歴史を知る半日 

 1時間ほど滞在。10時を過ぎて街にでる。予報に反して青空すら見えている。熱気に包まれる。とは言え予報はあくまで雨だからそれを考慮して今日は屋内の観光にしたいと思う。彌敦道を挟んで紅磡の方へ歩いてゆくと香港理工大学が、そして博物館が二つある。ちょっとした文教エリアというべき所。


 その中の香港歴史博物館を見学してゆこうと思う。入場料は10HKD。日本円に直せば120円程度でしかない。
 香港の名前が歴史に登場するのは阿片戦争の頃だからせいぜい200年ぐらいだろうか。そのつもりで入場したのだけど、8つのテーマに分かれた展示施設、その第一番目は英国領香港の成立ではなかった。

 地学的な香港の形成。つまり46億年前まで遡ってしまった。気楽に構えて入ってきただけに突然のヘビーな内容に驚かされる。


 動植物のコーナー。熊やら何やらがいたんですかねぇ。


 人類が出てくる。出土品やら何やら。土器は時代を経るにつれ銅や鉄器が加わり、展示物は緻密さ精密さを増して行く。



 展示物が突然大がかりになる。往時の水上生活を再現したり、当時の家屋が復元され、その内部も一通り眺める事が出来る。要所要所で映像コーナーも設けられている。英語も広東語も分からないが両方の字幕が出ていると意外と何とかなったりする。字面であれば何となくでも意味は分かる。
 これで1〜4のコーナーが終了。英領となる前の中華圏としての歴史と文化に触れてきたが、この時点ですでに12時である。さらに続きへ。
 ここで英国が出てくる。

 貿易の開始から阿片戦争を経て英国へと割譲されるまでが一つの括り。英国領香港の成立から貿易の拠点として発展して行く様が再び大スケールで展示される。

 欧州の佇まいと中国の熱気を兼ね備えた不思議の国がこの空間にぎゅっと濃縮されている。時代はさらに進んで


 第二次世界大戦に至る。日本が香港を占領した3年8ヶ月にも一コーナーが割り振られている。同時期の占領地域は多かれ少なかれ飢えの問題や何やらを抱えた筈だが、後々の評価が好意的だったり批判的だったり。占領時代に対する批判的な香港の評価は、それ以前の英国統治が割とうまく行っていたからなのかも知れない。

 戦後の生活や文化にもしっかり1コーナー設けられている。その辺の民家で魚拓を取ってそのまま展示しているようなそんな気分になる。
 最後は1997年。香港返還の式典を映像で紹介しておしまい。無論その後は一国二制度という他の国が経験したことが無い壮大な実験が50年間続く訳だけど、それが歴史に加えられるにはちょっと間が必要だろうし、今の体制が歴史を素直に評価するのは、難しいだろうなあ。

 全てを見学すると4時間近くが経過していた。午後2時過ぎの香港。雲の切れ間から青空が見えている。どうやら雨は降らない、らしい。天気予報、このまま外れるのかも知れない。