羽田空港の天候は……

 セキュリティチェックを受けて中に入る。さすがに2タミ、カバンの中を全部出せなどという惨たらしい事は言わない。すんなり中へ。ちょうど20時発のJA8979がプッシュバックするところ。3番に入っていたのはJA009Dだった。4月に鹿児島から羽田まで乗った機材。
 搭乗待合室は空いている。今しがた、前の便が出たばかりだし、当たり前と言ったら当たり前だけど、さほど込み合わないうちに搭乗開始となった。20:20。お客さんは見たところ100人未満。乗ってしまうと機内の様子は分からなくなる。何せ機内前方の特等席なもので。ただ分かることは折角の特等席にも空席があるということだけ。さほど乗り込んでこないうちにほぼ定刻、離陸する。今日は太平洋岸に秋雨前線が停滞しているということ。離着陸時に揺れが予想されるとの事だけど、さてさて。とりあえず無事離陸して、順調に飛行する。ただし、雲の上に出たらしく、地上はさっぱり分からない。
 JD(旧JAS)担当便はかなりの確率で「操縦席から飛行状況のご案内」が入る。今日の案内。
「当機は徳島上空を高度12,000m、対地速度970km/hにて順調に飛行しております〜本日は本州沿岸に秋雨前線が停滞しており、高度を下げる際に揺れ事が予想されます。羽田空港の天候は、えぇと、強い雨、気温は22℃でございます。」強い雨、って。
 夜間帯の福岡→羽田はお気に入りの路線だ。ビールでも飲みながら高度10,000mからの大阪の夜景、真下に関空、卵のような大阪湾が広がる様子を眺めるのがたまらなくいい。でも今日は雲の下。ナビゲーションマップでいつものルートを飛行して行く事を確認するのみである。浜松の沖合でシートベルト着用サインが点灯する。この先、早速揺れが来る。窓の外に光、雷だ。それが続く。飛行機が被雷しても直ちに支障が出るわけではないだろうけど、あんまりいい気分ではない。これが羽田着陸まで20分近く続く。ようやく塩浜らしき明かりが見えた時は安心した。
 既に離陸の無くなった羽田はいつもの喧騒とした雰囲気が消え失せている。この先、自宅までの帰り道を思い、ため息でもつくのか、気だるさが幾重にも沈んでいるようだ。自分自身、京急の横浜方面直通がしばらく無いことを悲しんでいたりする。自宅まで帰ってくるともう日付が変わるか変わらないかと言う時間だった。