2019-05-01

 カーテンの隙間が明るくなっている。時計を見ると7時過ぎ。ウラジオストクで迎える令和元年5月1日。日本と経度があまり変わらない筈だが、ウラジオストクの時間は日本より1時間早い。つまり日本の午前6時。
 起き出して外を見てみる。

 霧が立ち込めている。窓を開けると容赦なく冷気が入ってくる。この雰囲気、根室稚内か。
 緩々身支度をする。ホテルには朝食を付けていないので外で食べるのだが、店が開く時間は8時過ぎ。早く出ても仕方ないのでゆっくりする。
 結局9時になって外に出る。

 この時間、外は霧雨。傘を差してウラジオストク駅の方へ歩く。
 ウラジオストクは坂の町。ホテルは丘の中腹にあって、駅は港の傍だから丘の下。坂道を下る事になる。駅に出るその前に

 大きな銅像レーニン像。ソ連邦崩壊の時にレーニン像は悉く倒されたと思っていたらそうでもなかった。その向こうに

 道路を挟んでウラジオストク駅。何ともヨーロピアンな雰囲気。成田から2時間のウラジオストクだが、ロシア領ウラジオストクはヨーロッパの香りがぷんぷんしている。
 ちょうど長距離列車が到着したようでたくさんのお客さんが駅から出てくる。その脇にあるスタローヴァヤで。スタローヴァヤは大衆食堂と訳すらしい。


 色々ならんでいる食材から好きな物を選んで頂く方式。台湾や香港でいえば自助餐といったところ。ロシアでは英語が通じないというので指さし指さしと片言英語で何とか何とか乗り切る。

 ボルシチと黒パン、魚のフライとサラダで181ルーブル。350円程。ボルシチがぬるいのがちょっと気になる以外は美味しく頂ける。
 さて。折角、駅に来ているので少し見てゆきたい。跨線橋が掛かっているのでそちらからまずはホームを眺める。 

 電車が停まっている。これは昨日乗れなかった空港行きのアクセス電車。1日5往復だそうで使いづらいのだが、その電車が停まっている。隣には長距離列車だろうか。客車列車。

 改めてウラジオストク駅の駅舎。石造りの立派なものだ。こちらの中に入る。が、入った所でセキュリティーチェックがある。荷物はX線検査。自分も検査を受ける事になる。
 そこまでして入った駅舎出の用事は無い。ただ単に駅を見たかっただけ。

 待合室を眺める。帝政ロシア時代の建物でしょうね。実に美しい。

 今のロシアもソ連邦も通り越して帝政ロシアのニコライ二世の肖像。1891年の文字が見えるが、後で調べてみたら大津事件の年だった。訪日中に大津で警官に襲われたニコライ二世はその後ウラジオストクを訪問している。

 何とも優雅なウラジオストクの駅を見て回る。途中、トイレに入ったらここは有料、20ルーブルだった。まぁ35円なら、ね。細かいコインの手持ちが無く大変だったけど。
 駅から線路をまたいだ向こうは旅客船ターミナル。ちょうど韓国の東海へ向かう船があるタイミングで、旅客船ターミナルにはスーツケースを持った韓国人が大集結している。

 岸壁にはその船が停泊中。ウラジオストクを今日の14時に出港し、韓国の東海に翌日11時着。日本の境港には明後日3日の9時着だそうだ。

 その向こうには軍艦が見えるが、万国旗が掲げられている。緊張感漂う軍港、では無く、観光の役目を果たしているようにしか見えない。退役艦なのか、見せても問題ない艦なんでしょうね。

 ちょっと視線をずらすとロシア正教会が見える。予備知識は無くても玉ねぎ頭で正教会と分かる。今日一日、特に目的はないのだけど、あの玉ねぎ頭の傍には行ってみたい。
 港から玉ねぎ頭を目指して少し歩く。この辺りは観光エリアじゃなくて、あくまで鉄道と港の結節点。

 だから駅から港の方へ引き込み線が伸びている。ここを行く貨物列車を見たいけど、雨の中で妻帯同してやる事ではないので、先を急ぐ。玉ねぎ頭は港から段丘を一段上がった所にある。
 階段を上るとそこにいるのは検問の警察官。セキュリティチェックを受ける事になる。妙に厳しいがそうやってやって来たのが大きな広場。中央広場と言うらしい。

 大きな銅像が雨に濡れる広場には仮設ステージが作られ、踊る人が見える。出店が並び、何かイベント的な雰囲気。

 広場に面する道路も人であふれている。何だろうと思う。

 マーチングバンドが出発を待っている様子。 

 雨の中、傘もささずに直立不動。大変だなぁと同情するが、これはメーデーのパレードらしい。
 日本でも5月1日はメーデーで、毎年弊社でも組合がイベント参加者を若干名募集しているのは知っている。最近は連休初日だったか。たしかお手当を若干頂けるような事は聞き覚えがあるけど、参加したことは一度もない。
 それに比べると社会主義国だったロシアのメーデーはたぶん、日本のそれよりも大々的というか、お祭りの雰囲気。だいぶ経って雨が強くなってきた頃、11時となりパレードが動き出す。

 その後に続くのはいかにも軍隊と言う人たち。手元の横断幕、後で翻訳してみたら、ウラジオストク軍学校とかそんな感じらしい。

 民間企業なのか国営企業なのか知らないけど、企業の労働組合が家族帯同でパレードするの体裁で続いて行く。

 風船を持っていあり小旗を持ったり。ちょっと行った中央広場の真ん前を通る時に企業名を紹介されている様子。

 これでいえばオーロラ航空。「オーロラ航空労働組合の諸君が来たぜ、ウラー」みたいな感じで紹介される。結構盛り上がる感じ。

 民族衣装の人もいて、本当にお祭り感が溢れている。
 ここまでマーチングバンドが出発してから15分程。まだまだ集団の行進は続いている。

 幼い雰囲気の軍隊っぽいグループがやって来る。幼年学校的な所かなぁと言うのを見送った所で会場を離れる。いい加減、雨に濡れて寒くなった。温かいものを飲みたい。

 グム百貨店の裏はリノベーションされたカフェやら何やらがあるそうだが、メーデーの警備対応のためか、今日は閉鎖されている。そこで予備知識無く一本丘の上の通りへと足を延ばす。適当に歩いた所でカフェを見つけたので入る。
 小さな店にはテーブルが4つぐらい。先客のうち1組は日本人だった。日本の人たち。雰囲気で分かるけど、

 必ずこの本を持っているのも特徴

 アメリカンコーヒーを二つ。100ルーブル。ケーキはフランスから伝わったナポレオンケーキと言うらしい。価格は180ルーブル。コーヒーはまぁ普通。ナポレオンケーキを一口貰ったがしっとりして甘さ控えめ。これは美味だった。
 メーデーのパレードに参加したらしい人がテイクアウェーでコーヒーや紅茶を買って行く。お客が途切れず賑やかな店で30分弱。改めて街に出る。
 通りを歩いていると文具屋兼書店みたいな店が気になり、入店。その中でカムチャツカの英文ガイドを見つける。ロシア文字のものもあり、何種類かある様子。見てゆくと

 サハリンと千島列島の物を見つける。ついお買い上げ。800ルーブル
 今度は妻に誘導されてテラノバという店へ。日本未進出のイタリア発ファストファッションだそうだ。思った以上に寒いのでセーターを1着買う。必要なのはウラジオストク滞在中だけだろうが、風邪をひきかねない。価格は799ルーブル。元々が1599ルーブルの所3枚値札が張りなおされている。さすがにウラジオストクでもセーターはシーズンオフらしく投げ売り価格だった。

 通りに戻るとパレードは終わった様子だった。道の封鎖は続いている。市内バスの運行は停まっている様子。遠くへはいけないので歩ける範囲で動き回る事にする。

テラノバから通りを一つもう一つ。噴水通りに出る。観光客の目立つ通り。日本人よりも中国人や韓国人らしき人が目立つ。中国はメーデーの連休らしいけど韓国は平日のはず。

 時刻は13時を過ぎている。昼食としてブリヌィを志す。ガイドブックに出ているので日本人多いだがウフティブリンに。韓国系の人が目立つ。日本人は3割ぐらいか。つーか、ほぼ観光客だけ。

 クレープなのだがサーモンを挟んでお食事になる感じのクレープ。勿論甘いものを合わせるパターンもあって、両方頼んでシェアする。
 食事を頂く間にもお客さんは来る。結構な行列が出来る。席待ちの人が増えて、日本人の子連れ家族に席を譲って店を出る。
 先程来の雨はやんだ。少し気温も上がったようだ。傘を閉じて噴水通りの坂道を下ると海岸に出る。

 夏の間は海水浴も出来るそうだが、この時期はさすがに誰も泳ぐ人はいない。

 海岸沿いには遊園地もある。ちょっと見てみたけどこの時間は閑古鳥が啼いている。
 少し海岸沿いに歩くと要塞博物館、というのがある。折角なので見てゆく。

 入口には梅の花が半分開いている。エゾサクラか何かの桜の木も見かけた。今日は天気が悪いから難だが、長い冬を抜けてようやく春を迎えた喜びのようなものが伝わる5月のウラジオストク

 要塞博物館は入場料1人200ルーブルソ連邦崩壊前は軍港都市として外国人が‏立入出来ない街だった名残みたいなものが、今は誰でも気軽に入る事が出来る。

 市内に向けて砲を向ける、訳じゃないだろうけど、今となってはそんな感じになっているコンクリート要塞を少し見て回る。屋外には


 対空砲やら水雷やらが並んでいる。

 こちらは装甲車。解説はロシア語だけなので由来は良く分からないが、年号は1955とか書いていて、ソ連時代にものと分かる。

 トーチカの中は展示施設になっている。ウラジオストクの歴史に戦史が紹介されている。kamimuraの名前とizumo、iwateなどの艦船名があって、どうやら日露戦争蔚山沖海戦の紹介らしい。

 CCCPの文字があり、ソ連自体の旗と知れるものも飾られている。今のロシアにとってソ連ってどんな存在なのだろう。展示を見る限りは消したい過去とは見られていないようにも思える。
 最後にトーチカの上に登ってみる。

 改めて砲越しにウラジオストク市内を眺める。風を防ぐ山があり、深い湾があって、天然の良港、軍港に最適な地である事はよくわかる。そんなところに滞在できるとは良い世の中になった。
 さて、一度ホテルに戻る。雨が止んで少し気温が上がったようだ。噴水通りを進んで市の中心街へ。午前中は封鎖されていた道が封鎖を解かれていて、クルマが戻っている。ウラジオストクの駅近くまで戻ると

 ピロシキ屋がある。まだピロシキは食べていないので買っておく。ノーマルのピロシキが35ルーブルから。適当に3つお買い上げ。ホテルにお持ち帰り。

 部屋でほんのり温かいものを頂いた。美味しく頂ける。
 一度荷物を整理。夕方改めて出掛けるのだが、この時間、雨がまた降っている。少し寒くなった。先程買い求めたセーターが役に立つのだが、

 それ以上に雨がひどい。あちこちで雨が滝になって流れが出来ている。街行く人も雨に濡れている。案外と傘を差さない人もいるのだ。何となく10年前に訪れたロンドンを思い出すが、降り方は半端ない。
 雨に濡れて20分弱。妻の目的の店に着く。閉店が19時だそうだが、持ち時間は20分だった。目的の店を見つけてお買い物。短い時間だったけど、何とかなる。その間に、雨が上がる。

 西の空が赤くなっている。
 スーパーに寄り道。観光客もちらほら見える中で土産物やらちょっと気になる食材やらを買い求めてから今日二度目の噴水通りへ。夕食を志すのだが、希望した店は満員。ちょっと入れそうにないので別の店へと転身する。

 二度目のスポーツ湾で辛うじて残った西日をみてから、ガイドブックには載っていないけど海岸沿いの店に入ってみた。

 店は席に余裕がある。地元の人が少々。韓国かららしい観光客が少々。日本人は見た所いない様子。
 注文は片言の英語が通じる。飲み物はビールを、それに適当に2~3品。蟹は頂きたく、店に人と相談して500gで1,300ルーブルというのを出してもらう。

 ビール200ルーブルとモルス70ルーブルを頂きつつ食事が来るのを待つ。

 パチャプリというジョージアというかグルジア風のピザが来る。中にあるのはチーズと卵黄。380ルーブル

 手羽先のシャシリクが来た。240ルーブル。温かいうちにと頂いていると蟹がやって来る。

 500gってどのぐらい?と思ったら脚が6本。結構太く食べ甲斐がある。これで1300ルーブル、2,200円程。身が引き締まっているのも嬉しい。これは思ったよりも非常に良い。
 そんな訳で全部で3品2杯で2,190ルーブル。4,000円弱。結構満足する。レートの関係もあるでしょうが、ルーブルは明らかに過小評価な気がする。
 時刻は21時近くになっている。ホテルまで歩ける距離だが、夜道が少々気になるので配車サービスを使って戻る事にする。距離が近いので100ルーブルもせずにホテルまで。
 一日歩き回ってだいぶ疲れている。部屋でビールを1杯飲むと急速に眠くなる。少し京王線恥辱を書いていたが、早々に就寝。
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