異国の地

 搭乗橋を渡る時に軽い緊張を覚える。到着ターミナルを歩く。流石に国際空港のターミナルの勝手が違うなんて事はないだろ、と気を取り直す。トイレに寄ってみる。そりゃ、変わんないよな。
 入国検査。列は短い。順番が廻ってきて、パスポートと機内で記入した書類を差し出す。「アニョハセヨ」と初韓国語。スタンプが押されて入国検査はパス。次が税関らしいのだけど、要領が良く分からん。どうやらここでもう一枚の用紙を差し出すらしい。それでOKとなる。これで入国。結構、あっけないな。
 ターミナルには両替所が営業中。1万円=78,000ウォンだそうな。関空よりレートが良い。う〜ん、しくじった。さて、ここからソウル市内のホテルへ向かう。ホテルは日本で予約して来て一応、「602番リムジンバスでどうのこうの」と言うのを印刷して持って来たのだけど、いざバス乗り場に来るとさて、「どのバスなものやら」とか、「切符売場が見当たらないなぁ」とか疑問の花が咲き誇る。
 まずは観光案内所を探す事にする。
「アニョハセヨ、日本語大丈夫ですか」
 だまって隣の人を指差す。言語言語で担当が決まっているらしい。ホテルの予約を印刷してきたものを見せて、ここに行きたいのだけどと聞くと、地図を広げ、「602番のリムジンバスで東大門市場まで行くのが良いのですが、歩くの大丈夫ですか」歩く事自体は問題ないので言われた通りに行く事にする。バスのチケットはどこで買うのかと聞くと隣で売っているそうな。運賃は8,000Wだとか。
 最後に聞いておく「ありがとう、って韓国語で何て言うんでしたっけ」「ガムサハムニダ、ですか」「ガムサハムニダ」勉強してきたつもりだったけどいざ使おうとすると出てこないな。
 隣で切符を買う。「トンデムンマーケット」と言って指一本。チケットが出て来る。通じたのがちょっと嬉しい。
 バス乗り場へ向かう。すぐにバスがやって来る。違和感を感じる。違和感の元は前方から見て左側にドアがある事らしい。運転士に切符を渡すと半券を返してくれる。車内は恐ろしく暗い。空席に座ると運転士が廻ってくる。ベルトを締めろと言っているらしい。車内を一巡するとさて出発。時刻は17時半。到着後30分で移動開始だ。車内が明るくなる。どうやらバス乗り場の上に道路が被さっていて辺りが暗かったらしいのだけど、逆に言うと車内の照明が点いていないって事。
 バスは恐ろしく高速で走り出した。恐らく最低でも120km/h、それ以上は出している感じ。えらい飛ばす。一番左側の車線をひた走り右側車線を走るクルマを抜いてい行く。左側追い越しかよって思ったけど考えてみると韓国は右側通行。つまり今走っているのは追い越し車線。
 初めて見る韓国の大地はえらいくすんだ感じだ。っーか少し季節が戻っているせいかな。農村の雰囲気が少し沈んだようにも見えるのかもしれない。そのうち道路沿い、線路が走るようになる。空港の近くまで鉄道が延びているのか、向こうに乗りたいな。せめて走っている列車でも見えないかと思ったけど中々めぐり合えない。大きな団地が立ち並ぶようになってきた。駅もある、でもこの駅、工事中だな。よく見ると線路自体、建設途中のようだ。
 高速道路を飛ばす事30分ちょっと。高速を降りる。川が見えてくる。漢江だろう。貰った地図と付き合わせるとソウル中心地まで10kmぐらいまでのところまで来ているようだ。これなら1時間ぐらいで東大門市場まで行くんじゃないの?と思ったけど甘かった。
 バスの横腹には「仁川空港」「合井」「光化門」「鐘閣」「東大門」「清涼里」とある。経由地を現しているのだけど、最初の停留所、合井で案内が流れて2〜3人ぐらい降りていったのが18:06。ここからが渋滞。殆ど動かなくなる。日本とは時差の無い韓国であるが故、18時を過ぎてもまだまだ明るいけど、少しずつ暗くなってくる。表記のある場所以外にも停まるところがあるようで、停留所数えているんだと降りる場所が分からなくなりそうだ。地図と窓の外を見比べながら場所の把握に努める。地下鉄入り口に表記された駅ナンバーが一番分かりやすい。
 渋滞の中を緩々走ってゆく。「※♪∵♂∇≒ next stop Δ♭§〜」どうやら「間もなく何がしです。何がしの次は何ぞやに停まります」と言っているらしい。バスは鐘閣に差し掛かる。もうすぐだな。案内が流れる。「next stop Cheongnyangni」と言った。Cheongnyangni、清涼里だ。降りるべき場所だ。降車ボタンを押す。