案の定、早々に目が冴えてしまった。まだ5時を少々過ぎたところ。外はまだ暗いようでもう少し寝る努力をしてみる。結局は無駄になって、

 6時前。空の明け始めたバンコク。結局起き出して、少し恥辱を進めておく。
 今日は一日、バンコク市内を観光する。自分はバンコク、3回目だが妻は初めてのタイ滞在。まずは定番スポットで初日は観光して行こうと思う。その前に朝食を。身支度をすると7:30過ぎにレストランへ出る。
 なぜかフロアにもフロントにも客の気配を感じないのだが、レストランにはそれなりに観光客がいて、朝食を楽しんでいる。日本人観光客、それも子供を連れた観光客が目立つ。確かにホテルよりは家族連れに向いている施設かも
知れない。

 朝食を頂く。自分としては珍しく果物をいくつか取ってみた。普段あんまり食べないけど、タイで食べる果物は一際美味しく感じられる。
 部屋に戻るとちょうど8時。テレビでタイの国歌が流れている。公共の場では動きが止まる所だけど、部屋の中ではテレビで何となく眺めるだけとなる。
 改めて身支度。9時過ぎに出かける。外は快晴。昨日着いた時の天気が嘘のようだが、バンコクは雨期。雨に降られても不思議はないから一応は傘を持って行く。
 バンコクで定番の観光スポットといえば、王宮やワットアルン、ワットポーになるかと思う。何れもチャオプラヤー川沿いに点在するので、同じくチャオプラヤー川沿いのサパーンタクシーンからは水上交通を使って観光するのが良い。サパーンタクシーン駅のすぐそばに船着場があってチャオプラヤーエクスプレスが発着する。それに乗ってまずはワットアルンを目指す。

 ソンテウのたまり場を抜けて行くと船着場に到着。行列が出来ている。切符売場があって並んでみたがこちらは一日乗船券の売場だそうだ。一日乗船券は150バーツ。船の1乗船あたりの運賃は15バーツ。一日10回も乗るはずは無く、一日乗船券には手を出さない。


 船がやってくる。平日の朝だからなのか混んでいる所にまた沢山の人が乗り込む。船の中程、通路に立つことになる。
 茶色い水を蹴って船はチャオプラヤー川を遡る。川の上、同じような乗合船のほかにタクシーのような船や大きな荷物を載せたハシケやら数多くの船が行き交う。川を上下する船だけでなく、横断する渡し船もいるから傍目から見ていると、よく事故が起きないなぁと感心してしまう。

 幾つか船着場に寄り、その度にお客さんが乗り降りする。20分弱で左手の河畔、ワットアルンが現れる。何人か乗っている観光客がさかんにカメラを向ける。

 見覚えのある船着場に到着。係員から「ワットポー」の声が出る。外国人観光客御用達の船着場なのだろう。ここで下船。ワットアルンは対岸だが、この船着場から渡し船で対岸に渡る事になる。

 運賃4バーツ。やって来た船に乗って出発を待つ。先ほどの船と違って満員にはならないうちに時間がきたのか
、船員が一人乗り込む。ロープが解かれるとチャオプラヤー川横断の短い旅が始まる。数多くの船が行き交う中を器用に進むうちにワットアルンが大きくなる。5分しないうちに向かいの船着場に到着。ワットアルンに向かう。

 見学料50バーツを払い、登れる所まで上に昇ってしまう。近くに日本からのツアー客がいて「10:10に集合してください、一番上までは昇る時間はないので昇らないでください」なんてやっているが、こちらは時間に縛りはない。
 実に急な階段で階段というより梯子と言いたくなる段差。一つ階を上がる度に急になる。

 一番上に到着。チャオプラヤー川の向こう、王宮が広がる。吹いてゆく風が心地よく、暑さを忘れる。下手なタワーに昇るより遙かに素敵な時間が流れて行く。
 ワットアルンは昇るより降りる方が大変で、中には降りる時になって初めて怖がる人もちらほら。妻が恐がりながら階段を降りつつ写真を撮っているのを見て、「余裕〜」と感心していたツアーのおばさん、もっと怖がってて見るからに大変そうだったりする。
 皆さん無事に下に降りると、再び渡し船で対岸に戻る。次もベタだけどワットポー。船着き場からちょっと行った所にある。クルマの行き交う信号のない交差点を流れと勢いで渡るとそこがワットポー。
 こちらも観光客が多い。ワットアルンに比べると欧州の人が目立つ。肌の露出が多い人も目立ち、涅槃仏を前に上着を貸し出されている。


 ずいぶんときらびやかな大仏だが、考えてみると奈良の大仏も黄金色であった。京都の金閣寺もそうだし。とにかく日本の渋い仏閣を頭に浮かべてバンコクの寺廻りをすると、何か別の宗教を見ているようなそんな気分になる。

 気が付くと空が曇ってきている。ワットアルンを見ていた時には気持ちよく晴れていたんだけどなぁ。

 ワットポーの次は王宮へ。ここは少々歩くことになる。道は混んでいて、反対車線にはみ出したバスとトゥクトゥクが睨み合いっこしていたり。
 ホテルを出てからずっと立ちっぱなし、歩きっぱなしなのでちょっと休憩。どこかでお茶でも、と探していたら船着場に。人が集まる所だからか、船着場にはちょっとしたレストランやら何やらが充実していたりする。

 タイスタイルというコーヒーはLサイズで35バーツ。甘ったるく冷たい液体が体に染み込んでくる。
 さて、王宮に向かう。入口まで来た所で、係員らしい人に止められる。王宮は12時から午後1時までお昼休みで入れないそうだ。よくある「王宮は休みだからショッピングに行こう」詐欺かと思ったがそうではなく、本当にお昼休みらしい。ならばお昼を食べに行きますか。
 王宮から少し足を延ばしてカオサンに行く。信号のない交差点を苦労して渡るとようやくカオサン。遠くはないが結構時間が掛かる。

 白人のバックパッカーの姿が目立つカオサンの街。今までの観光地と大きく違うのは中国人観光客が全くいないからだろうか。昼間の12時過ぎ。全体的に気だるい雰囲気が支配している中、適当な店に入る。注文をして食事が運ばれてくるのを待つ間、ぼけっと店の外、カオサン通りを眺める。

 トゥクトゥクが3台ほど、客待ち中。時々、観光客が声を掛けるが料金交渉がまとまらないのか、観光客は立ち去ってしまう。

 ビールをJogで頼んだら空のジョッキとピッチャーで運ばれてきた。妻は飲まないので一人でこれを飲むことになる。昼間からこんなに飲めないなぁと思うものの、頼んだ以上は頂くことになる。


 食事はカレーとパッタイを。場所柄ちょっと小洒落た感じで供される。
 王宮の公開が再開される13時にだいぶ遅れて食事が終わる。戻りはトゥクトゥクにしようかと思う。カオサン通りで捕まえると、ぼったくられそうなので表通りに出てからにする。カオサン通りの入口で屯っていたトゥクトゥクに声を掛けると150バーツなどとのたまう。交渉で100と言うと安いと一蹴され、130にするのがやっと。相場からすると高いんだろうなぁとは思う。
 しかしトゥクトゥクとは面白い乗り物で、クルマを縫うように追い越して行く。モーターサイがすばしっこいのは分かるが、トゥクトゥクが渋滞でも素早く動けるのは知らなかった。
 王宮に到着。長蛇の列が出来ていて入場券の購入かと思ったらこちらは見学に不適当な格好な人への上着の貸し出しであった。係員がお客さんの格好をチェックしてダメな人に声を掛けている。自分たちは今日は寺院や王宮を見るからとある程度気を付けて来ているのだけど、意外と気にしない人も多いのだね、と思う。
 王宮の見学料は400バーツ。2008年に来た時は250バーツで、それでも物価を考えると高いと思ったのだが、ずいぶんと値上がった。中はきらびやかな事この上なしで、随分とお金が掛かっているのだろうと思うが、ひょっとしたら、入場料でモトが取れているかも知れない、と思う。
 前に来たときは皇族のどなたかか亡くなった直後で、弔問に訪れる国民が溢れかえっていたのだが、今日は観光客だらけ。

 定番の記念写真、なんだろうか。

 この暑い中、長袖で衛兵が門番に立つ。横に記念写真の観光客が立っても全く動じず立ち続ける。

 最後に宮殿を。タイの様式と西洋の様式が混ざりあった不思議な建物がでんと構える。国王陛下は普段はこちらにいらっしゃらないそうで、観光客に公開されている1階、展示されている銃剣やらを見学して終了。
 一度ホテルに戻る。先程コーヒー休憩をした船着場に行ってからチャオプラヤーエクスプレスに。今度の船も混んでいたが、一つ船着場を進んだ所で目の前の席が空いて座れる。

 午前中と違っていかにも降り出しそうな黒い雲が沸いている。川を下る間に雨粒が水面を叩き出す。オープンエアの船に雨が容赦なく降り注ぐ。

 でも船は良く出来ていて、ビニールシートが乗客の手で降ろされる。これで雨は凌げるが、風は入り込まない分、船内は蒸し暑くなった。これは仕方がない。
 雨が本当に酷かったのはほんの数分。小降りになった所でBTSの橋梁が見えてきて、サパーンタクシーンとなる。ここで降りる人は非常に多い。陸上交通と水上交通の有効な結節点になっている事が良く分かる。この時間、道路はどうせターフィーなのである。
 一度ホテルに戻る。暑い中を動き回ったのでシャワーを浴びてシャツも替える。着替えの枚数に限りはあるが、サービスアパートメントなので、洗濯機がある。限りを気にせず着替えが出来る。

 今いる部屋はBTSビューなので、行き交うBTSが眼下に見える。サパーンタクシーンの駅構内だけ単線になっていて、時々下り列車が上り列車の通過待ちをしてからポイントを渡るのが見える。BTSシーロム線の延伸に伴い、サパーンタクシーンの駅を廃駅にするとかしないとか、そんな情報が載っていて、昨日今日と使っている限りでは、とても良く利用されているのに不思議なことをするものだと思っていたのだが、駅の前後だけ単線。ここを複線にするにはホームを撤去するしかなく、撤去した上でホームを別に設けようとすると、今度は左右を道路に挟まれている。シーロム線は4両編成6分毎、スクムウィット線は3両編成3分毎で、電車を増やすにはサパーンタクシーンの駅を何とかするしかない事は容易に想像出来る光景だった。

 夕方になってから買い物に出る。まずは一つ隣の駅まで歩いて、化粧品か何かを買うのにおつき合い。その次はBTSでサイアムに出る。こちらでは日本でも人気というブランドのバックを。店の中、日本人率がやたらと高かった。そしてシャツやら何やら。すっかり遅くなってから、夕食は妻が是非行きたいと言う店にゆく。是非行きたいが幾つもあって困るが、そのうちの一軒。

 蟹のマークで店の軒先には水槽があって、漢字でも名前が書かれているから何にも知らないと華僑の中華料理屋かとも思うが、ここの名物はプーパッポンカリーという、蟹肉の入ったカレー。それに在り来たりかも知れないけど、トムヤムクン空芯菜の炒め物を頂く

 ビールはシンハ。歩き回った後なので実に美味しく体に染み込んでゆく。



 待つほどなく頼んだ3品が運ばれてくる。それにライスも付いてきた。名物のプーパッポンカリー、蟹のうま味がとけ込んでいて濃厚なお味。良くあるタイカレーとはだいぶ違うけど、世界に出しても勝負出来そうな一級品。
 すっかり満足してホテルに戻る。帰りはシーロム線。国立競技場から電車に。

 始発なので余裕で座れて15分ほどでサパーンタクシーンの駅に到着。ホテルの部屋に部屋に戻る。昨日買ったビールが冷えているが、飲む気力が残っていない。軽く身支度、シャワーを浴びるともう、就寝。