就寝中、気づいたら煙が充満していたとか、再び火災報知器がけたたましく鳴ったとか、そんなことは無く朝を迎える。日曜日の朝、香港は九龍。雲が垂れ込める朝。時折窓を雨粒が流れる。天気予報は今日も雨である。
 休暇は一日だけだから今回も二泊三日。今日が最終日であり、午後の飛行機を予約している。午前中だけが持ち時間だ。
 少々荷物を括ってから、ひとまずは朝食を食べようと出掛ける。幸い雨は止んでいる。湿気はあるが日差しはないから、その分楽だ。

 今日は地元の麺を食べたい。街角の適当な所で構わないから、地元の物を食べたいと佐敦道へ脚を延ばす。
 日曜の朝、開いている店が意外とない。麺の看板の下に行列が見えたから近寄ってみるとプリン屋だったりする。その周辺を見渡して、盛業中だった一軒に入る。相席になる程度には混んでいる。

 店の選択がいい加減だったからか、対応も結構いい加減で盛られた丼がしばらく放置された後で出てきた。値段はきっかり20HKD。昨日の味千からきっかり半額である。
 めちゃくちゃ美味しいという訳でなく、恐らくは調味料の味なんだろうけど、気分的には収まる。海外に行った時、日本のチェーン店や世界的なファストフードの看板が気にならない訳では無く、試してみたいとも思うのだけど、やはり結局は地場の物を食べた方がいい。長い期間出掛けているなら浮気するのもありかもしれないが、そんなに長い休暇は貰っていない。

 改めて、先ほど混んでいたプリン屋に並ぶ。行列は長くても回転は早いようで、さほど待たずに店内に入れた。メニューはデザートだけでなく軽食類もあるようで、むしろ朝食を取る家族連れで賑わっているようだ。

 注文してすぐに出てきたミルクプリンは23HKD。先ほどの朝食より高い。滑らかな食感と優しい味わいを楽しむ。楽しむには若干騒々しいのが残念だが、仕方がない。
 並んでいる時間も短かったが、食べる時間も短かった。行列を横目にホテルに戻る。帰り道、ホテルの向かいにあるスーパーに寄り道。おみやげ物を物色してゆく。社内で配るお菓子の類やら家で使う調味料、お茶の類。

 世界のビールも揃う。知っている銘柄、知らない銘柄。日本のビールも勿論揃う。

 お菓子だけはお土産好適品が無く、それではと安直ではあるが優の良品を探す。歩いているとどこにでもありそうだけど、佐敦道にあった筈の優の良品は見あたらない。記憶が曖昧、というより地価の高い香港、家賃更新の度に値上げ圧力が激しくて、撤退せざるを得ない状況に追い込まれる店が多いのだ。彌敦道も様子が結構変わっている。
 一度ホテルに戻る。優の良品、どうせ空港にはあるのだけど、荷物に括りたいからもう一度出直す。部屋の窓から見えていた中港城、見えている割には歩いて10分掛かったが目指す店はあってそれなりにいろいろと買い込める。これで買い物は一応終了。部屋に戻って荷物を括るとまもなく12時、チェックアウトの時間だ。
 空港へはエアポートエクスプレスで向かう。九龍駅へ向かうバスを待つ間、とうとう雨が降り出した。この三日間、ずっと雨の予報だったが最後の最後に降られた事になる。まぁ今まで持ってくれた事を感謝しなければならない、かもしれない。落ちた雨も一瞬でずいぶんと待たされたバスに乗って少々の九龍駅に運ばれる。荷物が小さければ歩いた方が早かったかもしれない。


 空港まで、2人用の片道切符を買う。一人当たり70HKDとなり別々に買うよりずっと安くなる。昨年使った時は磁気券だったけどちょっと分厚くなった。

 インタウンチェックイン窓口は混んでいたので空港で手続きをする事にして、改札へ向かう。先ほどの切符、ICカードだった。タッチだけで改札を通れる。いつの間にか進化していたのだったが、回収はされるのだろうか。空港のホーム、改札のないまま外に出られるのだけど。
 やってきた電車で空港に向かう。来る時のバスと比べても圧倒的に早い。20分程で車窓の遠くに空港島が見えてくる。連絡バスを長いこと待ったけどそれでも1時間しないうちに空港に着く。改札はないからICカードは手元に残った。
 チェックインカウンタ。荷物を預けて搭乗券を受け取る。でかでかと「C」の文字。帰りもインボラアップグレードである。混雑しているからだろうが、香港往復燃油代込み46000円。決して高いチケットではないから恐縮してしまう。
 早々に手続きが終わったから出国してしまう。出発は15時。2時間をちょっと割り込むところ。
 香港に来たならCXのラウンジがやはり嬉しく、今日もCX。本来ならサクララウンジを使うべきだろうが、何度も香港に来ている割には一度も香港のサクララウンジには入った事がない。


 何だかんだで昼食の時間は過ぎているから軽く食事は頂いておく。名物、ヌードルバーで坦坦麺を。サンドイッチの類もあったから一緒に。ちょっと温めの坦坦麺よりも妻の食べてた魚蛋麺の方が美味しそうに見える。一口貰ったが本当にプリプリしていて美味しい。

 目の前はスターアライアンスのエリアなのだろうか。上海航空がいて、隣にシンガポール航空がやってくる。

 キャセイのラウンジと言ったらやはりロングバー、とい言うことでバーテンダーさんに一杯作って貰った。飛行機を眺めつつ飲む一杯は格別。勧められるままにもう一杯頂く。こんな調子であっと言う間に1時間が過ぎる。まもなく14時半。飛行機は15時だからもう搭乗が始まっている頃だ。65番ゲート近くのラウンジから41番搭乗口に向かう。途中、

 シンガポール航空A380がいる。順調に導入が進んでいるからかシンガポールー香港なんて比較的短距離区間にも就航するようになったのか。間近で見るのは初めてだけど、

 真っ正面から見るとユーモラスな顔付きだ。一度乗ってみたいものだけど、ワンワールド中心での搭乗だとまだまだしばらくは機会に恵まれそうにない。

 ようやく、JALB747-400が見えて来た。A380と比べてしまうとどうしても見劣りせざるを得ないけど、それさえ忘れてしまえば、やはり堂々として、そして頼もしく思える。これに乗って日本に戻るんだ、という気分が沸いて来る。