【今日の駅弁】鰊みがき弁当 みかど \840

 みかどの駅弁を食べるのは15年ぶりである。
 中学2年の時、青函連絡船の復活運航に乗りに来てみかどの駅弁を食べた。確かつぶ貝の弁当だったと思う。不味かった。翌年の修学旅行が道南で最終日に快速海峡に乗り昼食としてみかどの駅弁が配られた。確か海鮮物の幕の内風のような弁当だったと思う。不味かった。それ以来、みかどは不味いという認識が自分の中に出来ていて函館では絶対に駅弁に手を出さなかったのである。それから15年。いい加減試してみてもイイじゃないかという気になった自分が実は信じられなかったりする。
 鰊みがき弁当。鰊と数の子の弁当である。鰊を食べる。甘い目の味付けに少し拒絶感がある。でも不味いという程ではない。数の子、これは美味しいに決まっている。美味しい。ご飯、まぁまぁかなぁ。そんな味噌糞に言う味ではない。
 味が上がったのか自分の舌が退化したのかはよく分からない。米に関してはきらら397みたいなものも出てきているし、レベルは上がっているのだと思うけど。
 列車は五稜郭に差し掛かる。居るわ居るわ、ED79ED79ED79。秋田機関区のそばで育った人間としては古い友達に会ったような気分だ。瞼を閉じれば蘇るあの頃の景色とダブらせたい。でもダブらない。目の前に居る機関車たちはみなくたびれて色褪せている。放棄された様子の機関車も居る。パンタグラフを上げている事だけが生きている証、か。近くにはEH500も居る。EH500が増えればその分ED79は追われてゆく訳。次来る時にどれだけの機関車が残っているものやら。考えてみると電化で投入されてからもう30年になるのだ。
 七重で後ろ1両が切り離しになる。その作業のため10分停車。切り離した車両は折り返し函館行きになるそうな。函館行きは乗客が多いらしく結構な数の人が乗って行ったようだ。上りの特急が爆走して行って発車となる。
 雪が時折激しく舞う。吹雪だ。沿線に白いものが目立つようになってきた。
 仁山が真っ白だったのは覚えている。その後ウトウトしたようだ。停車の衝撃で目が覚める。大沼だった。
 何時の間にやら人がうんと少なくなっている。10分停車とアナウンス。すれ違いがあるらしい。隣に長いコンテナ列車。外に出てみる。雪は消えている。コートを脱いだまま出てしまったのでいい加減寒くなる。再び特急が爆走してゆく。新撰組のペイント列車だった。
 列車はゆっくりと進む。大沼公園でさらに人が降りつと2両の列車にはほんの数人しか残らない。車窓左手に大沼が流れると車窓右手に駒ケ岳が見えてくる。駒ケ岳はさすがに中腹まで雪をかぶっている。ちょうど青空となる。本当に美しい。宮脇俊三さんが事あるごとに褒め称えた光景、分かる気がした。
 列車は森に着く。12時を過ぎている。次の長万部行きは13:24。だいぶ時間がある。どこにも行く場所もないので待合室で恥辱を書く。12時40分過ぎに改札開始のアナウンスが流れた。例によって駅弁とサッポロクラシックを購入して列車へ。長万部行き、先ほど2両で函館から遣ってきた列車の前1両だった。後ろは函館行きになる。結局のところ、10時半発の長万部ゆきと言ってもいいのかもしれない。森で1時間20分停車とは言えないから列車番号だけ分けた、って感じなんだろうけれど。
 列車が発車するまで恥辱の続き。飛行機が下北に差し掛かるところで発車となる。