5時過ぎに起き出した。日本時間なら7時。全く無問題。身支度をして荷物をまとめる。少し時間があるので恥辱を進めてから、5:50、ホテルをチェックアウトした。眠そうなフロントさんが電話を掛けて部屋をチェックさせたらしい、OK、と言う事で街へ出る。

 まもなく日が出るという時間。駅までの道を歩く。昨日は車が途切れずに渡るのに苦労した五差路も難なく渡る。6時過ぎに駅に着く。


 駅は閑散としている。今日はここから6:20発、415列車で改めてノーンカイを目指す。切符を買い求めると64THB。
 駅構内に入る。手前側1番線にはウボンラチャタニー行の421列車が間もなく発車しようと言う所。 

 2番線には自分が乗る415列車が停まっている。


 昨日と同じく気動車4両編成。

 一際ぼろい。塗装が剥げ、車内の扇風機は首を振らずにけたたましい音を立てる。

 先頭車を選んだら、昨日乗った車両よりも車内がすっきりしている。走り出してから気付いたのだが、この車両は日本でいう所のキクハであった。
 6:10の定刻に421列車が発車してゆき、自分の乗った415列車も6:20、定刻に動き出す。ナコンラチャシーマー市内が車窓を流れる。

 先程歩いた五差路が流れてゆく。
 車内。埋まっているボックスは半分ぐらい。でも次のタノンチラでお客さんが乗って来る。この駅はナコンラチャシーマーの旧市街が近い。まだ空いているが、昨日の432列車が学生に使われていた事を思うと、この列車も通学で使われるに違いない。
 ナコンラチャシーマー市内を離れると1ボックス2〜3人。それなりのお客さんが集まった。

 車掌さんが検札に廻る。パチン、パチンと鋏の音が鳴り響く。
 車窓は昨日の巻き返し。複線化工事が進む埃っぽい景色の中を進む。時間が進むと通学ラッシュの時間帯となる。ラッシュ、というほど乗る訳でないけど、

 高校生と思しき集団が乗ってきたり、降りて行ったり。中には

 行商と思しき人も居る。一昔前、日本のローカル線でも見られたような光景だ。
 ナコンラチャシーマーでは鈍かった光が、時間と共に鮮やかさを増してゆく。

 雨季のタイだが、今日も晴れて暑くなる事を覚悟させられる。今の所は、走っていれば車内は涼しく、昨日のように氷が恋しくなるような旅では無い。
 途中、どこかの駅で普通列車とすれ違う。ブアヤイを5:50に出て来た430列車らしい。向こうも通学のお客さんで賑やかなようだ。普通列車は4往復しかないけど、高校生の通学に差し支えないように列車が設定されているようだ。
 引き続き、ブアヤイまでは巻き戻しの旅。

 昨日見た覚えのある駅前。工事中の埃っぽい所にいくつか出店が出ている。駅に人の集まる証拠であり、この辺りのローカル駅がしっかり機能している事を物語っている。

 また別の駅。工事に伴う仮駅舎に、どこから持ち込んだのか虎の置物と「Welcome」の文字。おおよそ外国人とは縁のなさそうな所だけど、それでも歓迎してくれる。

 ナコンラチャシーマーを出て1時間半。何度目かの通学客の入れ替わりを繰り返す。そしてこの駅から、車内半場の人が乗って来る。バンコクからの75列車では出発前からグイグイ売りに来ていたが、今日の列車。始発では朝早すぎて準備が間に合わないのかも知れない。
 バンコクでは弁当とか、焼き鳥とか、飲み物とか、そんなものを売っていたが、こちらで最初に売りに来たのは茹でたトウモロコシであった。

 いい加減空腹だったので買ってみると2本で20THB。渡されるとほんのり暖かい、ビニール袋から1本取り出して頂く。塩茹でしてあった。1本でお腹が一杯になり、もう一本は後で頂く事にする。
 ちなみにこの人の籠には、他には落花生やら何やら。その後売りに来たのは生の茸。釈迦頭という調子。通学列車の役目を終えると走る市場になってゆくのである。

 列車はタイ東北部の大地をゆっくりと北に向かって進んでゆく。時刻が8時を過ぎ、どうやら通学のお客さんはいなくなる。用務客。そしてお坊さんなんて姿も見える普通列車。左手の車窓から線路が近寄って来る。昨日乗った、ケンコーイからのバイパス線だ。間もなくブアヤイ。

 屋根付きの立派なホームは久しぶりである。
 現在8:17。何時の間にか20分程遅れている。時に大きく待たされたような事はなかったけど。工事の影響もあるかもしれない。
 ブアヤイでお客さんは大量下車。ナコンラチャシーマーを出発する前のような閑散とした車内に戻る。間もなく出発。ここで車内販売の人が増える。

 珍しくグイグイ来る人がいて、一番上に置いていた揚げ菓子を1つ買う。値段は20THB。サーターアンダギーみたいな感じ。他、竜眼売りとか、そんな人たちも廻って来る。バンコク辺りの車内販売と売り物が様変わりした。何か、売りたい物を売りに来る、と言った所。
 ブアヤイを出てさらに北へ。複線化工事の現場は消えて車窓は鄙びる。昨日は時々土埃が舞い込んで閉口したが、今日は、業務時間帯になっても、土埃の心配はなさそうだ。

 昨日も見かけたが、水牛だろうか、が草を食むのを横目に北へ向かう。

 どこかの駅で、今日二度目の列車すれ違い。ウドンターニーを出てナコンラチャシーマーに向かう416列車である。


 この辺りの普段着。既に見慣れたRHN形の4両編成。綺麗に塗りなおされた車両、塗装がはがれたままの車両、まぜこぜなのも一緒。しかしタイ国鉄、車歴がもうすぐ50年になろうかという気動車を上手に使っている。車両が良く出来ているのもあるかも知れないけど、保守がしっかりしているのだろう。大したものだ。

 新しい車販の人がまた別のものを売りに来た。鶏だろうか。次は何だろう、という楽しみもある市場列車はさらに北に向かう。時刻は9時を過ぎた。ナコンラチャシーマーから3時間近くが経過して、窓から吹き込む風もそろそろ別を帯びてくる。列車は駅を一つ、また一つ。単調だが、時々変化がある。

 おやと思う。

 明らかに

 キハ58系列ですな。日本からやって来た。この旅2回目。この車両は倉庫代用か、保守用車か。

 今度はファランポーンまで行く急行76列車とすれ違い。急行は停車せずにタブレットを受け渡してすごい勢いで通過してゆく。バンコク辺りで見るとボロ急行としか思えないが、さらに古いRHN形が闊歩する東北線で見る急行76列車は、急行らしい威厳と風格があった。車内はぼろいけど。

 北に向かう415列車にもタブレットが渡されて、発車となる。定刻なら9:08のBanheat駅を9:51に発車。何時の間にか40分まで遅れが膨らんでいる。
 この周辺の中心都市、コーンケンに10:15到着。ナコンラチャシーマーから4時間経って進んだ距離は180㎞。ノーンカイまで残り170㎞程なのでほぼ真ん中と言う事になる。定刻ならば9:36なので40分近い遅れを持ったまま。この調子で進むと
 ここでさらにお客さんは減る。

 ナコンラチャシーマーを出て以来、一番の空いたのではないと思うぐらい。客層もすっかり入れ替わっている。この415列車、走る距離は長いけど、都市間連絡にはまるで役に立ってないようだ。恐らくはクーラの効いたバスにお客さんを奪われているのだろう。
 コーンケンの駅を出る。

 ロビンソン百貨店なんて建物が車窓を流れて行った。バンコクで定宿になっているサパンタクシーン駅近くにある百貨店である。サパンタクシーンの店舗は冴えない感じだが、この辺りでは王様かも知れない。
 ノンパヨムという駅で側線に入る。これは待避だなと思うが、時刻表を見ても絡みそうな旅客列車は見当たらない。待つことしばし、

 やって来たのは真新しい機関車がエスコートする貨物列車だった。後ろに続くのは大ぶりなタンク車。自分が乗っている車歴50年にもなろうとする普通列車とは比べ物にならないほどピカピカで立派な列車だった。待たされても仕方ない、そんな諦めもつく。
 貨物列車が去り際に置いて行ったタブレットを受け取って、北へ向かう415列車も再び動く。
 空いた車内。すっかり暑くなった外を眺め、やる気なそうに車内を廻る車内販売を眺め、小さな駅に着き、そして走り出しの繰り返し。時間が流れるのは早く、コーンケンから1時間程が経つ。

 どこかの駅で車内販売の人が降りてゆくが、荷物が恐ろしく多い。これは車販というよりは行商の荷物だ。どうやら車内販売がメインと言うよりも地元から近隣の街に行商へ行くついでに、車内でもモノを売る、という感じらしい。まるで市場の売り物、と思って売りに来るものを見ていたが、行商途中と考えると納得がいく。
 すれ違う列車もなくなり、水田の緑、空の青、木々の緑が作る世界を流してゆく列車に身を委ねる時間が続く。

 駅があればタブレットを渡し

 そして次の駅まで進むためのタブレットを受け取る。停車列車でも手渡しじゃないのね。このやり取りのためか、先頭の運転室には運転士の他に運転助士がいる。車掌がいて、たまに清掃にまわる係員もいる。この車両、ボロなのだが、こまめに掃除はされていて、決して汚くは無い。だからこそ50年を全うしてこれたのかも知れない。
 もうすぐ12時になる頃、先頭車両の一区画に設けられていた優先エリアの表示が外される。空いているのでお坊さんを先頭の一区画に閉じ込めておく必要は当の向かいに無くなっているが、わざわざ付けたり外したりなんて細かな事をするとは思わなかった。
 12時を大きく過ぎて、車窓に大きな建物がちらほら見えだす。街の気配を感じると、大きな通りと交わる。自動踏切で車が列をなし、律儀に列車の通過を待っている。街の気配。

 久しぶりに上屋のある大きな駅はウドンターニー。この辺りの中心都市だ。本来なら11:42に到着なのだが、時刻は12:22。40分遅れている。ちょっとだけ遅れを取り戻したかも知れない。

 お客さんが多少降りてゆく。代わりに乗って来る人は、殆ど無かった。ウドンターニーから先、国境の街、ノーンカイまでゆく普通列車は、415列車1本だけ。本数が少なすぎて当てにされていないように見える。
 ウドンターニーを発車する。ノーンカイまでは残り40㎞を切っている。街を外れると

 水田が続くいつもの景色になる。時折、列車が停まる、と言う事もウドンターニーを出てからは無くなった。駅がないのである。昔はあったようだが、廃止された駅ばかりで駅が残っていないのだった。

 ノー書いて前の最後の駅、ナーターに停まると、残るは一駅。時刻は13時を過ぎており40分少々の遅れは引きずったままだが、後の行程には影響せずに済みそうだ。
 ゆっくりゆっくり走ると、線路が幾つかに分かれる。

 夜行列車用の車両が留置されている中に入り込んで、終着のノーンカイとなる。13:07の到着。

 ナコンラチャシーマーから6時間の筈が7時間近くかかった。さすがに間延びした。先頭車の写真を撮る。同じように写真を撮る人がいて、アジア系の外国人旅行者と思われる。他にも観光客が乗っていたか。

 ずっと時刻表上では見てきたノーンカイの文字。バンコクを出て1日以上かけてようやくたどり着く。っーか今回はだいぶ寄り道をしたけど。


 ここまでやって来たRHN形の気動車、折り返しはナコンラチャシーマー行きの普通列車、418列車となる。発車は12:55だから、もう過ぎているなぁ。
 もう一つ。ノーンカイ駅のホームには別の案内。

 隣国、ラオスへ向かう国際列車。1日2往復走っていて、次は14:45とある。まだ2時間弱待ち時間がある。

 駅のホームには出国審査場と思しき設備もあるが、人の気配はない。
 次に向かうのは、ノーンカイの隣駅、ターナレーン駅。つまりラオス側の駅。14:45に出る917列車に乗るのだけど、駅の出札で切符を買おうとすると「14時から」と断られる。ならばそれまではどこかで時間を潰そう。
 お手洗いに行く。有料3THB。済ませて出ようとする「日本人ですか?」と鈍った日本語で尋ねられる。え?と思って二言三言。相手は韓国人。どうやら同じ列車に乗っていたようだ。同じく国境越えなのかなぁとは思う。
 次いで飯。

 ノーンカイの駅は元々街中にあったのだが、東北本線ラオスへ延伸するにあたり、ノーンカイの郊外に移転してきている。辺りは言っちゃなんだが何もなく、ただ駅前には飯屋と思しき店はある。そちらに行く。
 注文をしようとメニューを片言の英語でお願いすると日本語で返事があった。今度は関西訛りだ。えっと思うと店員が日本人ですと。初老の男性。もうリタイヤしたような感じか。そしてどれも40バーツだから、と。
 日本語で注文。ビールも貰う。


 流れで色々話を聞く。日本に家族はいるそうだが、奥さんとは不仲でタイに来ているらしい、事が分かる。ノーンカイに10年住んでいるそうだ。なぜここで働いているのかは?だが、店主らしい女性と仲良くしているのか、これは自分の推測。
 夏休みシーズンになって、ラオスと行き来する日本人が時々立ち寄るそうだが、それでも1日1組ぐらいだとか。ラオスへの行き方を教えて貰ったが、バスでの行き方。申し訳ないけど、鉄道で行くんで、、、と話をすると鉄道で行く人は殆どいません、と。まぁその辺の事情は知っているけど、敢えて鉄道で行くので。。。。
 14時じゃなくても、20分ぐらい前にエンジンが唸り出してからでも十分間に合いますよ、というのでしばらく話を聞くことにする。
 聞くことにしたのだが、そこに新しいお客。真っ赤なシャツを着た東洋人。たぶん、中国人だなぁ。自分と同じくメニューを聞いた後「フライドライスなんて食べたくない、スティームライスが出せ」的な事を英語で仰る。何??って感じだったけどどうやらもち米の事らしい。
 メニューにないのでどうするかと思ったらお店の日本人がバイクに乗ってどこかから調達してきた。「そうそうこれこれ」と中国人は言うのだが、その後も「これはないのか」「こんなものは欲していない」と喧々諤々。中国人が「コミュニケーションが難しくて困る」的な事を英語で言うが、あんたのは「交流」じゃなくて「要求」だよ。。。。
 店の日本人が「中国人はいつもこんな感じ」とぼやきつつ、英語でやり取りしている間に、駅構内からエンジン音が響いてきた。時刻は14:25。発車20分前である。さすがにそろそろ切符を買って出国だ。会計をお願いする。ごはんとビールで100THB。
 ラオスのターナレーン駅まで、20THBの切符を買い求める。その後で出国審査場。ホームに設けられた審査官のブース。窓が開いておらず??だったが、よく見ると係員がお昼寝中だった。窓を叩いて起きて貰い、出国手続きをする。

 これで一応、タイ出国。駅構内は簡単に行き来できるから、手続きを経た後で店に行くことも、手続きを経ずに列車に乗る事も、出来そうだけど、やめておく。

 アイドリング音が鳴る中、出発準備が進む917列車。先程と同じRHN形の2両編成だが、扱いは「急行」らしい。運賃を上げるための方便と思われるが、それでも20THB。安い。安いが決して安くない事は後々分かる。

 車内は空いていた。


 果物だったり、ペットボトルをもった、鉄道の制服を着ていない人が何人かいて、普通に考えたらお客さんなんだけど、何か、そんな雰囲気ではない。そして、誰も新しい人が来ない。先程会話を交わした韓国人ぐらいは乗って来るかと思ったが、そうでは無かった。駅前食堂で言いたい事を言い散らしていた中国人は、もち米を食べている頃だろう。
 14:45、出発となる。列車は国境の街、ノーンカイを北に向けて出発する。
 検札がきて自分の切符をチェックする。他の人はチェックされてたのかな、されていない気がする。しばらくタイ領内を走ると、

 道路が寄って来る。通行止めを喰らっているその道路の真ん中へ、列車は入る。

 タイラオス友好橋へと続く道。その真ん中を列車は進む。列車が走る間だけはクルマは通行止めになるので、この立派な橋を列車は独占して走る。まもなく

 茶色い大きな流れが現れた。メコン川だ。大きな流れはタイのどこで見た河よりも太い立派な流れを作っている。まもなく

 見慣れぬ旗が風になびく大地へ。タイの隣国、ラオス領内へと足を踏み入れる。

 列車は道路併用橋を離れて、さらに北に進んでゆく。

 そして初めて目にするラオスの人家。子供が列車に向かって手を振るのが見える。気分が良くなり、手を振り返す。

 まもなく草生した線路が広がり、ラオス側のターミナル、ターナレーン駅に到着となる。辺りには何もないが、ここがラオス側の終着駅。ラオスにはほかに鉄道はないので、これでラオスの鉄道、全線完乗した事になる。

 周りには何もないが、乗客なのか、観光客なのか、記念写真に興じる人たちに紛れる事になる。このままどこかに行くことが出来そうな雰囲気だが、入国しておかないと後で面倒である。

 良く分からないけど、見てゆくと入国審査の窓口があって、係員がいた。いかにも共産圏、という感じの制服を着た係員に入国手続きをしてもらう。日本人の場合はビザ免除で15日間滞在できるが、何か知らんが、審査料で50THBを要求される。時間や曜日によってあったりなかったり、みたいな事をどこかで読んだが、平日のビジネスタイムは費用が掛からないという認識だったので面喰う。
 手続きを終わる事にタクシーの運転手、を名乗る人物に声を掛けられる。いかにも胡散臭いが、ターナレーンと言う駅、ラオスの首都、ビエンチャンからはちょっと離れていて、その間の脚がない。ノーンカイからビエンチャンに単純に向かうのであれば、バスで向かえば、ビエンチャンの中心地まで行けて便利であり、鉄道の場合は、ターナレーンから先、タクシーを使うか、サムローを使うか。とにかく色々面倒である。ラオスの鉄道に乗りに来たので、ノーンカイからバス、という選択肢は無かったのだが、いざ来てみると面倒である。
 ビエンチャンまでいくら?と聞くと13,000と言われたような気がした。タイバーツなら500だそうだ。13,000はラオスの通貨、キップで払えばという事。500バーツはキップなら100,000キップの筈で、釣り合わないなぁと思いつつもラオスキップなら思ったよりも高くない。問題はラオスキップの手持ちがまだない事。ビエンチャンで両替できるというので、もうお願いする事にした。

 何せこのターナレーン駅の廻り、何もないのである。

あと少し、ビエンチャンまで伸ばしてくれればだいぶ使い勝手が良くなるだろうに。ゆくゆくはビエンチャン延伸があるそうだが、何時の事やら。中国主導で中国-ラオス-タイを結ぶ高速鉄道なんて建設なんて話もあるそうだから、そちらの方が先に出来るなんて事もあるかも知れない。

 胡散臭げな白タクに乗せられ、ビエンチャンを目指す。できれば避けたかった状況で、事前にUberとかGrabとかサービスをしていないか、調べてきたのだが、ラオスはどちらもサービス範囲外だった。駅から続く道をメコン川の方へと戻り、そして友好橋とビエンチャンを結ぶと思われる道に出る。

 たまにバスの姿も見かける道をビエンチャン市内へ。この辺り、タイのSIMを入れてきたが、エリア外になってしまう。国境からさほど離れていないので使えるかと思ったが、ダメだった。ただグーグルMAPは地図データのキャッシュが残っているのか、ある程度分かるようにはなっている。方向的にはホテルの方向に向かっているみたい。
 ターナレーンを出る時は、ホテルの名前を言って通じたと思ったし、両替も出来ると答えてくれたような気がしたのだが、いざホテルの近くまで来ると迷いだす。何とか使えるグーグルMAPでホテルへは誘導。今度は支払いで揉める。だからキップは持っていないって言っただろ。
 ATMに連れて行ってくれたので13000キップなら50000キップ用意すればいいかと思って準備すると、今度は金額で揉める。13000じゃなくて130000だって。桁が一ケタ違う。それなら500タイバーツと大きくずれないから、納得は行くが、130000言うなら最初から乗らなかった。色々やり合い、キップとバーツをまぜこぜに支払っておしまい。最初からバーツで払う方がスマートだったかぁ。
 揉めに揉めたが、何とかビエンチャン市内、予約しているホテルまでやって来た。

 この辺り、ちょっと歩くとラオスの中央官庁があるような所なのだが、首都と思えないほどのんびりした雰囲気である。ひとまずホテルへ。手続きをして部屋に入る。先程調達したキップはタクシーの支払いに使ってしまったので、改めてキップの両替に行きたい。まずはそちらを優先する。

 両替商を探して少し歩く。少し賑やかな通りを見つけ、歩くことしばし、第一両替商発見。しかし、日本円は銀行に行けと断られる。さてと思って知らぬふりしてもう一軒。今度は普通に両替が出来る。何の違いだろうか分からないが、1万円が72万キップに化ける。これだけ桁が大きくなるのは初めての経験で、一気に金持ちになったような気がするが、10万キップ札、なんてものもあるので、札束に化けた訳ではない。
 両替という目的を果たせたのでひとまずホテルに戻る。今日のビエンチャン、なかなかに暑い。日が暮れるまでしばし休憩。

 部屋は4階。建物の合間からメコン河が見えてくる。川の向こうはタイ領だ。晴れていればメコンに沈む夕日、という景色になるのだが、今日はくもり空。京王線恥辱を進めつつ、夕暮れを待つ。
 夜になってからメコン川沿いにあるという夜市に足を伸ばしてみた。日が暮れたこの時間、外を流れる空気は涼やか。街は昼間よりも賑やかなぐらいだ。

 夜市は衣類が中心の様子。掘り出し物を探す漢字でもないので早々に離脱。夕食を考える。ホテルの近く、賑やかな店があったので適当に入る。

 ビアラオを貰う。ラオスで生産する工業製品としては数少ないメジャーな一品。大瓶1本10000キップ。先程の両替レートからすると130円ぐらいになる。ビールに関してはタイよりも安い。

 ビールを飲みつつ、注文の品がは運ばれてくるのを待つ。その間にも新しいお客さんが入る。なかなか人気店らしい。


 メニューからラオス風のソムタムとパッタイに似たものを頼んだ。ラオスはタイと違って外食をしないそうで、外食するのは観光客が中心。値段も高めと聞く。この店で食べているのは確かに観光客が殆ど。
 ビール大瓶と2品合わせてお会計は45,000キップ。先程のレートで700円弱。日本での飲食を考えると相当に安い。タイバーツに換算すると200THBぐらいだろうか。ノーンカイの食事を思うと、少し高いかな。
 ホテルの自室に戻る前にコンビニでビールを買い求める。ビアラオのロング缶は10000キップだった。先程、レストランで頂いた大瓶のビアラオと同じ値段。よく見ると大瓶のビアラオはコンビニでは9000キップで売っている。リサイクルが効く瓶の方が量が多くて安いのだった。

 コンビニでもスナックの類は高いので、屋台で鶏を買って帰る。ラオスで作っていない輸入品はほぼほぼ高く、コンビニで売るものの9割は、その輸入品だ。
 部屋に戻って飲みつつ、京王線恥辱の続き。丸二日、移動が続いたからか疲れを覚える。少し早めに就寝。