種子島ゆきのお客さんもそれなりに。こちらは代替便の確保なんて作業もある。ダイバード1861便。熊本の地上係員にとっては迷惑なお客さんかも知れない。
 新幹線のお客様は降機下さいと案内があったので外に出る。

 10人ちょっとぐらいいただろうか。一旦地上のスポットで確認があった後、ターミナルへと案内される。  

 MD-90に乗る機会はまだあるような気がするが、これが最後だとしたら少々残念と言うか、最後に貴重な経験をしたと言うか。何はともあれ、乗務員の皆様方、お疲れ様でした。