さよならJL732

 目覚めてどうせ早いだろともう一度寝て起きての繰り返し。月曜日の朝。時差一時間の香港だから何時もの時間は朝の5時になってしまう。だらだらだらだら、最後は寝ていられなくなって起き出す。3日目はいつも通りに帰国日だから、これぐらいでまぁ、良い。

 ひとまず朝食。3日目にしてようやく飲茶に出かける。お馴染み銅鑼湾の街へと向かった。平日なので人の行き来、車の行き来が激しい。香港仔から通じる高架道は渋滞している。忙しい街のリズムに乗らないでゆっくりと歩く。だからこんな発見もあった。

 線路が埋もれている。途中でアスファルトに覆われたから恐らくトラムの廃線。妻はそう言えばここをトラムが走っていたなんて言うから、廃線になったのはそう古いことではないらしい。
 朝から妙な発見をしてしまったが、現役のトラムの線路が通る前に飲茶の店があってそこに入る。

忙しい時間帯に優雅に飲茶を楽しんでいるのはだいたいはお年寄り。そんな中、テーブルに通される。一番奥のテーブルはクーラの前。寒いが冷房が香港では何よりのごちそうなんて言い方も聞くから、香港流に気を使ってくれたらしい。
 お茶を貰って自分で器を洗う儀式から飲茶という行事に入る。注文は2人で6品。定番的なものがメイン。

 朝食時間帯限定。たった3.8HKDというミニ排骨飯みたいなもの。安過ぎて儲からないのだろうか、一人一個限りだそうだ。

 日式餃子なんてものもある。これは冷凍かもしれない。普通の餃子と比べてみれば良かった。

 蝦焼売は基本中の基本。
 ずいぶんゆっくりとした気がするがまだ朝の9時。来たときにいたお客さんは概ね入れ替わっているから、平日朝の飲茶は優雅といっても1時間以内に終わらせるのが流儀らしい。お会計を済ませると全部で92HKD。普段より気持ち安く付いたような。
 まだまだ朝の続き、忙しい銅鑼湾の街をホテルに戻りつつ、途中にスーパーを見つけて寄り道。こちらのスーパーマーケット、入り口だけが表に面していて、店自体は地下にあったりするから気付きにくい。地下の店もそんなに大きくはないから、まるで圧縮陳列が如き状況となる。

 相変わらず日本製品が幅を利かす店内。出前一丁の通粉、なんて日本市場には有り得ないものまで並んでいたから企業側の努力も大きいのだろうとは思う。
 自宅で足りないものだけ少々買い足すとホテルに戻る。飛行機は15時。11時半ぐらいにチェックアウトして空港に向かうのが良いだろう。荷造りもあるけど、若干、隙間時間がある。
 妻がエッグタルトを買いに行きたいというので出掛ける。持ち時間は30分。店は湾仔にあるのを、昨日トラムに乗った時に見たそうだが、ホテルとの位置関係が釈然としない。銅鑼湾近くの湾仔なのか、中環寄りの湾仔なのか。はっきりしないまま歩き続ける。15分で着かない事には戻れない訳だが、時計はまもなく11:15、そろそろ戻らないとダメという頃にようやく目的の店が現れた。

2階にあるマクドナルドの方が目立つけど、この建物の一階が目的のお店です。
 買い物を外で待ちながら考える。物事を点でしっかり捕らえるのが女性脳の特徴なんだろうなあと。自分なら街を線として捕らえる事は出来そうだが、そのかわり最後の香港総督、クリストファー・パッテンが愛してやまなかったエッグタルトの店なんてものを走る電車の中から捉える事は出来ないように思う。夫婦各々、互いに足りないところを補うようにならなきゃならんと、これを書くときには思うのだけど、ひとまず今は、時間の帳尻をどうやって合わせるか、そちらの方で頭が膨らんでいる。
 エッグタルトを無事お買い上げ。帰りは真ん前の停留所からトラムに乗るのが早いだろう。オクトパスを置いてきた事が悔やまれるが仕方ない。電停で待つことしばし。中環方面への電車はたくさん来るが銅鑼湾方面はなかなかやってこない。ようやく遠くに電車が見えた。

 2両続けてやってきているのだが、先頭の1両が止まったまま。お客さんが次々出てくる。停留所があるのかとも思ったが様子がおかしい。こちらの停留所で待つ地元の人がああだこうだと騒ぎだす。トラブル発生、のようだ。何か一つうまく行かない時はその続きもなかなか巧く行ってくれない。
 歩きざるを得ないと判断。来た道を一路戻る。行く時よりも足が急いたのか、それでもホテルに戻れば時刻は11時半を少々廻ったところ。
 最後はバタバタになってしまったが、荷物は括ってあったからチェックアウトまでは早い。タクシーで中環にある機場特快の香港駅に向かう。トラムの線路を越える時、ちらっと通りを眺めてみたが、銅鑼湾方面への電車は姿が確認できなかった。
 いつでも混んでいる印象の香港中心地の道路もお昼前は比較的順調で10分弱で香港駅まで運ばれる。
 香港駅でも搭乗手続きは出来るし、JALのカウンタに行列がないのは見えたけど、気分的に空港で手続きをしたくてそのまま電車に乗る。次の電車は12時ちょうど。24分で空港だから12:30には空港に立てる。最後は帳尻があったような気分になる。時間が中途 だからかバスの2倍という運賃が嫌われているのか、がら空きの機場快線で空港に向かう。九龍を過ぎると電車は地下から高架へ。貨物埠頭が眼下に広がる。香港海事博物館を昨日見学した後だからか、いつもと少し違う景色に見えなくはない。
 20分も走るともう空港島が見えてくる。離陸して行く飛行機が目の前に現れると速度が緩んだ。空港である。到着は3階。出発エリアと水平となる。成田でも仁川でも鉄道駅から出発エリアは歩かされるものだが、香港の空港は出来が良い。
 搭乗手続きに向かう。ファーストクラスの設定が無くなったから赤い案内の窓口が消えている。そして手続き後、ラウンジの案内も変わった。サクララウンジの用意が無くなり、ワンワールド繋がりでキャセイパシフィック航空のラウンジに案内、かと思いきや「トラベラーズラウンジ」なる所を案内された。1番搭乗口の前とのことで、地図を渡される。732便の搭乗口は25番。「5分も歩けば到着します」とのこと。

 もう香港を離れるのが惜しく、一度到着階に降りる。最後に許留山のマンゴージュース。出国時に液体物は持ち出せないから持ち帰りにしたのはいいけど一気に飲み干すことになる。慌しい旅の〆に相応しいかもしれない。 
 出国もE Channeなので出入国印どちらもないまま香港を出ることになる。では、ラウンジに寄りますか、と1番搭乗口目指して歩く。1番搭乗口、の傍にはそれらしい入口は無い。遠くにキャセイビジネスクラスラウンジが見えて、結局そこに入ることになる。

 まずは名物、ヌードルバー。ワンタン麺を頂いた。プリプリで滑らかなワンタンは素晴らしい。熱々ならばもっと素晴らしいけど。
 ソファーに居を移して出発までしばらく過ごす。バーテンダージントニックをつくって貰ってサンドイッチをぱくつきながら。どうせ帰りの機内食も期待出来ないし。
 時間が来て搭乗口に向かう。もう入る時間はないけど、指定されていたトラベラーズラウンジの場所が気になり、探してみた。1番搭乗口の手前にある。場所はキャセイのビジネスラウンジよりも良い。次来る機会に入ってみたいが、さて何時になるやら。今のところ予定はない。