朝の気配で目が覚めた。香港は九龍側、彌敦道が見えるホテルの一室。時刻は6時過ぎ。まだ寝足りないので少し寝る。結局6時半過ぎには眠れなくなり、起き出す。

 朝ラッシュにはまだまだ早い時間なので、道は流れている。空はくもり空。まだ動くには早い時間。
 ネットを見つつ、地元のテレビ局。ニュース番組を眺める。軽快なオープニングが耳に馴染み、心地よい。30分毎に同じ内容を流すのでいい加減、まただ、と思うようになる頃、朝食を食べに出る事にした。
 佐敦の街、彌敦道は地価が高いからだろう、食べ物の店なんて全くない。一つ脇に入った所にある、粥の店に入る。


 地元の人で賑やかな店だが、観光客もいるのか、英語と日本語を記したメニューもある。壁にはタイ語のメニューも出ていた。
 油條の事を片言で「あげぱん」なんて言うから、日本人観光客の来客が多いようだ。

 そんな訳で「あげぱん」と粥を一杯ずつ。香港の粥は米粒が残らなくなるまで溶けた粥。粘度の高いスープと言いたくなる溶け具合。そしてちょうどいい塩味。時折油條を入れながら、美味しく頂く。お代は1杯35HKD。一頃に比べると高くなった。二人で1000円だからなぁ。
 さて、ホテルに戻る前に、彌敦道を尖沙咀まで。

ガジュマル並木の下を歩くと見覚えのない猫の像。更に先に進むと香港有数の繁華街。尖沙咀になる。
両替をしてゆく。

 バックパッカーの聖地にして印度人の巣窟である重慶大厦。自分たちにとってはレートの良い両替商のあるところ、である。一番手前の両替商は空港以下のぼったくり両替商だが、奥に行くにつれてレートが良くなる。今日は10000円が764HKD。1HKDは約13円となる。
 尖沙咀で少々店を眺めた後は地下鉄で一駅、佐敦まで戻る。ホテルの部屋にいったん戻るのだが、

 佐敦の定番というべき、義順牛奶公司へ寄り道。マカオと香港に支店を構えるプリン屋さんである。ここも地元客にとっても、観光客にとっても定番の店。

 メニューも日本語がどんと構えている。というか黄色い表紙の本を持ったカップルがいたりする。

 ミルクプリン、ホットとコールドを一つづつ。合わせて64HKD。やっぱり千円弱になる。日本円は一頃に比べれば強くなったとは言え、順調にインフレしている香港の街。数年前の物価感覚では追いつかない。日本で食事を取るより高いかも知れない。

 一旦ホテルに戻る。今日はこれから、西貢という郊外の街に足を伸ばす。海鮮が有名な小さな港町。場所は新界の東側。地下鉄の観塘線で彩虹という駅まで行き、そこからミニバスに乗る事になる。
 観塘線の始発は佐敦から一駅、油麻地。そこまでは佐敦から荃湾線でゆくのだけど、荃湾線と観塘線、油麻地、旺角、太子と3駅を並走する。油麻地は路線別複々線。旺角では方向別複々線になって順方向の乗換が可能。太子では線路が入れ替わって逆方向での乗換が可能。なかなか便利な構造になっている。
 対面で乗り換えできる旺角で観塘線に乗り換えて西貢へのミニバスが出る最寄り駅である彩虹の駅へ。

 駅名にちなんでレインボーカラーに彩られたは柱が目立つ。ここで地上に出ると出発を待っていたミニバスに飛び乗る。

 16人乗りのミニバス。路線バスより少し値段が高いが、目的地をまっすぐ目指すので所要時間が短く、分かっていれば便利な乗り物である。バスは山道を結構な速度で越えて、下り道へと差し掛かる。彩虹から20分少々。

 車窓に海が見えてくると目的地の西貢も近い。12時ちょっと前。目的地に到着。ちょうどお昼時になっている。
 ミニバスのターミナルを降りてすぐの所が、海鮮料理の専門店街。

 今朝揚がったばかりの海老やらカニやら、シャコやら色々水槽で食べられるのを待っている。
 食事は後にすることにして、少し西貢の街を歩く。専門店街の向かいは海というか港。

 船溜まりというのだろうが、一面船だらけ。小さな漁船や、辺りの島を巡る観光船。

 一面の船船船でこんな訳の分からない漁港、初めて見たわ。人よりも船が多い、は大げさだが、そんな勢いで船がいる。
 西貢の船溜まりは広いが、西貢の街は小さい。船溜まりから街の方へと歩いてみる。

 海鮮街は観光客が満載だったが、西貢の街には人が少ない。街をぶらぶら歩いて

 寺を見物。そして

 路地をぷらぷらすると、さっきの船溜まりに戻ってしまう。西貢の街はとても小さい。
 バスターミナルを挟んで反対側に地質博物館があるというので歩いて行ってみる。海鮮料理の専門店街は相変わらず人であふれている。更に先に行くと観光船乗場。辺りの小さな島を巡る船がお客さんを待っている。

更に北側は流石に船も少ない。急にリゾート地の匂いがしてくるから不思議だ。

 案内板の出ていた地質博物館は路線バスターミナルにほど近い所にあった。
 この辺りの海岸に珍しい柱状節理の流紋岩が見られるそうで、地質公園に指定されているそうだ。その案内施設。

 石の名前が日本語でも中国語でも一緒なんだなぁと妙な所に感心する事になる。実際に柱状節理が見られる所は少々距離がある。休みの日には有料の見学ツアーも設定があるそうだが、今日は平日金曜日であった。
 西貢に着いて1時間。そろそろ食事のピークも過ぎただろうと、海鮮の店に行ってみる。

 予めネットで目星を付けていた店に入店する。まだ混んでいたけど空いている席もあり、待ち時間なく通される。飲茶を頂くパターンと海鮮を頂くパターンがあるみたいだが、今日は海鮮一択なので、2人用というセットメニューをお願いする。

 幾つか並ぶメニューの中から4品選び、それに野菜と果物が付くというメニュー。値段は二人で438HKD。決して安くは無いが、日本で食べるのに比べれば、まだ安いかな、ぐらいの価格。最初に伝えた4品のうち、貝は入荷が無かったそうで、代品で合計4品。お茶を飲みつつ出てくるのを待つ。

 10分程でロブスターのクリームソース掛けが出てくる。殻から身を剥ぎ頂く。クリーム―スが熱々ならもっと美味しいだろうが、熱々だと今度は身を剥ぐのが難しくなる。う〜ん、悩ましい。

 ロブスターと格闘をしていると今度は会話キラー、蟹がネギ背負ってやって来る。こちらとも格闘になると本当に会話が消える。

 今度は揚げたイカがやって来る。前二つに比べるとだいぶ格が落ちると思いきや、プリプリの代名詞、海老の仲間のロブスターを差し置いてプリプリの称号を持って行く。これは本当、新鮮なうちに揚げたに違いない。

 日本語では季節の野菜と書かれた、安定の一品がご到着。

 そして最後に蒸しホタテ。どこ産なのか分からないけど、これも結構新しかった。ホタテは古くなると分かりやすいけど、今日出てきたのは良かったと思う。
 今日は平日、金曜日の昼間なので、土日や夜は掛かるサービス料が無料。その分はお得感がある、今日の海鮮。たっぷり1時間。殻と格闘して14時になる。
 もうしばらく西貢の街をぷらぷら。

 中環や銅鑼湾でおなじみのGOODS Of DESIREがあるので寄り道。街の雰囲気に合わせて少々シックな店頭。中は多少はお客さんがいて、買い物を楽しんでいる。
 ここのG.O.D、Tシャツやら何やらが結構な投げ売り価格状態。G.O.Dのアウトレットか、と思ってしまうほどだけど、普段からなのか、たまたまなのかは分からない。ついつい二品ほどお買い上げ。さらに街をぷらぷらと。

 市場があったので覗いてみた。見事に鮮魚の店なかりが並ぶ。全て西貢で揚がったものなのかどうかは分からないが、種類も色々。日本で見かけないような魚ばかりが並んでいたり、裁かれていたりする。見ていて楽しい。
 さて。先程食べたばかりだが、妻のリクエストでもう一店、甘いものの店に行く。先程歩いた路地に面している店へ。何だかんだと西貢の街、二周目になりつつある。

 こちらがメニュー。河粉と書かれた9番のメニューが妻の目的。妻曰く、マンゴーきしめん、だって。

 その正体。マンゴー仕立てのスープの中に

 麺が満ちている。勿論、小麦仕立ての麺が入っている訳がなく、これはミルクゼリーか何かで作ったもの。G.O.D並みにジョークの利いた一品、でかつ美味しく頂けるから逸品でもある。

 自分は同じものを頼んでも芸がないので

 ドリアンを使ったスイーツを頂く。

 薄い生地の中にはたっぷりのドリアンと生クリーム。香港でドリアンが取れる訳ではなく、タイやマレーシアからの輸入に頼っているらしいのだけど、この国の人たち、本当ドリアンが大好きだ。
 そろそろホテルに戻る事にする。来た道を戻るのは芸がないけど、それが一番早いので、彩虹駅までミニバスに乗る。

 来た時と同じターミナルへ。目の前でバスが出たが、すぐに次のバスが出発となるから、慣れれば便利な乗り物である。少し空席を残して出発。途中のバス停でも乗って来るお客さんがいて満席になる。途中のバス停からだと満席で乗れないお客さんも見受けられる。
 地下鉄に乗り継ぎ、佐敦まで戻ってホテルの自室へ。

 いつも彌敦道の写真では芸がないので少し右側にレンズをそらしてみる。時刻は17時。結構いい時間になった。
 少し荷物を整理し、部屋で休憩。夜はちょっと香港島側に行く。行く場所がスターフェリーの中環埠頭に近いので、バスとフェリーを乗り継ぎのがちょうどいい。ホテルの前を通る彌敦道にあるバス停で尖沙咀埠頭行きのバスを待つ。

 折角埠頭ゆきのバスが来たのだが、待っているバス停が違った。彌敦道みたいにバス路線が多くてバス停が分散していると、どのバス停で待つかで明暗が分かれたりする。

 それでも待ち時間あわせて15分弱で尖沙咀の埠頭に着く。中環に渡るスターフェリー乗り場のすぐ前に。真っ直ぐ行くと

 中環へと続く通路に出る。いつも気づいたら1等船室に入っているのが不思議なのだが、最短通路を行くと自然と1等船室に辿りついてしまうようになっているみたい。
 19時ちょっと前。夜の帳がビクトリア湾に降りている。

 向かいの香港島。ビルの灯りが海に映って波間に揺らめいている。

 中環の街の背景に太平山の山影も見えている。今日の太平山からの夜景は綺麗に見える事だろう。
 短い船の旅は10分程度の短い旅。中環の埠頭に着く。ここから中環の街は実は遠い。埋立埋立で中環の街から海が遠くなって、尖沙咀から中環までのフェリーの乗船時間よりも、中環埠頭から中環の街まで歩く時間の方が長いぐらい。
 でも今日の目的地は埠頭で降りたすぐそこ。

 香港摩天輪。

 中環にビル群と埠頭の間に、観覧車が出来ていたのは知っていたし、何度か中環埠頭と街を行き来する時に見ていたが、実際に訪れるのは初めて。時刻は19時。1時間後のシンフォニーオブライツの時間を狙うと混み合いそうだが、この時間はがら空きだった。数人待ち、ではあったが、これはゴンドラ1つに一組しか乗せていないから。本来なら貸し切り料金が掛かるみたいだけど、そこは空いているのでサービス、らしい。
 代金は1人100HK。2人で200HKDで香港島のど真ん中に貸し切り空間が出来る。観覧車はいったん止まってお客さんを載せるとゆっくり動き出す。

 中環のビル群が一面に広がりだす。

 見た目不安定なビルは人民解放軍のビル。根っこを叩けば倒れるんじゃないかといつも思う。

 ビクトリア湾を挟んで九龍側にもビル群、だが、一際高いビルが目立つので、群れている感がないなぁ。

 手前には先程フェリーを降り立った埠頭の建物。元々海だったところに建ったので最近の建物だろうが、クラシカル感は演出している。
 お客さんが乗り降りする際には停まり、また廻って停まって、光の海を3周したところで終了。15分ぐらいだっただろうか。

 演出のない時間帯でも十分に楽しめる、むしろ空いている分、シンフォニーオブライツの時間を外して正解だったようだ。
 さて、歩いて中環の街へ。しばらく歩くとこの旅で初めてのトラムの姿に出くわす。時刻は19時半過ぎ。そろそろ夕食。昼にがっつり行ったので、夜は軽めに済ませる。

 ちょっと迷ったが、目的の店に到着。中環の西側、長いエスカレータのある脇。有名なワンタン麺の店に入る。さすがに混んでいて相席になった。隣りの客、日本人だ。


 志向を変えて何となく汁無しのワンタン麺にしてみる。汁のある普通のワンタン麺が一押しだったみたいだけど。ワンタンはさすがに有名なだけあって一食の価値あり。
 疲れたのでホテルに戻る。帰りは埠頭まで歩く気に慣れず、近くの駅から地下鉄で。佐敦までは3駅。10分もあれば着く。情緒も何もないが、便利ではある。
 自室で買い置きのビールを飲むと疲れと酔いに同時に襲われた。早々に寝る事にする。