北海道新幹線の槌音

 青森からは更に先がある。とりあえず食事、なのだが、ホームにあった筈の駅そばスタンドが無くなっている。仕方ないので改札を出る。有人窓口の係員、面倒臭そうに経路を指でなぞり、青森を通れる切符であることを確かめてから、下車印を押す。

 立ち食い蕎麦で朝食。東北特有の濃い目の出汁が、飲んだ次の日には嬉しい。それだけ食べるとまた改札の中に戻る。次の列車はまもなくと出発である。

 やってきたのはスーパー白鳥11号。新青森から函館へ向かう列車である。この特急。朝一番に東京を出た新幹線の接続列車。まぁ一晩かかって青森まで来てもここで追いつかれる、と言うことなのだが、別にいいや。

 指定券を用意しておいたので指定された座席、5号車の中程に座ることにする。指定席、半分少々埋まっているだろうか。青森あたりから函館へ行く人がそんなにいると思えないから、新幹線からの乗り継ぎ客なのだろうなと思う。
 列車はすっかり晴れ上がった津軽半島を北へ向かう。左手の車窓には新幹線の高架が見えている。2015年に函館まで延びると言う北海道新幹線の高架だ。右手にはちらちら津軽海峡

 蟹田の手前で海沿いに出た。カーフェリーの姿も小さく見えている。
 蟹田で乗務員が交代。JR北海道の人が改めて自己紹介をすると海峡線に入る。津軽半島の内陸側、どこか大陸的な雰囲気の中で津軽線と分かれるとまもなく工事現場に迷い込む。

 ここから新幹線の共用区間らしい。トンネルがいくつか現れ、そのたびに車内のスクロールにトンネル名が表示されるのがちょっと新鮮。景色はだんだん暗闇とのフリッカーになって行く。気が付いたら長いこと暗闇が続いていて、つまりいつの間にか青函トンネルに入っていた。もう25年近くほぼ毎日列車が海峡を通り抜けている訳で、今日も当たり前の顔をして、海底の更に深くを列車は掛けて行く。

 暗闇がずっと続いていたのがぱっと光が射して明るくなる。どこからか「外に出た」って声も漏れ聞こえたから、外に出る事の方が注意を引くようだ。当然の事だが北海道上陸となる。渡島半島の景色が流れ出す。見ている方が意識し過ぎているせいか世界が変わったように思えるけど、流れる景色、津軽半島のそれから少し変化がついたぐらい。
 木古内が近づくと再び新幹線の高架が現れる。北海道新幹線なんてサイエンスフィクションの類ぐらいにしか思っていなかったから実際の工事を目の当たりにすると、輪をかけた驚きとなる。驚いた後でしみじみ、人はこうして年を取って行くのだろうなぁと思うことになる。北海道新幹線の新函館開業は2015年。その頃には自分も40の大台に乗っている。

 廃線の報も聞こえる江差方面の列車を横目に列車は木古内を発つ。先程までの快走から少々足は鈍る。すれ違いで停車なんてローカル線じみた案内もある。車窓に函館山が見えてくると、観光案内も飛び出す。

 小さく海に浮かぶ島のように見えていた函館山が大きくなって半島になると終着駅も間も無くとなる。

 ずっと特急、特急で急かされているみたいだが、この後も特急列車。接続は8分しかない。向かいに

 札幌行きのスーパー北斗9号。既に発車のスタンバイ。その8分の間に写真を撮り駅弁の売店を覗く。函館から駅弁マークが消えていて、?と思ったのだがみかどの駅そばスタンドがあり、駅弁も売っている。駅弁を一つ買い求め、別の売店サッポロクラシックをお買い上げ。そして指定の2号車へと落ち着く頃、列車は発車時刻となる。エンジン音が轟いて、列車はうんと前へ押し出されるように掛け始める。