韓国三日目

 東大邱も、京釜線から慶北線に入る金泉も嶺東線へと入る栄州も気付かなかった。一度、目覚めて夜中だなぁと思った記憶がある。夜が白んでからもう一度目覚めた。日がだいぶ高くなってからもう一度目覚めてまだまだ寝ていたいと思った記憶も。ここ数年、夜行列車に乗ると終点間際まで睡眠を貪る事が多いように思える。年を取った証拠かな。
 海が見えてきてしゃんとする。海岸線に何処までも続くテント、テント、テント。朝から散歩する人たち。平和そうな眺めだけど唯一の違和感が海岸線に続く有刺鉄線。北朝鮮国境も近いこのあたり、海岸線からの侵入を阻止するための対策、らしい。あんまり意味がない気もするけどずっと眺めて来た兵隊さんの姿と言い、全く別の国を旅している証拠。列車は正東津と言う駅へ。海岸線のすぐ傍。観光客がこちらにカメラを向けている。ヲタではないでしょうが自分以外に鉄道写真撮っている人、韓国に来て初めて見た。半分ぐらい残っていたお客さんの殆どが降りてゆく。
 正東津
 写真:正東津の駅で。
 すっかり空になった列車は海岸線とお別れ。朝日を浴びる江原道の大地はやっぱり日本のそれとそっくり。まもなく速度が緩んで江陵到着。時刻は6:55、定刻だ。
 江陵
 写真:江陵に到着したムグンファ
 江陵
 写真:構内が電化されている。電気機関車の姿も
 折り返しは9:05の清涼里ゆきセマウルを予約している。もしそれより早く出発する列車があればそちらにと思っていたけど、Commuterもなかった。しばらく江陵で時間があるので、まず食事。
 駅前にある食堂に入る。さきほどのムグンファで着いたと思われる観光客で賑わっている。相変わらずメニューはハングルオンリーだけど、廻りの皆さんが食べているものを眺めてみて「キムチチゲ、ジュセヨ」と。
 朝だし、もう少しさっぱりしたいものを食べたいのだけど、この人たち、チゲだかビビンバだか分からないけど、冷房も無い食堂の中で、熱々の湯気が立つものを嬉々として食べていたりする。待つ事しばし、キムチチゲ到着。熱々を頂く。美味しいけど、こんなものを朝っぱらから食べるような人たちには勝てないよなぁとちょっと思う。
 キムチチゲ
 あと1時間ほど、駅の待合室で。その一角にインターネットコーナー。無料で使えるようだ。コンセントもあるのでそろそろ電源の怪しくなったデジタルカメラの充電も出来る。
 PCを使い終わり待合室でぼっとしていると、突然、乞食に絡まれる。言葉は分からんが金を寄こせと言っているのだろう。物乞いと言うのはソウルでも釜山でも見かけたし、お金を施す人も割りと見かけた。手持ちのコインを渡しても良いかと思ったけど、乞食、自ら手にした1000ウォン札を指差し怒鳴る。1000ウォン寄こせと言っているようだ、何か嫌になって、日本語で怒鳴る。相手も怒鳴りだす。突然、煙草を差し出してくる。ところが生憎、わたしゃ煙草を吸わない。No smoking!と怒鳴ったらあっちへ行ってしまった。やれやれ。