青苗にて

 奥尻は雪こそ消えているものの、函館よりも寒く、空も暗く、まだまだ冬の続き。帰りは16:35の最終便を予約しているので、若干の時間があり、その間に青苗あたりで食事でもしようかと考えている。バスは飛行機に連絡するのか14:18発。タイミングが良すぎて離陸機を見送る事が出来ないけど、まぁ仕方が無い。町営の白ナンバーなバスが定刻より少し遅れてやってくる。そのバスで着陸時に眺めた青苗へと向かう。空港から1キロちょっとだからすぐに集落に入る。新しい家が目立つのは、93年の津波で集落が壊滅したから。本当、どこまでも新しい家々が続く。逆にその事が恐ろしく感じられる。
 漁港の前でバスを降りる。ここまで\120。町営だからなのかずいぶんと安い。夏の間なら津波の被害を伝える記念館が開館しているそうだけど今は冬季休業中。メシを食うぐらいしか時間を潰す方法は無いけど、そもそも営業している食堂があるのかどうかが怪しい。街は静まり返っている。
 しばらく海沿いに歩く。高台へと続く「避難路」が目に付く。何軒か店が連なる辺りに差し掛かる。スーパーと商店の合いの子みたいな店が1〜2軒。「ファミリーレストラン」何て看板が出ているけど休業中なのか廃業したのか。でもそんな中に一軒、暖簾が出ている食堂を見つける。
 時間帯から言って休憩中でもおかしく無いのだけど、営業している。しかも先客もいる。メニュー自体はごく在り来たりな食堂。「いか定食」なんてメニューだけが北海道らしいけど、今日はいか刺し、入荷していないとか。そういえばイカはシーズンオフかもしれない。
 カツ丼
 結局在り来たりなカツ丼を頂く。でもこのカツ丼、とても肉厚で驚いた。それと味噌汁。白味噌も懐かしかったし、大根の味噌汁ってのも久しく食べていない事を思い出す。5mm角ぐらいの短冊に切った大根の味噌汁。実家では良く食べたけど関東ではしばらく見た記憶が無い。
 食事をする間にもお客さんが一組、一組とやってくる。滞在40分ほどで10人ぐらい居ただろうか。一見眠っているような街でも人の営みは確実に存在する。
 そろそろ空港へと戻る。バスは無いので歩く事にする。まぁ大した距離ではないから構わない。夕方が近づき、そろそろ薄暗くなって来ている。北風も吹いて寒い。空港までの道のり、2/3ぐらい歩いた頃だろうか、1台のタクシーが停まった。初老の運紳手「乗ってけ」と。空港だから初乗りぐらいにしかなりませんよ、って言ったら「タダだ」と仰る。
 空港までの短い時間。何処から来たにはじまり、地震のお話しをちょこっと。ターミナルに戻り、御礼を言ってお別れ。「観光シーズンにぜひお出で」と言われたけど、本当、もう少し滞在してみたい島だった。

 折角なので宣伝しておきます。

 青苗ハイヤー 01397-3-2339 松川さんとご指名下さいまし。

 いや、ほんと、有難うございました。