中央線巻き戻し

 午後3時の大月駅。いつもなら上り方面に乗る事になるだろうが、今日は下り方面。午後のこの時間になってから中央線の下り電車に乗る事はあまり無かったような気がする。
 
 東京方面から来た通勤電車と甲府方面から来た近郊電車が各々大月で引き返す。互いに民族大移動。接続はどちらも良く富士急線も含め10分ほどの接続でどの方向へも移動出来る。偶然かも知れないが良く出来たダイヤだ。
 ボックスシートの電車に揺られ、笹子峠へと運ばれてゆく。左手に見える甲州街道、右手に見える中央自動車道。どちらもクルマはスムーズに流れている。連休中日はこんなものかとぼんやり眺めているうちに眠くなってきた。笹子トンネルを越える辺りは覚えていたが、甲府盆地へと下ってゆく所は全く記憶に無い。気が付くと、塩山まで下っている。
 薄ぼんやりした午後の陽だまり。少しずつ夕景の気配が忍び寄る甲府盆地を西へ向かう。韮崎で横浜ゆきの特急はまかいじと、新府で東京ゆきのホリデー快速とすれ違う。日帰り観光だともう帰宅の時間だが逆らうように西へ。標高が高くなってくると景色に桜の花が混じるようになってきた。そして逆光の甲斐駒ケ岳は雪の頂き。東海道を行き来していても気付かない季節の変わり目が中央線の景色には溢れている。
 小淵沢に17時に着く。乗り換える電車は17時半の出発だそうだ。特急に先を越される事になる。普段の移動で接続が30分といわれるとorzとなる所であるが、今日は何にも気にならない。これが移動と旅の違いかも知れないと思う。
 小淵沢に来たなら欠かせないのが駅そば。ここの駅そばはお気に入りであり、空腹だろうと空腹で無かろうと通ったからには外せない一品である。他にお腹具合に関わらず絶対に食べるという意味では、姫路と鳥栖音威子府も入れたいがあんまり通る機会がない事が残念である。
 とにかくその駅そばを頂く。いつも人だかりが出来ているそばの売店、今日は先客がいないので遠慮なく頂ける。
 
 頂いたのが山菜そば¥380。一口頂いておやと思う。麺が変わった、、、、ような気がする。今食べているのも太目の麺だが、ここの麺は前はもっと太くて野趣に富んでいたのではなかったか。
 他所に比べれば美味しい事には変わらないけど、絶対食べなきゃならんというそばでは無かった。何時の間にと若干ガッカリ感を覚える。
 
 接続電車は17:32の発車。まだ時間がある上に電車は思い切り空いている。ならばと酒を解禁する事にした。小淵沢に限らず中央線の売店では地場のワインが買える事が多い。たまに銘柄は入れ替わっているような気がするのだが
 
 今日は勝沼のワインがお供となった。時間が有るから停まっている間に飲みきってしまう。さすがにもう一本は見合わせておく。

 後続の接続があってこちらの電車も発車となる。霞む八ヶ岳を横目に坂道を駆け上がる下り電車。
 
信濃境まで来ると桜が満開になった。一ヶ月遅い春の訪れ。そして諏訪盆地へと下ってゆく。
 岡谷からは塩嶺トンネル経由。久しぶりに辰野を回りたい気分もあったのだが、中央線のこの区間。気が付いたら選択乗車の制度が無くなっていた。素直に列車の走る経路に従う事になる。
 
 切符は塩尻から中央西線へと進むが松本まで乗り通す。到着は19時ちょっと前。もう暗くなる時間だ。
 まだ名古屋方面への列車はあるのだが今日は松本に宿を撮っている。駅前を走るクルマがみんな県外ナンバー。観光客が極めて多いらしい。昨日取ったホテルに入る。値段の割にはガッカリな部屋。最盛期価格だったのかも知れない。
 あまりお腹は減っていないが部屋にいるのもバカらしく外に出る。繁華街は観光客で溢れている。入ろうとした店は2軒続けて断られた。う〜ん、おひとり様敬遠されたかと思うと、松本の印象が急降下してゆくのがよく分かる。
 結局一人でも断られないであろう駅ナカの店でそばを食べる事にする。
 
 まずは日本酒。当てに山菜を頼んでみたが多分冷凍物。ちょっと季節が早かったか。
 
 蕎麦屋だし蕎麦も頂いた。さすがに腰がしっかりしていて当たり前だが駅そばとは次元が違う。
 ホテルに戻り今日の恥辱をまとめる。明日の行程についてもちょっと調べ事。今日は適当に動いて構わなかったが明日は適当だと立ち往生する可能性がある。