無念の顔

5875号車 北館林で

 途中、のどが渇いて何度か眼を覚ます。ようやく動き出したのが午前8時。朝早く起きることが出来れば多少京王線を覗いてゆくことも考えないわけじゃなかったけど、もうそれは無しにする。
 大船から湘南新宿ライン。割と遠くまで行くのでグリーン車を驕る。今回は平屋部分にしてみた。定員8人の小部屋、って感じの独特の空間を独り占め。何気にいいのだけど唯一失敗したと思ったのがアテンダントさんがひっきりなしに通ること。4・5号車の合わせ面なので何かと行き来することになる。反対側の車端ならもっと落ち着けたはず。
【今日の駅弁】かあさんの手づくり弁当 大船軒 \680
 煮物や焼魚が中心の素朴な幕の内。着色剤なしの梅干も嬉しい。っーかこう言う味に飢えているらしい、やっぱり。
 ビールをと一瞬思ったけど迎え酒はアル中への片道切符と思いとどまってお茶にする。
 東戸塚で列車がトラブル。発車しない。何かと思ったら先行列車で車両故障と仰る。車両故障では大事だなぁ、よりによって動きのとりにくい東戸塚でなくてもと思ったけど、間もなく案内は先行列車のドア点検になり、5分ほどで動き出した。
 ちょっとの遅れが痛く響くのが西大井を過ぎ品川と大崎の分岐となる蛇窪。信号停止となる。普通に動いている分には無いことだけど、ちょっと乱れると大変なことになるらしい。綱渡りだね。大塚を過ぎた辺りで車内放送。「ただいま3分ほど遅れております。お急ぎのところ申し訳ございません。これから回復運転に努めてまいります」回復運転を宣言するの、JR東日本では聞いた記憶がない。
 久喜で降りる。車内放送が誇らしげに「最大4分遅れておりましたが久喜からは定時運転となります」と仰る。4分延を返したのか……
 久喜からは東武線に乗り換え。うっかりパスネットで入場してから渡瀬には自動改札がない事を思い出す。精算になるけど仕方ないなぁ。やって来た電車はくたびれた感じの8000系6連。各駅に停まりながら館林。さらに20分以上待って釣りかけの5000系に揺られて渡瀬に着く。洋光台から3時間が経過している。
 何時もの田舎道を歩く。遠目に東武5000系が編成単位で留置されているのが目に付き、これは壁があるのではないかとも危惧したけど、近づいてみると見慣れていた車両の変わり果てたが目に付いた。5125Fである。つい1ヶ月前にたくさんの人に囲まれ、送り出された5125Fがここにいる。正直、心が重くなる。
 同業者が一人、何となく話を始める。氏は西武のファンで101系の廃車体が群馬ナンバーのトレーラーに連れてかれたという情報を元に来たのだそうな。少なくとも現在、切断された廃車体は倉庫代わりの三田線6000のほかには京王5125Fしかいないので氏にしてみると空振りと言うことになる。
 写真を撮る。撮り終わっても何か去りがたい気がする。恐らく次に来る時にはこの世の中から全て消え去った後なのだろう。そう思うと動けない。時折、東武5000系が釣りかけの音を響かせ走ってゆく。冬の弱い光が徐々に傾いてゆく。作業が始まる。解体?かと思ったけどなにやらトラックから細かい部品を降ろしている様子。遠目なので何を降ろしているのかまでは分からない。
 15時の電車に合わせて駅へ戻る。帰りの電車も5000系。館林からは8000系の準急というのも一緒。久喜まで来るとすっかり暗くなる。湘南新宿ラインの電車は行ったばかりだったので上野ゆきに。