あけぼのが紡ぐ夜

 
 ビールをお供に、旅が始まる。  
 大宮でとりあえず辺りは満席。車内減光。恥辱を綴りながらビールを進める。流れてゆく通勤駅が別世界のようだ。ひとまず括る。ブラシアップが必要だなと思いつつ最後の一本に手を付ける。熊谷が流れてゆく。やっぱり熊谷なんだ。
 旅立つ前、仕事で列車に間に合わなかったら、と思い、新幹線で追いかけたらどうなると言うのを調べようとして、宇都宮で追いつく事を考えた。でも、今のあけぼのは上越線廻り。東北〜奥羽線廻りをやめたのは97年の秋田新幹線開業以来だから10年間続いているのだけど、自分の意識の中であけぼのは、未だに奥羽線の列車なのである。
 雨に濡れる高崎が本日最後の停車駅。時刻は23時を廻る。車内も寝静まる。自分も寝てしまおう。カーテンを閉じる。内側から見ると少し心もとない。
 真下の台車が刻むジョイントと、真上のベットから聴こえる鼾に悩まされつつも、夢の中へ、夢の中へ。