1809列車

 ベンチで朝食をしていると改札が始まる。あちこちにたむろしていた「高尾山おばさん」の集団が大挙して改札を通ってゆく。こちらも食事を済ませると改札へ。地上のホームへと降りてゆく。待っているのはどうやら客車列車。階段の後ろに停まっているのは電源車らしい。前のほうへと数両の客車が停車中。
 清涼里駅
 写真を撮りたいけど撮っていいものかどうか。昔は撮影厳禁なんて聞いた事があるけど。韓国語ガイドを片手に近くにいた鉄道員に聞いてみる。NoProblemらしい。ついでに切符の事も身振り手振りで聞いてみると「Standing」とのこと。やっぱり立席券だったか。
 撮って良い、と言われたので堂々と先頭まで行く。客車は6両、その先頭に立つのはアメリカンタイプのディーゼル機関車。中々、姿が良いようで。間もなく出発時刻となる。どこに立っていれば良いのか?だけど取り合えずデッキにいるか。一番前の客車のデッキへ。このデッキ、片側にしかドアが無いのがちょっと不思議。ドアが閉まる。衝撃も無く静かに列車が動き出す。
 1809列車
 デッキに立つと外が見えにくい。ステップの一番下まで降りると目の前が窓になる、これならいいや。緩々と加速してゆく。隣にさきほど乗ってた地下鉄1号線が現れる。この辺りの雰囲気、上野というより押上だなぁ、なんて思っていると地下鉄と合流。右側を地下鉄の電車がすれ違ってゆく。駅を通過して行く。おや、国鉄は左側通行なのか。
 外を眺めていると車掌が通りかかり注意される。ステップに立っているな、と言われたようだ。客室内、座席の一番後ろのスペースに案内されてここに居なさい、と言われた様子。客室内に居ていいのなら、居させてもらおう。っーかどうやら立席券でも空席があれば座って良いらしい。先ほどまで車内に立ってた人、みんな座っている。
 今度は右左両方見えるようになる。幾つか駅を通過すると速度を落として大きな駅に着く。「城北」とある。地下鉄のホーム、客車列車のホーム、そして貨物列車も居る。青く塗られた無骨な有蓋車、小ぶりなタンク車も連なる。撮りたいなぁと思うけど、貨車の中に混じる戦車を積んだ無蓋車の姿にカメラを取り出すことを躊躇させる。流石に撮るのはまずいだろう。
 城北でたくさんの人が乗って来た。本来の座席の主のようで、今まで座っていた人が立って、代わりに乗り込んできた人が座る。城北を出ると右方向に複線の線路が分かれてゆく。こちらはどうやら単線のようだ。辺りはそろそろ市街地も果てて来て、昨日空港からソウル市内に入る時に眺めたようなくすんだ低山が目立つようになってくる。時折、団地。引込み線が分かれて目隠しが現れる。ちらっと戦車の姿が見える。軍の施設なのだろう。また引込み線。今度は車運車がいる。自動車工場、或いは自動車の積み出し基地。
 車内にて
 列車は幾つか駅を通過する。車内販売のワゴンが廻ってくる。売り子は男性。国鉄職員と同じ制服なので車掌なのかもしれない。ワゴンには飲み物やビール、菓子。もしかしてお弁当?という雰囲気の箱も積んでいる。金谷という駅で対向列車とすれ違う。同じようなディーゼル機関車に電源車と客車6両の列車、立客もちらほら見える。列車は動き出す。概ね60〜70km/hぐらいの速度、出しても80km/hぐらいだと思う。
 大成里と言う駅で再び列車すれ違い。清平、と言う駅で空席が出来た。座らせてもらう。どこかで見た事あるようなリクライニングシートだけど何処なのか思い出せない。日本の14系よりすわり心地はいいけど床に暖房用配管が通っていて足元が窮屈になるのと、テーブルが無いところが減点要素だ。
 韓国国鉄の切符
 到着駅の案内、韓国語、英語、日本語、中国語の4ヶ国語で自動放送が入る。「まもなく○○です。○○でお降りのお客様はお気をつけてお降り下さい。ご乗車ありがとうございました」日本語は流暢だけど、微妙に違和感を感じる内容だったりする。加平という駅に着く。再び列車すれ違い。車内が空いてくる。汀村という渓谷を望む小さな駅で高尾山おばさん達が降りてゆく。観光地なのだろうなぁ。時刻は10:25。清涼里から1時間半が経過している。
 そろそろ南春川に到着する時刻だけど、まだその雰囲気は無い。キロポストが目に付く。82キロポストのようだ。何処が基点なのかは分からないけど、城北の分岐点からだとすると1時間半ほどで80キロ。時速にして60km/hを割る程度でしかない。そんなことを考えていると街が現れる。線路の隣で高架工事なんかもやっている。4ヶ国語で案内が流れて列車到着。みんな揃って降りてゆく。終点、南春川らしい、時刻は10:41だ。